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No.794の一覧
[0] 正義の味方の居る世界[二次元人間](2005/06/05 00:26)
[1] Re:正義の味方の居る世界[二次元人間](2005/06/05 00:27)
[2] Re[2]:正義の味方の居る世界[二次元人間](2005/06/05 00:29)
[3] Re[3]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 00:29)
[4] Re[4]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 00:31)
[5] Re[5]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 00:37)
[6] Re[6]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 00:48)
[7] Re[7]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 00:51)
[8] Re[8]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 01:02)
[9] Re[9]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/05 22:06)
[10] Re[10]:正義の味方の居る世界 [二次元人間](2005/06/11 06:03)
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[794] 正義の味方の居る世界
Name: 二次元人間 次を表示する
Date: 2005/06/05 00:26
それは、遠い遠い■■士郎最後の記憶。
燃え盛る黒い炎。■■士郎を規定する全てのものを燃やし尽くした炎。
逃げようとして、力尽きて、倒れ付した先に触れた変な泥。
白い靄のかかった視界の向こうに人がいた。
その人は、たくさんの人に苛められて、
本当にたくさんの人に罵られて、
その人は何も悪くないのに、無理矢理『悪』だと決め付けられて、
本当に『悪』くなってしまった。
その人がかわいそうだったから、本当にかわいそうだったから、
助けたかった。
どうせ自分は、ここで死んでしまうのだから、せめてその人だけは
助けたかった。
でも、自分の力はあまりに小さくて、どうしようもなく小さくて、
その人をそこから動かすことはできなかった。
そうこうしているうちに、自分は本当に力尽きて、意識は黒く落ちていって、
■■士郎は死んだ。
あの人は、今でもあの場所にいて『悪』とされ続けるのだろう。
助けてあげたかった。
それが■■士郎最後で、衛宮士郎最初の
『助けたい』人。


 ……とても、懐かしいものをみた気がした。
こんなものをみてしまうなんて、いよいよ限界が近いらしい。
聖杯戦争から一年。高校を卒業した後、藤ねぇやみんなには秘密で
冬木を飛び出した。もちろん、『正義の味方』になる為に。
そして、今俺は、死にかけている。
さすがに、三流魔術師の分際で死徒の相手は荷が重すぎたみたいだ。
倒したはいいものの、左腕はあさっての方向に曲がるは、
内臓は破裂してるは、大量出血してるはでもう5分と持たない状況だ。
でも、まったくといっていいほど死の恐怖は感じなかった。
むしろ、死の恐怖を感じていない事の方が遥かに怖かった。

 今、彼の心の中にあるのは街に入る前に死徒を倒せた安堵感と、
こんな中途半端な所で『正義の味方』なりきれなかった悔しさだけだった。

大量の出血で、まともな思考は紡げず霧散していく。
――ああ、仰向けじゃなくて良かった、空が見える――
とか、
――でも、赤いな。あの時みたな朝焼けなら良かったのに――
みたな、どうでもいい事ばかりで、本当に大事な事は何一つ出てこなかった。
――いや、本当に大事なものなんて、からっぽの俺にあるのだろか――
それは、意識下にでる直前に無意識へと引きずり落とされた。
 そして、彼がゆっくり死を向かえようとしたそのとき、
一人の女性が彼の顔を覗きこんだ。
「君、大丈夫?正気?」
蒼い瞳、赤い髪。
士郎は、焦点の定まらない目でその女性を見た。
「いや、二十歳にもならない男が死ぬ間際なのに、
そんな真っ白な心でいられるのが不気味で不気味で」
なんだか、昔もこんな事があったような気がする。
「私は蒼崎青子。まさか君、このまま死にたいなんて言うんじゃないよね?」
彼が返事が出来ないのを知っているのか、元々聞く気はないのか、
彼女は、士郎を担いで歩きだした。
「あっ、そうだ」
歩みを止めて、担いでいる彼の耳元で、いたずらを告白するように言った。
きっと彼女は、意識も全て失ってしまったと思っているのだろう。
確かに、士郎は意識の大部分を失っていた。
でも、彼は確かに聞いた。
その言葉を聞いていた。
「私はね、魔法使いなんだ」
――僕はね、魔法使いなんだ――

 衛宮士郎は、加速する。


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