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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 0-17 オニゴロシ
Name: アハトアハト◆404ca424 ID:e476735f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/23 11:34
 オーガーと云う化け物が居る。
 懐かしの日本風に言えば鬼であろうか。
 手に持った棍棒なんかで暴れる、正に暴れん坊である。

 そしてオーガー。
 外見は筋骨隆々として角っぽいものまで付いている、正に鬼だ。
 身長は3メートル程度か。
 本物の巨人――ジャイアントって連中が最低でも5メートル台って事から考えれば矮躯ではあるが、俺から見ればまごう事無き巨人。
 何と言っても俺の身長の約3倍なのだから。

 そんなオーガーが、テントを滅茶苦茶にしながら出てくる。

 テントに伸びていた鎖は、コイツ用かよ。
 調子に乗って叫んでしまった俺様、見事に涙目、だ。
 並みの人間のウェスト並にぶっとい棍棒なんぞに当てられては、子供の身体な俺なんて、一発で潰れてしまうだろう。
 ド畜生目。


 だけど退かぬ、媚びぬ、省みぬの不転退。

 ダビテとゴリアテを見よ。
 同じような身長の差があったが、アレも勝ってるじゃないか。

 まぁ投石器で昏倒させてはいるし、俺は投射武器は持っていないって差はあるが。
 だがその程度の差は、オリンピックなアスリート並みにチートな身体能力でカヴァーだカヴァー。
 後、足りない分は努力と根性。
 右手のショートソードが火ならば、左手のショートソードも火なのだ。
 二本持ってる俺様は、炎を持っているのだ。
 否、俺が炎。
 炎となった俺は無敵なのだ。

 ガンホー!
 ガンホー!!
 ガンホー!!!

 宜しい。
 己へのマインドコントロールは終わった。
 笑ってた足も黙った。

 吼えているオーガーを見る。
 笑っているオークを睨む。
 泣いている妹に微笑む。

 両のショートソードを強く握り、構える。
 十字に、では無い。
 右の剣は肩に背負うように、左の剣は緩く伸ばすように。
 かつて生にて覚えていた拳の構え。
 左が触覚であり、牽制の拳。
 右が本命であり、全力の拳。

 それが今、剣で再現されている。
 身で覚えた事は、魂でも覚えていたみたいだ。
 気がつけば、自然と構えていた。
 そして今、実戦を経てこなれて来た、双のショートソードの構えとなった。
 
 深呼吸。
 踏み出す為に足に力を入れ、そして言葉を紡ぐ。


「Souarekasi」


 世界をするりと片付けようなんて思っちゃ居ない。
 だが、俺が剣であれと、身内を救える一振りの剣なれと、その邪魔をする尽くを切り伏せる剣であれと願う程度の事は出来る。
 出来るのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
0-17
オニゴロシ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 馬鹿みたいな勢いで棍棒を振り回しながら仕掛けてくるオーガー。
 木の根か何かの、単純な木の棍棒。
 棘とか、そゆうのも無い、単純な棍棒。

 だがきっと、それが直撃すれば、俺の身体はミンチになるだろう。
 或いは、ミンチよりも酷い事に。

 正に凶器。
 単純にして、人類最古の凶器(推定)だ。
 だが当たらなければどうと云う事は無い。
 きっと。
 多分。
 だと良いなぁ。

 と云うか、その振り回されている棍棒の速度とか精度とかは、まぁブッチャケた話、何時もの訓練相手――母親様のに比べれば、どーとゆー事は無い。
 ああそうか。
 ゴブ助相手にも、冷静に対処できたのは、あの正気を疑うような乱取りなんかで、目が慣れていたのかもしれない。
 後、刃を潰していても、あの母親様の持った武器は凶器を超えたモノとなる。
 であればゴブリン如きに、オーク如きに恐れる筈が無い。

 そしてソレは、このオーガーにだって当て嵌まる。
 力は強いだろう。
 だがしかし、只それだけ。
 大男、総身知恵回りかね、だ。


「Aaaaaaa!」


 吼え、鼓舞する。
 オーガーが笑った。


「ギィィィィッ!!」


 オーガーが吼えた。
 そして疾駆して来る。
 ならば選択肢は一つだけ。

 前進。

 こちらも前に出て棍棒の殺傷圏の内側へ、ショートソードの射程へと捉えるのだ。


「Kiiiiiietu!」


「ギゲェェェッ!!」


 喉を震わせての猿叫と、オーガーの叫びが交差する。
 その狭間に響くのは、鈍いと言うか、硬いというかな重い音。

 縦に振りおろされたショートソードと、横に振りぬかれた棍棒とが激突した音だった。
 右のショートソードは子供の胴体よりもでっかい棍棒の頭に食い込んでいた。
 が、それだけ。
 打ち抜けていなかった。

 馬鹿みたいに手がしびれる。
 ファック。
 コッチの得物は魔法強化されてるんだぞ、なのに何で木の棍棒が断てないっ。
 クソッタレ。
 俺が弱いからかよ、マザーファッカー。

 いや、んな事を考えてる暇は無い。
 追加攻撃、双剣の利点である連撃だ。

 秒単位で意思を組み直して反復攻撃を敢行する。
 右を振りぬく勢いを与える為、引いていた左を鞭の様にしならせながら、下段から上へと奔らせた。


「っ!」


 無茶な動きに、腹筋だの何だのが悲鳴を上げるが、この好機を逃す訳にはいかない。
 オーガーが棍棒を振り上げるよりも先に、そのドテッパラを切り裂けば、其処で戦いは終わる。
 鎧はおろか、服すらも着ていないオーガーなのだ。
 アバラ骨と水平に打ち込めば、切っ先は確実にオーガーの心臓を捉える、捉えるのだ。

 振りぬかれたショートソード。
 だがその刃は、無常にも弾かれてしまった。


「なっ!?」


 手に返ってきた、余りにも重たい感触。
 そしてよろめく様な反動。
 ド畜生、シクジッタ。
 俺が振るったのは左のショートソード。
 刃の無い、刺突剣だ。
 言ってしまえば、やや鋭いだけの鉄の棒でぶん殴った様なものなのだ。
 そら、斬れる筈がない。


「ゴォォォォッ!?」


 悲鳴を上げ、身を揺らすオーガー。
 泣きたいのはコッチだ、クソッタレ。
 本音を言えばオーガーは隙だらけで追撃のチャンスでもあるんだが、コッチもアレだ、止めにと振り抜いているんで、その勢いに体の姿勢が崩れてしまって余裕が無い。
 と云うか、息が苦しい。
 四肢の力が抜けて来ているのが判る。

 息を詰めての連続攻撃は、体へのダメージが大きいのだ。
 特に、こんなバケモノを相手にしていると。

 地面を蹴ってのバックステップ。
 距離を取る。

 追撃は受けない。
 オーガーが痛みで集中できなかったお陰で、安全に離脱出来た。


「ふぅぅぅぅぅっっ、はぁぁぁぁぁっ」


 一挙に息を吸い、そして吐く。

 後は気合だけで四肢に力を入れる。
 俺の手であり足であるのだ。
 であれば、俺の意思に従って、その全力を発揮しろ。

 前を睨みながら、四肢へと鼓舞を出す。
 が、四肢がそれに答える前に、オーガーが動いた。
 世の中、自分の都合だけで動いてちゃいないって事を教えてくれる。
 うん。
 教えて貰うのは嫌じゃないが、このタイミングは正直、勘弁して欲しかった。

 そんなオーガー。
 怒り故にか、瞳に原始の炎っぽいキラメキを乗せて吼えて、暴れて、突進してきた。


「ゴォォォォォォッ!!!」


 吼え声が、俺の体を震わせる。
 純粋な暴力と言ってよいソレに、体が退く。
 退いてしまう。
 その事を不甲斐ないとか思う前に、オーガーが棍棒を振るった。

 振りかぶるってか、凄い勢いでぶん回された棍棒。
 当たれば必死と言うか必殺――必ず殺されてしまう様な一撃が連続してくる。
 トンでもない化け物だ。
 避けていても、その風圧で肌が引っ張られる。

 これぞオーガー。
 そういえば思い出した。
 軍隊のみならず、傭兵や冒険者といった戦闘を生業とする全ての連中にとって、このオーガーをタイマンで倒す事が、一流の証だとされている事を。
 正確には、国の制度なのだ。

 前衛資格者(フロント・ロー)

 日々是行われている血で血を洗う様な<黒>の陣営との抗争に打ち勝つ為、戦野に立つ人間のスキルアップ推奨の一環としてと制定された称号だった。
 獲得者には恩賞とメダルが授与され、そしてメダルを見せれば国営の施設で1割引な値段で利用や買い物が可能と云う、それなんて勲章? である。
 まぁ流石に年金は付かないが。

 割とメリットの大きい決闘Deオーガー殺し。
 だがそのリスクも半端ではない。
 それは制定されて約100年経つが、獲得者が1000人を超えて無いって辺りにも現れていた。

 まぁタイマンの状況に成るのが難しいとかもあるが、それだけ危険な相手なのだ。
 敗死した人間を祭る為の寺院が作られる程に。

 うん、今気づいた。
 何で俺、こんなのとタイマンしているんでしょうか? マヂで。
 10歳にも満たない俺が、何でさ。


 暴威猛威。
 調子に乗ってきたのか、オーガーの振り回す棍棒がトンでも無い勢いになってくる。

 避ける。
 逃げる。
 かわす。

 攻撃をする所か守勢防御で手一杯。
 棍棒の軌道を見て、中らない様にするだけで精一杯だ。

 尤も、棍棒だけを見ていれば避けられる訳でも無い。
 オーガー自身を見て、その挙動を予測するのは当然にしても、他にもある。

 足場を見て次の動きを考える事と、周辺を見て敵の増加に注意する事だ。
 今のところ、足場に問題は無い。
 敵の増援も無い。

 そう思った瞬間だった。
 意識がぶれ、小さく安堵し、集中が途切れた瞬間。
 それを喰らった。

 衝撃。
 天地がひっくり返るような、視野が一気に奪われたような。

 右ほほにある灼熱感。
 喰らった。
 背中からくる衝撃。
 ぶっ飛ばされた、か。

 痛みに呻く、そんな時間が惜しい。
 視界が閉ざされたままに、体を動かす。
 右腕を肩を、その筋肉を総動員して、体をバネ仕掛けのように動かす。
 食らった部位と、その後の慣性から当てずっぽうに相手の位置を測り、それから少しでも距離を取る。

 避けていた筈のを食らったのだ、そんなのを食らわせる相手が、地で呻く餓鬼相手に躊躇するとは思えない。

 必死で逃げる。
 逃げながら、左の二の腕で顔を拭く。
 右でしないのは、頬が出鱈目に痛いからだ。
 裂けてる、きっと。

 ド畜生。

 呻く。
 そして唐突に、視野が白くなる。
 光だ。
 衝撃からの回復だ。
 視野が失われていたのは、ホンの数秒だろう。

 左の二の腕を見れば真っ赤に成っている。
 衝撃もだが、血が目に入っているっぽい。
 頬だけじゃなく、額まで切れているっぽい。

 ヤヴァイな。
 また血が流れて目が塞がれた日には話にならん。

 どうする━━そんな動揺交じりに見たオーガーも、動きが止まっていた。
 激しく胸が動いている。
 息が切れたっぽい。

 同じ生き物だ、無限に動ける筈は無い。
 そんな当たり前の事に、今、気が付いた。
 うん、緊張していたんだろう。
 それが安堵に繋がった。

 思わず拭った額。
 感触が堅かった。
 拭った右のガントレット甲にこびり付いた血は、既に乾きかけていた。
 新しい血は出ていないっぽい。


 このままなら、耐えられる。
 待て俺。
 待てや俺。
 ………耐えられる(・・・・・)、だと?
 ふざけるな。
 妹を助けに来て、母親様やマーリンさんに救われる?

 情け無い
 情け無い!
 情け無いっ!!

 情け無いにも程がある。
 自分の意思でココに来て、戦ってるんだ。
 最初は囮だったが、更に進んだのは自分の意思だ。
 なのに危なくなったら「ママーッ!」かっ? 「助けてママーッ!!」か、ふざけるな。
 オッパイしゃぶりの餓鬼ならともかく、俺は男だ。
 男が自分で決めた事の責任の一つも取らずに、何が男か。

 憤怒の念が俺を炙る。
 内側から滾る。
 滾りが四肢への力と変わる。


「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」


 力の限り吼える。
 吼える。
 吼える。

 吼えれば吼える程に力が湧く、そんな感じがする。
 それを四肢へと素直に伝える。

 疾駆。
 前傾姿勢のままに、頭っからオーガーへと迫る。

 大きいオーガー。
 だが怖くなんて、無いっ!

 その手の棍棒が、真上っから振り抜かれた。
 トンでもない勢いで。
 だがコッチも速度に乗っている。
 右の踏み込みを、そのまま踏ん張って左への勢いを加える。
 視点が下がる。
 無茶な動きに悲鳴を上げる右足。
 だが止まらない。
 止めない。

 次の左足は膝に力を込めて軸とすると、そのまま左足つま先で大地を蹴る。
 前へ。

 狙うのは、伸びきったオーガーの棍棒を持つ腕。
 そのぶっとい腕だ。
 今度は間違える事無く、右の刃があるショートソードだ。


「ゴォオッォ!?」


 罵声の如き、汚い悲鳴。
 だが残念、切り落とせなかった。

 分厚い皮膚が脂肪が、刃をガッチリと止めていた。
 血が噴出すが、致命傷には程遠いだろう。

 足りない。
 足りないのだ。
 なら、足りるまで攻撃を続けるのみ。


「オーガーがっ、何ぼのモンじゃいっ!!! ゴラァァァァ!!!!」


 吼える。
 吼える。
 吼える。

 退くのも逃げるのも無しだ。
 母親様たちを当てにするのも、無しだ。
 俺がっ、倒してやる。

 担ぐように持つ左のショートソードを持つ手に力を込めて、前へ進む。
 オーガーの持つ棍棒、その殺傷圏の更に内側へ。


「ガァァァッッ!」


 如何に棍棒が威力が大きくたって、内側に入れば威力は落ち、殺傷圏は狭まる。
 さっきも出来て、今出来ない筈が無い。

 側を走る暴力の塊。
 左のショートソードで逸らしたりなんて出来ない。
 体格が筋力が違いすぎるからだ。
 だから脇を引き絞め、身に添えて前に進む。

 そもそも、だ。
 母親様との対槍戦闘練習とかの方が、よっぽどに恐い。
 速い。
 鋭い。

 優れているのはデカイだけ。
 アレに比べれば、こんなの恐れるだけ失礼ってモノだ。


 前に出る。


 風を巻いて振るわれる棍棒。
 その風に、焚き火の炎粉が巻き上がる。
 幻想的な風景。
 だがそれは、俺の命を奪いえる風景。

 故に頭を冷やし、冷静に冷徹に動く。
 突くべき隙はある。
 狙うべき部位はある。
 如何に筋力があろうとも、皮膚が強かろうとも鍛えられぬであろう場所が。


「Coolに、Coolに、Coolに」


 念仏の様に呟きながら、目は棍棒の動きを、それを持つオーガーの腕から外さない。
 ヒリヒリする緊張感。
 だが、肝を据わらせてみれば、棍棒は避けられぬモノじゃなかった。
 重さはあるが、速さは無い。
 勢いはあるが、鋭さは無い。
 母親様の本気に比べれば、児戯に等しいとだって言えた。
 だからだ。
 棍棒の殺傷圏、その更に内側へと入り込む事が出来たのは。
 それは同時に、俺の殺傷圏だ。

 今度は、外さない。


「Kiiiiiiitu!!」


 初手。
 左のショートソードを斜め上へと突き上げる。
 刃はやや寝かせ、捻る様に。
 狙うはわき腹、肋骨の隙間だ。


「っ!」


 鈍い手ごたえ。
 切っ先は、分厚いオーガーの皮膚を突き破っていた。
 内腑内臓を撹拌出来る程ではないが、痛痒を感じさせる事は出来た。
 痛みに仰け反ったオーガー。
 その喉元を斬る。

 連続攻撃。

 わき腹につき立てたショートソードから手を離し、その挙動を予備動作に膝を撓めて跳ねる。
 体格差を埋める為、切っ先を届かす為に。

 考えるまでもなく、体が動く。
 動いていく。
 日ごろの鍛錬の賜物、成果だ。

 右肩に背負う様に構えていた右のショートソードを振りぬく。
 鞭の様に撓らせながら。


「EeeeeeEixtu!!」


 手応え、鈍い感触が手に帰って来た。

 絶った。

 そう思って着地した瞬間、思考が真っ白になる程の衝撃を腹に受けた。
 視野が一気に暗くなった。

 浮遊感。

 そして背や、体中が打ち付けられる様な感覚。
 無我夢中。
 何が何だか判らぬが、戦闘中の戦士としてショートソードを手放さぬ様に必死に握り締めながら、意識が飛ばぬ様に耐えた。

 永くも短い時間。

 そして体は止まった。
 体がバラバラになった様な痛み。
 只、背中が硬い事が俺が寝転がっている事を教えている。

 考える暇は無い。
 即、身を捩って立ち上がる。
 さっきの時程にすばやくは動けない。
 連続しての大ダメージに四肢に力が入りづらいのだろう。
 だがそれでも、出来るだけ急いで立つ。
 幸い捻挫等のダメージは受けなかったらしく、立てる。
 立てた。

 息を吐く。


「かはっ、かっくっ!」


 全身が痛い。
 つか、痛くない場所が無い。
 中でも横隔膜へのダメージが、息をキツイものとしているが構っている余裕は無い。
 歯を食いしばって、目を開く。
 視野が狭い。
 腫れたか額からの血かが目に入ったか。
 だが、拭うより先に、狭まった視野で周囲を確認する。
 追撃で殺されるなんて真っ平だからだ。

 見ればチョイと離れたオーガーが喉元から血を流しながら、こっちを睨んでる。
 オーケー 憎いのはお互い様だクソッタレ。


「オオオオオォォォォォォォッ!!!」


 オーガーが吼え、棍棒を大きく振り回している。
 威嚇かもしれないが、今更にソレに恐れるものかよ。
 唾を吐き、右手に力を入れなおす。
 先程より力が戻っている。
 マーリンさんのマジカル磁気ネックレス――アミュレットってか、タリスマンのお陰だろう。
 本気でスゲェぞ、コレ。

 御礼をキチンと言わないとな。
 ああそうだ。
 コレの首を掲げて、勝てましたってな。

 ショートソードを大きく振り上げる。
 背負うのでもなく、蜻蛉でもなく、ただ只管に真っ直ぐ上に。


「掛かってきやがれ畜獣、相手をしてやる」


 挑発、そして口の端を歪めて嘲う。

 言葉は通じなくとも意図、侮辱は通じた様だ。
 悪意は言語を越えるってモンだ。


「オオオオオオオッ!!


 吼えるオーガー。
 棍棒を振り上げたままに突進してくる。
 まるでトラックが突っ込んできたみたいだが、あの時程に絶望的じゃない。
 選択肢は幾らでもあるのだから。
 馬鹿みたいに真正面から行く必要なんて無い。

 だが、その正面から攻撃以外の選択肢は捨てる。
 何故なら、第一撃目を避けれたとしても、それ以降が続かないからだ。
 幾らタリスマンが怪我を回復してくれても、体力の全てって訳じゃない。
 そもそも、回復だってそうそうハイペースなんかじゃない。
 なら、残る体力のありったけで無様に逃げる事に使わずに、真っ向から振り絞る方が良い。
 それが俺の流儀、趣味ってモンだ。

 火急であれど、呼吸はゆっくりとし無心となる。
 意識を全て切っ先へと乗せる。

 駆け迫るオーガー。
 その身へ、無心に腕を振るう。


「Kixetu!」


 絶つ。

 切っ先が棍棒を。
 棍棒を持つ腕を。
 突き出ていた腹を。

 命を、絶つ。

 噴出す血、そして内臓。
 そしてオーガーは、自ら作った血溜まりに沈んだ。

 してやったり、だ。
 ザマアミロイ。







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