「ルルーシュ、サイタマゲットーのテロ組織撲滅。これは前にコーネリアがやった住民ごとの殲滅が一番効率の良いやり方だぞ。
テロ組織、いやレジスタンスグループとは一般市民が武器を持っただけの民兵達の集まりなのだからな」
C.Cの言葉を聞き、ルルーシュは冷静に言葉を返していた。
「確かに、その場で組織を殲滅するには効率は良いが、組織を撲滅する手段とすると、あまり効率が良くないな。
何故なら、力によって抑えつければ、新たな民兵達をレジスタンスグループに補充させることになるのだからな」
「ほう」
C.Cは面白そうに相槌を打ち、話を続けさせた。
「前にナナリーが総督をしていた時に、エリア11は矯正エリアから途上エリアに格上げした。
カラレスが総督をしていた時よりも、簡単にな。何故だと思う?」
「お前が蓬莱島に不穏分子を総て連れ出したからだろう」
そのC.Cの答えにルルーシュは頷いた。
「それもある。だが、それ以上にナナリーの傍にスザクが居たことが効果的だったんだよ。
目に見える形で、自分達も従い努力すれば報われる、そう思われたこと。
そして、ナナリーが生活環境の向上等で、日本人達の不満と不安を解消したこと。
これらによって、抵抗するより従ったほうが良いと、残った日本人達に思わせることが出来たから、生産性や治安が上がったのさ。
つまりだ。ゲットーの住人にレジスタンスが味方でなく、敵であり。ブリタニア軍が敵でなく、味方であると思わせれば良いのさ。
そうすれば他のゲットーのテロ組織も撲滅できる。」
「ふむ、これからのコンセプトは、正義の皇帝ならぬ正義の副総督か?
しかし、それはこれからの戦略的な対応だ。このサイタマゲットーのテロ組織撲滅とは関係が無いぞ」
ルルーシュはC.Cの指摘を受けて、答えた。
「そうだな。今回は穏健に炙り出して行こうと思う。
まずは、指定した時刻までに民間人たちをゲットー外延部、G1ベースの近くにでも集めさせよう、監視付きだがな。
この時の誘導時には決して攻撃を仕掛けてはならない。テロの対象になりやすいから、ナイトメアをメインに使って誘導する。
指定した時刻になったら、ゲットーを一斉攻撃する。このときにはテロ組織もこちらに対抗する準備も終わっているだろう。
まあ、先の民間人に紛れて逃げるならそれで良い。今回はサイタマゲットーのテロ組織を撲滅するのが目的だからな。
そこから先の対応は、先ほどの戦略で対応すれば良い」
C.Cはルルーシュから今回の対応を聞いて、思ったことを口にした。
「そうか。今回は策は練らないで良いのか?」
「ああ、指揮系統、錬度、装備、そして数。この総てが勝っている、下手な小細工は必要ないだろう」
ルルーシュの答えにC.Cは納得して、頷いた。
コーネリアはルルーシュより、今回のサイタマゲットーの対応と今後の戦略を聞いて、満足していた。
「なるほど。組織を殲滅するのでなく、組織の存在意義を失わせていくのだな」
「その通りです、姉上。ゲットーの住人に敵は我々でなく、テロ組織だと認識させるのです」
共に聞いていたダールトンがルルーシュに対して、自身の疑問を投げかけた。
「そうなりますと、今回のサイタマゲットーのテロ組織メンバーを大量に見逃すことになりますが、よろしいのですか?」
「構わない。このエリアに居る住人総てに、我々が強圧的な支配者でなく、民衆の守護者であると言うことをアピールするのが優先だ」
その場に居る騎士達へのパフォーマンスとして、彼らの好む言葉で今回の行動と、これからの立ち位置を説明していく。
「我らが、ナンバーズに庇護と安寧を与えているということを、判りやすく理解させるのですね」
純血派の代表というより、アッシュフォードに次ぐルルーシュを後援する派閥の代表として会議に出席していたジェレミアは、
納得したように呟いていていた。
その呟きを受けて、ルルーシュは更に発言した。
「そう、だから今回の作戦では、抵抗する者達以外は無傷で確保しなければならない」
「皆の者、今回の作戦の概要と今後の方針が判ったであろう。では、各自準備を行え」
コーネリアはルルーシュの発言後、騎士達が作戦を理解したのを確認して、解散させることにした。
「Yes,Your Highness」
コーネリアの号令に一同は返事をして、解散していった。
コーネリアの傍にはギルフォードとダールトンのみが残っていた。
そして、その二人にコーネリアは意見を求めた。
「ルルーシュの今回の対応をどう思う?」
それを受け、まずダールトンが意見を述べた。
「そうですな、まるで軍を率い、そして統治を行った経験があるような手並みでしたな」
次にギルフォードが意見を述べた。
「ダールトン将軍の言うとおりに、やけに手馴れてましたね。
更に言えば、会議のときに騎士達の不満をかわし、戦意を上げるパフォーマンスも馴れていました」
二人の意見にコーネリアは満足しつつ、自分の意見を言った。
「確かに二人の言うとおり、手馴れていたな。
ユフィに聞いた話では、アッシュフォードでイベントを行うときは大体ルルーシュが指揮を取っていたそうだ。
その為に、人を使うことに馴れているのだろう。
アッシュフォードは良い環境と教育をルルーシュに与えたのだな。これだけでも功績ものだな」
二人はコーネリアの言葉を聞いて、納得していた。
「しかし、どちらかというとルルーシュは前線指揮官ではないな」
コーネリアの言葉を聞いて、ギルフォードは疑問を感じた。
「姫様、先ほどの会議では、ルルーシュ様は指揮官としても優秀な方だと感じましたが?」
「確かに優秀すぎるほど優秀だが、あれは組織を作り上げ運営していくタイプだな」
その言葉を受けて、ダールトンが意見を述べる。
「なるほど。そうなりますと、これからはルルーシュ様には、このエリア11の運営を任せるのですか?」
「ああ。私が中華連邦とテロ組織を相手取り、ルルーシュがこのエリアを統治する。
ルルーシュにとって良い経験になるだろう。なに、失敗しても我らがフォローすれば良いしな」
この時、コーネリアはブリタニア皇族としての悪癖である、懐に入れたものに対する無条件の信頼と寛容さをルルーシュに対して見せていた。
「はあ」
シャーリーは生徒会室で溜息をついていた。
「どうしたの、シャーリー。溜息なんてついちゃって」
シャーリーの溜息を聞いて、リヴァルが話しかけた。
「いや、ルルの初陣ってことは戦場に居るんだよね」
「まあ、そうだな」
シャーリーの言葉にリヴァルは頷いた。
「戦場ってことは、危険なんだよね。怪我とかしないかな?」
そんなシャーリーの不安を消し去るようにユーフェミアは語った。
「大丈夫ですわ。戦場といっても、お姉様の傍に居るはずですから、危険は無いはずです」
そんなユーフェミアの言葉をジノが否定した。
「あれ? コーネリア様って姫将軍として有名な方で、パイロットとしても一流の方だから最前線に出るのでは?」
「ええ! それじゃ、ルルが危険じゃないですか!」
ジノの言葉を聞いて、シャーリーは慌てて叫んでしまった。
「シャーリーさん。コゥ姉様がお兄様の近くに居ないときは、コゥ姉様の専任騎士であるギルフォード卿がお兄様を守ってくれますし、
お兄様の護衛として、総督代理だったジェレミア卿もいらっしゃいます。
何よりお兄様の傍にスザクさんがいらっしゃるのだから、ご安心ください」
「うん、そうよね。ルルのことをみんなが守ってるんだし、何よりスザク君が傍に居てルルを守ってるんだから信頼しないとね」
シャーリーが安心したのを確認して、ナナリーはジノのに向けて言った。
「ジノさん、シャーリーさんを不安がらせるようなことは、あまり言わないでくださいね」
「すみません」
ジノは素直に謝った。
リヴァルは空気を換えようを、違う話題を振ることにした。
「しかし、専任騎士かぁ。ルルーシュも副総督になったし、専任騎士を選ぶのかなぁ」
その話題にジノが真っ先に食いついてきた。
「そう、専任騎士。私もラウンズの誘いに乗らずにもう少し待てば、ルルーシュ先輩の専任騎士に成れたのかも」
「お、ジノはラウンズに不満でもあるの?」
リヴァルはジノが話題に乗ったので、さらに話題を広げるために疑問を投げかけた
「いやいや、最強の12人の騎士ってのも良いけど、騎士として一人の主に忠誠を尽くすってのも憧れるんだよ」
「へえ、そうなんだ。ってことは、さしずめ現状ではスザクはルルーシュの専任騎士代理ってところか」
リヴァルが出したルルーシュとスザクの関係に、今度はユーフェミアが食いついてきた。
「私はそのまま、ルルーシュの専任騎士にはスザクがなるのが良いと思うんですけど、お姉様が難色を示しているんです」
「あ~、ルルーシュの専任騎士は実は結構微妙な問題でねぇ」
ユーフェミアの言葉にミレイが続けて発言した。
「微妙って、どういうことです?」
シャーリーが、ミレイに問いかけた。
「ほら、うちってルルーシュの後援じゃない。同じ後援に純血派があってね。
どっちが専任騎士を出すかで、結構ピリピリ来ちゃってるのよ。コーネリア様もそれを知ってるから、
どっちの派閥の色が付いてない騎士を専任騎士にしたいらしくって、三つ巴で紛糾してるのよ」
「あれ? でも、それなら一層スザク君が適任なんじゃ?」
シャーリーがミレイの説明で思ったことを口にした。それを受けてニーナがポツリと呟いた。
「スザク君、イレブンだから」
「あちゃー、そういうことね」
リヴァルが大げさに納得して、暗くなりそうだった空気を払拭した。
「扇さん、大丈夫なんですか?」
携帯から扇に連絡を入れたカレンは、扇が出てきた瞬間に早速問いかけていた。
「カレンか。ああ、大丈夫だ。埼玉には南達の三人しか行ってない状態だからな。
南たちの話だと、今日にレジスタンスグループのリーダーと顔合わせだそうだ」
その言葉を聞いて、カレンは驚いた。
「え! それじゃ危険じゃないですか?」
「いや、大丈夫だと思う。我々と合流するか決まっていない状態だから、真っ先に南達を逃がすと思う。
それに、顔合わせが終わって埼玉から出たときに、包囲が開始された可能性もあるからな」
カレンは扇の自分を安心させようと助かる可能性を述べていることを感じた。
「扇さん。状況がはっきり判るまでアジトで待っていても良いですか?」
扇はカレンの意見に、断っても無理矢理、来るだろうと思ったので許可を出した。
「今回は緊急事態だし構わないが、遅くなるようだったら、家に帰して連絡を入れることにする」
「判りました」
カレンは扇に許可されたので、新宿にあるアジトに急いで向かうことにした。
初投稿(09/05/17)