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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:053f6428 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/17 22:38
 
 日が暮れゆく中、厳かな声が響いていく。
 発しているのはブレンニルダ第3神殿の神祭長という役職の人だ。
 ふっくらとした体格で、その体格に相応しい声色で滔々と言葉が連なっていく。


「負傷者には敬意を。死者には哀悼を。今日の死線を共に越えた勇気ある者よ、我らは栄えある戦友とならん」


 その口調と言うか抑揚の付け方は、坊さんが葬式でくれる、ありがたーい説法っぽい。
 カテゴリー的な意味で、同じように “宗教” なんだから、似ているのも、そんなモノかもしれない。
 まぁどうでも良い話だ。
 宗教の、有難いお話(棒読み) なので、外面の厳粛さが崩れないように注意をはらっておく。
 なんたって周り中、エミリオやミリエレナも皆してマジモードなんだから、俺だけ外れる訳にはいかないってもので。

 今、俺たちが居るのはブレルニルダ第3神殿の大食堂だ。
 村での一戦を終えた後、予備となっていた第5戦闘班と交代し、重症重体な村人と共に帰還していたのだ。
 で、一通り身を清めて、こざっぱりした格好になって、この大食堂に集まったのだ。
 壁には神族の誕生と巨人との大戦争、実話としての神話が叙事詩として纏められ、描かれている。
 儀式用ではない、実用的礼拝堂の役割も担っているからだそうな。

 というか壁画、実に生々しく戦いが描かれている。
 一にして全アルファにしてオメガ、そう謳われた神を弑し、世界の実権を握った巨人への反逆した神族の物語だから、戦場中心なのは仕方がないのだけれども。
 しかも此処は、勇気の神たるブレルニルダを奉る神殿。
 ブレルニルダを筆頭に、戦いに身を投じた神族や人間やエルフ、ドワーフといった諸族の勇気を讃える為に、戦場エピソード山盛りってなモノなのだ。
 何と言うか、情操教育に実に悪そうな感じである。

 あ、何か判った。
 このブレンニルダの使徒が脳筋だって理由が。
 勇気の大事さだけを言い伝えれていれば、そうなってしまう ―― しまったのかもしれない。
 勇気だけじゃ勝てない現実ってのもある筈なんだけどね。
 戦闘戦争なんて絡めて手上等の筈だけど、散々に勇気を口に続けた結果、自家中毒を起しているのかもしれない。

 なんて、具にもつかない事を考えていたら説法っぽいのは終わった。
 神祭長に代わって、神官長であるゴーレルさんが大食堂の最前列、少しだけ高くなっている演台へ立った。
 それに合わせて、皆が杯を手に立ち上がる。
 遅れぬ様に、俺も立つ。
 手にはキンキンに冷えたビールでは無いが、冷やされた葡萄酒が杯には入っている。
 こうなると、やる事は1つである。


「初めに立ち上がりし勇気の神、挫けざる女神ブレルニルダよ、勇気をもって<黒>と戦う戦友たちに祝福のあらん事を! 乾杯!」


 乾杯の声が唱和し、杯が一気に干された。
 ウマウマである。
 マジで旨い。

 そして大食堂の雰囲気は、厳かなものから一気に砕けた宴会風になった。
 卓の上には様々な料理が並んでいて、これも旨い。
 葡萄酒は、大樽が大食堂の各所に出されており、酌み放題。
 正に酒池肉林。
 戦闘であれた心のリフレッシュタイムだ。

 最初はエミリオとミリエレナと卓を囲んでいたのだが、気が付いたら第1戦闘班の面々に囲まれていた。
 理由は不明だが、気の良い連中ぞろいなので飲んで食って歌って、実に楽しい。
 そうそう、ゴブリンを蹂躙する時に借りたハルバードの相手も出てきていたので、感謝と互いの勇戦を讃えて杯を干しあう。
 ハルバードはあの後、無事に回収されていたらしい。


「実に良いハルバードでしたよぉ」


「だろう。数打ちモノだがな」


 何でも、第3神殿で一括して武器工房に発注したものの1つだという。
 の割には見事なものだったが。
 剛性に歪みなく、安心して振るえたのだから。


「なら、第3神殿は逸品だらけだな」


「良い事言ったぞ<鬼沈め>」


「いやいやいや、今日は沈められんかったです」


「一番首を挙げてて贅沢を言わんでくれ。俺たちにも栄光は必要だ」


「では勝利の栄光を貴方に!」


「感謝する!」


 非常に楽しい気分で乾杯。
 干した瞬間に、誰かがビッチャーで注いでくれる。
 ウマウマ。
 もう何杯飲んだか判りぁしない。
 旨いから良いけど。


「そうだ! 栄光を貰えるなら、俺のハルバードに何か銘をくれんか」


「私ですよ?」


 一応、尋ねて見る。
 武器に名とは別に銘を欲するってのは良くある話だが、その名付け親を望まれるってのは、結構名誉な事なのだ。
 20も超えんよーなガキで良いのかって思える訳で。


「おお。<鬼沈め>、<鉄風姫>の息子よ、他に誰が居るか!!」


 赤ら顔で、良い笑顔で断言されちゃぁ断れない。
 実際、良い武器だったし。


「なら承りましょう」


 銘、銘である。
 真面目に考えてみる。
 謂われなんて、特に無いっつぅか、だが………なにか、無いか。
 質実剛健を示す、砕き丸。
 微妙だ。
 由来も無い。
 うーむ、安請け合いするんじゃなかったか。
 流石に奉納銘を打つ訳にもいかんし。

 ああ、あれがあった。
 試銘が。
 今回の戦闘で、俺は一閃でゴブリンを4匹屠った。
 ゴブリン殺し ―― 弱すぎる。
 なら、アレだ、四胴斬りって感じか。
 いやまて、もう少し銘らしく、四胴落し。
 悪く無い。
 一閃で7つまで落とせなかったのが残念な位だ。


「ん、 Sidou Otosi でどうですかね?」


「シドートシ? どんな意味だ??」


「一薙ぎで4つの胴体を切り飛ばすって意味だったかな、確か。あーあ、あぁ、どっかの王国の逸話の」


 正確には、SF小説さ。
 神林長平ラブ。
 敵は海賊の新刊が読みたかった。
 あのレーベルだと、星海の戦記も読みたいけれども。
 見果てぬ夢だ、夢。
 神で生まれて10年以上、流石に新刊の4~5冊は出ているだろうな。
 読みたいぜ、本気で。
 ファッキン。
 クソッタレ。


「面白い、実に面白いな。よし、あのハルバードの銘はシドートシだ!!」


「なら、銘も決まった事で ――」


「乾杯!」


 一気に干す。

 何だろう、葡萄酒ってマジに旨い。
 焼酎党だったけど、少しだけ宗旨換えしても良い気分だ。
 どうせ魔王も森伊蔵も無いし。
 でも美味しいけど、アルコールの種類は葡萄酒オンリーってのは残念だ。
 後、食い物も唐揚げが無いとかホッケが無いとか軟骨揚げが無いとか揚げ出し豆腐が無いとかベトナム風生春巻きが無いとかホルモンの味噌煮が無いとか、微妙に寂しいけど楽しいものだ。
 ああ地鶏の刺身に蛸山葵、スライストマトも無いな。

 正直に申告しよう。
 食い物に関しては不満だらけだ、と。
 マザーファック。

 楽しいんだけどね。


「楽しそうにやってるわね?」


 ゴーレルさんが来た。


「どもです。美味しく頂いてます」


 比較対象が美味の理想郷にして魂の故郷なので厳しい表現にはなるが、それ以外と比較すれば、悪くは無いのだ。
 少なくとも、本場モノ! と露天でヒャッハーっと喰いまくって翌日に腹を下した香港とか、トムヤンクーン!!と叫びながらかっ喰らって喉に余りにも強烈なハーブ直撃で反射的に噴射したベトナムに比べれば。
 論外枠としてはイギリス料理か。
 油ギトギト過ぎるんだよフィッシュ&チップス! とか、脳味噌腐ってるのかと叫びたくなった鰻ゼリーとかなー マジ在りえない。
 連中が世界帝国を作った理由は、祖国の料理から逃げたかったに違いない。

 朝食は悪く無いんだけどね。
 特にベーコンエッグは、うん、美味かった。
 焼きたてのスコーンも素晴らしかった。
 なのに夕食は鰻ゼリーのパイ。


「Okasii Dsesuyo KATEJINA San!!!」


「ん? どうかしたかしら」


「いえいえーっ、何でも無いですよ」


 思わず口走った事をごまかす為、葡萄酒が美味しかったからと笑って応える。
 が、ゴーレルさんは笑うというよりも苦笑を浮かべた。
 なんでだろう。


「まだ若いのだから、飲ませすぎちゃダメよ」


「はい、神官長殿!!」


 周囲の連中が唱和した。
 一糸乱れぬ辺り、実に訓練が行き届いているらしい。
 実に素晴らしい。

 そして葡萄酒が実に美味い。
 だけど、杯を干したのに誰も追加してくれない。
 ふむ、セルフサービスか。

 納得した。
 という訳で、ピッチャーとして使われている小振りな樽へと手を伸ばしたら、ゴーレルさんが手を止めた。
 おえおえ?


「少しお話があるんだけど、良いかしら」


 はいはい喜んで。
 過去形とはいえ女性の頼みは断らない、それが俺クオリティ!! だ。
 亜神コブラの名に於いて、全ての女性を大切に。
 酒とを女と鉄火場をこよなく愛する風来坊、それが亜神コブラなのだ!! 多分。
 どっかにアーマーロイドな人は落ちてないかニャー だ。


「貴方が失ったショートソードに関して、よ」


 うん。
 アレは地味に痛かった。
 下ろしたてとまでは言わないけど、割と新品 ―― 新古車ならぬ新古剣なのだ。
 増産を要請していたけど、冒険前から1本失われたのは痛いってな訳で。

 回収はしたし、アブラメンコフさんの工房に出す予定ではあるけど、多分、旅立ちまでには打ち直せないだろう。
 なんたって素材レベルで吟味した高品位な鋼で作られているから、芯の部分は無事な筈なのだ。
 がしかし、暴走した四元素魔法で焼かれ表面の一部は融けてさえいたのだ。
 こうなっては仕方が無い。


「まぁ戦の勝敗が兵家の常なら、武器が壊れるのもまた、是非も無しってぇ話ですからね」


 祇園精舎の鐘の音。諸行無常の響きありってなもので。
 残念ではあるけれども、一張羅の一枚看板って訳じゃ無いので、大丈夫なのだ。
 ため息が出る話ではあるけれども。

 それよりも葡萄酒をもう少し飲みたいんですけども。


「良い心がけだよ<鬼沈め>。だがそれで話を終わらせては、今日の戦で一番手柄を立てた者へ恩賞が無いって話になるんだよ」


「私は義勇ボランティアですよ?」


「ブレルニルダの信徒で有るか無いかは関係ない。論功行賞とはそうであるべきなのよ」


 あーそうか。
 身内だけで恩賞を与えていては、外部からの人的資源の流入や合力を期待できない、と。
 それは仰る通りで。

 んじゃ、葡萄酒を樽で。


「本人の希望がそれなら、それでも良いって言ってあげたいけど、恩賞にもそれなりの決りがあるのよね」


 そう言って差し出された木の箱。
 割と高級そうな感じだ。


「?」


「開けてみなさい」


 奉納の文字が箱に刻まれている。
 なんか、勿体無い気もするが素直に開けてみた。

 中には一振りのショートソードが入っていた。
 柄など、曲線を主体とした優美な雰囲気ではあるが、装飾は殆ど無い、質実剛健な作風だ。
 というか、ソレはショートソードと言うには余りにも厚く重い、鉄塊である。
 パッと見は曲刀諸刃のショートソードだが、そ鞘の中にあっても判る刀身の厚みが普通の倍じゃきかないレベルとなっている。
 鉈の様なってのが、一番しっくりくるが、鉈にしても厚過ぎる。

 なんぞ、コレ。


「コレは。ブレンニルダに捧げられたショートソード、銘はペネトレーター」


 打ち抜く者ペネトレーター、か。
 実に物騒な銘だ。


「抜いても?」


「貴方のものよ」


 宴席で抜剣なんてマナー違反も良いとこだけど、一番のお偉い様の許可が出たので、その言葉に甘える事にする。

 ゆっくりと鞘から抜く。
 刀身も拵え同様に、優美さと実用性とを兼ね備えた作りだった。
 只1つ、ブレルニルダの紋章が答申に刻まれている以外は。


「…凄い…………」


 見ただけで、高位の魔法が掛けられているのが判る。
 そんな、呆然とショートソードを見る俺を、ゴーレルさんは笑ってみていた。
 そして説明してくれる。
 この剣の事を。

 元々が敵陣突破用の武器として設計されていたとの事だった。
 乱戦でも使いやすいショートソードで、威力を増す為に重量化が図られている。
 正に鉈だ。
 刃物として切っ先が鈍っても、重さで叩き切れる様にと作られている。

 そして付与されている魔法、これがまた凶悪なのだ。
 刀身保護と切れ味向上の魔法は当然として、更にもう一個、刀身への魔法消失力場が付与付与されているのだ。
 いわゆる対魔法力場アンチ・マジック・フィールドの様に魔法を阻害する空間を作りだすのではなく、魔法を叩き斬って無力化させるという、攻撃的な魔法なのだ。
 魔法使い殺し、そう言っても強ち間違いではない。

 そんな説明に、酔いが一遍に醒めた。
 3個の魔法が付与されて、しかも1つは特注の魔法。
 国宝クラスまではいかなくても、下手をせずとも家宝クラスな第3神殿秘蔵の逸品な代物の筈で。
 幾らオークを平らげての一番手柄と言われても、はいそーですかと貰える気にならないのだ。


「そんな逸品を貰ってしまって良いのですか」


 出来れば、返納したいという気分満々で聞いてみるが、答えはノー だった。
 俺の希望に対して。


「いいのよ。武器は使える人間が持っておくべきなのだから」


 笑って、それから説明してくれた。
 このペネトレーターの欠点を。

 1つ目は重さ。
 ショートソードとしては破格の威力を持っているが、高品位のブロードソード等に比べれて絶対的に優れている訳じゃ無い。
 にも関わらず、重さは上回る。
 その意味では見事な失敗作と言えるだろう。

 2つ目は魔法だ。
 固有能力のレベルで掛けられている刀身保護と切れ味向上は良いのだが、魔力消失力場に関しては使用する都度、使い手の魔力を喰らうのだ。
 それも結構な量を。
 1度の発動で、簡易魔法であれば2乃至は3回分程度の魔力を消費するのだ。
 にも関わらず、魔力消失力場で魔法を無力化させる為には、攻撃魔法に直撃させる手間を必要とするのだ。
 文字通り、攻撃魔法を叩き切らねば消失させられない。

 これではどうにもならない。
 ペネトレーターの目玉と言える魔力消失力場が、こう使い勝手が悪くては使う人間が出なかった。
 如何に頑丈、強烈な殺傷力を持っていても、単純に使い勝手だけなら、高品位のブロードソードでも持っていた方が便利なのだ。
 だから奉納されて永い事、使う人間が現れなかった。
 そうゴーレルさんは苦笑した。


「だが<鬼沈め>、貴方なら違う。そうよね?」


 確かにその通り。
 この程度なら重たいなんて欠片も思わないし、そもそもショートソードは俺の主武装だ。
 頑丈で良く斬れるショートソードを拒否する筈が無い。

 後、魔法に関してだが、此方も実は問題なんて無い。
 発動とかに関してはKonozamaな俺だが、実は魔力の総量的にはたっぷりとある ―― らしい。
 大学で魔法の先生曰くで、「10年に1人クラスの馬鹿魔力持ち」なんだそうな。
 にも関わらず、発動はサッパリを通り越していたので勿体無いとか、素質の無駄遣いだと授業中に散々に愚痴られたものだ。
 俺もそれなりに努力はしたんだが、魂に染み付いていた“向こうの常識”って奴は拭えなかったのだ。
 結局、簡単な日常用の魔法は発動できても、高位だったり複雑だったりする戦闘用の魔法を発動させる事なんて、1度だって成功しなかったのだ。

 クソッタレ。
 思い出したら泣けて来た。
 自宅で復習してたら、横で見てた妹が1発で成功しやがったりとか、色々とあったのだ。
 可愛く笑って、褒めて褒めてと満面の笑みを浮かべた妹は実に可愛かったが、兄としての威厳面目、まるで無しってなもので。


「見とれたかい?」


 な訳無いのだが、それを曖昧に笑ってアルカイック・スマイル誤魔化す。
 一種のPTSDを思い出していただなんて、人に言える訳が無い。

 あー 葡萄酒が飲みたい。
 杯に残ってた滴を舐める様に飲む。
 物足りない。

 仕方が無いので繁々と刀身を見る。
 実に良い。
 優美さと実用性が両立している。
 いや、鎬の部分に象嵌が施されている。
 唐草模様風味だが、あれ、コレって。


「もしかして?」


「どうかしたかしら」


「いや、ブレルニルダの文様が入っているから、私みたいに信徒じゃない人間が持つのはどうなのかって思いまして」


 ブレルニルダの神に奉げられたのだ。
 せめてブレルニルダの信徒が握るべきなんじゃないかと思うのだ。
 だが、そんな感傷をゴーレルさんは笑い飛ばした。


「身をもって勇気を示し、勇者を讃えるのが我らがブレルニルダ。であれば勇気を示した人間にその紋章の刻まれた剣を与えるのは道理に適っているのよ」


 評価されるのは嬉しいが、過剰評価も追い所だよね、正直。
 俺は俺が出来る事をしただけたってのに。

 でも、貰えるものがあるなら、それを断るほどに欲っ気が無い訳じゃ無いし。
 ゴッツアンです、だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
1-14
酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 何だかんだで拝領したペネトレーター。
 とはいえ、宴席にあったら危ないので預けてきた。
 そしてピッチャーな小樽にたっぷりと葡萄酒を取ってきた。
 今の俺にとって、葡萄酒≧ペネトレーターな訳で。
 完全な>じゃないのは、義理だ義理。
 世の中、義理と人情、本音と建前って大事だよねって事だ。

 さてさて。
 葡萄酒をゲットしたが、あても重要なのでチーズと炙り肉をとって来た。
 固いけど塩っ気が効いていて美味い。
 おっと、隣の卓に塩ハムが残っているのを発見。
 適時確保確保、と。

 ハムハムウマウマ。
 樽の違う葡萄酒か、今もって来た分は味が違う。
 でも、うまうま。

 と、見ればミリエレナがエミリオ相手に怪気炎を上げている。
 おぉう。
 可愛い女の子がアルコールで頬を真っ赤とか、実に良い絵だね。
 弱りきった少年が傍に居るとか、どんなご褒美だい? ってなもので。
 うん、実に御摘みとして最適だ。


「ビクターさん!」


 外から眺めているだけの積りだったら捕獲された。
 残念。

 で、行って見たらテーブルには大陸の地図があった。
 メルカトルだの縮尺だのとか考えるだけ野暮な、極めてアバウトな地図が、だ。
 こんなの片手に旅をしようってんだから、この時代の人間はタフだね、本当に。
 残念な事に、その範疇に俺も入るのだけれども。
 実に馬鹿で楽しい。
 そしてチーズが葡萄酒に良く合うのだ。


「ビクターさん!!」


「ん、何だっけ?」


 葡萄酒が美味いのが悪い。
 だから聞いてないけど、俺は悪く無い。
 多分。

 肉を丸齧り。
 チョイと固いが悪く無い。
 もう少し香辛料が掛かっているとベターなんだけど、それは贅沢か。
 焼肉のタレだと妄想か。
 黄金のタレキボンヌ! あっても怖いけど。


「ですから、旅の道順です」


 満面の笑顔で言うミリエレナ。
 それから説明してくれた。

 この旅、現時点としては南回りの交易路を通ってプロフォモウム河まで行き、これを遡って<第四聖地>ノルヴェリスに到る予定だった。
 我れらがトールデェ王国から旧領域に行くルートとしては、一般的なコースだ。
 が、ミリエレナはコレを面白くないと言う。

 今では通る人間も少ない北回り交易路を通りたい。古の、<黒>と正面から殴りあった大帝國イェルドゥの遺跡、古戦場を見たいのだ、と。


「要するに、折角の旅ですので! 古の英雄達の見たいのです!!」


「凄く良い考えですって思います」


 ブッチャケやがったですよ、この酔いどれ<聖女>サマ。
 傍らのエミリオは半眠状態の自動追認システムと化してやがる。
 子供に飲ませるな、葡萄酒なんて。

 葡萄酒? 葡萄酒。
 うむ、美味いからな。
 飲んでしまうのは仕方が無いか。

 握ってた杯で、温くなる前に飲み干す。
 チョイと温くなってても美味い。


「遺跡を、な?」


「はい。そう言いました」


「言ったです、間違いありません。ほんとーに」


「ん。確かにそう言った。言ったヨ」


 真っ赤になった酔眼で睨まれたので、平伏して受け入れる。
 理屈じゃないからね、酔っ払いは。


 と云うか、エミリオの自動追認っぷりが実に凄い。
 もう寝てるだろ、アレ。

 だけど、ミリエレナの声には反応する。
 それがエミリオ・クオリティ。
 可愛いものである。
 なので、塩ハムを丸齧りする。
 しょっぱい。
 もう少し、何だね、薄く切って生玉葱を刻んで包んでいると美味しいかもしれない。
 誰が、丸ごと出した奴は、食っちまったぞ。
 塩っ気満載の後味を、葡萄酒で流し込む。
 有無無無無。
 もう少しだな、コレは。


「どう思います、ビクターさん!」


「あ?」


「かの東進の帝王、<黒>を押し返し<白>の領域を大きく拡大させた大英雄、その終焉の地である天槍の古戦場。見たくは無いですか、ビクターさん」


 いや、別に無いんだけどね。
 伝説の古戦場って言っても、その大英雄最後の大魔法 ―― 地脈の力を大暴走させて行った大地創造の魔法で地殻が隆起し、人間に踏破不能な大山脈帯が出来上がっているのだ。
 終焉の地が何処かすらも判らない、そんな大山脈を見に行きたいなんて、そんなワンダーホーゲルな趣味は無いのだ。
 人体の山脈であれば、幾らでも登頂したいけど。


「ん?」


 不埒な事を考えたら睨まれた。
 なので真面目に考えよう。
 その為には、先ずは一杯の葡萄酒を。

 うまうま。


「少し真面目に考えてみる」


 そう、問題点を、だ。
 北ルートの交易路が余り使われていない理由は1つだ。
 大地が荒れているのだ。
 不毛とまではいかないが、豊かとは言えないからだ。

 大英雄が行った最後の大魔法、コレが地脈の暴走で行われたってのが原因なのだ。
 地脈の乱れが地形を変え大地の力を奪い、枯れさせたのだ。
 それまでイェルドゥの大穀倉地帯であり、肥沃な大地でもあった新領域東部領北方圏は大地と共に衰退したのだ。
 これが大帝國の崩壊と、50年近く続いた継承戦争を引き起こしたのだ。
 結局、50年も続いた継承戦争によって荒れ果てた新領域東部領北方圏は、それでも複数の国家が生き延びていたが、更にその120年程後に発生した<黒>の一大侵攻、<黒嘯>戦争によって尽くが滅亡したのだ。
 何といっても、その<黒嘯>の際、その先遣部隊は新領域を東西に分けるノルヴィリスにまで達していたのだ。
 その道程にあった国家群の運命なと、推して知るべしであろう。

 そんな大戦争から、今で……………確か、70年位だったか? 詳しくは思いだせん。
 葡萄酒を飲んで、頭を回らせよう。
 アルコールが入れば、血管の流れが良くなって、頭は良く動くようになるのだ。
 そして美味い。
 実に世の中、良く出来ている。



 ………………アレ、俺はナニを考えてたんだっけ。
 あー あー うん。
 思い出した。
 そうそう、アレだ、ルートチョイスか。
 荒れ果てているけど、人が居ない訳じゃ無いし、ウチの王国に近い辺りは属国みたいな邦国群があるから補給も何とかなるだろ。
 多分。
 おーけー、ミリエレナ。
 君の希望は受け入れよう。
 エミリオも賛成している事だしね。


「有難う御座います、嬉しいです」


 花が綻ぶ様なミリエレナの笑顔。
 あっ、エミリオが撃沈した。
 酔いも回ってだろうが、幸せそうな顔をしてやがる。

 そして、葡萄酒が美味い。
 
 
 
 
 
 


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