応接間にて、ディートハルト・リートはジェレミア・ゴットバルト辺境伯を迎えていた。
ディートハルトはジェレミアの話を聞き、内容を纏め吟味した。
結局のところは、純血派のスポークスマンとしてのスカウトである。
しかも、彼らの支持するルルーシュ・ヴィ・ブリタニア副総督の下で、純血派のスポークスマンとして活動しろというのだ。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはコーネリア・リ・ブリタニアと並んで面白そうな素材ではある。
クロヴィス・ラ・ブリタニアの下だったら一蹴して断っていただろう。
だが、どちらもゼロと比べると素材として、何かが足りない気がした。
ゼロは不安定な中にも、渇望する何かを求める貪欲さがあった。
しかしルルーシュには、ゼロに無い安定感があり、貪欲さが薄い感じがした。
既に求めているものは手の内にあり、それを失うまいとした守りが見えるものであった。
少し前の自分なら、この話に飛びついていたが、ゼロという極上の素材を見た後では少々物足りないものを感じてしまう。
だが、ゼロは枢木スザク強奪事件より現れていない、これに呼応するようにエリア11の政庁もサイタマゲットーでのテロリスト殲滅作戦から
ゼロに対する執着がなくなったようだった。一応探してはいるが、前のように我武者羅には探していないようだ。
そうなると政庁がゼロを探さなくなったのは、既にゼロを処分している可能性があることになる。
枢木スザク強奪事件で、オレンジ疑惑に塗れたジェレミアをコーネリア総督は未だに重用している。
ここに不可解な点がある。
ゼロによるオレンジ疑惑ー隠れていた皇族の登場ーオレンジ疑惑当事者のジェレミアの重用。
これは、なかなか面白いものが隠されているのかもしれない。
「なるほど、お話は判りました。ですが、いきなり皇族に仕えよと言われても戸惑ってしまいます。
そこで取材という形で、ルルーシュ副総督閣下の人となりを確認させてもらっても構いませんか?」
ディートハルトの物言いはジェレミアに不快感を与えたが、言っていることも間違ってはいなかった。
「ふむ、取材の件はコーネリア総督とルルーシュ副総督にお願いしてみるが、あまり期待しないで欲しい。
取材の件が無理だった時の代わりを考えておいて貰う。それで構わないか?」
「ええ、構いませんとも。こちらとしては、人となりが判ればいいので」
ジェレミアはディートハルトの回答を聞いて、席を立った。
そして、皇族二人にどうやって話を持っていくか、頭を悩ませた。
「え~、コーネリア総督とルルが旅行を許可したんだ」
シャーリーの驚きは、生徒会メンバーにとって当然のもので、むしろ、シャーリーが真っ先に驚いたので、
驚くタイミングを失ってしまった状態だった。
「はい、お姉様とルルーシュが話し合って、最終的に許可したそうです」
「勿論、お兄様も一緒に旅行に行かれるそうです」
ユーフェミアの言葉に続けて、ナナリーも言葉を紡いだ。
今日のナナリーは非常に機嫌が良かった。
昨夜はナナリーが寝付くまで、ルルーシュが傍にいて手を握っていてくれたからだった。
そして、そのことを朝食時に咲世子に話したら、咲世子がルルーシュにナナリーが寂しがっていることを話してしまったと白状したのだった。
勿論、旅行の許可を出したときの顛末を含めてだ。
この時、ナナリーは多少天然な所はあるが自分達に誠心誠意仕えてくれているのだから、やはり咲世子は信頼できると思った。
「んじゃ、結構な人数になるなぁ。そうなると大きいホテルじゃないと無理があるな」
リヴァルの所感を受けて、ミレイが人数を数え始めた。
「えっと、中等部が、ナナちゃんにアリスちゃん、ダルクちゃん、アーニャにロロの5人か」
「ミレイちゃん、高等部はすごく人数が多くなっちゃうよ」
「まずは男が、俺とルルーシュ、スザクにジノと、4人か」
ニーナの言葉を受けて、リヴァルがまず男子の人数を数え始め、それを引き継ぐようにシャーリーが女子を数え始めた。
「えっと、私に会長、ニーナにカレン、最後にユフィと5人ね。となると、総勢14名って多すぎじゃありません?」
シャーリーが数えた人数にミレイが訂正を入れた。
「サンチアとルクレティアも、護衛だから二人も追加してね。だから16名ね」
ミレイの言葉をユーフェミアが更に訂正した。
「あ、今回の旅行にお姉様も護衛つきで参加しますから」
「そういえば、C.Cさんも参加するって言ってましたよ」
ナナリーがユーフェミアの言葉を引き継いで、更に追加要員を言った。
そして、初めて聞く名にシャーリーは疑問に思って、確認した。
「C.Cさん? 誰なの?」
「お兄様のお知り合いで、枢機卿の地位に就いてらっしゃって、お兄様の仕事を手伝っていらっしゃいます」
ナナリーの答えで、ルルーシュの仕事関係の人だとは判ったが、枢機卿と聞き覚えの無い言葉が出たので、更に疑問に思って問い返してしまった。
「枢機卿?」
「ああ、庶民には馴染みが無いか、俗世の権力には直接関係はしないが、その権威は皇帝陛下に次ぐと言われる地位なんだ。
だから、ある意味このエリア11で一番偉い人と言えるかもしれないな」
ジノがシャーリーや周りの人間に判りやすいように説明した。
「ルルーシュのやつ、そんな人と仕事してるのかよ」
「ええ! そんな偉い人がこの旅行に参加するの!」
「ミレイちゃん、そんな人が参加するなんて、大丈夫なのかな」
それを受けてリヴァルとシャーリー、ニーナが驚いてしまった。
ミレイは豪華メンバーの追加にも、動じずに落ち着いて発言した。
「ふむ、そうなると政庁からの追加人数は、何人になるのかしら?」
「えっと、お姉様にギルフォード卿、ダールトン将軍にC.Cさん、それにナナリーのお世話ががりとして、
咲世子さんも行きますから、5人ですね」
ユーフェミアの言葉を聞いて、今まで黙って話を聞いていたカレンが発言した。
「そんなに重要な人たちが一箇所に集まって、どこかに行くなんてテロの対象になったりしないの?」
カレンの発言を聞いて、生徒会メンバーが不安になったがアーニャが冷静に答えた。
「逆に重要人物を一箇所に集めて、護衛を厚くすることによって安全を高めようとしてる。
聞いた話では、テロに遭うことが前提で護衛を連れて旅行に行くことになってる」
それを聞いたニーナなど、露骨に怯えてしまった。
「大丈夫ですよ。ラウンズと専任騎士に将軍、そして専門部隊が護衛に就くんですもの、たとえテロに遭ってもすぐに鎮圧しますし、
安全で大丈夫なようにお姉様とルルーシュが考えてくれたんですから」
そんなニーナにユーフェミアは優しく声をかけた。その声を聞いて、ニーナは落ち着いていった。
「そうですね、ありがとうございます」
ニーナが落ち着いたのを確認して、ミレイが纏めるように言った。
「そうなると総勢21名の大所帯になるわけね。総督閣下が関わるとなると、こっちで勝手にいろいろと決めるわけにはいかないか」
「そのことでしたら、お兄様が会議室を取って話し合うから政庁に来て欲しいって言ってました」
ナナリーの言葉を受けて、リヴァルは疑問に思った。
「全員で?」
「ええ、全員で」
リヴァルの疑問はユーフェミアが楽しそうに答えてくれた。
「んじゃ、生徒会の仕事も無いし、アリスちゃん達を呼び出して、早速お呼ばれしますか」
ミレイの言葉を受けて、それぞれが行動を開始した。
初投稿(09/05/22)