教室に到着し、席に荷物を置いたあと、ルルーシュは目的の人物を探し始めた。
教室を見回し、目的の人物を見つけると、ルルーシュは近づき、話しかけた。
「ルクレティアさん、話があるんだけど、良いかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
ルルーシュはルクレティアを連れて、教室を出て行った。
二人が教室を出て行って、しばらくすると、教室はざわつき始めた。
「ちょっとリヴァル、ルルからさっきのことを何か聞いてないの?」
「いや、何も聞いてないけど。しかしルルーシュ先生は、相変わらずお目が高い」
そんなリヴァルの面白がる声を聞いて、シャーリーは反論した。
「相変わらずって、カレンの時は、カレンを気遣ってだから違うでしょ」
「いやいや、今回の彼女は、優しい雰囲気と柔らかい物腰で男子生徒から、なかなか人気があるんですよ。
妹大好き人間のルルーシュが、ナナリーと似た空気を持つ彼女に今まで興味がなかったほうがおかしいんですよ」
「ちょっと、リヴァル!」
そのリヴァルの言葉に、シャーリーは思わず叱責してしまった。
「ごめん、ごめん、って」
「もう、真面目に答えてよ」
シャーリーの微妙に切羽詰った空気を読んで、リヴァルは真面目に答えることにした。
「うーん、そうだな。多分ナナリーに関しての話じゃないのかな」
「ナナちゃんの? ルクレティアさんとナナちゃんの接点が判らないんだけど?」
二人の接点がわからないシャーリーは、リヴァルに更に問いかけた。
「彼女の妹が、ナナリーの友達だからな」
「え。アリスちゃんとダルクちゃんのどっちが?」
「両方。ま、家庭の事情ってやつだな」
「そうなんだ」
リヴァルのはぐらかした答えを聞いて、シャーリーはそこで会話を終わらせた。
屋上にルクレティアを連れ出したルルーシュは、早速問い詰めた。
「俺は既に、機密情報局について聞いている」
その言葉を聞いて、ルクレティアは悲しい気分になった。
今朝、サンチアからルルーシュ達の身の上と、機密情報局の意味を伝えられていたが、
こうやって目の前で、現実を突きつけられるのは、やはりつらいものがあった。
もう自分は彼からクラスメイトでなく、機密情報局の駒、もしくは彼を監視する密偵としてしか、見てもらえないのだろう。
しかし、ナナリーに機密情報局のことが伝わってないのは良かった。
アリスとダルクがナナリーに持っている親愛と友情は本物だから、今の自分のように猜疑の目でナナリーに見られるのは悲しいからだ。
「私も既に、ルルーシュさんのことは聞いてます」
「そうか、皇族復帰正式発表後に指揮権が、ビスマルクから俺に移ることも聞いてるな」
「はい」
ルクレティアの様子を見て、ルルーシュは万難を排する必要があると考え、言葉を続けた。
「指揮権移譲後の最初の俺の命令は、機密情報局のナナリーへの接触の禁止だ」
「そんな!」
ルクレティアの予想だにしない反応に、ルルーシュは疑問を覚えて言葉を重ねた。
「別に驚くことはない。それに正式な命令で離れるのだから、処罰されることはない」
そんなルルーシュの言葉を聞いて、ルクレティアは感情のまま言葉を紡いだ。
「アリスとダルクがナナリーに持ってる友情を否定して、引き裂くというんですか!」
その言葉を受けて、ルルーシュも感情のままに言葉を紡いだ。
「その友情は、監視のための偽物の友情だろう!」
「最初はそうかもしれない。でも、彼女達が過ごした時間に嘘はないはず!」
ルルーシュはかつて、偽りの弟を懐柔するための言葉を、ルクレティアの口から聞いて気勢を削がれてしまった。
ロロを懐柔するために偽りで言った台詞を、彼女が二人のために本気で言ったのを否定したくて、更に反論した。
「大体、お前達は血の繋がりもない偽りの姉妹じゃないか! それなのに、何で二人の為に行動するんだ!」
「確かに、血の繋がりもない偽りの姉妹かもしれない。でも、私は二人を妹だと、サンチアを姉だと、みんなを家族だと思ってる!」
「!!」
ルクレティアの言葉を聴いた瞬間、ルルーシュは自分の中の何かが折れるのを感じた。
「すまない、ルクレティア。感情的になりすぎた」
ルルーシュが折れるのを見て、ルクレティアも冷静さを取り戻した。
「ごめんなさい。私も感情的になってました」
ルルーシュは、ルクレティアに向けて言った。
「アリスとダルクにナナリーの護衛について、ありがとう、と。そして、これからも護衛を頼む、と伝えてくれ」
そのルルーシュの言葉を聞いて、ルクレティアは嬉しそうに微笑んで言った。
「はい、必ず二人に伝えますね」
そのまま、教室に戻ろうと踵を返していたルクレティアをルルーシュは呼び止めた。
「ルクレティア。今まで、ありがとう。これからも、よろしく頼む」
「はい。では、先に戻ってますね」
そして、ルルーシュを残して、ルクレティアは教室に戻っていった。
午後、全校集会でユーフェミアが短期留学することと、その護衛としてラウンズと護衛部隊が来ることが発表された。
全校集会後、生徒会メンバーはクラブハウスに集合し、ユーフェミアと護衛たちと顔合わせをすることになった。
互いに自己紹介を行い、それぞれ男子と女子グループが出来、歓談が始まった。
「始めまして、カルデモンド卿。ジノ・ヴァインベルグと申します。どうぞ、ジノと呼んでください」
「あ、始めまして。リヴァル・カルデモンドです。俺のことも、リヴァルで良いからさ」
「じゃあ、リヴァル先輩って、呼ばせてもらいます」
リヴァルは、ジノが自分にだけ自己紹介したのを疑問に感じて、ルルーシュに問い掛けた。
「あれ? ルルーシュは既にジノと知り合い?」
「ああ、昨日、会長に呼び出されて出かけただろう。
あれはユーフェミア様との、顔合わせの為に政庁に行って来たんだよ。
その時に会ってるから、紹介済みってことさ」
そんな、ルルーシュの説明を受けてリヴァルは納得した。
「な~るほどね」
「リヴァル先輩は、ランペルージ卿とは長い付き合いで?」
「ジノ、俺のこともルルーシュで良いぞ。
そうだな、高校に上がってからだから、1年ちょっとの付き合いかな」
ルルーシュの答えを受けて、二人の関係を何気なくジノは言葉に出していた。
「そうなんだ。二人はもっと長い付き合いなのかと感じたんで」
それを受けて、リヴァルは秘密めかして答えた。
「まあ、俺とルルーシュは二人で、何度か危ない橋を渡っている、相棒ってやつだからな」
「なんです、それ」
そんな会話をリヴァルとジノが行ってるわきで、ルルーシュはスザクを呼び寄せた。
「おーい、スザク。こっちだ」
その声を受けて、スザクが3人の元に近づいてきた。
「リヴァル、彼が枢木スザクだ。
俺の古い友人でな。ここがエリア11になる前に、彼の家で世話になったこともある」
「あ、そうなんだ。始めまして、俺はリヴァル・カルデモンド。リヴァルって呼んでくれ」
「始めまして、僕は枢木スザク。僕のこともスザクで良いよ」
ルルーシュはかつての生徒会メンバーが殆ど揃っており、居ないのはロロだけなことに少しの寂しさを感じ、
そして、自分では果たせなかった、かつての約束を思い出していた。
初投稿(09/05/08)