「まずは、オレンジ疑惑のジェレミアから報告を受けないといけないのか」
夕刻にエリア11に到着したコーネリアは、呆けた報告をする官僚にゼロを探し出す厳命を与えたあと、総督室で呟いた。
「姫様、こちらの調査ではジェレミアが賄賂を受け取っていたということは無いと判明しています」
コーネリアの選任騎士ギルフォードが、コーネリアにオレンジ疑惑の調査結果を報告していた。
「ふん、そのような疑惑が浮かぶこと自体がブリタニアの騎士として恥ずべき事なのだ」
そのように話していると、扉の向こうから声が聞こえてきた。
「姫様、アンドレアス・ダールトンです。ジェレミア・ゴットバルトを連れてきました」
「そうか。入れ」
コーネリアの声を受け、ダールトンはジェレミアを引き連れて入室した。
「さて、ジェレミア・ゴットバルト。先のオレンジ疑惑について申し開きはあるか?」
コーネリアは早速、ジェレミアを詰問した。
「そのことについて、ご報告があります。コーネリア皇女殿下」
ジェレミアはルルーシュとナナリーのことについての説明を行った
ジェレミアからの報告と説明が終わり、退出させたあとコーネリアの様子をみてダールトンは呟いた。
「上機嫌ですな、姫様」
「ふふ、そうか?まあ、嬉しい事には変わりないからな」
エリア11到着直後のピリピリとしていた雰囲気から一転して、非常に嬉しげなく空気をコーネリアは纏っていた。
「しかし、マリアンヌ様の御遺児が生きておられたとは、正直、驚きました」
「そうだな、ルルーシュとナナリーを宮廷スズメどもから守るために、私に保護を求めるとはな」
コーネリアの発言を受けて、ダールトンは自分の考えを伝えた。
「姫様。ゼロに御二人の居場所がばれているのならば、
このエリア11の不穏分子どもにも御二人の居場所がばれていると考えて宜しいのでは?」
「そうだな、そう考えるのが妥当だろうな」
「なれば、SPと護衛部隊を派遣するのが宜しいかと思いますが」
ギルフォードのSPと護衛部隊の派遣を聞いて、コーネリアは先ほどのジェレミアの報告を思い出しながら考えを口にした。
「SPは既にアッシュフォードが周りには分からぬように配置しているだろう。
また護衛部隊は未だに、二人の地位が確定していないのだから派遣することは難しいだろうな」
「ならば、御学友という形で護衛を派遣したら如何ですかな」
ダールトンの意見を聞いて、コーネリアは検討してみた。
ルルーシュは17歳だから、軍を探せば同年の優秀な騎士はいくらでも存在するから問題は無い。
ナナリーが14歳で、しかも女子というのが問題だ。
まず年齢で第一のハードルが高くなる。
優秀な名門の子弟なら騎士として働いていてもおかしくは無いが、後援貴族でない貴族に護衛を頼むのは弱みを握られるも同然になる。
皇族ヴィ家として、確立しているのなら多少の弱みは問題ないが、現状では致命的になる。
次が性別という第二のハードルだ。
学友として護衛を置くなら、同性であることが望ましい。異性が常に傍に侍っているのは身分が公表されたあとで問題になる可能性もある。
ここまでコーネリアは考えたが、自分ではナナリーの護衛についてよい案が浮かばないと思い、二人に意見を求めた。
「ルルーシュは良い。17歳の男子であるから、充てはいくらでもある。
問題はナナリーだ。女子で14歳なのだから、良い心当たりがまったく無いのだよ」
「同性であれば良いのであれば、ヴァルキュリエ隊が存在しますが、さらに同年であると難しいですね」
ギルフォードの言葉を受けて、ダールトンも言葉を紡ぐ。
「有名所ですと、皇帝陛下直属のラウンズ最年少ナイトオブシックスですかね」
「そうだな、陛下から彼女をお借りできれば良いのだがな。流石に無理だろう」
結論の出ないまま、なんとなく発言を行いながら、そういえばマリアンヌ様がラウンズであったときもナイトオブシックスであった。
と、意味の無い方向にコーネリアの思考が飛んでいた。
ユーフェミアは自分を呼び出した姉が、考え込んで居るを見て心配そうに声を掛けた。
「お姉様?」
声を聞いてコーネリアは意味の無い思考を中断し、ユーフェミアの方に向いた。
「すまない、ユフィ。少々難しい問題について考えていたのだ」
「なら、お姉様。その問題について教えていただけませんか? 一緒に考えれば、きっと良い考えも浮かびますもの」
そう言って、姉を促した。
「やけに上機嫌だな。良いことでもあったのか?」
「ええ。懐かしい人たちのお話を聞けたのです」
その言葉を受けて、コーネリアが微笑を向けながら言った。
「そうか。私からの話も懐かしい人についてだ。しかもユフィにとって、とても嬉しい話でもあるな」
「そうなのですか。じゃあ、そのお姉様の嬉しい話を教えてください」
そう言って、ユーフェミアは再び姉を促した。
「ユフィ、落ち着いて聞けよ。ルルーシュとナナリーが見つかった」
「え?」
ユーフェミアは姉から言われた言葉に対して、理解できずに思わず聞きなおしてしまった。
「もう一度言うぞ、ユーフェミア。ルルーシュとナナリーが生きて見つかった」
姉の言葉の意味が理解できると、ユーフェミアの心は歓喜に溢れた。
「本当なのですか?! それに、今何処に居るのです? 直に会えるのでしょうか?」
「本当のことだから落ち着け、ユフィ。
居場所だが、終戦直後にアッシュフォードが保護したらしい。
だから、このエリア11のアッシュフォード学園クラブハウスに住んでいるそうだ。
あと、いつ会えるかは近いうちに政庁に来てもらおうと思っている。
予定が決まれば直に教えるから、勝手に会いに行くなよ」
そのように言われて、ユーフェミアは直に首肯した。
「もちろんです、お姉様。ですけど、奇遇ですね。
私の懐かしい人たちの話も、ルルーシュとナナリーについてなんですよ」
それを聞いて、コーネリアは興味を覚えた。
「ほう。どんな話なのだ? ユフィ」
「はい、今日出会った枢木スザクから、友達となったルルーシュとナナリーの日本での生活や、
遊んだこと、約束したことを話してくれました」
コーネリアは、開戦前に二人が預けられたのが枢木首相の家だったな。と、思い出していた。
そうして語り始めたユフィの話をギルフォードは切りの良いところでさえぎった。
「それで、ルルーシュはスザクに「僕たち二人が揃って出来なかったことなんてない」って言って、
そして、ルルーシュはブリタニア皇帝になって、スザクは日本首相になり二国の友好を結ぶ約束したんですって」
「姫様、思い出話もよろしいですが、今は御二人の護衛について語りませんと、そちらのほうが一刻も争いますので」
「そうであったな、ギルフォード。すまぬ、ユフィ。話はまた時間が在るときに二人と供に4人で語り合おう」
それを聞いて、ユーフェミアは話を止め、コーネリアの話を聞くことにした。
コーネリアから護衛の話を聞いたユーフェミアは、部屋に来る前に政庁の人間に頼んでいたこと、コーネリアに話した。
「実はお姉様、先ほど話の出た枢木スザクなのですが、ルルーシュと同年ということで学校に行けるように政庁の人間に頼んだのです」
それを聞いて、皇族という特権を特定の人間に対して使うことに対してコーネリアは眉を顰めた。
「それでですね。そのスザクにルルーシュの護衛をお願いするのです。
ルルーシュとスザクは親友だって言ってましたから、スザクも喜んで任務を受けてくれますし、
ルルーシュも負担に感じることが無いと思うのです」
その意見を聞いて、コーネリア、ギルフォード、ダールトンは、なるほどと納得した。
「ユフィ、ルルーシュの方はそれで良いとして、ナナリーの方はどうするのだ?」
「お姉様、二人が皇族として発表されるのに、どれくらい掛かります?」
ユーフェミアになにか考えがあることを察して、質問に答えた。
「そうだな。大体一週間ほど掛かるな」
「ならば、その一週間、アッシュフォード学園にユーフェミア・リ・ブリタニアが留学するのです。
もちろん宿舎は、ルルーシュとナナリーが住んでいるクラブハウスで。
そうなれば、護衛が学園内に居ても問題がなくなります」
「ほう」と思わず感嘆の声がコーネリアの口から漏れた。
ギルフォードとダールトンも、ユーフェミアのことを感嘆の眼差しで見ていた。
「素晴らしいな、ユフィ。その案で護衛を送ることを検討しよう」
姉に褒められたことで、ユーフェミアは嬉しそうに頷いた。
「さて、もう時間も遅いし、本国との時差も大丈夫なようだから、今回の件を皇帝陛下に直接報告するとしよう」
そうコーネリアが言うと、この場を解散させた。
初投稿(09/05/04)