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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす!
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:053f6428 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/04 10:55

 流石は現役の隊長さん。
 ゲルロトさんは、弾かれた様に走り出した。
 俺も、その背を追って駆け出す。
 村長宅から飛び出してみれば、村の中はそれまでとは違った、切迫した雰囲気となっている。

 怒声や悲鳴も飛び交っている。
 その中でゲルロトさんは、迷うことなく村の入り口へと向かう。

 と、扉はまだ開けられたままだった。
 というか、外から外から人が入ってくる。
 さっきまで、村の外に人なんて出ていなかった筈なのに。

 尤も、そんな事を考えている暇は無い。
 先を行くゲルロトさんが、門扉の脇に立っている物見櫓に駆け上がっていくからだ。
 おくれまいと、俺も梯子を上る。

 高さ約6メートルってな感じの物見櫓だが、この村があるのが平地のお陰で、遠くまで見える。
 索敵。
 馬車が、人がこの村へと駆け寄ってきている。
 追われる様に。
 否、真実追われているのだ。
 <黒>から。
 その<黒>は何処かと、物見櫓に詰めていた人の視線を追う形で探す。
 居た。
 見つけた。

 この村から1キロとは言わないが500mからは離れた場所、まばらな木々の間から飛び出してくる騎兵の姿を、見た。


「<黒>が馬に乗っとるか!?」


 馬。
 いや、違う。
 毛深いし、馬よりも小柄だ。
 速度は馬ほどでは無いものの、その動きは俊敏だ。

 脳裏に蘇る、闇夜に開い相手だ。


「戦獣、<黒>の戦獣騎兵か」


「狼ち?」


「恐らく」


「なんでそんな連中がここまで………」


 呆ける様に呟くゲルロトさん。
 本来、戦獣なんて珍しい相手なのだ。
 と考えれば、あの時の戦獣は、この連中から逃げ出した相手なのかもしれない。
 いや、そんな事はどうでも良い。
 頭を振って、脳内から不要な事を追い出す。

 それよりも、戦獣騎兵が此処まで来るまでの状況だ。
 連中、馬には劣ってもそれなりに速い。
 そんな連中に追われる様に、コッチの村に逃げ込もうとしている馬車の群れ。
 ざっと見て、難民だと判る。

 その馬車列を救おうというのだろう、槍を抱えた連中が迎撃に向かっている。
 恐らくはベルヒトの郷土隊って奴らか。
 数は2~30人位、戦意があるのが判るが、その動きは余り良くない。
 それに走っている為に方陣が崩れている。

 相手の戦獣騎兵が、10騎も居ないってのを考えても、チョイとヤヴァイ。
 蹂躙されっちまう。
 戦獣騎兵ってのは、いや、騎兵ってのはそれだけ厄介な連中なのだ。


「ゲルロトさん、あの馬車列の収容と後詰の準備を!」


 強めの口調で声を上げ、意見具申する。
 今のこの状況で、指揮官に呆けているなんて贅沢は許されないのだ。


「おっ、おお!」


「俺は、少し手伝いに走ってきます」


「はっ?」


 時間が惜しい。
 返事を聞く前に、俺は梯子を駆け下りていた。











異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
2-04
<聖女>様、マジパネェっす!











 村の入り口は人でごったがえしていた。
 逃げ込もうとする馬車が詰まって身動きが取れ辛くなっているのだ。
 こんな所に、戦獣騎兵のカチコミを喰らったら、洒落にならない。


『馬車を捨てろ! 人だけなら余裕で入れる!! 家財よりも命を惜しめっ!!!』


 物見櫓の上から、ゲルロトさんの大声が響いた。
 決断が早い。
 うむ、どうやら指導者としては一角の様だ。


「ビクターさん!」


「エミリオかっ!」


 騒動に気づいてエミリオもコッチに来たのだろう。
 悪い事じゃないんだが、ミリエレナを放りだして無いだろうな? と思う訳で。


「何事ですか?」


 と思ったら、そのミリエレナさん、コッチに来てた。
 顔色は悪いが表情はしっかりとしている。
 流石は<聖女>、戦神ブレルニルダの巫女って事か。
 合流して、門を出る。
 まだ村の外には少なからぬ馬車と人が居た。
 怪我をしている人も見える。
 血を流し、呻いている人が居る。


「敵襲です。<黒>の戦獣騎兵が迫ってます」


「っ、それは…」


 相手として厄介だと言う事は判るのだろう、2人とも表情は硬い。
 騎兵と聞いて怯えないのは立派だが、今回は前に出られると、チト、困る。
 拠点防衛戦なのだから。


「俺は前に出ます。2人は、この辺りの人たちを村の中へと避難させ、手当てを」


 2人は戦力としてもだが、治癒技術を持っているのだ。
 この状況では、其方の比重が重い。


「ぼっ、僕も戦います」


 慌てて自己主張するエミリオ。
 戦力外通知とでも思ったか。
 説得する手間が惜しいので、叱る。


「優先順位を間違うな!」


 先ず目的は護民、人を護る事なのだ。
 その手段として戦闘があり、治癒もあるのだ。
 戦う事は代替可能な手段でしかない。

 声を張り上げて、物見櫓の上のゲルロトさんに叫ぶ。


「ゲルロトさん、この2人は治癒魔法が使えます!! 指示して下さい」


「助かる!!」


 と、物見櫓ではなく、コッチへと人を連れてきながらゲルロトさんが返してくる。
 連れているが武装している事から、この村に残っている兵か。
 数はボチボチだが装備の具合や動きなどから、余り頼りに出来そうもないのが判る。

 おーいぇー
 これは俺がチトばかり、頑張るしかないか。


「後はあの人の指示に従え! じゃ、後でなっ!!」


 2人が何かを言い返す前に、走りだす事を選択する。





 避難してくる馬車列を抜けると、その先には、駆けてくる戦獣騎兵の姿があった。
 3騎、残る連中は向うでベルヒト村の郷土隊を蹂躙しているのが小さく見える。
 殲滅されてはいないが、時間の問題だろう。
 救助しなければならない。

 その前に、槍を掲げてコッチに突っ込んでくる3騎を潰さねばならないけども。


「6番開放!」


 手に重みが生まれた。
 ボウガンだ。

 魔道巻上げ支援装置付きで、しかも弾倉付きなので連射可能という一品だ。
 残念ながらコストの問題で、命中修正とかダメージ拡大みたいな機能は付与されていないが、それでも自慢の一品である。
 特にグリップのデザインは、人間工学っぽい感じで、握りやすいものに拘った。
 ぶっちゃけて、WWⅡな頃の小銃の銃床デザインを丸っとパクった訳で。
 通称、アブラメンコフ式ボウガン。
 当然ながらも商品のラインナップに載せたが、余り売れてない。
 従来型とのデザインの差とか、大きくなったとかの問題なのかもしれない。
 使えば良さが判るのだけども。
 残念である。

 兎も角。
 銃床のお陰でサイズは大きくなったが、保持しやすくなった。
 脇を絞る様に保持し、狙い、撃つ。
 命中。
 先頭を来ていた騎の騎手、その頭部を串刺しにする。

 巻き上げ装置が、軋みを上げて弦を引っ張り、弾倉から鉄製の矢が装填される。
 秒単位の時間で装填は終わったが、その間に戦獣はかなり距離を詰めてきた。


「カァァァァァァァ!」


 鬨の声を上げて迫ってくる戦獣騎兵。
 良く見ればゴブリンじゃない。
 より小柄な、犬のような頭をしたコボルトだ。

 狼の上に犬が乗る。
 笑い話にもならない、これが現実。
 距離がもう30mも無い。
 狙い、撃つ。
 命中。

 鉄製の矢は狙い過たず、コボルトの喉を貫いた。
 手綱を握ったままだったので、そのまま戦獣ごとに倒れる。
 だが、ボウガンが使えるのは、これまでだった。
 距離が詰まりすぎた。

 ボウガンを手放し、そして腰に佩いていたロングソードを抜剣する。
 いや、抜かない。
 居合いの要領で構える。
 剣帯で下げた鞘を左手で掴んで脇に挟む様に構え、柄を右手で握る。

 戦獣騎兵、一体となって涎を垂らして突進してくる。
 振りかぶられた槍が、陽光を反射して鈍く光っている。
 さて、俺のロングソードと、どっちが切れ味は良いかな。


「Kiiieeeeeeetu!!」


 下からの斬り上げ、戦獣と騎兵共に一刀で切り捨てる。
 派手な血しぶきが上がる。
 真っ二つだ。

 これだけは、ショートソードでは出来ない。
 刃渡りの長さが違うからな。
 というか、この下賜のロングソード、切れ味が凄い。
 骨すらも斬ったのに、殆ど抵抗が無かった。

 っと、んな余計な事を考えている暇は無い。
 目的地を確認。
 郷土隊の連中が、弄ばれているのが見える。
 急がないと全滅しちまうか、アレは。
 クソッタレ。
 人の足で間に合うか。
 間に合えと祈りつつ走り出す。

 と、俺の前の方で騎兵を失った戦獣が身を起こそうとしている。
 なんてグッドなタイミング。

 その背に飛び乗る。
 手綱を掴む。
 が、暴れようとする。
 ですよねー ご主人様コボルトじゃないんで、従う義理は無い、と。
 振り落とそうとしてくるが、それは困る。
 コッチも人命が掛かっているんで、命令を聞いて貰う。
 ニーグリップで振り落とされない様にしがみついて、右手に持っていたロングソードを口元へ ―― 柄を噛んで保持し、右手をフリーにして、戦獣の首を掴む。
 絞める。


「ギャヒッン!?」


 悲鳴と共に、抵抗が小さくなる。
 いい子だ、言う事を聞け。
 手綱を引っ張り、鐙で腹を叩く。
 首を振ろうとするが、締め上げる。


「キャヒッ!」


 最後に一声啼くと、大人しくなった。
 よしよし、いい子だ。
 であれば後は、突撃だ。





 疾駆する戦獣、その乗り心地は実に微妙だ。
 イヌ科だからか、疾走時の体は激しく上下に揺さぶられるのだ。
 酔いそう。

 クソッタレ。
 この戦獣に乗った事を少しだけ、後悔。
 だがその対価は人の倍以上の速度な訳で。
 時間と命が等価交換となれば、乗り心地もクソも無いってなものだ。

 口で噛んでたロングソードを右手に握る。
 3刀流は普通に無理でってなものだ。

 加速させようと鐙で腹を叩いたら、戦獣が吼えた。


「ウォォォォォォォンッ!!」


 響く叫びに反応して、郷土隊の連中を嬲っていた連中がコッチを向いた。
 ひぃふぅみぃと、11騎が居る。
 まだまだ郷土隊も抵抗している様だ。
 グッド。
 根性だけはあるようだ。
 では助けよう。


「Siiiiiiiiii!」


 ロングソードを、振るうスポポポポーン





 逃げていく2頭。
 正直、逃がしたくは無かったが、身の軽いコボルトが乗って本気を出されては、追いつける筈も無かった。



「助かったよ」


 郷土隊のリーダーっぽいのがコッチに声を掛けてくる。
 まだ若い顔は傷だらけだが、その表情は明るい。
 戦獣騎兵相手に生き残ったのが、自信に繋がったのかしらん。


「どういたしまして」


「俺はストーク。見ての通り、ベルヒト郷土隊の第2分隊長をやってる」


 手を伸ばしてくる。
 戦獣の上からだが、此方も手を伸ばす。
 というか、この戦獣がどれだけ落ちついているか読めないので、降りれないのだ。
 降りた途端に暴れられては、話にならないから。


「ビクターだ。巡礼者って所だ」


「なんだ、義侠心で来てくれたのか」


「目の前で戦ってる奴を見捨てられる程に薄情にはなれないんでね」


「有難いな。なら客人として酒を振舞わせてくれ」


「喜んで」


 ええ。
 全身全霊本気で、ね。





 結局、郷土隊の死者は6名だった。
 重軽傷者は18名にも達している。
 見事に撃退出来た事からゲルロトさんがけが人回収にっと、人と馬車を持ってきてくれた。
 当然な顔をしてエミリオとミリエレナも来た。

 ………馬車が、荷物が盗まれていない事を祈ろう。

 さておき。
 重い奴にはこの場で治癒魔法を掛けて行く。
 先に収容した難民っぽい馬車の連中にも魔法を使う必要があるらしく、命に関わる部分にだけ掛けて行くのは、仕方が無い。
 この村には薬師はいても、治癒魔法の使い手は居ないとの事だ。
 それは、ね。
 仕方が無い。


 うめき声を上げる人を手当し、或いは魔法を掛けて馬車に乗せていく。
 死体も、乗せてやる。
 その他、穴を掘ってコボルトや戦獣の死体を埋めてもいた。
 戦の後片付け。
 それを俺は、呆っと見ていた。
 先の戦いで真っ先に戦ったのだからと、ゲルロトさんが休む様に言ってくれたのだ。
 正直、疲労自体は余り無いが、火照った体を冷ましたかったので、有難く受け入れた。

 風が心地よい。
 が、静かではなかった。
 何と、怪我人の回収とかする人に混じって、バルトゥールさんが来ていたのだ。


「凄いですねビクターさん。流石は<鬼沈め>」


 鼻息も荒く、俺にインタビューでもするかの如き勢いで迫ってくる。
 まだ足は完治しきってないのに、ご苦労な事だ。
 この人も、飯の種作りに必死なのだろう。
 そう考えると、邪険な扱いをする気にはなれない。
 鬱陶しいけども。


「私は腰が軽いのが取り得ですからね」


「いやいや、ご謙遜を。真っ先に駆け出すなんて、簡単に出来る事じゃありませんよ」


「あー、あ、いや、まぁ、ね」


「しかも、さっと<黒>の戦獣を奪い取って、それに乗って助ける為に駆ける。格好良かったですよ。味方の危機に駆ける若き戦士。しかも手際よく相手を屠り、撃退する」


 コレが立て板に水と云うものか。
 呆れる位に舌の滑りが良い。
 こうでないと、吟遊詩人は務まらないのかもしれない。


「余り俺を褒めないで下さい。図に乗りそうですから」


「相変わらずの謙虚ですな」


「それに、撃退出来たのはストークさん達が組織的に対抗出来ていたからって面もありますしね」


 フォローを入れておく。
 実際、数的な有利があったとはいえ、戦獣騎兵相手に壊乱せずに戦えたのは立派なのだ。
 それは本当に、そう思う。

 勝てないってのは、騎兵相手に方陣も組まない軽装槍兵である以上は仕方の無い事だから。


「はっはっはっ」


 その笑いの意味は何だろう。
 が、その疑問に頭を使う前に尋ねられた。
 どうするんですか、と。
 バルトゥールさんの視線は、俺の横で寝そべっている戦獣に注がれている。


「どうしましょう」


 まじりっけ無しの本音だ。
 正直に言えば、頭を抱える気分である。

 何だろう。
 降りたら暴れだすかと思ったら、俺に寄り添いやがった。
 コイツもイヌ科なので、序列的なもので、俺に負けたと受け入れたのかもしれない。

 暴れたら斬ろうと思ってたのに、つぶらな瞳で穏やかに俺に付いて来るのだ。
 流石にコレは斬れない。

 とはいえ、けが人の回収に来た連中の目つきは厳しい。
 当然か。
 戦獣なんて<黒>の尖兵、害獣でもあるのだ。
 好意的になれる筈がない。

 かといって馬具つうか、戦獣具を外して野に放てば、それは害獣を生む事になる。
 どうすりゃぁ良いんでしょ、コレ。
 困った顔をしたら、顔を擦り付けてきやがった。
 畜生、可愛いじゃないか。

 大きさを別にしたら。


「ビクターさん、お怪我はありませんか?」


 と、ミリエレナが来た。
 どうやら一通りのけが人の手当ては終わった模様だ。
 手を振って否定する。


「大丈夫、もう治ってますよ」


 かすり傷が殆どだったので、マーリンさんのアミュレットで即回復ってなものだ。


「あら、そうでしたか ―― この子は?」


 視線は戦獣に釘付けだ。
 通常は人に害意を振り撒くような奴が、大人しくしているのだ。
 そりゃぁ好奇心が刺激されるってなものである。
 なのでカクカクシカジカと経緯を説明する。

 さて、どうしたものだか。
 悩ましい。
 と、思ったらミリエレナ、いきなり戦獣に抱きついた。
 突発的な行動に、俺もストークさんも慌てる。


「なっ、何を!?」


「静かにして下さい」


 驚くほどに落ち着いた声で、ミリエレナが俺たちを制止する。
 どうやら何かの意図がある模様だ。
 暫く、黙って見ている。


「どうしました?」


 エミリオが来た。
 唇に人差し指を当てて、黙るようにジェスチャーすると、不思議そうに頷いてくれた。

 そして待つこと暫し。
 ミリエレナは唐突に離れて、決断を下した。
 この子を祝福しましょう、と。


はかり・・・ましたが、心根に邪悪はありません。ですので私が祝福を与えます。そうすればビクターさん、連れて行けますよ」


 殺さなくて済むなら有難い。
 が、祝福ってナニ? が正直な感想。


「ミリエレナ様!!」


 何か興奮しているエミリオと、びっくりしているバルトゥールさん。
 俺だけ仲間外れ。
 聞いてみる。


「祝福って、ナニ?」


 尋ねたバルトゥールさんは、嬉々として説明してくれた。
 要するに、使い魔ファミリアを作ると云う事だ。
 但し、普通の使い魔を作るのとは異なるのだという。
 それも当然。
 神の、ブレルニルダの名において行うのだから。


「私も初めて見ます」


「僕もです」


「しかし凄いですね。確か祝福の出来る人など、今は殆ど居ないと言われますが」


「だからミリエレナ様なんです」


「流石は<聖女>という訳ですか」


「はいっ!」


「実に凄い」


 そこから更に神話の、ブレルニルダがこの世界に存在していた頃の逸話を、熱く語り合うエミリオとバルトゥールさん。
 2人ともある意味でオタ系だから、話があうのかしらん。
 細かい逸話とか、ブレルニルダが連れていた3つの使い魔とかの事で盛り上がっている。

 そんな2人は無視して、ミリエレナは戦獣の周りを回って、魔道具で魔方陣を刻んでいく。
 既に魔力が通っているのか、刻まれた陣が発光していく。

 戦獣は少しだけ怯えている。


「大丈夫、痛くはありません」


 コッチを見る戦獣に頷いておく。
 というか、意思疎通が出来ているというか、この戦獣って言葉を判っているのだろうか。
 判らん。
 身を縮こませている辺り、判ってなさげだが。


偉大なるブレルニルダと魔法の祖レオスラオの名に於いて、我、ここに祝福を請う! 我と異なる生まれなれど、汝、我が同胞となる者なり!


 祝詞パワーワードに従って、魔方陣が光っていく。


「 ――祝福よ今 」


 光が炸裂した。
 視野が真っ白になる。


「っ!」


 そして、チカチカする目を開けてみると、そこには真っ白な体毛と成った戦獣が居た。
 いや、背中には金色の毛が生えている。
 そう言えばブレルニルダの好みの色って、金色だったっけか。
 実に祝福された感じである。
 高貴さとまでは云わないが、気高さっぽいのが感じられる。
 改めてスゲェな、魔法。
 俺も使いたい。
 使えたら、な。





 しかし、アレだね。
 銀毛の狼を連れてとか、ホントに<聖女>様って感じだね。







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