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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 3-05 血塗れ(ガチ
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:670e2070 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/04/15 13:29
+
 飛んで、降りて、暴れて、吠えて。
 人がぶっ飛び、家が壊されて、正に化け物としか言いようがない魔獣の鷹。
 大きさは、小さな家みたいな感じだ。
 でっかい版のアンクーより2回り小さい位の大きさだ。
 大きいよね。
 あー
 おっきい版でアンクーが居れば楽だったかしらん。
 身体を大きくする為には魔力の吸収を1週間位は必要だって話だから、無いものねだりだ。

 なので怪獣大戦争はお預け。
 人間が戦わなきゃならない。
 主となるのは、この辺りを統治統括する<第4聖都>からの兵隊さんになる筈だが、囲んじゃいるけど、中々に厳しそうだ。
 逃げ出す時間くらいは稼いでくれそうだけど、それだけだ。
 であれば、さてさて、どうするべきか。


「ビクターさん!!」


 呼ばれてみればエミリオ君、やる気満々っぽい表情で武器を掲げている。
 だよね。
 ミリエレナはバスローブっぽい薄着で大剣を背負ってる。常在戦場バーサーカー・ハートは羞恥心を克服するのか。
 だよね。
 と、フェルとイゾッタ嬢とかまで居る。

 武器を持ってたり持って無かったりするけど、そのそれぞれの顔だけは雄弁だ。
 嗚呼、義侠心に不足しない連中だよ、本当に。
 正規軍に任せて逃げるってな選択肢は端から除外か。

 拳骨を握る。
 親指を立てる。



 逃げ出す人の流れに逆らって行く。
 魔獣は広場に居る。
 広場になった場所に。
 暴れ回って宿や店、民家が潰れた場所で威風堂々たる塩梅だ。
 家主さん達には悪いが、暴れるには良い。


 とは言え、先ずは参戦への挨拶。
 この場で一番、立派な格好している人を探す。
 居た。
 包囲の兵とは別の予備な集団、そのやや前に居る板金の全身鎧を纏って馬に乗ってるのが指揮官さんだろう。
 近づく前に声を掛ける。


「指揮官殿!」


「何かっ!?」


 声に余裕が無いのは圧されているからだよね。
 魔獣を囲みつつも押しきれないと言うか、兵隊さん腰がひけているしね。
 逃げないだけ立派だけど。


「我らに参戦の許しを頂きたい!」


「アレを見て、正気か?」


 立派な髭を蓄えた顎で指される魔獣。
 丁度吠えた。
 包囲の兵隊さん、腰が更に曲がった。
 気持ちは判る。


「我ら、腕に覚えあり!!」


 引き出したショートソードを掲げて見せる。


渡りの冒険者カジュアル・レイバーか、良いだろう好きにやれ。俺の、ノルヴィリス銀旗準騎士がジェルガ・ジェンガルの名で報奨を約束してやる。倒してみせろ!!」


「お任せあれ!」



 指揮官、ジェンガさんってば少なくとも渋ちんでは無い模様。
 人の動かし方も判っているっぽい。

 さてさて。
 戦うのは俺、エミリオ、ミリエレナ、フェルとレナータさんだ。
 兵隊さんの輪の中に入る。
 相対する。


「フェルさん、さっきの通りに!」


「おう、先は俺らが貰うぞ!」


 2班に分かれて戦う。
 ゲームじゃあるまいし、お互いの戦闘スタイルや武器、武器の殺傷半径その他も良く分らないのにデカブツ相手に多対1で連携しての戦闘は危ないからだ。
 一番槍を付けられない事にミリエレナは不満顔だが勘弁してほしい。


「オゥ!!」


 真正面から戦いを挑むフェル。
 武器はフレイル、というか3節棍風の武器だ。
 面白いモノを使ってる。
 横を固めているレナータさんはオーソドックスなハルバードだ。
 只、穂先のアックスな刃の部分が通常の2倍はありそうな化け物だが。


「ヒィィィィィッ!!」


 フレイルが叩き、ハルバードが斬り潰す。
 何というか、暴力的だ。
 いや、武器で闘う時点で暴力なんだけど、その上でパワーで圧す感じが何とも凄い。
 偉丈夫のフェルと同じレベルでレナータさんが戦えているのが特に。


「凄い! 流石は柴護師!!」


 エミリオが感嘆している。
 凄いのだろう、柴護師って立場も。
 取りあえずあの2人、トールデェ王国でも切り札級はまだだが主力級になれる感じだ。
 中々に凄い。


「ですが………」


 言葉を濁すミリエレナに頷く。
 押しきれない。
 体毛と言うか羽毛が凄いからか、フェルのフレイルも痛打にならなければレナータさんのハルバードも斬れて無い。
 厄介だ。

 立ったまま吠えて、蹴って、羽を振り回す。
 畜生め。
 どう攻略してやろうかと思った時に、来た。


「てぅっ!?」


 フェルが蹴飛ばされて、文字通り飛んできた。
 凄い脚だ。
 筋肉質だ、焼けばきっと旨いぞ、喰ってやる。


「交代しよう」


「おぉ、なら少し休憩するわ」


「任された」


 選手交代、さぁ殴り合おう。




「Kieeeeee Tu!!」


 踏み込んで、斬る。
 斬れない。
 そもそも当たらない。
 最初の1発だけは当てたけど羽根を切っただけで終わったし、それ以降は避けられっぱなし。
 素早い。
 エミリオ、ミリエレナとの挟み撃ちを仕掛けちゃいるが、良く動く。
 挟みきれない。
 その上で射程リーチの差で届かない。

 俺のショートソードも、エミリオのロンゴミアントロングソード届かない。
 ミリエレナのグレートソードだけが射程にはおさめられてるが、足の速さで追いきれない。
 湯上りで身の防具どころかローブ姿、ブーツも戦闘用ではなくサンダルだ。
 家々の破片その他が散らばるこんな場所で、上手く追いきれないのも当然だ。

 踏み込み、斬る。
 斬れた。
 空が。
 魔獣の鷹野郎、バックステップで避けやがった。
 足の長さがリーチと瞬発距離の差になる。
 クソッタレ。

 どうしてくれようか。


「キィィィィッ」


 嗤ってやがる。
 ムカつく。
 遊んでるのか。
 ムカつく。
 翼の中頃に生えてる爪(!)をカチカチっと叩き合わせて煽ってやがる。
 メッチャムカつく。

 エミリオとミリエレナが連携してるけど、迫り切れない。
 クソ、どうすりゃぁ良い?
 歯がゆい。


「おう、ビクター」


「フェルさん?」


 息を整えたかフェルが出て来る。
 あ、レナータさんはエミリオたちの方に参加している。
 お互い、間合いが判ってか、危なげは無い。
 切っ先が届いてないのが残念だ。


「お前の剣、アレの羽根を切れるよな?」


「届けば、届けば叩き切ってみせますよ」


 1足を伸ばす魔法でもあれば別だが、今の足では届かない。
 いっそ攻撃魔法であれば別だが、俺にそれは無理。


「なら、俺の話に乗れよ」


「は?」


 フェルの話はシンプルだった。
 突っ込んで鷹の足を潰す。
 潰したら俺が突っ込んで首を掻っ切る。

 実にシンプルだ。
 間違いも無いし、不可能では無い。
 不可能ではないが、かなりヤバい戦法だ。


喰らうぞ● ● ● ●


 思わず素の言葉が出た。

 さっきまでフェルとレナータさんは鷹の上半身というか頭を狙っていた。
 足を狙ったら鋭い嘴を打ち込んで来たんで、だ。

 ゴッツイ奴のゴッツイ一撃。
 だが、そのリスクをフェルは犯すという。


「おう、ありゃ凄いんで痛そうだ。居たそうだが耐えられそうにない訳じゃ無い」


「正気か?」


 被弾覚悟の特攻かよと、マジマジと見た。
 男臭く笑ってる。


「正気さ。お前の剣が信用できるからの荒業バクチだ」


「信用してくれてどうも!」


「おう」


 フェルがヘルメットを被った。
 兵隊さんのを借りて来たっぽい。
 いや、本気だ。


「だが2発目3発目は辛いから手早く頼むぜ」


「任せろ」


 拳骨と拳骨をぶつけ合う。
 任された。


「おっしゃーっ!!」


 駆けだすフェル。
 3節のフレイルを鞭の様に振り回しながら突貫していく。
 後先など一切考えてないと分るその勢いに、思わずと魔獣が一瞬、動きを止めた。
 その一瞬を逃さず距離を詰めるフェル。
 慌てて嘴で迎撃しようとする。
 掠ったか血煙が上がる。
 止まらずに踏み込む。
 漢や。

 魔獣な鷹の注意をフェルが集める中で、俺も助走を始める。
 右の剣を背負い、左の剣は緩く前に構えながら奔る。


「でぇい!!」


 フレイルが丸太よりも太い脚を叩く。
 見てわかる程に肉に食い込んだ。
 折った、折やがった。


「ピィィィィッ!!」


 甲高い悲鳴、無茶苦茶に振り回された翼の爪がフェルを弾いた。
 ぶっ飛ばされた。

 ありがとよ。
 その機は無駄にしねぇぞ!!

 踏み込む。


「Kiiieeee!!」


 右の剣で斬る。
 暴れてさらされてた首を、斬る。

 羽根を断ち、肉を断つ。
 噴き出す血。


「Eii!!!」


 出来た傷、道に左の剣を叩きこむ。
 刺突。

 柄までショートソードが刺さる。
 だがまだ死なない。
 痛みに暴れ出しやがった。
 逃がすかよ。

 咄嗟に、両の剣を手放して鷹の首を掴む。
 しなやかな羽毛は血塗れた手では掴みづらいが、そこは馬鹿握力でカバー。
 登る。
 登る。
 腕の力だけで首に跨る。

 暴れ方が酷くなった。
 うん、判るか。
 死が。
 怖いか?
 俺は優しいから直ぐに終わらせてやる。


「Siiiii」


 舌を噛まない様に歯を食いしばりながら吠える。
 両手に8番9番、予備のショートソードを召喚する。
 突き刺す。
 2本とも柄まで突き刺す。


「ピィィ!? ピィィィィィィ!!!」


 暴れ方が激しくなったがまだ死なない。
 ペネトレーターを出す。
 分厚く鋭い刃先は、熱したナイフがバターに刺さるように沈んでいく。
 ロングソード(トウチャンソード)も刺す。
 コッチは骨に当たったか、半分くらいまでしか差し切れなかった。
 残念。


「ピィィッ! ピィッ!!」


 首を振る力が落ちてきている。
 足元でエミリオやレナータさん達も暴れる足に斬りかかっている。
 しろがねが太ももにかじりついている。
 だが、まだ死なない。
 迷惑な奴。
 柄まで差し込んだペネトレーターを動かそうとするが、骨に引っかかってか動かせない。
 おのれ、デカい図体相手にはショートソードの刃は短かったか。
 良いだろう、とっておきだ。
 使いたくないって意味での、とっておきたいブツコングナーだ。


「4番!」


 ショートソードはイメージするだけで出せるが、コイツはまだだ。
 簡単に呼べる程に使いたくも無い。
 だが、今は有難い。

 槍、馬鹿槍のコングナー。
 魔力を喰わせる。


――第1機能ブレード起動アクション


 穂先が白く輝く。
 他の機能が勝手に起動する前に、死ね。


「Kieeeeee!」


 穂先を脳天に向けて突き刺す。
 障害も何もなく突き刺さる。


「Eiii!!」


 俺は優しい男なので、即、昇天するように穂先を掻きまわす。
 くたばれ。











異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
3-05
血塗れ(ガチ











 一戦終って腰を下ろす。
 流石に少し、疲れた。

 頭っから鷹の血を浴びたので、チョッとだけ周りの人が離れてます。
 寂しい。
 何故かしろがねがペロペロしてきます。
 困る。


「スゲェな」


 フェルが感心したように笑ってる。


「他人の事、言えるかよ」


 2度ぶっ飛ばされても打撲と擦り傷だけ。
 嘴のも、ほぼほぼ擦り傷級というのは、ホントに頑丈な奴だ。
 胆力と言い、凄い奴だ。



「言葉通り、見事であった」


 指揮官さんのジェンガ・ジェンガルさんが来る。
 馬から降りてヘルメットを脱いでいる。

 壮年のチョイと手前、まだ若い感じの人だ。
 立ち上がって、礼をする。


「どういたしまして」


 握手。
 俺らの一人一人と握手する辺り、礼節を弁えたお人の模様。

 尚、最後の握手に俺がなったのは当然だろう。
 血塗れた手だしね。


「所で、名前を聞いてなかったな勇士ボランティア


「ビクター・ヒースクリフ、トールデェ王国から来ました」


「トールデェ王国のビクター!?」


 ジェンガさんの従者が大声を上げた。
 びっくりするがな。


「も、もしかして、ルッェルン公国を__ 」


「知ってるのか、カレル?」


 上司の言葉に反応もする事無く、俺を見ている。
 あー
 これはエミリオの類ともさんだ。
 バルトゥールさん、ここら辺までも来てたのか。
 凄いぞ吟遊詩人マスコミュニケーション


「ああ、通って来た● ● ● ● ●よ」


「と、<東方武侠>だぁ!!」


 あ、そっちの字名なんだ。





 <東方武侠>と<鉄壁>、そして<聖女>の名前は良く広がってた。
 カレルと呼ばれた従者さんと同世代の兵隊さん(多分、酒場仲間)達が凄い盛り上がってた。
 対してジェンガさん達の、少し年齢層高めの集団はフェルの名前で盛り上がった。


「おぉ、流石は噂に名高い柴護師、<暴風>殿か」


 尚、イゾッタ嬢が出た瞬間、皆、跪いていた。
 アレ、そういうレベルの人なの? 七媛って地位。


「献身、ご苦労」


 言葉遣いといい、超偉そうな雰囲気。
 超然とした態度だ。
 質素なバスローブっぽいのを羽織っただけの格好だが、何か凄い。
 とは言えストンなので、艶姿と言うにはチト、足りない。
 控えて立つクローエさんみたいに凸凹凸(ぼんきゅぼん)ならまだしも円筒じゃ足りない。
 色々と。
 或は、レナータさんみたいに同じ格好(ニア・バスローブ=スタイル)で恥じらう雰囲気があれば別だけど、そこも無い。
 無いのだ。
 権力者側だよね。
 配偶者以外には見られても恥ずかしくも無いって位の感じだ。
 下手すると、マッパを晒しても威風堂々していそうだ。

 目が合った。
 睨まれた気がした。
 頷いておく。
 誤魔化せ誤魔化せ誤魔化そう(ジャパニーズ=スタイル)



 一通り騒いだ後に恩賞の話が出たんで、強く要求しました。
 風呂を。


「乾燥してきて痒くてですね」


「ああ。屯所にしている宿の風呂場を用意しよう」


 後、洗濯まで請け負ってくれた。
 地味に有難い。
 血で汚れ過ぎた服を洗うのって、ホントに大変だから。


「俺は飯! 飯くれ!! 肉だぞ!?」


 喰いかけで暴れて腹が減ったと叫ぶのはフェルだ。
 あイゾッタ嬢が、さっきまでの威厳を消し飛ばして両手で顔を隠した。
 恥ずかしいか。
 ですよね。
 その怒りがフェルに投げつけられた。
 実行はクローエさんだ。


「あたっ! 何しやがるっ!?」


 グリっと足を踏む。
 つま先を踏む。
 ありゃ痛そうだ。


「イゾッタ様の考えなさい!!」


「だけど食事は大事」


「レナータ!」


「空腹だと力が入らない。いざと言う時の為に食事は大事」


「物には言い方というものがありますっ!!」


「現実には勝てない」


「空腹にもなぁ」


「貴方たちぃぃぃ!!」


 レナータさん、フェルと並んで腹ペコキャラ系の模様。
 面白くて善哉善哉。


 尚、エミリオやミリエレナ達は、恩賞は辞退しました。
 気持ちは理解する。
 それぞれの神様って義勇と博愛に不足が無いからね。





 ジェンガさん達の部隊が屯所にしていたのは、この町でも一番大きな宿だった。
 半公営で、町長が管理しているとの事だ。
 団体さん向けで、軍も泊まれる様にと用意されているのだという。

 今回、輜重とかの後方な人員も含めて100人からの大団体で来たんで止まり切れず(キャパ・オーバー)、宿の周辺に天幕を張って過ごしているとの事だ。
 宿の周囲にもかがり火を焚いて、酒を飲んでドンチャンとやってる。
 楽しそうだ。
 参加したい位だ。
 だが残念、俺らはジェンガさんと町長さん主催の、チョイとハイソな感じの宴会に呼ばれている。

 だが先ずは風呂だ。
 血を洗い流しておかないと臭いもベタつきもたまらない。
 取りあえずサッパリして、後は使った剣と槍の手入れをしながら宴会と言うか夕食を待つ。
 腹減った。
 流石にどれもそれなりの値段で揃えたりとか、奉納品とか国宝なんで刃毀れなんてしていない。
 見事見事。
 後、親父殿が手配してくれてた護身剣(ロングソード)も、刃毀れはおろか刀身に歪みが無い。
 良い剣だ。
 6剣1槍。
 その全てを丁寧に血を拭い、汚れを取っていく。


「大量に持ち歩いてるな」


「予備が無いと怖くてね」


 刃毀れ紛失、旅の途中で武器が失われては大変なんだ。
 怖い。
 本気で。


「あぁ、そういう事か」


「そういう事」


 その点で言えばフェルは羨ましい。
 鈍器なフレイルだと故障破損なんて先ず無いだろうし。


「そうでもないぞ。俺の武器って少し特殊でよ」


 見てなっと言ってフレイルの両端側を握って回した(● ● ●)
 するとどうだろう。
 2つの接合部が内側へと収まって、一本の棒となった。
 鉄棍、とでも言うべきか。


「面白いだろ?」


「手が掛かってるな」


「おお。ドワーフの鍛冶に頼み込んで作って貰ったんだ。スゲェだろ?」


「確かに凄い」


「ま、お蔭で少し派手に戦った後は手入れが大事なってくるんだ」


 顔一杯に面倒くさいと言っている。
 しかし、機械的な何かで三節棍と棍へと変わる模様。
 これは凄い。

 持たせて貰った。
 重い。
 純鉄製との事で、これを自在にブン回して戦うフェルは少しおかしい。
 後、元が3節棍とは思えない程に振り回して剛性感がある。
 これは業物だ。
 フェルがドヤ顔してくるのも判るというモノだ。



「ビクターさん、来てほしいって!」


「お、判った」


 デカいけど質素な装飾の食堂は、布で飾り付けられて少しだけ華やかだ。
 コッチも割合に気楽な雰囲気だけど、イゾッタ嬢が居るんで、何というか、背筋の伸びる雰囲気である。
 面倒くさい。

 ま、酒と飯が旨いので文句は無いが。



 一通りに飲んで喰って、喋る。
 主として会話するのはイゾッタ嬢で、次点で<聖女>の字名(カンバン)持ちのミリエレナ。
 ハイ・エルフのエメアさんも話し掛けられてはいたが、あの独特な会話のテンポに相手が調子を崩して会話が続いていない。

 とは言え、3人とも外見の良さは一等なのでじい様から若いのまで群がっている。
 凄い。
 変な気(スケベ・ハート)を起されちゃ困るのでと思っていたが、良く見るとクローエさんもレナータさんも酒に手を付けてない。

 姿勢を見れば判る。
 何かあれば直ぐに動ける様にしている。
 凄い。
 侍女の鏡か。


「食べれてる?」


「ん、適当に食べてる」


 レナータさん、視線はイゾッタ嬢の方へ向けながら緊張感の無い返事。
 凄いな。
 常に動ける様にしながらも落ち着いているって中々に出来るモンじゃない。
 後、身の回りに食べやすい、肉中心の料理をかき集めている。
 凄いな。

 あ、クローエさんがコッチ見て溜息をついた。
 判る。


「腹が減っては動けない。これもイゾッタの為」


「イゾッタ()と呼びなさい」


「今はお忍び中」


「違うでしょ!?」


 思わず叫ぶクローエさん。
 掛け合い漫才みたいだ。
 チョッと、可愛い。

 おひねりを上げたいレベルで。


「仲の良い事で」


 嘆息にアルコールが混じっているのが、自覚出来る。
 飲み過ぎたかな。
 抑え気味にしている筈なんだけど。
 弱くなったのかな。
 最近、呑んでなかったし。


「ノルヴィリス、信じて良い」


「納得しとく」


 一応、ね。

 <白>の身内同士でアッチャコッチャは嫌な話だが、<白>と言っても所詮は人間だ。
 他の諸族も居るけど、人間が主体だ。
 殆どだ。
 なら、油断何て出来るモンじゃない。
 とは言え、常に猜疑と緊張をしていても疲れるだけだ。
 ミリエレナ達を見る。


「ん?」


 居ない。
 数を確認してみる。
 矢張り、居ない。
 先ほどまで適当に会話と言うか、相槌を打ってたエメアさんが居ない。


「外に出られました。アンクー様を連れていかれています」


 打てば響くと言わんばかりに、クローエさんが俺の動きを見て答えを先に返してくる。
 やるもんだ。
 コレが侍女か。
 我が家のノウラって、戦いの先読みはするけど、他人への以心伝心ではこのレベルには達して無かったよなぁ。
 人間、得手不得手ってのはあるからどうでも良いけど。
 よし、動こう。


「ちょっと見て来る」


「いってらっしゃい」


「有難う」


 アンクーも居るなら何かがあるとも思えないけど、どうせだ。
 酔い覚ましにも外の空気を吸いに出てみるかな。



 チョイと探せばエメアさん、居た。
 テラスに出て空を見上げている。

 満天の星空、綺麗なもんで。
 それを見上げる美少女(外見)エルフ。
 絵になるもんだ。
 絵心は無いんで書けないけども。

「ピュッ」


 俺に気付いたアンクーが、エメアさんの頭の上で声を上げた。
 エメアさんがコッチを見た。
 瞳って銀色なんだ。
 スゲェな。


「なれか。何用であるか?」


「あ、いや、何をしているのかなと思いまして」


「星を詠んでおった」


「ほぉ」


 そう言えばエメアさん、キラキラとした円盤状と言うか? な何かが身体の外側を回っている。
 魔法陣って奴ですか。
 カッコイイなぁ。
 金糸の髪に映えて、夜の妖精ってな塩梅だ。


「試練は終ったと?」


「さにあらじ」


「え?」


「今だ試練、始まらじと」


 要するに、鷹は前菜(オードブル)とな。
 うわーい。
 酔いが醒めるわ。


「昼は良き益荒男ぶりであったが、勇士も試練を恐れるか?」


「いや………」


 どう言えば、と悩めば笑われた。
 あ、でじゃぶー
 マーリンさんの目つきだ。
 笑われているんじゃなくて、微笑ましく見られている感だ。

 歳の差からだと、子供と大人よりあるからな。


「思うた事、口にすればよい」


 頭を掻く。
 痒くは無いけど、こそばゆい。


「何が来ても立ち向かうだけ! です」


「はっはっ。良い。良い覚悟である。励め」


 多分、俺、年上には勝てないな。
 マーリンさんにも母親様にも勝てなかった。
 多分、エメアさんにも勝てないのかもな。


「ピャッ!」


 何だ、アンクーめ。
 絶妙なタイミングで声を上げやがって。


「頑張ります」


 ええ、頑張りますよ。

 あー メインディッシュが楽しみだ!!!(ヤケクソ






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