ナナリーは友人達と昼食を取っていると、いきなりミレイから声を掛けられた。
「ナナちゃん、ちょっとこれからルルーシュと一緒に会って欲しい人が居るのよ」
ナナリーは兄と一緒ということで、またあの軍人達に会うのかと考えてしまった。
しかし、続けられたミレイの言葉でそうじゃないことが判明した。
「実はこの学園に短期で留学生を受け入れるんだけど、その娘の宿舎がクラブハウスになってね。
そこに住んでいる、ルルーシュとナナちゃんに先に会って欲しいのよ。
その人と仲良くなって欲しいから、今日はその人のおうちにルルーシュと一緒にお泊りの予定」
自分達の事情知ってるアッシュフォードがクラブハウスに人を入れるということは、
それだけ重要な人物か、自分達の事情を知っている人間なのだろう。
そういった意味では、昨日会った軍人達と変わりは無い。そうナナリーは考えていた。
「じゃあ、ナナちゃんを連れて行くから。二人とも、美味しいお茶を用意しておくから、また生徒会に遊びに来てね」
「じゃあ、また明日。アリスちゃん、ダルクちゃん」
監視対象が去っていくのを見て、ダルクはアリスに話しかけた。
「やれやれ、今日のお仕事は終わりだから、学校生活を楽しみますか」
「そんな風に言わないの。ダルクだってナナリーのことは気に入ってるんでしょう」
そんな風にアリスに窘められながら、ダルクは苦笑しながら言った。
「ルクレティアほど監視対象にお熱じゃないわよ」
アリスはルクレティアが監視対象たるナナリーの兄、ルルーシュに熱を挙げているのを思い浮かべ、
ダルクと同じように苦笑した。
アリスとダルク、そしてルクレティアは7年前に作られた皇帝直属の情報機関、機密情報局に所属している。
主な任務は、ルルーシュとナナリー、そしてアッシュフォードの監視とエリア11の調査にあった。
その調査の中には、故クロヴィス総督の内偵も含まれていた。
アリスとダルク、ルクレティアそしてミレイを監視しているサンチアは、アッシュフォード学園内の監視が主な任務であった。
4人はナンバーズであったが、皇帝シャルルよりブリタニア人の戸籍とギアスを与えられた。
ギアスを言う異能を与えられたが、任務は監視と、その監視対象の護衛であった。
そのことに、4人は疑問を抱いていたが、生活や環境は悪くないので不満は無かった。
機密情報局のトップはナイトオブワンのビスマルク・ヴァルトシュタインだが、
実質的には4人の最年長のサンチアがリーダーとして活動していた。
「そういえば、うちのボスがこのエリア11に来るから気を引き締めておけって、サンチアが言ってたよね」
その言葉を聴いて、アリスはなんとなく不安を口にしていた。
「クロヴィス殿下が暗殺されちゃったから、私達、首なのかな」
その不安を打ち消すようにダルクはアリスに語りかけた。
「クロヴィス殿下の護衛は私達の任務外だから咎められる事は無い、ってサンチアも言ってたから大丈夫よ」
ダルクは続けて、自分の考えを話した。
「ほら、あたし達のボスが来るのは、エリア11での国威高揚のためだって。
今ここは、クロヴィス殿下が暗殺されて、ゼロも現れて浮き足立ってるから、それを鎮めるためでしょう」
「そうね。そろそろ授業が始まるし、教室に戻りましょう」
アリスの言葉に促されて、二人は教室に戻っていった。
ルルーシュとナナリーは、ルーベンとミレイ連れられて政庁に来ていた。
そこでコーネリアとユーフェミアに再会していた。
コーネリアとユーフェミアは二人との再会を喜んだ。
その場が落ち着いたところで、コーネリアはユーフェミアの留学と、ルルーシュの護衛について説明を始めた。
「ルルーシュ、そなたの護衛として枢木スザク一等兵をつける。
また枢木スザク一等兵をアッシュフォードに入学させる。
ルルーシュ、枢木スザク一等兵はお前の親友だというし、お前にとってもやつが傍に居ても迷惑は無いだろう?」
コーネリアは優しげにルルーシュに問いかけた。
「もちろん、何の不満もありませんよ、姉上。
よく私達とスザクの関係が分かりましたね」
ルルーシュがスザクとの関係を知ってることを疑問に思い、問いかけるとユーフェミアがそれに答えた
「実は私が租界に外出したときに、スザクと出会ったんです。
その時に、スザクがルルーシュとナナリーのことを沢山、私に教えてくれたんですよ。
でも、不思議なことに、スザクは私のことを最初から皇族だって判っていたみたいなんです」
そんなユフィの言葉に、今度はコーネリアが答えた。
「ユフィとルルーシュ、そしてナナリーは異母だとしても兄妹だからな、その絆を枢木は感じ取ったのだろう」
続けてコーネリアはルルーシュに告げた。
「では、ここに枢木を呼ぶとしよう。ギルフォード頼む」
ギルフォードはコーネリアの意を受けて、スザクを呼び寄せた。
呼び出されたスザクは、まさに騎士としての動作で皇族たちの前に現れた。
その動作は、ギルフォードから見ても騎士として洗練されているものであった。
しかし、その動作を裏切るように、その視線はルルーシュに釘付けになっていた。
それを見てギルフォードは、死んだと思っていた友が生きて居ることを、自らの目で確認しているのだろう。そう考えていた。
「枢木スザク一等兵よ。これから我が弟ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの護衛に任じる。その命と忠誠を持って職務に励め」
その任務を聞き、スザクは一分の隙も無い動作で膝を折り、答えた。
「Yes,Your Highness」
そして、そのままルルーシュの選任騎士のように、そこに居るのが当然といった形でルルーシュの後ろに立った。
その動作を見て、ユーフェミアは非常に嬉しそうにしたが、逆にコーネリアはかすかに眉を顰めた。
しばらく歓談したあと、ルルーシュはスザクを引き連れて席を外した。
ルルーシュとスザクの様子を見て、ユーフェミアは楽しそうに言った。
「やはり、ルルーシュの騎士はスザクで決まりですわね」
そんな言葉を受け、ナナリーも嬉しそうに言った。
「お兄様の騎士がスザクさんになるのですか」
そんな妹達の言葉を聴きつつ、コーネリアは考えていた。
ルルーシュを後援してるのはアッシュフォードと純血派だ。
そんなルルーシュの騎士にイレブンがなることは純血派の反発を買うだろう。
純血派の反発だけなら良いが、アッシュフォードとしても自分達が守ってきた自負があるのだろうから、
自分達の息が掛かった騎士をルルーシュの騎士にしたいだろう。
二つの派閥から反発を買わない、そして二つの派閥に染まっていない騎士を探し出し、
早急にルルーシュの騎士にするのが良いだろう。
時間が経てば経つほどに、ルルーシュの騎士を自分達からという期待が高まるのだから。
特に純血派は若手将校の集まりだ。血の気が多い騎士がルルーシュの騎士になることを夢見て暴走する可能性もある。
妹達が言うように、枢木スザクをルルーシュの騎士とするには、周りが黙るような功績が必要になる。
そう、たとえばゼロ捕縛のような目に見えて際立った功績が。
カメラの付いていない部屋に入り、ルルーシュはスザクに語りかけた。
「久しぶりだな、スザク」
それを受けてスザクは、持っていた銃をルルーシュに向けて言った。
「ああ、久しぶりだね。ゼロ」
ルルーシュが自分を見つめているのに気付いて、スザクはルルーシュに言った。
「ルルーシュ。僕にギアスは効かない」
その様子をみて、ルルーシュはスザクも記憶を持っているのだろうと判断した。
「いつから記憶が戻ってる? 純血派から助け出したときは、そんな様子は無かったはずだが?」
そんなルルーシュを、じっと見つめてスザクは銃を仕舞いながら答えた。
「ユフィと出会った時に。そちらはどうなんだい?」
「こっちはC.Cとクラブハウスで接触したときからだ」
ルルーシュはスザクと現状確認と今後のことについて語り始めた。
初投稿(09/05/05)
改訂(09/05/06)