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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:e3510fd3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/02/04 09:15
+
 (ゴングナー)を掴む手から、黒いナニかに浸食されて行く。
 喰われて行く?
 吸われて行く?
 不思議な感覚、何が起きているのかさっぱり判らない。


「なっ!?」


 詳細が判らないが、判らないけどもかなりヤヴァイ事だけは判る。
 いや、違う。
 判る。
 判った。
 この感覚、魔力を喰われている?
 魔力の急速枯渇によるショック症状が、こんな感じだった。
 マジかよ。


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


 いや、それよりも敵だ。


「ゴッゴッ!!」


 主に迫って来るトロルドが。
 地響き立ててやってくる。
 来るな、頼むから。
 聞いちゃくれないだろうがな!!


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


 地を蹴って下がる。
 距離を取る、取れない。
 足がもつれた。


「っ!?」


 コケそうになって、慌てて地面を蹴って下がる。
 下れない。
 跳ねれない。


「ゴォォッ!!」


 足が殺されたら追いつかれた。


「あっ!?」


 という間に蹴られた。
 飛んだ。
 上に蹴り上げられた。
 痛い。
 後、空が__


「ゴォ!!!」


 殴られた。
 空の色を感じる前に思いっきり、下に向かって殴られた。
 叩きつけられた。
 痛い。
 蹴られた。
 横、多分横に飛ばされた。
 当たる。
 壁?
 地面?
 跳ねて、転がる。

 力が入らないんで身体が滅茶苦茶にブン回されて死ぬほど痛い。
 天も地も判らない。
 手足が千切れそうに痛い。
 クソッタレ。
 なのに槍は手から離れない。


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


「っぇぁぁぁ……」


 声に、言葉にならない。
 痛み。
 息が出来ない。

 振動。
 重量物が大地を叩く音。
 奴が、近づいてくるのだろう。
 霞む目で見れば、ゆっくりと近づいてくるトロルド。
 ゆっくりだ。
 もう、勝った気か。
 クソッタレ。
 俺はまだ生きている。
 生きている限り、テメェの勝ちは無いんだよっ!!


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


 立つ。
 力を入れる。
 立つ。
 負けてやる義理は無い。
 立つ。
 死んでも負けてやるものか!!


「ああああああああっ!!!」


 吠える。
 立つ。
 睨む。

 トロルドが笑いやがった。
 嗤ってやがる。


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


 ウルセェ!!!!!
 訳の分からない言葉をゴチャゴチャと抜かしやがって。
 死ね。
 バカ槍、テメェが無思慮に魔力を吸うから死にそうなんだよ、ボケが。
 肘の先から真っ黒になっている俺の両腕。
 コングナーを手放す ―― 手放せない。
 棄てたいのに手から離れない。
 呪いかっ!
 ふざけるなっ!!
 ざけんなコラァ!!!


「魔力が欲しいかっ!?」


 欲しければくれてやるっ!!!!
 くれてやるから戦の邪魔をするなっ!!!!!


「ああああああああああああああああああああああああっ!!」


 吠える。
 吠える。
 吠える。


「ああああああああああああああ!!!!」


 吠えろ、吠えろ、吠えろ。
 気合だ!
 気合だ!!
 気合だ!!!
 魔力を流し込む。

 魔法は良く分らないけど、魔力は何となく感じる。
 というかレニーに教わった。
 余りにも魔法が判らなかったから、魔道具で感じさせられた。
 保有魔力が馬鹿レベルでデカいのに勿体ないと怒られながらやった。
 痛かった。
 電気ピリピリっぽい感じで地味に痛かった。
 だから判るようになった。
 魔力ってのが身体を循環してたり細胞に宿っているって事が。
 判っても使えなかったがな!

 そんな、雑な俺であるが流れを感じれるのでそれを捻じ曲げてみる。
 曲がるのをイメージするのだ。
 体中を循環する魔力をそのまま奔流のように加速させ、肩へ、肘へ、手へ、そしてコングナーへと流し込む。


――セ=メシヲラ=カチ(力を示せ)


 吸われるから駄目なのだ。
 勝手に奪われるから駄目なのだ。
 捨てると思えば良い。
 魔力の消費を自分が行うようにすれば、計算が出来るってものだ。


「ああああああああああああああっ!!!!」


 オラオラ、受け止めろやコラァ。
 欲しかったモン恵んでやる、跪いて受け取れ。
 そして邪魔すんな、ボケが。

 魔力を、叩きつける。


――


 何かが弾けた。
 何かを突き抜けた。


「あ?」


――ン=ニクカウ=ヨ=シイケ(継承確認) シイ=カイ=セ=ウヨチ(調律開始)


「は?」


――調律(チューニング)


「え?」


 言語不明瞭意味不明の音が、言へと変わった。
 吸われるのが止まった?


――対巨神戦闘機能(システム・コングナー)起動(セットアップ)


 声の、言葉の意味が判る。
 脳みそに響いてくる感じだ。


――第1機能(ブレード)解放(リリーズ)


 刀身に光が集まる。
 前の魔力を込めた時とは段違いの輝きだ。
 光の槍?
 白い魔槍?

 そんな事お構いなしに突っ込んでくるトロルド。
 いや、コレのヤヴァさを感じたか。


――第2機能(リンフォースマント)解放(リリーズ)


 振り抜かれた拳を割ける為に地を蹴る。
 バックステップ。
 飛んだ?
 予想の倍、いや3倍からを飛んで下がった。
 ナニ、コレ。


――第3機能(シールド)解放(リリーズ)


 距離を取ったと思ったら、モノを投げて来た。
 いや、蹴っ飛ばしてきた。
 足元の瓦礫を。
 回避 ―― の前に弾けた。
 弾き飛ばした。
 俺の左手の側に集まった光が、半透明な盾の様なものを形成し、逸らした。
 いやいやいや。


――第4機能(イナールシャ)解放(リリーズ)


 ズンドコと瓦礫だのなんだのを投げ込まれるんで、緊急回避。
 バックステップ。
 失敗。
 上がってるっぽい身体能力で飛び過ぎた。
 無防備になる空中。
 自由落下は自由じゃない ―― っと思ったら、思った瞬間に着地してた。
 何が起きた。
 さっぱり判らない。
 叩き落とされたとかそんな訳じゃ無く、ふんわりと着地した。
 いや本当に、これナニ!?


――第5機能(ザッパー)解放(リリーズ)


 混乱した頭で、でも持ち続けてるコングナー。
 その刀身が激しく光りだした。
 というか、刃先が割れて光の刃が形成されている。

 うん。
 コレ、退くわ。
 ヤバいのがビンビンに判る。
 パチパチと放電音がしてたり、小さな稲妻を纏ってる。
 本当にヤバい。
 波動砲とかストナー何とかな感じだ。

 よし撃とう。
 想像通りのヤバブツならば、ブッパした方が安全だ(多分
 臨海突破の自壊とか洒落にならないからね!!!
 頭の中のトリガーを放つ。
 叫んでみる。


「取りあえず死ねぇぇぇぇっ!!!!!」


 振り抜いた。
 距離があったけど、何となくのウィスパー・オブ・ゴーストでやってみた。
 その結果は閃光。
 そしてきのこ雲が生まれた。
 降って来る瓦礫や血、肉、それ以外の形容し難いナニカ。
 赤黒い雨。


「Oh……」


 大参事だ。
 想定外にも程がある。
 ある意味で予想通りではあったけど、ここまでと言うのは想像出来る筈も無い。
 後、怠い。
 マジ、怠い。
 倦怠感が半端ない。
 がっくりな感じで膝をついてる俺。
 後、手で上半身を支える羽目になってる。
 あの呪いの槍は手放せた模様。
 割と幸せ。
 この幸せ気分に合わせて寝たら幸せかもしれない。
 しれないけど、寝たら死ぬね。


「ギーギーギ」


 ゴブ助どもが近づいてくるのが見える。
 こんな地獄の親戚みたいな場所によくもまぁ近づけるものだ。
 俺なら全力で逃げるね。
 本当に。


「ギギギッ!!!」


 五月蠅い。
 眠い。
 死にたくない。
 死ぬならマーリンさんの胸に包まれてって決めてるんだよ、馬鹿野郎。
 だから代わりに死ね、相手をしてやる__ あ、立てない。
 身体が動かない。
 手も足も動かない。
 連戦と、魔力の急激な消費で限界ラインを超えたか。


「やれやれここまでかぁ何て言うか、馬鹿野郎!!」


 立つ。
 立て、俺。

 男なら、立たねばならぬ、何事も ―― 俳句を詠んでる場合じゃねぇっての!!


「フォォォォッ!!」


 近づいてきたゴブ助たちが噛み千切られた。


「!」


 流れ込んできた影。
 馬勢。
 ゴブ助は一気に潰された、斬られた、刺された。
 エミリオにヘイル、遊撃隊の面々。
 それにしろがねだ。
 騎兵隊か。
 確かに連中、馬に乗ってるけどなっ!


「ビクターさん!!!」


 銀色の鎧を着こんだエミリオ。
 封印させてた筈の全身鎧、着てやがる。
 返り血に汚れて、格好良い様だ。


「無事でって、血だらけですよ!? い、生きてますか!?」


 あ、うん、コレは返り血だから。
 とは言え、説明している余力が無い。
 味方の顔を見てしまってか、チト、全身倦怠感が半端なくなってきた。
 意識を維持できない。


「悪い……後はまかせる………… 」


「ビクターさん!? ビクターさん!!!」










異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
2-24
公都ルッェルン防衛戦 - 急/1










「あ” ?」


 目が覚めた。
 爽快とは言い難い目覚め。


「あ”あ”あ”」


 頭が痛い。
 身体が痛い。
 魔力の出し過ぎって奴か。
 魔力切れ死テクノブレイクなんて、戦士な俺が遣るには間抜けすぎる死因だぞ。
 あー
 頭、痛い。


「水、水が」


 似ているのは二日酔いか。
 脳みそが動かない。


「あ”ー あ”ー あ”ー」


「どうぞ」


 目の前に差し出された水、水の入ったコップ。
 掴む。
 飲む。
 清涼な液体が喉を潤す。
 溢れさせながら飲む。
 飲み切る。


「お代わり、要ります?」


「ああ」


「では、どうぞ」


 また差し出されたコップ。
 掴む。
 飲む。
 飲み干す。

 更にもう一杯飲んだ所で、人心地がつくのを感じた。
 五臓六腑に染み渡る、この美味さ。
 水、最高だ。


「もう、宜いのですか?」


「あぁ、十分だ。十分に飲んだ」


 有難うっと見れば、居たのはヘレーネ夫人さんだった。
 気づかなかった。


「御無事でよかった」


「ま、何とかね」


 泣きそうな顔で言われるのは、照れくさいというか面映ゆい。
 顔を隠すように頭を掻いてみる。


「しかし美味しい水だった。値千金この上無しってね」


「姉を助けてもらった対価としては安すぎる位です」


「やれる事をやっただけさ」


 ホント、その程度。
 予定外の馬鹿槍コングナーの事が無ければ、余裕だったってのに、何ともまぁ、だ。


「御一人に、負担を掛けて居ます……」


「いや、そうでもないんだが?」


 出来る事を出来る範囲ではっているだけ。
 ホント、それだけなんだけど、それを口にしたら睨まれた。


「嘘ですっ!」


「あー あー うん」


 なんつーか、悲痛な声と涙目で言われると、チト、辛い。
 美少女の涙は武器だ。
 凶器だ。
 乙女の凶器から男が逃れる術なんてあるとは思えない。
 ヘルプ、ヘルプ、へるーぷ!
 誰か増援を!!

 周りを見る。
 割と高そうな調度品の揃った部屋だが見覚えが無い。
 ココ、何処よ?
 っと見知った顔だ。
 大婆様。
 生暖かい目で見られている。


「気を失って血塗れで担ぎ込まれてきたんだ。心配はするというものさ」


「返り血だった筈で?」


「脱がせるまで判るものかね」


 下を見た。
 シーツの中も見た。
 マッパだ。
 コンニチワパオーン


「中々の大物● ●だね?」


「お褒めにあずかり?」


 田舎の人の下ネタって割とストレートだよね。
 しかも剛速球、ビーンボール系。
 なので、日本人の固有スキルを発動させる ―― 笑って誤魔化せアルカイックスマイル

 後、話題を変える。
 割と切実な方に。


「ここは何処で? 後、どれだけ寝てました?」


「公都のブラウヒア家の都館だよ。寝ていた時間は三刻といった所かな?」


「はい、大婆様の仰られる通りです」


 三刻、約3時間ね。
 外をみればまだ明るい。
 市街区の外壁が抜かれたのは昼前だし、こんものか。
 軽く首や肩を動かしてみる。
 水を飲んで頭痛は収まったし、失神前の倦怠感も減っているんで魔力もある程度は回復したみたいだ。
 MPだの何だののステータス表示でもあれば良いのだけど、この現実にはそんな簡単システムは存在しない。
 残念だ。
 あってもキモイけど。

 頭を振って脳内から現実へと目を向ける。


「外、戦況● ●は?」


 悪くは無いのだろう。
 剣戟、鬨の声、怒声に悲鳴。それらが混然一体となる戦争交響曲は聞こえてこないのだから。
 それに、戦況が悪化していれば肝の据わったこの2人とて、泰然としてはいられないだろうから。

 目くばせ合う2人。
 んー 何だろう、それは緊張と言うよりも困惑という色があるかな。


「何か異変が?」


「異変と言うよりも」


 ヘレーネ夫人さん、言葉にし辛いって感じだ。
 大婆様を見れば、が外を見るのが判りやすいと言った。


「ですが、体調が__ 」


「顔色は良いし、そもそも若勇士は病人ではないからね」


 そう言う事である。
 ま、下がマッパなのでシーツを巻きつけながら立って、窓へと近づく。


「大丈夫ですか?」


 手を差し出してくれるヘレーネ夫人さん。
 年下からの手伝いフルアシストは、何というか照れくさい。
 が、好意を無碍にするのも辛いので、差し出された手に、手を添える。


「有難く」


「……いえ」


 さてさて外を見る。
 窓は城下、市街区側に向いている。
 <黒>が奔流の如く入り込んだ市街区。
 少しばかり遠い、その街並みにはオーガーやオークの姿が見える。
 トロルドは見えない。
 俺が殺しきったなんて自惚れるつもりは無いので、そもそもの数が少なくて目立たないのだろう。
 多分。


「これは……」


 市街区に入り込んできた連中、そのまま城に向かって寄せて来るかと思っていたが、それが無い。
 蠢いているが攻めて来る気配は無い。
 というか、混沌だ。
 混沌としている。
 好き勝手に動いているように見える。


「若勇士らが帰城して門扉を閉ざしてから、あのままとなっておる」


「……ふむ」


 何というか、<黒>の軍勢ではなく集団だった。
 或は、野盗の群れか。


「野盗、野盗か」


 自分の言葉にチンと来た。





 攻め寄せ来る<黒>を如何に皆殺しにするか、出来る手法を考え付いたので城代ヴァーリア姫さんへと献策を、と口にした。
 したら、ヘレーネ夫人さんが済まなそうに言ってきた。
 俺が気が付いたら登城させてくれと伝言されていた、と。

 病み上がりで申し訳ないと恐縮するヘレーネ夫人さん。


「仕事熱心なのは良い事で」


 笑う。
 切った張ったの戦の最中に呑気に構えてられては、そっちがヤヴァい。
 そもそも、魔力切れは病気の内には入らないってね。


 ブラウヒア家の都館を出れば、外は大混雑していた。
 女子供が肩をせ合い、毛布などに包まっている。
 市街区の住人が収容されているっぽい。
 意外だ。
 今までの例から考えて馬鹿な、もとい、現状認識に問題を抱えていたアレな特権意識を持った人たちが拒否するかと危惧していたが、そこまでのド阿呆では無かった模様。
 善哉善哉。
 困るのは前の敵だけで十分だってね。


 さて、幾つかの門を抜けて行く。
 途中で出会った連中からは、割と雑じりっ気無しの敬意を向けられる。
 嬉しいけど、照れるな。
 照れるけど堂々と歩こう。
 彼らだって、敬意を向けた相手がビクビクしながら歩いていたら、気持ちが良くないだろうし。

 ん?
 道が違う?

 ヘレーネ夫人さんに先導されて歩くけど、歩く先が通いなれた城代執務室では無く、もう少し奥側になった。
 何ぞ、通路の飾りが華美だ。
 トールデェのに比べると、地味だけど、趣は違う感じだ。
 これがルッェル様式とでも言うのだろうか。

 とも角。
 着いたのは、何というか偉そうな装飾の施された部屋。
 多分● ●、王の間とかか謁見室か。
 多分と付けたのは、部屋が荒れてて書類が散乱してたり、赤い血っぽいのが床や壁に付いているから。
 何があった。


「お姉様!」


 ヘレーネ夫人さんの声に、部屋の奥、玉座と思しき椅子に座っていたヴァーリア姫さんがアンニュイな表情で答えた。


「ご苦労様」


 いや、本当に何があった。
 凄い気怠い感じを振りまいている。


「ビクター殿、先は本当に助かった。有難う」


「出来る事をしただけですよ」


「そう言ってもらえると、助かる」


 命も掛ける予定でも無かったし、そもそも槍で酷い事になるまでは余裕で帰還する予定だった訳で。
 本当に、あの槍は疫病神だ。
 割と切実に。
 いや、そうか返還すれば良いのか。


「お貸し頂いた霊槍のお蔭です」


 苦労の原因も霊槍だったとは言わないのが大人の嗜み。
 そこら辺は誤魔化したままに返却を口にする。
 断られた。
 解せぬ。


「命の対価だ、持っていて欲しい。そして、それに恩義を感じるのであればもう1働きして欲しい」


 働くのは別に構わないんだがと思ってたら、このヴァーリア姫さん爆弾を投下してきやがった。
 この城を放棄する、と。


「事、ここまで来ては勝利など望めない。であれば私は王族としての義務を果たします。ですが民草は出来る限り助けたい」


 外壁が破られ市街区が蹂躙され、北に居る国王の軍勢からの援軍は期待出来ない状況。
 だから、と言う。
 残る兵と共に撃って出て戦い、蹂躙されるまでの時間を稼ぎ、その間に可能な限りの国民を逃したいのだと。

 チラリとヘレーネ夫人さんを見れば、言われていたらしく動揺は無い。
 悲しみや辛さ、諸々。
 それらが混然一体となった、敗北を受け入れた人間特有の表情があった。


「んー」


「頼む。最後まで迷惑を掛ける事になるが今は卿しか頼める相手がいない」


「……それで宜しいので?」


「仕方が無かろう」


「覚悟、ですね。ですが、公都を、命を捨てる覚悟があるなら私の話に乗りませんか?」


 笑おう。
 自信を持っていると思わせるように笑おう。
 こんな凹んだ2人の気分が、前向きになれる様に、自暴自棄からでは無く勝利を望んで戦えれる様に。


「っ!」


「勝てると言うのか!?」


「断言はしませんよ? だけど、勝つための筋道はあります」


「ど、どうするのか!?」


 城を公都を捨てる覚悟があれば簡単な事だ。
 そして、今の<黒>の軍勢の状態であれば特に。


「焼きます」


「焼く??」


 そう、焼く。
 公都に入り込んだ<黒>の軍勢。
 木や燃料と言った可燃物タップリの場所に入り込んだ野盗の群れ。
 言うならば、かまどに自分から入り込んだ羽虫だ。
 であれば、蓋をして火を付けてしまえば良い。
 それで皆殺しだ。

 大ざっぱに言うならば、そう言う事だ。


「で、出来るのか?」


「出来るか出来なかではなく、やらなければ負けます」


「そうか、そうだな」


「それに、どうせ公都を捨てるならば攻撃的にしませんか?」


 盗人風情の<黒>相手に負けてやる義理なんてないし。
 正々堂々とか無意味だし。
 どうです? と見れば、ヴァーリア姫さん実にイイ笑顔になっている。
 我がトールデェ王国のキチg、もとい、アレ、もとい、武人な第一王女の半分位にはイイ笑顔だ。

 やりますか?
 やりますよね?


「そうだな。どうせ倒れるなら前向きに死にたいな」


「そこは勝ちたいと言って欲しいですね」


「そうだな。ではビクター卿、私に勝利を捧げてはくれないか?」


「ははは、微力を尽くしますよ」





 割と最後の大攻勢。
 その準備に奔走する。

 外に撃って出て蓋をする騎馬遊撃部隊。
 火矢や油などを市街区へと放り込む射撃着火部隊。
 後は、事あれば城門から撃って出て逆襲する総予備隊。

 部隊を分けて準備をする。
 幸い、<黒>の連中は市街区を貪る事に夢中で動きが無い。
 風雲丸に攻めていた連中も、市街区に移動する様な有様だ。
 何というか、哀れな位に飢えていたのだ。
 だが許さん。

 許さないので殺してやろう。
 殺すための準備は目の回る様な忙しさ。
 攻撃開始予定時刻は、深夜。
 市街区を平らげて<黒>の連中が腹一杯になって眠りだす頃。
 街を<黒>の墓標としてやるのだ。
 それに間に合わせる為に、必死になるのだ。
 好機は今夜のただ1度だけなのだから。


「しかし」


 ふと、思った。


「ん?」


「いや、な、市街区に特権持ってる連中が反対で怒鳴り込んでこないなぁと思ってな」


「あぁ」


 クラインが微妙な顔で頷いた。
 それから周りを見て、俺を部屋の隅に連れて行くとコッソリと言った。
 全員、取り押さえているのだと。


「何でまた」


「それがな__ 」


 聞いたら呆れた話だった。
 主に特権階級な連中が。

 先ず市街区の城門が破られた時に城へと来た市民を追い返そうとしていて、ヴァーリア姫さんがブチ切れ。
 で、次に状況が安定 ―― <黒>が城へと攻撃をして来ないと判った時に反撃を主張した。
 自分が兵卒を率いて戦いもせず、将であるクラインやヴァーリア姫さんを批判する。
 ルッェルンの歴史がどー とか、伝統がどー とか。
 まぁここら辺は、アレな特権階級としては理解できる。
 理解はできるが納得はしたくない。

 俺の感想はともかく。
 ヴァーリア姫さんも、その頃には馬鹿が馬鹿な話をしていると公妃や重役な連中の会話を聞き流していたのだが、あるド阿呆の言葉に大激怒したのだ。
 それはヘレーネ夫人さんの事だった。

 何でも議論が詰まって来た頃に、デッセル家という公王の嫁さんの実家の若いのがブラウヒア家の事を口にしたのだと言う。
 先代と共に譜代を失ったブラウヒア家に自分が入ろう、と。


「それは」


 絶句せざる得ない。
 人間の下衆性、これに極まった感じだ。
 喪中な人間に言うべき言葉じゃない。


「ああ。やせ衰えたブラウヒア家を乗っ取ろうと言う訳だ。当然、ヘレーネ様は当主としてお断りされた。生き残った者たちで家を盛り上げたいと。それに先代殿に操を立てたいのだと。だが、あのモノはっ、あの馬鹿者はっ!!」


 初夜も済ませてない様な相手に操も無かろうと嗤ったのだと言う。

 壁を蹴る。
 叩く。


「馬鹿者にヘレーネ様は冷静に反論されていたのだが、デッセル家当主のゲーリンが調停するように言ったのだ……」


 処女検査をすれば判る、と。
 吐き捨てる様にクラインが言う。
 冷静にキレイている。
 多分、俺も切れた顔をしているのが判る。
 手が微妙に痛い。
 チト、壁を殴り過ぎた。
 そうだ、壁よりも殴るべき相手が居る。
 もっと建設的な事をしよう。


「殴りに行って良いか?」


 殺すのは、我慢する。
 我慢するけど、命以外は許さない。
 手と足に新しい関節を2桁増やしてやる。
 背骨の角度が後屈90を目指せてやりたい。
 殺さない様に、人間の新しい姿を探求させてやろう。
 殺してくれと言うかもしれないが、そこは知らん。


「大丈夫だ、ヴァーリア殿下が裁いた」


 不敬罪と戦争遂行への反抗罪諸々で捕縛を命じたのだと言う。
 実家の危機に、公妃が庇おうとしたら、纏めて捕縛を命じたという。
 そこで少しばかり、そう、少しばかり小競り合いがあって、謁見の間が荒れたのだと言う。
 尚、発端となった馬鹿者は、抵抗したので仕方なく● ● ● ●ヴァーリア姫さんが首を刎ねたのだと言う。

 マーベラス。


「不法だの何だのと叫んだが、連中は全員が地下の牢獄に放り込んだ」


「馬鹿だな」


 嗤う。
 嗤いあう。

 無論、馬鹿の対象はデッセル家とかの連中だ。
 法を作り、法を守らせる側の人間に喧嘩を売ったのだ。
 馬鹿以外の何者でもない。
 法治国家では無く専制君主国家で、しかも戦時 ―― 戦争の遂行と勝利の為には法が割と軽んじられる時に、法を盾にするという愚行。
 現実を見ない馬鹿は救いが無い。


「しかし、それでか」


「ん?」


「いや、何でも無い」


 只、納得しただけだ。
 彼女は妹を護った。
 だが同時に、自分が城代としての政治的権限を越えたかもしれない事を理解し、その責任を取ろうとし、城と共に死のうとしたのだろう。
 責任感は1等だ。
 問題は、状況がヴァーリア・ライヒャルトという人間の能力で対処できないものであったという事だろう。

 だがそれは、今からひっくり返る。
 ひっくり返す。


「クライン、勝つぞ」


「おお!」


 真面目な女の子にはプレゼントが必要だ。
 努力には結果が。
 勝利が。

 クラインと拳をぶつけ合う。





 日暮れ。
 諸々の準備が済んで、マッタリする。
 休憩だ。
 失った魔力の回復もあるし、休む事はとても大事だ。
 ヘレーネ夫人さんに勧められ、ブラウヒア家都館のゲストルームで休む。
 俺だけが特権をと思わないでも無いけど、今日は頑張ったので自分へのご褒美として受け入れておこう。
 後、この後の事前ご褒美としても受け入れておこう。
 飯を食った。
 風呂も入れた。
 実に素敵。
 戦を忘れそうになる。

 ソファに座って、靴を脱いで行儀悪く足を上げる。
 やっぱ素足って良いよね。
 開放感が違う。
 女性とかを見る時だと、黒のストッキングとかも素敵だがな。
 この世界にナイロンは無いので、薄手の、肌が見える様なモノは無いがな。

 阿呆な事を考えつつマッタリとする。
 落ち着かない。
 兵隊は急いで待てとは言うけれど、待つのは中々に辛いものである。


「……ビクター様、失礼します」


「はい?」


 ヘレーネ夫人さんだ。
 何か起きたのか?

 身体を起こして入り口を見る。
 驚いた。


「え?」


 夜着を着たヘレーネ夫人さん。
 少しと言わず煽情的な格好だ。
 残念ながら、似合うかと言えば否定せざる得ないけど。
 背伸びだなぁというのが正直な感想だ。

 只、顔はガチだった。
 マジだった。
 赤く、そして緊張しきった顔をしている。


「お願いがあります」


 目力がある。
 何か、気圧されてしまう。


「出来る事なら、何でも」


「貴方様にしかできない事です。胤を下さい」


「はいぃっ!?」


 今、何を言った!?







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