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No.8045の一覧
[0] キャスト:高町なのは ~Whose story is this?~ (地雷注意、転生、キャラ死亡展開)[サッドライプ](2009/10/07 13:26)
[1] Innocent sorrow[サッドライプ](2009/07/13 14:18)
[2] Howling[サッドライプ](2009/07/13 14:19)
[3] nephilim[サッドライプ](2009/07/13 14:21)
[4] fre@k $How[サッドライプ](2009/07/13 14:24)
[5] ドレス[サッドライプ](2009/07/13 14:15)
[6] JAP[サッドライプ](2009/08/15 01:41)
[7] LEVEL4[サッドライプ](2009/08/15 01:33)
[8] Ignited[サッドライプ](2009/09/16 16:32)
[9] Meteor[サッドライプ](2009/09/24 07:13)
[10] Black or White?(無印完結)[サッドライプ](2009/10/07 13:05)
[11] private storm(後書き的な座談会集?)[サッドライプ](2009/10/07 13:25)
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[8045] Meteor
Name: サッドライプ◆e9e9ef23 ID:dffb9f54 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/24 07:13
 雷の矢が青空を裂いて飛来する。数はたったの三つ。防御魔法を使う必要も無く二つを身を捻って躱し一つをレイジングハートで叩き落とす。

「君相手に弾幕戦をする趣味は無い。もらった……ッ。」

「見飽きたんだよ、そのパターンは!」

 声が聞こえたのは背後。高速で接近したフェイトに対し僕はこちらから踏み込んでバルディッシュの振り上げを封じつつその勢いのままフェイトの頭に膝を入れる。高度的に僕の方が僅かに高かった為に近接戦の能力が低い僕でも可能だった。

 子供の蹴りにバリアジャケットを抜く力は無いけれど、伝わった衝撃はフェイトの頭部を揺らす。狙い通り意識がブレたらしく動きが鈍ったフェイトに、ディバインシューターを撃ち込みながら後退する。かろうじて防御するフェイト、翳した盾は砕け散り被弾―――、

「そう言わずに。付き合って欲しいな!!」

「………。」

 わざと、か。

 肩を射たれた痛みで頭部のショックによる朦朧とした意識を回復し、フェイトは斧形態のバルディッシュでディバインシューターを切り払う。派手な花火の様にその周りで閃光が散った。

 ふと首筋に違和感を感じ隙を見せない程度になぞる。たらりと血を流す裂けた様な傷の感触が指に帰って来た。膝を入れた時の交錯でバルディッシュがギリギリの所を掠めていたらしい。

 互いに何の確認もなく非殺傷設定を解除済み。その中で下手をすればそのままノックアウトになる自傷的な賭けを躊躇わずに実行したフェイト。後数センチ間違えば頸動脈が切られていたかも知れない僕。

 そんな命のやり取りを小学生二人が繰り広げる。この平和な日本で暮らす常人が見れば、まず現実を疑う状況。自分がその当事者の片割れであるという事実。ゾクリ。肌に走る冷気。躯を包むバリアジャケットが氷の衣と化す。

 無意識に歪む、僕の口元。

「―――――『付き合って』は僕の台詞だよ。趣味じゃないところ悪いけど、其処は僕の間合いだ!!」

 新たにスフィアを追加し、魔弾を斉射する僕。

 それに迷う事なく加速、前進、ギリギリでバルディッシュを振るい、体を捻り、躱し切れずに――しかし掠めた程度では止められない強襲するフェイト。

 間合いを空け、相手の動きに合わせて一部の弾丸を曲線軌道にして弾幕に混ぜる僕。

 フォトンランサーを起動し、自分が突破出来る程度に目の前のディバインシューターの群れに風穴を空けて無理矢理突っ切るフェイト。

 それにカウンターを浴びせる様にチャージを短縮したディバインバスターを放つ僕。

 砲撃に背中を焼かれながらも更に加速し、白のバリアジャケットを貫通して袈裟懸けに戦斧を一閃するフェイト。

 走る激痛と出血に耐え、緊急回避魔法で二の太刀を空振らせながら離脱する僕。

 半分以上が消失した黒外套を切り離し薄いレオタード姿で追い掛けて来るフェイト。

 シールドで敵の突撃を受け、衝撃に逆らわずに後ろに吹き飛ぶ僕。

 激突の際その場に置き土産として残したスフィアの爆発を受けながらそれすらも推進力として食らい付くフェイト。

「まだまだ……っ。そんな蝿が止まる様なトロさじゃ撃ち落としちゃうよ?」

「こんな生温い弾で?やれるものならやってみてよ。―――さあ。さあ今すぐッ!私のバルディッシュが君の首を切り落とす前に!!」

 気が付けば互いが互いに付き合っていた。僕がフェイトの機動戦に付き合い、フェイトが僕の弾幕戦に付き合う。そんな二人のオーダーを両立させる、フェイトが追って僕が逃げる鬼ごっこ。逃げる僕が追い付かれても終わりという事は無く、でも事によるとそれよりも更に物騒な遊戯。二人共が凶器をばら撒き、鮮血溢れる傷を作りながら、喰らい合っている。

(仕方ない、そうなるのは当たり前。フェイトが『鬼』なら僕は………………差詰め『魔王』だから、ね。)

 そんな冗談みたいな思考を他所に鬼ごっこは続く。元々は市街上空の遭遇戦だったのが、無意識に被害を拡大しない様にと考えたのか僕達の進行方向はひたすら上へ上へだった。薄白い雲を振り払い、舞い踊りながら桜と金が天空に駆け上がる。

 高度を増す程、感じる冷たさが増していく。逓減する気温?違う。バリアジャケットの損傷による温度調節のトラブル?違う。確かに冷たいけど、寒さなんか全く無い。

 高度なんか今の僕達には全然関係ない。バルディッシュが死の軌跡を描く度、魔弾が牙を立てて襲い掛かる度、躯の奥の熱が常温の肌に触れる空気すら液体窒素に感じさせる程に沸き上がっているだけのこと。骨髄がマグマとなって溶け出したかの様に全身を火照らせる。

 ちらりと見えるフェイトの表情も、僕の顔も勿論本当に児戯でもしているかの様に赤らんだ笑み。いや、それにしては些か凶暴過ぎるかな?どうやらこの殺し合いの中で沸々と湧く衝動を共有しているらしい。楽しい、という訳でも気持ちいい、という訳でもない。ただ熱い。命のやり取りが、闘争の駆け引きが、どうしようもなく熱いだけ――――!

「「……ッッッッ!!!」」

 理屈を付けるなら、ヒトが理性の奥底に眠らせた筈の獣の戦闘本能―――いや、僕もフェイトも理性と知性は総動員でこの決闘に注ぎ込んでいるからこの表現も違うかも知れない。それよりも。

 幾十度目かの防御魔法と魔力刃の激突がスパークして僕もフェイトも弾け飛ぶ。鬼ごっこが一旦の硬直を見たのは遥か見下ろす街並みがぼやける程の高空だった。

 当然この硬直は熱が引く事を意味なんかしない。お互い全身の傷からの出血で体温は低い筈。感じる冷気も絶対零度を更に振り切った。それでも顔を見合わせて構える。ともすれば戦わなければならない理由さえ忘却の彼方かも知れない。

 飛行魔法に更なる力を注ぎ、同時に前に出る。この距離では僕が弾幕を張る前にフェイトの刃が届くから。フェイトはバルディッシュを鎌形態に、僕はレイジングハートだけにシールドを纏わせて即席の鈍器に。振り被って。時間にすれば一瞬にも満たない間に、僕とフェイトの距離は零へと―――、

「―――そこまでだ!管理外世界<ここ>での戦闘は、」

「「どけ邪魔だああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」」

 ぐしゃり。ぞぶり。激突の直前に竹内希とフェイト・テスタロッサの中間に突如展開された魔法陣から現れたなんか黒い物体が、振り下ろした杖に変形する程殴り潰され薙いだ大鎌に半ばまで斬り食われた音だった。

 差された水に若干どころでない苦々しさを感じながらも、フェイトに目線を飛ばす。

―――次の手ぐらいあるよね?

―――当然。

「アクセルバスターーっ!!」

「サンダーレイジぃっ!!」

 もっと。もっと、フェイトと。戦え。熱に従いそのまま超至近距離で閃光をぶつけ合う。真ん中にいた黒いのは塵も残らず消滅した。僕達も灼熱の混沌とした衝撃の余波をまともに食らい意識が飛ぶ。

(マズ……っ!)

 ほんの、それこそ紙一重の差。意識を取り戻したのが僅かに遅れた僕が、ライトニングバインドで拘束された。

「さて。此所でジュエルシード全部渡してくれたら、逃がしてあげてもいいけど。」

 不敵な表情で、フェイトが言う。その周りにはさっきまで僕が操っていたスフィアの数倍の雷球。そこからフェイトの命令で千に届く光の矢が襲い掛かってくるんだろう………、

「ふん。答えが一つしかないと知っていて、なおかつ君自身がそれを望んでいて。それでも訊くの、悪趣味って言わない?」

「………くすっ。」

 フェイトが場違いにも和やかそうな笑いを上げた事に気付いたけれど、バインドから抜けようともがきながら僕は叫ぶ。

「白々しい。僕は君に何一つだってくれてあげないよ。ジュエルシードも、僕の命も、世界もっ!ここで君を倒す、この世界を壊す様な真似はさせない。」

「くすくす。まるで正義のヒーローみたいな台詞だね。かっこいー。なら私は悪の魔女かな?」

「何を今更。僕は僕自身の都合で『正義』になる。君が『悪』を選んだ様に。言った筈だよ――――――それが自分で選んだキャストだから!!!」

 フェイトの笑いが僕の台詞を聞く程に深くなっていく。それが哄笑になるまで長くは掛からなかった。

「くすくすくす、あは、あはははははははははははははははははははははははははははははははっっっっっっ!!!そうだよ、それでこそナノだよ!!正義も悪も真実も嘘も、美徳も外道も秩序も無法も常識も狂気も干渉も無関心も饒舌も沈黙も理想も堕落も誠実も横暴も信念も怠惰も、何もかもをさりげなく自分の都合の良い様にねじ曲げてそのくせどうでもいい事で中途半端に悩んでそれらしい答えを見せてそして結局は力で押し通すっ!!」

「それがオリ主の特権ってやつだからね。」

「おりしゅ?は知らないけど。…………でも、ねっ。そんなナノと自分勝手をこうやって命懸けでぶつけ合って。痛くて、苦しくて、そして熱い。熱くて、焼けそうで、肌が裂けそうなくらい冷たい。その冷たさこそが世界!そんな世界に私は一人確かに在る!君と競り合う一瞬一瞬毎に、私が『フェイト・テスタロッサ』でいられると確信するんだ!!」

 ふと、フェイトの笑いが途絶える。表情は相変わらず笑顔だけど、その硝子玉の様な瞳の端から涙が零れ落ちた。右目からだけという歪さで。

「そう。私の人生で一番幸せな事は、君に出会えたという運命の様な偶然なのかも知れない。これから何かの奇跡が起こって私が母さんに愛されたとしてさえ、多分これほどの幸せじゃない。それはアリシアが既にされた事だから。君が私だけのものを刻んでくれるこの熱さ………、っ!」

「…………?」

「ふふ、えへへ、そうか、ああ、そうなんだ!これが恋なんだ。この溢れる想い、恋なんだ!!好き、好き好き好き好き大好きだよナノっ!――――――――――――――――――――だから、あはっ、死んで?」

 途中で何かに気付いて自己完結したかと思うととんでもない結論に達したフェイトは、まるで麻薬中毒者の様に歪な笑顔を更にだらしなく緩ませた。光を湛えないガラスの瞳と片側だけの涙はそのままで。

(あ、悪魔………?)

「もし全部終わって君も私も生きてたらその時は飼ってたくさん可愛がってあげるから。くすくす、うん、それもそれでいいね。取り敢えず。フォトンランサー、ファランクスシフトッッッッッッォ!!!!!」

 寧ろ自分が言われる立場になる筈なんだけどつい出てしまった心の声に返事は当然無く、重装突撃の軍列は全て僕一人を目掛けて殺到した。


 視界を埋め尽くす光の矢が向かって来るのとほぼ同時に、やっとの事でバインドを力ずくで破壊する。

(まさかのヤンデレ乙。けど………、)

 フェイトの言いたい事は分かる。凍えつく世界と沸きたつ自分、相手と魔法を交わす度にそれらが実感として浮かび上がって来る。その熱が恋愛感情だというのはフェイトの幼い無知故の勘違い………だと思いたいけど、確かに僕も彼女と同じものを感じているとはっきり言える。

 ただ。この戦いの一側面を見れば、お互いに自分が自分である事を証明する為の戦いと言える。フェイトがフェイトである証明を。竹内希が竹内希である証明を。特にフェイトについて言えば、さっき言葉端から窺えた様にもう自分が母に愛される事があるとはまるで信じていないらしい。それでもジュエルシードを集め続けるのは自分が自己を貫くという証の為、或いは本当に僕への執着か。

―――どっちにしても、主体性が無いっていうんだよねそういうの。

 帰るという約束がある。守りたい場所がある。フェイトは戦う為だけにここにいる。けど僕は、勝つ為に此処にいる!

「だから、僕は君に何一つ渡さないと……言っているだろうにッ!!」

 臆する暇は無い、全速前進。フォトンランサー・ファランクスシフトは、対象一人に向けるには弾数が多過ぎて一度拡散させてから曲線を描いて収束させないといけない。つまり前進すればする程僕に当たる矢の数は相対的に減る。それでもフェイトの決戦用の魔法なだけあって、腕を腹を脚を肩を胸を抉る様な衝撃が次々と襲うけど、それでも。

 雷弾の雨を受けながら飛ぶ。バリアジャケットの強度に任せた無様で強引な前進。左腕と右脚が悲鳴すらあげなくなった。他にも色々な場所が鈍くイカれてる。肋骨くらいなら軽く折れてるのかも知れない。左目の視界を塞ぐ、赤い液体。それでも。

『Shield bind.』

「……っ!?」

「はぁっ、はぁっ………捕ま…ぇた。今度は、僕の……っ、番、だね。」

 魔力弾の嵐を抜け切って伸ばした右手がフェイトの体に届き、その瞬間僕を中心として彼女よりも更に外側の背後に展開された半球状のシールドに磔にする。触れる程の至近距離でしか使えない代わりに―――シールドである以上当然の事だけど―――ただ頑丈で解除するにもバリアブレイクとバインドブレイクを同時にしなければならない、もともと対アルフ用に考えていた魔法。

「受けてみてよ………ディバインバスターのバリエーション!!」

 磔にされたフェイトを見ながら、レイジングハートに魔力を収束させる。

「これが僕の――、」

 杖とそれを握る僕の腕まで見えなくなる程に渦巻く魔力。

「僕なりの――、」

 大気中の魔力残滓まで掻き集め、桜色の極光とさせていく。

「僕だけの――っ、」

 魔力残滓と言っても、主なものは僕らが今まで駆け上がって来た軌跡に散らばるもの。つまり、地表からだと空に伸びていく粒子で出来た光の塔が現れた様に見えたかも知れない。

「全 力 全 開 !!!!!」

 バインドにより力を注いでいる為に、なのはの様にこの収束させた魔力を砲撃に加工はしない。そもそもこの至近距離でわざわざ砲撃にする意味が無い。ただこのバインドの相乗効果で対一・対人では星光の破撃を超える、『オリジナル』魔法。

「ミーティアライド………ブレイカァァァァーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!」

「――――――っ。」

 収束魔力に与えられたのは軽い方向性だけ。それがシールドに吸い込まれ、暴れ狂い、フェイトの身体を焼き潰す奔流となる。走り抜けて内包する威力を解放してから半球面に沿って後ろへ流れて行って、でも次から次へと注がれる高エネルギーが対象を殲滅すべく牙を立て続ける。

 やがて収束を無くし薄い濃度の魔力となって後方へと解放された光が、推進力となってもはやフェイトの姿を完全に押し隠す程に桜光渦巻く半球と僕を押し始めた。

 ゆっくり。加速。加速。加速、加速、加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速―――――――ッ!

 重力加速度に増して加えられ続ける力が僕達を地表向けて導く。その光景はまるで尾を引いて墜ち逝く流星。

 音速を突破する。生じるソニックブームも、相変わらず注がれ続ける収束魔力も、やがて落着で叩き付けられる衝撃も。全てはシールドバインドの術式により焦点にいるフェイトに集約する。一人を破壊する為だけに、全ての力を一点に。

「はああああああぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 炎が生まれる。最初から何もかも簡単に崩れる過ちだらけの僕達を灼き尽くす様に。

 そして、墜ちる光。

 流星が海鳴沖の海底まで突き抜けた瞬間。高さ数メートルの津波が観測された、らしい。



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