生徒会メンバーは枢機卿という地位に就いている人間を、歳を取った威厳のある男性だと考えていた。
しかし、紹介された人は自分達と変わらぬ年頃の少女であった。しかも、美少女である。
「あ、あの、はじめまして」
シャーリーがなけなしの勇気を振り絞って挨拶をした。そこにはルルーシュといつも共にいる少女に対する対抗心もあった。
「ああ、私のことはC.Cで良い」
シャーリーのことを見てから、アッシュフォード学園の面々に向かって自己紹介をした。
その様子にリヴァルが遠慮がちに自己紹介を行った。
「あの、俺はリヴァルって言います」
「知ってるよ、リヴァル・カルデモンド。ルルーシュの友人だろう。ちなみにここにいるメンバーは全員知っているから、自己紹介とかはしなくて良い」
C.Cの言葉に全員が、一歩引いてしまった。しかし、シャーリーはC.Cに対抗するように更に声を掛けた。
「C.Cさんは、ルルのことを手伝っているそうですけど、どれくらい手伝っているんですか?」
C.Cはそんなシャーリーを見て、面白いことを思いついたように微笑んで答えた。
「その質問は正確じゃないな。正直に、私とルルーシュがどんな関係なのか? どれくらい一緒に居るのか? と聞けば良い」
C.Cの言葉を聞いて、シャーリーは顔を赤くしつつ、慌てて反論した。
「いや、そうじゃなくて、私は別にルルのことを気にしてないですから」
シャーリーのリアクションに満足しながら、C.Cはシャーリーに言葉を続けた。
「ちなみに私とルルーシュは共犯者だ。そして、ルルーシュが政庁に居る時は大抵は傍にいる。
シャーリー。お前の最大のライバルは私でなく、そこに居るミレイだ」
そういってC.Cはミレイを指差した。
「私がシャーリーのライバルですか?」
指を指されたミレイは疑問符を浮かべながら、C.Cに確認した。
「そうだ。アッシュフォードは嘗て、お前とルルーシュを婚約させたように、またお前達を婚約させてアッシュフォードの地盤を固めておきたいらしい」
「ええ~」
その言葉にリヴァルが真っ先に反応した。そしてシャーリーがミレイに問い詰めた。
「会長! ルルと婚約って、どういうことですか!」
「あ~、いや、ほらね、家の事だから私も知らなかったのよ。それにほら、ルルーシュって皇位継承が高くなったから結婚って
ブリタニアの国策になるんじゃないかしら、婚約の話自体が立ち消えると思うわよ」
シャーリーを宥めるようにミレイが語りかけたが、C.Cはそれを更に混ぜっ返した。
「ルルーシュは皇族だからな。複数の夫人が居てもおかしくないぞ。なんと言ってもルルーシュの母が庶民から后妃に上り詰めた人物だからな」
C.Cの言葉を聞き、シャーリーはこぶしを握り締め、気合を入れた。
「C.Cさん。みなさんをからかうものじゃないですよ。お兄様の結婚とは、とても重要な事なのですから。そう、この上なく重要な事なのですよ」
ナナリーからC.Cを窘める声が上がった。それはC.Cを窘めるだけでなく、周りにプレッシャーをも与えていた。
部屋の空気が重くなったときに、ドアからノックの音が聞こえてきた。
これ幸いと、真っ先にリヴァルが行動した。
「は~い、今出ます」
ドアを開けたリヴァルを待っていたのは宅配ピザの箱を大量に抱えた政庁の役人達だった。
「枢機卿猊下が注文しましたピザが届いたので、持ってまいりました」
「判った。机の上に置いといてくれ」
C.Cの言葉を受け、役人達は机の上にピザを置いていった。
「ルルーシュの奢りだ。遠慮なく食べると良い。これを食べてるうちにルルーシュも来るだろう」
C.Cは一同にそう言って、早速ピザの箱を開け食べ始めた。
その行動に場の空気は変わり、それぞれがペーパーソーサーを配ったりサイドメニューを開けたりと行動を開始した。
桐原泰三は疲労を感じつつ、キョウト六家での会合での出来事を思い出していた。
会合では、新たに就任したコーネリア総督とルルーシュ副総督について話し合われた。
コーネリア総督によって、かなりのレジスタンスグループが潰され、
ルルーシュ副総督の日本人に対する政策は、コーネリアによって潰されたレジスタンスの代わりを補充する事を困難にした。
どちらか片方だけの軍事行動と政策だったなら問題なかったが、この二つが組み合わさった事でレジスタンスグループが大量に消えていった。
また、ルルーシュとスザクの友人としての関係が日本人達に伝わり、スザクが友人の為に名誉ブリタニア人になり軍に入り護衛することを、
浪花節に弱い日本人達は好意的に受け入れていた。
そして、そんなスザクを信頼し傍で護衛として重用するルルーシュの姿に日本人達は、彼の下なら日本人でも重用されると思わせた。
そのルルーシュがゲットーの生活環境改善や、日本人達を狙った麻薬の撲滅に動き出す事によって、彼を日本人達は好意的に思うことになった。
桐原はルルーシュによって、日本人達が骨抜きにされブリタニアに飲み込まれる事を危惧していた。
キョウト六家内でも、ルルーシュを支援して日本人の権利拡大を目指すべきだと言う意見もあった。
しかし、それは桐原にとっては許容できない事だった。それでは日本人でなく、日系ブリタニア人になってしまうからだ。
ブリタニアを憎んでいたはずの、ブリタニアの敵となったはずの彼がブリタニア側に付き、日本と日本人の敵になってしまった。
桐原は政庁への伝手を使い、ルルーシュに直接会おうと考えた。
それと同時に、支援している日本解放戦線らレジスタンスグループへ反ブリタニア活動を活発行う事を指示することにした。
「フン フン フフ~ン」
ロイドは鼻歌を歌いながら、ランスロットの調整を行っていた。その上機嫌な様子にセシルは、不思議に思ってロイドに話しかけた。
「ロイドさん。やけに上機嫌ですけど、何か良いことでもあったんですか?」
「ん~、ふふふ。実はね、アッシュフォードからナイトメア開発をまた行うから、技術提携しないかって提案されたんだよ」
ロイドの言葉に、セシルは驚いてしまった。
「まあ、アッシュフォードがナイトメア開発を行うんですか」
「そうなんだ、向こうも7年のブランクがあるから、うちと技術提携してブランクを埋めたいそうだよ。まあ、代わりにガニメデとかのデータは貰うけどね」
セシルはロイドが上機嫌な理由が、前から欲しがっていたアッシュフォード系列のナイトメアデータが貰える事に納得した。
「そうなりますと、シュナイゼル殿下にも連絡を入れないといけませんね」
その言葉を聞いた瞬間に、ロイドは萎れてしまった。
「あちゃ~。その事、忘れてた。この話、なかった事になるかも」
「どういうことです?」
「ほら、うちはシュナイゼル様がスポンサーじゃない。で、アッシュフォードはルルーシュ様。
皇位継承の二番手と三番手だから、手を組むのを邪魔されるかもしれないし、互いに警戒して話がなくなるかもしれないってこと」
ロイドの話した事情にセシルは納得いった。
「はぁ、アッシュフォードのナイトメアだけじゃなく。皇帝ちゃん直属の機密情報局のナイトメアも触れる事が出来ると思ったんだけどなぁ」
「それって、噂の第六世代ナイトメアの事ですか?」
さっきとは打って変わって、萎えてしまっているロイドの言葉にセシルは確認した。
「そそ、表立ってじゃないけど、機密情報局が特殊な第六世代のナイトメアを運用してるって噂があるからね。
ルルーシュ様の直属になったから、アッシュフォードと提携すれば、ガニメデとかと一緒にデータが貰えるんじゃないかと思ったんだ」
そんなロイドを慰めるようにセシルは話題を換える事にした。
「そこら辺は、しょうがない事として諦めるとして。ガウェインの移管の話はどうなったんです?」
話題が変わり興味が移ったのか、あっさりとロイドは復活して話題に乗ってきた。
「許可が下りて、現在はこのエリア11に移送中。ま、未完成部分があって僕じゃないと完成できないって事で、渡りに船って感じで許可が下りたよ」
機嫌の直ったロイドの様子に安心してセシルは相槌を打った。
「それは良かったですね」
「うん、うん。でも、新しい問題が出てね」
ロイドの言葉に興味を覚えて、セシルは問題の内容を聞く事にした。
「問題ですか?」
「そ、ガウェインは複座式でしょ。ルルーシュ様と誰を乗せるかって問題が発生しちゃってね」
「このエリアには、優秀なデヴァイサーが沢山居るじゃないですか。なんだったら、ラウンズの方々にお願いしても良いのでは?」
その言葉に頷きながら、ロイドは答えた。
「うん、うん。僕もそう思ったんだけどね。なんと! ルルーシュ様の専任騎士問題に拡大しちゃったわけなんだ」
「ああ、そういうことですか」
「そうそう、複座式だから共に乗るデヴァイサーはルルーシュ様の専任騎士か、その候補ってことになるからね」
セシルがすぐに納得するほど、軍部ではルルーシュの専任騎士の問題は有名なものがあった。
「そうなりますと、ガウェインの運用も満足に行えない可能性があるんですね」
溜息をつきながらセシルは、呟いてしまった。
「ん~、そこはルルーシュ様に一緒に乗るデヴァイサーを選んでもらおうと思ってるんだけどね。
なんだったら、ランスロットと同じく軍から適合率の高い人間をデヴァイサーにして、専任騎士問題と切り離せば良いしね」
「それが良いですね」
セシルはロイドの言葉に同意した。
初投稿(09/05/24)
改訂・誤字修正(09/05/25)