破られている門。 その閂が、内側へと叩き折られている辺り、ゴブ助は破城槌の如き攻城兵器を持ち込んでいる様である。 そこら辺に転がってもいないので、判らないが。「突入!」 ゴーレルさんの命令で、村内突入班の34名が破られた扉を越える。 周辺を警戒して、だが怯える事無く、そして迷う事無く進んでいく。 6割以上の人員が脱落しているにも関わらず組織立って動ける辺り、ブレルニルダ第3神殿第1戦闘班が持つ錬度の高さを示していてる。 というか、脳みその片隅に残った軍事趣味者な知識が、第1戦闘班の持つ錬度は“高い”なんて一言で表せない、キチガイ染みたレベルにある事を教えてくれる。 損耗率6割で尚、攻撃任務が遂行可能。 それなんて帝国陸軍ってな感じである。 否。 帝国陸軍だって、普通に無理だ。 多分。 兎も角。 トールデェ王国でも一般的に、3割の損耗で組織的戦闘能力に著しい困難が生じ、5割を超えれば組織としての機能は期待出来ないってされている。 にも関わらず、損耗率6割で攻撃任務の続行を選択する指揮官と、疑うことも無く戦意旺盛について行く将兵。 基本的に士気旺盛で、構成が至極単純なお陰だろうけど、にしても化け物集団である。 或いは宗教的情熱が原因かもしれない。 所謂、熱狂的宗教型軍事行動(レコンキスタ)か。 ブレルニルダは護民を旨とする教義を残した女神だが、本質は勇気を象徴とする正義の神であり、護民の為の武力行動を全肯定しているのだ。 そう考えれば信徒がこうなっているのも、ある意味で当然か。 味方でよかったよ、かなり本気で。 駆ける34名。 その先導をしているのは、幾度かこの村に来た事のあるという神官だった。 だから迷い無く、避難所を目指している。 皆、黙っている。 険しい表情をしている。 多分、俺も表情は堅いだろう。 村は、その何処其処に死体が転がっている。 人間のものもゴブリンのものも、等しく転がっている。 地獄絵図もかくやってな按配だからだ。 但し、1つだけ救いもある。 子供の死体が転がっていないのだ。 どうやら避難など、最低限度には上手く出来ているらしい。 であるからには、後は単純だ。 避難所の扉が破られる前に、村へと入り込んだゴブリンどもを駆逐すれば良い。 それだけの話だ。 尤も、単純ではあったが簡単では無い。 何故なら村の中程、密集した家屋に挟まれて手狭な生活道路にゴブリンが溢れかえっていたからだ。 クソッタレ。 興奮し、略奪などをしていたゴブ助が、コッチを見て驚いていた。 だが反応するよりも先にゴーレルさんが命令を下した。「突撃!!」 勇将の下に弱卒無しの格言どおり、迷いのないゴーレルさんの命令に第一戦闘班の突入部隊は欠片の躊躇も見せる事無く、ゴブリンであふれ返った道路へと勇躍突撃していく。 オーイェー。 俺はゴブリンの海で泳ぐ趣味は無いってのだが、予備戦力って役割が残念なのも事実だ。 何故なら、戦闘時に人の背中を見ているだけってのは、趣味じゃないから。 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント1-12攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では! ゴブリンとの戦闘。 普通だったら蹂躙して終わりって思うだろうが、閉所で、しかも密集した相手に徒歩で仕掛ける場合、そんなに簡単にはいかない。 密集していると云う事は、武器を振り回しにくく動き難くなってしまう。 つまり攻撃は当てにくく、相手の攻撃は当りやすくなるのだ。 言ってしまえば、組織戦闘の状態となるのだ。 本来、組織戦闘能力ってのは人間の専売特許であり、対してゴブリンなどは、オークみたいな指揮官級の下にあってさえ、纏まって動く事は出来ても、隊伍を組んでの組織戦闘能力など持っていない。 だからこそ、数に劣る人間が<黒>と正面から戦えてきたのだ。 だがそれも、こんな閉所に密集してしまえば話は別となる。 閉所に密集した事によって、強制的、かつ擬似的な組織戦闘能力をゴブリンも獲得する事となるのだ。 こうなると厳しい。 組織と組織の戦いとなれば、個々の能力差よりも、数が重要な要素になるからだ。 そして、数に於いては劣勢なのが俺達な訳で。 間違っても負けるなんて言わないが、楽ではなくなるのだ。 おまけに、進めば進んだだけ左右の家屋の制圧を、住人の安否を確認する為に人数を分けねばならない為、人の手が食われるってな状況に陥っている。 村に突入してから時間が経過しているが、正直、その前進速度はカタツムリ並みだった。 いや、或いはカタツムリの方がまだマシってな状態だ。 クソッタレ。 このままでは埒が明かない。 否。 時間が掛かるのが全く悪いと云う訳じゃない。 時間が経てば外に残っていた連中が回復して此方に参加するかもしれないし、或いは王都からの援軍が期待できるからだ。 その意味で“だけ”ならば、時間は俺たちの味方だ。 だが、この場に居るゴブリン以外にも敵が居て、村人の篭っている避難所を包囲攻略していたらどうだろう。 俺達がここで時間を消費する事によって、救えた“筈の”村人ってなる可能性が大なのだ。 ならばどうする。 どうすれば、突破速度を上げられるか。 否。 手段はある、知っている。 だが、それは少しだけ乱暴な手段であり、チョイとばかり危険な行動なのだ。 だから、俺も少しだけ迷ってしまった。 間抜けな話だ。 深呼吸を1つ。 この手の状況を突破する為のセオリーは存在する。 であるからには、それを選ばずしてどうするというのだ、俺よ。「ゴーレルさん」 指揮官に問いかける。 突撃の許可を。「どうする気?」「少しだけ先に行って攪拌してきます」「攪拌?」 そう、攪拌。 撹乱では無く攪拌。 刃物で首をスポポポポーンして、ゴブ助の隊伍を崩して第1戦闘班による蹂躙戦が出来る状態へと持ち込もうって話だ。 これは、母親様たちが得意とする戦法であり、母親様たちの様な人間に対して戦場で期待されている役割でもある。 敵前線の強襲突破と蹂躙を行い、後続部隊突入路の確保 ―― その足がかりを作るのだ。 言ってしまえば、肉弾でのパンツァーカイルを行うと言えば、母親様たちの異常さが判るってなものである。 総称として、強襲兵なんて云われるポジションは、正面に立つあらゆる障害を撃破して突進する。 云わば重戦車の役割を個人が担うのだ。 他の兵科、というか他の将兵とは隔絶した攻撃力と防御力とを兼ね備えた個人。 正に化け物。 化け物で構成された兵科なのだ。 そんな化け物たちの離れ業を、今の俺程度が全く真似出来る訳じゃ無いが、少しだけの真似事ならば出来る。 特に、ゴブリン程度を相手にしてであれば。「行かせて下さい」「………」 じっとコッチを見てくるゴーレルさん。 その瞳をじっと見返す。「英雄志願 ―― って訳じゃ無さそうね」 頷く。 英雄なんて趣味じゃない。 だけど、出来る事があるのにしない怠慢は、もっと趣味じゃない。 それだけの話だ。「いいわ。なら<鬼沈め>、貴方の全力に期待するわ」「任せて下さい」 攪拌に飛び込むには、先ず前線を越えなくてはならない。 本気で殴り合っている人とゴブリンの間を。 相手が退く筈は無い。 そもそも、押し込める事が出来るなら、最初っからこんな形にはなっていない。 味方に退いてもらう訳にはいかない。 退けば、その動きに便乗して迫られれば、それは相手に勢いを与えるのと一緒だからだ。 ならばどうするか。 答えは単純。 前線を飛び越えてしまえば良い。 そんな事が出来るが為に、俺は鎧とかも着込んではいないのだから。 負傷して下がっている人の1人から、ハルバードを拝借する。 飛び越えた先の着地点確保は、流石にショートソードでは厳しいのだ。「無事に返せとは言わん。が、何匹かぶちのめしてくれよ、<鬼沈め>」 血を流して重傷でありながらも、目には精気が満ちていた。 その意気を受け取る。「了解」 深呼吸。 そして走りだす。 一歩二歩三歩。 四歩目を踏み込む時には、トップスピードに達する。 そして五歩目。 踏み切って飛ぶ。 狙いは戦列の横、生活道に迫っている家屋の壁だ。 壁を蹴る六歩目。 狙い過たず、俺の体は前線を飛び越える。 俺を呆然と見上げているゴブ助s’。 いいのかい? 俺は敵は無抵抗だろうが喰っちまう男だぜ。 ゴブリンの1匹を踏み潰すように着地。 縮めた膝を伸ばして立ち上がる。 その挙動を予備動作にして、一気にハルバードで薙ぎ払う。 悲鳴と血と、そして内臓を撒き散らしながら吹き飛ぶゴブリン、ざっと4匹。 前に進みつつ、更にもう一振り。 今度は2匹が吹き飛ぶ。 や、1匹か。 もう1匹は穂先に引っ掛かっている。 引っ掛かっている奴は、致命打を受けているのか、ピクリとも動かない。 俺は、垂れて来る血を受けながら、ハルバードを垂直に掲げて、これから屠る相手を睥睨する。 ゴブリンが怯える様に、戦意を挫く様に。「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 吼える。 吼える。 吼える。 1つの音で喉を震わせ、戦意を鼓舞する。 ハルバードを旋回させて大地に突き刺す。 切っ先は、ゴブリンを貫いて縫い止める。 腰に下げた両のショートソードを抜く。 さぁ進軍だ。 切る。突く。叩く。潰す。殴る。蹴る。 言葉にすれば単純な、それだけの事を進みながら行う。 但し、相手からの反撃を受けつつ、だ。 斬り捨てたゴブリンの死体がゴロゴロと転がっている場所で、足元を見ずにステップを踏もうというのは、馬鹿で自殺志望と同義だからだ。 無論、回避だけではなく、攻防一対とばかりにショートソードで攻撃をしながらも受けて流そうとしてはいるのだが、流石に四方八方からの攻撃となっては裁ききれない。 体中が傷だらけになっていく。 首から上と体の中心線、そんなバイタルパートに当りそうな奴には避けるか捌くかしているが、それ以外は当るに任せている。 小さい、致命傷以外の傷であればマーリンさんのタリスマンが回復してくれるってのもあるが、それ以上に、そんなモノまで対処しようとしたら前に進めないからだ。 俺の目的は、ゴブリンの段列を攪拌し壊乱せしめて、主力隊の前進を助ける事だ。 であるからには、前進を阻害する要素は全て斬り捨てるべきなのだ。 アレだ“同志、側面には気にせず突進せよ”ってものだ。 だから傷だらけになっていく。 ライト・チェインメイルの防御力はそれなりだが、それでもコブリンの攻撃を全て跳ね返せる訳じゃ無い。 その衝撃を殺せる訳じゃ無いからだ。 刺し傷、擦り傷、掠り傷。 致命傷じゃないからといって、決して痛くない訳じゃない。 それどころか、連続する鈍い痛みは、歯を食いしばっていないと悲鳴の1つも漏らしそうになる。 だが、無視できない訳じゃない。 痛みを無視して、前進する。 前へ。 致命攻撃ではなく、徐々には回復できるダメージに収まる攻撃であれば、そんなモノを避けるよりも先に進むべきなのだ。 ゲルハルド記念大学の、強襲兵上がり実戦教官は、それを誇らしげに言っていた。 これが強襲兵。 やってみて、その正気を疑いたくなる兵科ではある。 あるのだが、俺が進むたびにゴブリンの混乱広がっていくのを見れば、その効果は、意義は疑うべくも無いって奴だ。「Kietu!」 踏み込んでの右斬撃は、1匹目の胴体を寸断した上で2匹目まで吹っ飛ばす。 が、その挙動で生まれた隙を、ゴブリンが埋めてくる。「ギィィッ!!」 下からの切り上げ。 刃先の錆びたロングソードは、俺のわき腹を狙ってくる。 狙いの正確さと、斬られる味方を囮として踏み込んでくる思いっきりの良さ。 ゴブリンにも出来る奴が居る。 だが、その一撃は俺にとって致死足りえない。 周りにゴブリンが居るので大降り出来ていないからだ。 切っ先が俺の脇腹を叩く。「っ!」 一瞬、息が詰まる。 刃先が身に届かずとも、それなりの勢いが乗った数kgもの鉄塊による衝撃は軽いものじゃない。 体がよろけるが、耐える。 数的劣勢は考えるだけ無駄な状況で、守勢に回っては危険だからだ。 というか、ブッチャケて捕殺されてしまうだろう。 幾らゴブリンが相手とはいえ、密集されてしまうと厄介なのだ。 というか、この点だけは見積もりが甘かったと反省である。 クソッタレ。 臆病者揃いのゴブリンとはいえ、逃げ場が無ければヤケクソになるのは道理ってなものだ。 学校の座学で聞いていたとはいえ、護らなければ意味が無い。 クソッタレのクソッタレだ。 とはいえ、後悔してても始まらない。 既に前線からは10m以上も切り込んでいて、支援は受けられ難い状態だ。 後続の第1戦闘班も俺の突進によって出来た突破口から突入して来てはいるが、追いついてはいない。 そう思っていた。 柔らかな手が俺を包むまで。「偉大なるレオスラオの名に於いて――発動せよ治癒の力! 癒しの御手」 神の力である奇跡を、魔法として体系付けた神 レオスラオの名において発された力ある言葉(スペル)。 これをトリガーに魔法で力場が生まれ、俺を包み、体中の細胞をリフレッシュさせていく。 治癒の力、この癒しの御手とは救急用にと生み出された簡易発動型の治癒魔法だ。 尚、救急用の簡易魔法といっても誰でも使える訳じゃ無い。 魔法行使者(マジックユーザー)としての正規訓練を受けた人間であれば発動できる、という魔法なのだ。 ある意味、通常の治癒魔法の持つ特徴――手順さえ踏めば誰でも発動出来ると云うものと、真っ向真逆のアプローチで生み出された魔法なのだ。 発動させるスキルを高度に要求する代償に、手順をすっ飛ばせる。 うん、急場の手段としては全く間違えてないってなものである。 オマケとして、高度な魔法ではあるが、正規の魔法と比べて威力が低いのは仕方が無いってのの範疇だろう。 きっと。 そんな高度な魔法を誰がっと、一瞬だけ振り返って見れば居た。 俺の後ろにミリエレナが、そしてエミリオが。 ゴーレルさんの所に、予備戦力として置いてきた筈が、そこに居た。「なっ!?」 何故にと続ける前に、エミリオが笑って答えた。 仲間ですから、と。 仲間がたった1人で悪戦するのを黙って見ていたくないから、ゴーレルさんに許可を貰って突貫してきましたと。 見れば、2人とも少なからぬ傷を負っている。 だが表情は朗らかだ。 オーイェー。 チョイと、ホロっと来たぜ。 そうだな、仲間(チーム)だ。 何だろう、俺も気負い過ぎてたか。 溜まってきた疲労とかダメージが視野を狭めたか。 笑ってしまう。 笑ってしまう位、気持ちの良い敗北感だ。「なら、背中を任せる。遅れるなよ」 広がった視野が俺に、自分が何をしているか、何処に居るのか、どうすべきか。 それら全てを教えてくれる。 先ずは肩の力を抜いて、両のショートソードを振るう。 自然な流れで振るわれたその2つの切っ先は、俺の両脇に迫ったゴブリン2体の喉元を、一挙切り裂いた。 汚い悲鳴と共に、絶命するゴブリン。 だが、倒れる前に次が迫ってくる。 当然か。 そゆう密集地へと殴りこんでいるのだから。 だが、焦りはもう無い。 次との距離と位置。 或いは足元の状況の把握。 状況の把握が余裕をもって行える。 それは、仲間が居るから。 背中に居てくれるから。 実に素晴らしい。 そして、状況を正確に把握できれば、出来る事はかなり広がっていく。 いくのだ。 攻撃も回避も自由度が上がっていく。「ギィィッ!」 ゴブリンの攻撃をすり足で避け、すれ違い様に一撃を加える。 剣先だけではなく、柄ででもぶん殴れば戦闘不能に持ち込める。 ガキの頃でも馬鹿みたいな握力筋力があったが、最近に到っては指の力だけで絶壁に近い石垣を昇れるってレベルにまで達したのだ。 鍛えたってのはあるが、にしても非常識なレベルである。 まっ、今は単純に有難いけど。 柄で顔を狙えば、目玉を潰さずともそれだけで戦闘力を奪えるのだ。 便利なものである。 人としてどうかと思う面もあるけれど。 攻撃は、我が事ながらも元からパネェって感じでは在るが、開眼したのは回避だ。 当ってもまぁいいやと思ってから、回避が簡単になった。 違うか。 回避に余裕が出来たのだ。 これは回復手段の確立によって、今までと違って、過剰な余裕を見てではなくギリギリで避けようとした事で生まれた余裕だった。 足元だってそうだ。 大きく回避する為のステップ機動は困難だが、細かい回避の為のすり足は簡単だ。 踏みしめながら動くので、足元の邪魔モノが問題にはならないのだ。 その分、足腰に負担が掛かるが、それでも無視出来る程度には治まっている。 するとどうだろう。 回避力が劇的に上昇したのだ。 今までだってギリギリに近いレベルで行っていた回避行動ではあった。 が、基本コンセプトが回復を前提とせずに、バイタルパートへの被害を軽減して継戦能力を維持しようと言う回避だった。 だが今は、多少の被弾は回復を仲間を信じる事で、当っても良いとの必要最小限度の回避行動にしたのだ。 するとどうだろう。 逆に命中が減った、或いは薄皮一枚なダメージは受けるが、次の回避行動に余裕が出来たのだ。 コレってアレだ。 死中に活を求めよってのが真理だったって話しかね、全く。 ん、嫌いじゃ無い。 切る。突く。叩く。潰す。殴る。蹴る。壊す。殺す。 回避が簡単に成ってしまえば、後は作業だった。 ゴブリンの集団を攪拌しながら、前に前にとつき進む。「ギェッ!」 低い位置から逆袈裟で振るわれた切っ先が、ゴブリンを真っ二つにする。 その先には、平地が広がっている。 抜けた、抜けたのだ。 村の中心街を貫通して、奥の広場に到達。 そこにはもうゴブリンは残っていなかった。 周囲を確認。 居た。 もう少し離れた場所に黒山染みたゴブリンが居る。 頑丈そうな建物に集まっている。 アレが村の避難所か。 いや、ゴブリンだけじゃない。 オークやオーガーっぽいサイズの連中も居る。 この村を襲った連中の主力か。 どうする。 迷いはある。 このまま、主力に強襲(カチコミ)を掛けるか、或いは兵法の常道に従って、ゴーレルさん達主力が到達しやすい様に、突破口の拡大を図るか、だ。 強襲を仕掛ければ、救援は素早く行えるが排除には時間が掛かるだろう。 対して主力と共に進めば、救援まで時間は掛かるが排除は簡単になるだろう。 一長一短。 さてどうしたものかと考える前にエミリオが叫んだ。「ビクターさん、速く救援に行かないと!!」 指で避難所を指している。 ミリエレナも堅い表情で睨んでいる。 おけ。 なら行動の方針は決まった。 が、その前にする事が2つ。「Tetu!!」 バックステップと共に旋回攻撃。「えっ!?」「あっ!」 避難所を見て集中力を途切れさせて隙だらけになった2人に迫っていたゴブリンを始末し、それから声を上げる。「ゴーレルさん!! 先行します」 ゴーレルさん達主力は、後方約10m程度だ。 だから俺の声は簡単に通った。 拳を突き上げてたゴーレルさん。 その意図は1つだけだ。 進軍せよ(ゴー ア ヘッド) だ。「行こう。但し、十分に注意しろよ。これから俺達がするのは、強襲だ」 数的優位の相手にカチコミを仕掛けるのだ。 その覚悟を確認すれば、2人はそろって良い顔のままに頷いた。 ん。 覚悟がある奴と一緒に戦えるってのは、気持ちが良いものだ。