ルルーシュは自分に宛がわれた部屋にスザクとC.Cを伴って入室していた。
そして部屋の中でひどく荒れていた。
「くっ。総てが後手に回ってる。このままではシャルル達の思惑通りにしか動けなくなってしまう」
「落ち着け、ルルーシュ。向こうは7年間のアドバンテージがある。こちらが最初から不利なのは承知していただろう。
その上での、現状での選択だったはずだ」
そう、C.Cに窘められた。
「ああ、判っていたさ。しかし今度こそ、ユフィをシャーリーをロロを救うことが出来るはずなんだ」
C.Cは少し時間を置いて、冷静になるまで待とうと考えた。そして、そんなC.Cに今度はスザクが問いかけた。
「C.C、君はどうやって、この政庁に入ってくることが出来た? ここは君のような不審者が簡単に入って来れないはずだ」
そんなスザクの問いに、C.Cはからかう様に答えた。
「良い女には秘密があるものだよ、坊や」
「はぐらかさないで欲しい、ここにはユフィとナナリーがいる。
ルルーシュにとって一番の優先がナナリーであるように、僕にとってはユフィが一番の優先事項なんだ」
そんなスザクの言葉を受けて、C.Cはスザクを見つめながら言った。
「互いの一番大切なもののために、互いに手を取り合うのか。
私なんかより、よっぽどルルーシュの共犯者のようだな」
「戯言は良い。早く答えるんだ」
「正面から堂々と入ってきたのさ。マリアンヌから「早く来ないとルルーシュを殺す」って脅されてな」
「ということは、警備の人間には話が通っていたということか」
ちょうどその時、部屋の扉が開いて、小柄な少女の姿が部屋に入り込んだ。
「久しぶり。ルルーシュ、相変わらず細いわね、ちゃんとご飯食べてる?」
扉を閉めて、いきなり話しかけるアーニャの姿を見て、C.Cは呟いた。
「マリアンヌか……」
「母さんが、ナイトオブシックスの権限を使ってC.Cを、この政庁まで素通しにしたのか」
「そうなのよ。ほら、前に黄昏の間でルルーシュに子供達を捨てたって言われちゃったじゃない。
そのことで、シャルルと一緒に反省してね。こう陰ながら見守っていたのよ。
V.Vは殺しちゃったけど、宮廷は二人にとって危険だったから、アッシュフォードが保護したのを渡りに船って感じで、
二人を任せてみたのよ。
まあ、アッシュフォードにも判らないように護衛を就けてたのよ。
ほら、心当たり無い? 前に居なかった人物が近くに居るのを」
ルルーシュは驚愕に目を開いて、アーニャの姿をした母を見つめた。
「ナナリーの……」
「そう、アリスとダルクよ」
マリアンヌは続くべきルルーシュの言葉を待ったが、いつまでもルルーシュの言葉が発せられないために、不審に思って問いかけた。
「ねえ、ルルーシュ。あなたの周りのことは言わないの?」
「? 何を言ってるのです? 俺の周りには変化はないですよ」
マリアンヌは困った顔で、C.Cの顔を見つめたが、C.Cは首を横に振るだけであった。
「あのね、ルルーシュ。ルクレティアがあなたの護衛に付いているはずなんだけど」
「そういえば、彼女は前には居なかった人物だった」
「そう、とても良い子なのよ。アリスとダルクもナナリーに気を使ってくれる良い子だし。
これがいわゆる親心ってやつね」
そんなマリアンヌの言葉にルルーシュは噛み付いた。
「そんな、俺達をいつも監視してるって念でも押しに来たのか! おとなしく言うことを聞かなければ、何時でも排除できると!」
「落ち着きなさい、ルルーシュ。あなた達を護衛しているのは機密情報局というのよ」
ルルーシュはその名称すら、皮肉を感じた。かつて弟が自分を監視するために所属していた組織の名前なのだから。
「一応ビスマルクがトップだけど、実質的なリーダーはミレイちゃんに付いてる最年長のサンチアって娘だから」
「ほお、それを何故、俺に教えるのです?」
「そんなに警戒しないの。サンチア、ルクレティア、アリスとダルク、この4人しか居ないけど、全員にギアスをシャルルが与えたの。
そして、その機密情報局のトップをビスマルクから、ルルーシュに変更するから、上手く活用しなさい」
「判りました、母上。機密情報局を有効活用して見せましょう」
ルルーシュは、かつての機密情報局と同様に乗っ取ってやろうと考えていた。
そんなルルーシュの様子を見て、マリアンヌはため息をついて部屋を出て行った。
「ルルーシュ、僕達の優先すべきことは2つ。
ラグナレクの接続の阻止。
フレイヤとダモクレスを作成させないこと」
マリアンヌが部屋を出たあと、スザクはルルーシュに語りかけた。
「ああ、判っている。現状ではラグナレクの接続の阻止は、かなり後手に回ってるが、
フレイヤとダモクレスについては、公な権力が手に入ったし、ニーナを抑えれば良いからな」
ルルーシュの言葉を聞いて、スザクは続けて口を開く。
「そう、ニーナにフレイヤとフレイヤ・エリミネーターを同時に開発してもらい、兵器として無効化させる」
「ダモクレスはフレイヤがなければ、脅威は格段に下がるからな。
フレイヤがなければ、開発自体行われないかもしれない」
そう、ルルーシュは答えた。
「ルルーシュ、僕には既に「生きろ」ギアスが掛かっている」
「そうだな、そのことを考えると無意識集合体に既に「明日が欲しい」ギアスが掛かっていると考えられる。
そして、それはラグナレクの接続を困難にし、やつらの計画を遅延させていることになる」
そこにC.Cの言葉が割り込んだ。
「だからこそ、シャルル達は私達を取り込もうとしているのだろう」
「ああ、やつらのラグナレクの接続を行う前に、やつらの計画を阻む手を見つけてみせる」
ルルーシュの言葉を受けて、C.Cとスザクは頷いて同意した。
コーネリアはダールトン、ギルフォードと供にビスマルクから、機密情報局の説明を受けていた。
その説明を聞き終わったあとにコーネリアは、やはり陛下はルルーシュを特別視している、と考えた。
このエリア11は途上エリアと言っても、重要な戦略物資のサクラダイトの供給地であり、中華連邦と接する最前線でもある。
そんな重要な地の副総督に、いきなり皇族復帰をしたルルーシュを抜擢するとは、
かつてシュナイゼル兄上が宰相の地位に就いたのと同様の衝撃が走るだろう。
ユーフェミアの副総督就任は、自分のゴリ押しだったが、ルルーシュの副総督就任は陛下のゴリ押しになるのだから。
そう考えると、陛下の御心では次の皇帝はルルーシュに決まっているのだろうか?
ラウンズのしかも、ナイトオブワンを一時期とはいえ派遣してきたことを考えると、あながち間違った考えでは無いのかも知れない。
「では、ユーフェミア様の留学中の護衛はヴァルトシュタイン卿が指揮を取るということで宜しいのですね」
「そのように陛下から伺っております」
ギルフォードの確認に答えるビスマルクを見ながら、これもユフィの護衛でなくルルーシュの護衛なのだろうな、と考えていた。
「ヴァルトシュタイン卿の指揮下にある機密情報局は、ルルーシュ様の皇族復帰正式発表後に指揮権がルルーシュ様に移ることになります。
このことは、既にルルーシュ様はお聞きになっているのでしょうか?」
「現在、ナイトオブシックスが説明を行っています。
彼女はナナリー様の護衛に就くため、機密情報局の説明を受けておりますので」
「なるほど」
そんな部下達とビスマルクの会話を聞きながら、やはり女の身では、いくら武勲を立てても皇位継承には参加できないのか。
かつて見たマリアンヌ様に憧れ、戦場に立ちナイトメアを駆ったが、届かぬものがあるのか。
そんな風に考え、コーネリアは鬱々とした気分になっていくのを感じた。
「姫様?」
ギルフォードが自分に心配そうに声を掛けるのに気付いた。
コーネリアは安心させるように言った。
「すまぬ。既に話は現場レベルのようだから、私は席を外しても大丈夫だろうか?
ユフィとナナリーが待っているので、そちらのほうに注意がいってしまってな」
そんなコーネリアの様子を見て、ギルフォードは安心したように微笑み、そして答えた。
「もちろん、大丈夫です、姫様。あとは我々にお任せください」
「すまぬな。では、後は任せる」
「Yes,Your Highness」
3人の返答を聞きながら、今の気分を換えるようにユーフェミアとナナリーの待つ部屋へと、コーネリアは向かっていった。
初投稿(09/05/07)
改訂(09/05/08)