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No.8045の一覧
[0] キャスト:高町なのは ~Whose story is this?~ (地雷注意、転生、キャラ死亡展開)[サッドライプ](2009/10/07 13:26)
[1] Innocent sorrow[サッドライプ](2009/07/13 14:18)
[2] Howling[サッドライプ](2009/07/13 14:19)
[3] nephilim[サッドライプ](2009/07/13 14:21)
[4] fre@k $How[サッドライプ](2009/07/13 14:24)
[5] ドレス[サッドライプ](2009/07/13 14:15)
[6] JAP[サッドライプ](2009/08/15 01:41)
[7] LEVEL4[サッドライプ](2009/08/15 01:33)
[8] Ignited[サッドライプ](2009/09/16 16:32)
[9] Meteor[サッドライプ](2009/09/24 07:13)
[10] Black or White?(無印完結)[サッドライプ](2009/10/07 13:05)
[11] private storm(後書き的な座談会集?)[サッドライプ](2009/10/07 13:25)
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[8045] fre@k $How
Name: サッドライプ◆a5d86b40 ID:3546bf84 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/13 14:24
<Interlude:side Fate>

「フェイトっ、どうしたんだい!?」

 多分現地人の、白い魔導師の男の子と会って戦った後拠点のマンションに帰り着いたわたしを、使い魔のアルフが出迎えてくれた。狼素体のこの子とはリンクで繋がっているから、わたしの感情の乱れを感知してか心配そうな表情を向けてくる。

「何かあったのかい?フェイトが失敗するとは思わないけど、なんかフェイトが苦しんでる様な……っ。」

「ありがと、アルフ。」

 わたしは靴を脱いで上がり、ソファーに座るとずっと落ち着かない目で見ているアルフにおいでおいでする。狼形態で寄ってきたアルフをきゅっと抱きしめた。

「あったかいね………。」

「フェイト、本当にどうしたんだい?何かあったのなら言いなよ、あたしはフェイトの味方だよ?」

「うん。実はね―――、」

 わたしは、話した。柔らかい顔立ちをした栗毛の、でもどこか不気味な男の子。バルディッシュと同タイプのインテリジェントデバイスを持ってピンク色の魔法を操り、同時にわたしのしている事が立派な犯罪で通り魔だと突き付けた子。名前は、ナノと呼ばれてた。

 そして、男の子をナノと呼んだわたしと同じ金髪の女の子。だけどわたしよりよっぽど強い目をしてた。魔力も持ってないのにAAランクの戦闘に割り込んで、骨が折られてるのにわたしをきっと睨み付けてきた子。ナノにはアリサと呼ばれてた。

 その、骨を折った―――人を傷つけた感触がまだ手に残ってる事。

 母さんの為にしている事が悪い事だと断言したナノの嘲り声がまだ耳に残ってる事。

 アリサの叫びが、まだ心の中で響いてる事。

「わたし、母さんに笑って欲しくて……でも、犯罪だって。アリサは、奪われたって。わたしに奪われるって。」

 ナノハ、っていう子の事はよく分からないけど、ナノに関してはあの場で倒して持っているジュエルシードを貰うつもりだった。でも、アリサからすれば傷付けられる事に変わりは無い。非殺傷設定を使ってたかどうかなんて関係ない、わたしが母さんやアルフを同じ様にされたら、間違いなく悲しんで怒る。

「分からない……分かんないよ………っ。」

 ついぽろぽろと泣き出してしまう。アルフはその涙を舌で舐めとると、優しく声を掛けてくれた。

「じゃあ、止めようよフェイト。そんな想いしてあんな鬼婆の命令を聞く事ないよ。今からでも遅くない、どっか遠くに―――、」

「………それは、ダメだよ。母さんが一人ぼっちになっちゃう。」

「フェイトっ!!」

 アルフが声を大きくする。わたしの事を心配してくれてるのは判るけど、わたしは涙声でもそれを遮った。これだけは譲っちゃいけない。

「わたしが頑張って、母さんに笑ってもらえる様にしないと………。」

「~~~~~っ。………そう、ならフェイトの好きにしなよ。言ったけど、わたしはフェイトの味方だからそいつらぶっ潰してやる。こんな健気なフェイトに甘ったれた生活してる奴等が何か言う資格なんか無いんだ、遠慮する必要も無い!力ずくでやっつけちゃえばいい。」

「力ずく、で………。」

 アルフの提案は、すごく楽に思えた。言葉だけじゃ、何も変わらない。だからわたしは顔を上げてその選択を―――、

―――採る前に、玄関のチャイムに割り込まれた。

「誰だろう?」

 マンションのオートロックではなく玄関の表示が出てる。でもこの地球にわたしの知り合いはいないし、間違いかなと思いながらわたしは部屋の玄関を開けた。

 そこに立っていたのは、銀髪のショートカットの綺麗な女の人。スーツの内側から金の印の付いた黒い手帳をわたしに見せて、言う。

「やあ。ボクはリスティ·槇原。善良な一般市民のみんなの味方な警察官だ。テスタロッサさん家で合ってるよね?」

「あ、はい。そうですけど、でも、警察?」

 警察、現地の治安組織。さっきまでの犯罪という言葉がまた浮かんできて、体が硬くなった。それに、この女の人、話し方は軽い感じだけど顔は全然笑ってなくて寧ろ苛々してる。でもわたしが見ている事に気付いたのか、

「ああ、悪いね。ちょっと歳が離れた妹みたいに可愛がってた子が訳の分からない殺し方されててね、気が立ってるんだ。」

 笑顔を浮かべた。わたしが原因じゃないらしい。この分だと、ナノの言ってた犯罪とも用件は違うのかもしれない。

 安心してほっと下に息を吐いた。だから、人型で様子を見に来たアルフを見るリスティさんの目が鋭くなり、笑顔がまた消えたのを見逃した。そして、どこからともなく何か書かれた紙を取り出して見せながら言われた言葉にも、理解が追いつかなかった。

「――――さて、アルフ·テスタロッサ及びその被保護者フェイト·テスタロッサ。密入国、公文書偽造その他四件でこの通り令状が出てる。叩けばまだまだ埃が出そうだけどね。先日の海鳴市少女猟奇殺人事件の重要参考人としても、署まで同行願おうか。」

<Interlude:out>

「月村家とバニングス家に日本警察、間違っても舐めちゃいけない、かな。」

 フェイト……というかアルフがあんな立派なマンションを借りられたのは何故か。引っ越しをした事のある人なら判るだろうけど、あれはかなり煩雑な書類の整理が必要になる。中でも重要なのが住民票と騰記名簿。そんなものをこの世界に来たばかりの二人が持っている訳がない。それどころか戸籍も日本国籍も持たない二人は、客観的に見れば密入国者以外の何者でもない訳だ。

 そもそも、フェイトは子供でアルフに至っては法律上『器物<モノ>』扱いされてもおかしくない狼女。娘を傷物にされて怒り心頭のデビット·バニングス氏がでっち上げるまでもなくその辺の書類が偽造されている事など分かりきっている。魔法がどこまで優秀かは断言出来ないけれども、偽造されてると判っててその証拠を見つけられない程日本警察も馬鹿じゃない。ましてこの世界に来たばっかりのアルフの俄細工じゃ、ね。

 斯くして利用するようだけどアリサやすずかの家の方から手を回してもらって、警察を動かせば指名手配犯アルフ&フェイト·テスタロッサの出来上がり。フェイトの情報をどう教えるか悩むまでもなく人相だけからその所在地まで突き止めていたバニングス家の情報力には逆に呆れもしたけど。

「まあ、そういう事です。」

「………………………え、えげつないな。」

 ジュエルシード探索、今日のお守り役である恭也さんにフェイトの事を詳しく話すついでに前述の対応を説明した。物凄く引かれてるけど、まあ知らないふりをしよう。

 二人は警察から逃げて姿を眩ましてるらしいけど、ジュエルシードを集める為にはなのはの件で大量に警官が動員されてる海鳴でも離れる事は出来ないだろうね。そうなると、今頃身動きが取れなくなってる筈。

 そして、なのはが殺されたのと前後する様に海鳴に現れた不審人物を警察はどう思うか。まず無関係ではないと思うよね。実際全く無関係じゃない訳だし。

 それら全ての状況が、警察の目を恐れて迂闊に人前に出られなくなったフェイトの居場所を削っていく。勿論警察が彼女らを捕らえるのを期待してはいないけど、嫌がらせにはなる。未知の土地での探索作業、しかも拠点無しという状況が幼い子供にとってどれだけの負担になるか。

「向こうは犯罪者だし。大義は我にあり、無ければ作ればいい。誰の言葉かは忘れたけど。」

「………。」

「―――――止めますか?恭也さん。」

 恭也さんが真剣な顔でこちらを見ているのに気付いて、立ち止まる。

………自覚はある。僕がやっているのは外道とかそういう類の所業だ。恭也さんの心の中では、既に道を踏み外している子供を正してやるかどうかという迷いが迫ぎ合っているのかも知れない。

 だけど僕に覚悟は無い。恭也さんは視線を僕に捉えて離さない。怖い?違う、怖いのは現状を楽観して最悪の結果を招く事。なら何故その視線が痛い。最低の悪と蔑まれる事が、僕は―――、

――――悲しい?

「いや。」

「……っ。」

 思索を遮ったのは、先に視線を外した恭也さんだった。何故、と困惑する僕の頭に手を乗せて彼は聞こえるか聞こえないかといった具合の声量で語る。自分を納得させる様にも感じる言い方で。

「きっと。大切なものを守る為に、それは必要な事だから。」

 言ったきり、恭也さんは前を再び歩き出す。その背から読み取る事の可能な感情は無い。

 そんな背中を見つめながら、僕は胸の支えがどこか削れたのを感じていた。

―――何故支えが取れたのか。

―――そもそも支えとは何だったのか。

―――何の為に、恭也さんに話さなくてもいい事を話したのか。

 浮かび行く疑問が、更なる支えを増やすのを感じながら。

(………駄目だ。なのはが死んでから、どうも『感情』を持て余してる気がする。)

 それにすら、何故?と浮かぶツカエ。首を振って打ち消し、僕は恭也さんの背中を追って歩き出す。

 結局その日は、何の妨害もなくジュエルシードを一つ封印した。



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