「私、トウキョウ租界を出るのって初めてなんですよね」
シャーリーは車両の中で、ミレイに語りかける。
「これから行くカワグチ湖は再開発地区で、租界と変わりないから安心よ。
と、言ってもルルーシュがゲットーの再開発を行ってるから、最近は何処も治安が良くなってきてるのよね」
ミレイがシャーリーとニーナに、これから行くところと現在のエリア11についてコメントする。
「でも、専用電車の専用車両でいくとは思わなかったよ。ミレイちゃん」
ニーナのコメントにミレイも苦笑いしてしまう。
「そうね、後ろの貨物車両にはナイトメアが積んであるのもね」
そう言って、車両内を見回す。
車両内には想定したメンバーの他に特派の技術者である、ロイドとセシルも参加していた。
この二人の参加はC.Cがランスロットを持っていくなら、この二人も居たほうが良いだろうと参加を求めたからだ。
そして、それぞれが思い思いに時を過ごしていた。
藤堂は襲撃の準備が終えたので、今回の作戦に参加するレジスタンス達を見て回る事にした。
自分が見て回ることにより、士気が上がり襲撃の成功率が上がるならばと行動する。
藤堂は今回の襲撃を扇に連絡して参加するかを確認したが、彼らの仲間の一人がその旅行に参加するので襲撃には参加しないと答えられた。
逆に、襲撃が成功して首脳部を捕獲した時に手荒に扱わないで欲しいとお願いをされてしまう。
その時の扇の戸惑ったような苦悩した声を聞いて、人の良い男だと思ってしまったが、また信頼も出来ると思った。
「思ったよりナイトメアの数が多いな」
藤堂は並ぶ無頼とグラスゴーを眺めながら呟く。
その呟きを聞いた四聖剣の一人である仙波が答える。
「はい、キョウトが今回の作戦に期待を寄せてるようでして、草壁中佐率いる本隊にもかなりの数の無頼が配備されました。
また、こちらにも出来る限りの無頼とグラスゴーが送られてきました。ブリタニアの政策によって抵抗活動が困難になってきてるので、
この作戦を乾坤一擲として、状況の逆転を狙っているのでしょう」
仙波の言葉に朝比奈が言葉を続ける。
「そうですよ。なんてったって、キョウトは我々用に無頼改まで遣してくれたんですから。
こちらにもナイトメアがあるんですから、7年前と違うってことをブリタニア見せてやりましょう。
まあ、相手はそんなに数が居ないそうですから藤堂中佐なら、あっと言う間に終わりますよ」
藤堂は朝比奈の言葉に油断があったので注意する。
「朝比奈、確かに数は少ないが居るのは一騎当千の猛者ばかりだ。
コーネリアにその騎士と将軍、ラウンズ。そして手に入れた情報では護衛をしてるのは特殊部隊となっている。
いずれも油断できる相手などではない」
「はい、判りました」
藤堂の言葉に、朝比奈は真面目に頷く。
そんな藤堂達にレジスタンスグループの一人が話しかける。
「今回、俺達はあんた達の指揮で戦うようにキョウトから言われてる。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしく頼む」
レジスタンスの言葉に、藤堂は対等の同盟者として扱い協力を仰いだ。
「いや、奇跡の藤堂の下で戦えるなんて光栄だな。しかも狙うのが、ブリキのお姫様と皇子様だからな。
ここで気を入れなきゃ、日本男児じゃないって」
その扱いに気を良くしたのか、そう言ってレジスタンスは機嫌よく、その場を去っていく。
「士気は高いようだな」
「はい、皆が藤堂中佐に期待を寄せております」
藤堂の言葉に仙波は答えた。
仙波の言葉に藤堂は、日本人が自分に寄せる期待の重さを再確認する事となった。
コンベンションセンターホテルの橋がメインを除いて、総て跳ね上げられる。
橋の前には、先に到着していたG1ベースが待機していた。
ルルーシュ一行は到着して、直にG1ベース内へと誘導される。
「え? なに? なんで、いきなりG1ベースに連れ込まれるわけ?」
リヴァルの驚いた様子に、ルルーシュが落ち着いて答える。
「リヴァル、楽しい旅行はここまでだ。どうやらレジスタンスが俺達を狙っているようだ」
「ひぃっ」
その言葉にニーナは怯えて、ミレイに抱きついてしまった。
そして護衛を担当していた者達は、あらかじめ聞かされていたようで自分たちのナイトメアに向かって移動し始めている。
「この部屋で待っていてくれ。直に終わると思うから、それにトウキョウ租界に戻るのも、このG1ベースで戻る事になる」
ルルーシュの言葉を聞いて、リヴァルが声を掛ける。
「ルルーシュ! 俺にも手伝える事は無いか?」
リヴァルの言葉を聞き、ルルーシュは驚きながら答える。
「リヴァル、これはチェスとは違って、実際に人と戦うんだぞ」
「それでも、俺はルルーシュを手伝いたいんだよ。俺達は友達だろう」
リヴァルの言葉に、ルルーシュは嬉しさを感じながら、その言葉を退けた。
「いや、ダメだ。専門の訓練を受けていないと手伝える事すら難しいからな。ここは戦場だからな、下手な事をすると、こちらに被害が出てしまう」
「そうか、すまない。我が儘言っちまって」
「いや、リヴァルの心遣いは正直嬉しかった。ありがとう」
そう言ってルルーシュは指揮を行うために部屋を出た。
最初にG1ベースから射出されたのは、機密情報局のナイトメアだった。
「地形情報クリア。周辺情報クリア。情報を送ります」
ルクレティアのナイトメアから通信が入り、周辺の詳細な情報が指令室に送られくる。
「敵味方識別信号クリア。正体不明機の位置情報を送ります」
次にサンチアのナイトメアから、正体不明機の現在位置情報がリアルタイムで送られる。
この様子を指令室から見ていたロイドは、楽しそうにセシルに語る。
「あっは~。それぞれに機能を特化させた第六世代ナイトメア。周辺情報収集と索敵。
残りの3機は、格闘型1、近接型2。チームとして動く事を前提にしたナイトメアか、面白い発想だね。
しかも、索敵用のサンチア機が担いでいるのは大型レールガンかな。こんなに良いものを隠し持っていたなんて、ぜひともデータが欲しいね。
そうだよね。セシル君」
「ロイドさん、大人しくしてて下さい。ここはもう戦場になるんですから」
セシルがロイドを窘めたが、ロイドは聞く耳を持たずに更に言葉を連ねる。
「でもさぁ、あの近接型もスタントンファーじゃなくて、ブレードを4本も持ってるんだよ。
MVSじゃないようなんだけど。それって気にならないの?」
「そりゃあ、気になりますけど、それは後でいいじゃないですか」
セシルの言葉に頷いて、ロイドは言う。
「うんうん、確かに後で良いね。今は僕のランスロットのデータを集める事に集中しようか」
「まったく、最初からそうしてください」
そして、次々とナイトメアがG1ベースより吐き出されていく。
「では、姉上。周辺情報と正体不明機のデータを送ります。
かねてからの計画通りに、G1ベースの護衛は機密情報局が行います。
また特派はラウンズと共に行動する事、また敵司令部が判明しだいデータを送ります」
データを受け取り、コーネリアは唸りながら言う。
「機密情報局のナイトメアは素晴らしいな。周辺情報と敵の位置が丸裸だとは。これで負けては、恥になってしまう」
同じくジノも唸っていた。
「機能を特化したナイトメアが、これほどとは。専用機の話が来てるし、その参考に出来るかも」
そして、ルルーシュがコーネリアに頼む。
「では、姉上。号令をお願いします」
コーネリアは頷いて言う。
「出陣」
「Yes,Your Highness」
カワグチ湖攻防戦が開始された。
初投稿(09/05/28)
改訂・誤字修正(09/05/29)
改訂・誤字修正(09/06/21)