海岸線に一人佇み、ぼんやりと手の中にあるカードを眺めながら、私は大きなため息をついた。
……世界は理不尽と不公平でできている。
そんな事は何処の世界だって同じだし、決して変わる事がない。
私は神様じゃないから運命を操る事なんて出来ないし、決まってしまった運命を覆すような奇跡も起こせない。
ここでの『奇跡』の定義は何かなどどいう不毛な会話は置いておくとして、多少の変化はあれど、大きな『流れ』には逆らえないというわけだ。
だがしかし、この世界の神様はどうやら私を使って好き勝手遊ぶのが趣味らしい。
そんな八つ当たりにも等しい想いを抱きながら、私は先程引いたばかりの受験番号が書かれたカードを見つめていた。
「今回は流石に死ぬかもしれない……」
――四次試験開始前の籤引きの時の話だ。トップバッターであるヒソカが箱から籤を引いたとき、そのカードを私に向かってかざした。
220番。――私の番号だ。
因みに私が引いた番号は384番。原作でヒソカが引いた番号だった。
ああ嫌だ。本当にうんざりだ。もう棄権してしまいたい。
でも、ここで棄権してしまったら私は先生に幻滅されてしまう。ここで強敵に尻尾を巻いて逃げ出す様な弟子を、先生はきっと許さない。
――それだけは、絶対に嫌だ。
「……詰んでるよ、この状況」
でも、此処では退けない。退く事だけは出来ない。
すでに運命はカードを混ぜた。先が見えない戦いなのに、『勝負(コール)』を叫ばなきゃいけないなんて、本当に神様は私の事が嫌いらしい。
私にある手持ちの札は『ヒソカの原作情報』のみ。それでも私如きのスペックではとてもじゃないが彼には届かない。
だが、届かないなりに抜け道はある。
私の能力は、ある意味初見殺しに近い。それは不幸中の幸いとも言えるが、果たして上手くいくだろうか。
――否。絶対に生き残らなくてならない。たとえどんなに汚い手を使っても。
矜持なんて知るか。そんなもの生き死にの前にはただのゴミだ。
だってしょうがないじゃないか。……私は、弱いんだから。
◆ ◆ ◆
「エリス」
「あ、お帰りミルキ」
情報を集めてくる、と言って去ったミルキを待つこと数十分。彼は少しだけ苦い顔をしながら私の前にやってきた。
「ゴンのターゲットが分ったよ。――やっぱり44番、ヒソカのままだった」
「……そっか、ありがとう」
こうなってくると答えは簡単だろう。原作の状況に私がスライドした。それだけの事だ。
私のターゲットが384番だから、そいつのターゲットがゴンなのだろう。
ぼんやりと空を見上げてみたが、中々考えがまとまらない。さぁ、どうしたものか。
「あのさ、エリス」
「何?」
ミルキがどこか気遣わしげに、言い辛そうにしながら口を開いた。
「今回は棄権した方がいいんじゃない?」
「――――は?」
自分でも思っていた以上に低い声が出た。
今、何て言った?棄権?――誰が?
そんな私の不機嫌さが目に見えて分かったのか、ミルキは少し焦ったように言葉を続けた。
「い、いや、別にエリスが負けるとか思ってる訳じゃなくてさ。シズクもこの試験に参加してるんだし、あんまりあいつ等に目を付けられるような真似をしてほしくないっていうか、その、試験は来年もあるんだしさ――」
「…………」
ギリッ、と無意識のうちに奥歯をかみしめる。
――分かってる。落ち着け。別に私は貶されている訳じゃない。ミルキは純粋に私のことを心配して進言してくれているだけだ。
私は弱いから、ヒソカになんて勝てるわけがない。きっとそう思っているのだろう。
――でも、それでも、
――――私は友達に『来年もある』だなんて言ってほしくなかった。
一緒に頑張ろうと、そう言ってほしかった。
……意地を張るのは、私の悪い癖だ。でも、虚勢を張るのには慣れている。
「……棄権はしない。協力も要らない。――私一人で十分だよ。だから、」
――これから一週間、さよならだね。
そう言って、私は背を向けた。
私は知らない。
私がそう告げた時、ミルキはひどく絶望した表情を浮かべていたことを――。
◆ ◆ ◆
此処で唐突なのだが、我等が主人公エリス――ではなく、本来の主人公であるゴン=フリークスに焦点を当ててみようと思う。
彼は本来の筋書きに則れば、この四次試験においてヒソカとの決定的な因縁を作る事になる訳だが、今回のケースは何の因果か知らないがエリスというイレギュラーが生じている。
もちろん現時点ではそんな未来が在りえたことを彼は知らないし、これから先知る事も無いだろう。
――だからこそ、
――だからこそ、彼は知らない。
――大筋はどうあれ、間違いなく今夜、自分の『未来』が書き換わる事を。
茂みに隠れ、息を殺し、気配を殺しながら、彼――ゴンはヒソカの尾行を続けていた。
深夜の静寂を裂くかのように、彼のターゲット――ヒソカ―― は走り出した。
その姿には先程の獲物を探すような様子はなく、何か確信をもって目的地に向かっているようだった。
試験開始からすでに三日、昨日ヒソカを発見してからゴンはずっと機会をうかがっていた。
……森の中を走っているとは思えない程の速さだが、頑張ればついていけない事もない。
―――ヒソカが誰かを『狩る』瞬間にプレートを奪う。
それがゴンの作戦だった。シンプルでいて、大胆。とても彼らしい作戦だろう。
――好血蝶を使ってヒソカを見つけ出したはいいんだけど、クラピカとレオリオが狙われそうになったときはヒヤヒヤしたなぁ。
そんなことを考えながら、ゴンは小さく息を吐き出した。
何とかやり過ごせたみたいで、二人に怪我が無くて本当に良かった。本当にそう思う。
少し離れた場所にいる自分ですら、ヒソカの殺気は重苦しくて辛いのだ。正面切って体面をしてしまった二人の事を思うと、少しだけ心配になってくる。
―――走り出してから一分程して、ヒソカが立ち止まった。
ゴンも続いて、見つからないギリギリの場所で足を止め、草陰に隠れる。
その後すぐに、パンッ、という何かが弾ける音が聞こえたが、何の音かは分からない。
少しだけ不思議に思ったが、特に何かが起こるわけでもなく、異臭もしないし毒という訳でもなさそうだった。
そんな事よりも、今はヒソカの動向を窺う方が大切だった。
きっと、ゴンがヒソカのプレートを取る機会なんて今回を逃したら次はないだろう。だからこそ、慎重に行かなくてはならない。
そう思い、ゴンはヒソカの見ている方向を見つめた。
――ゾッとするくらいの殺気だ。
思わず、冷や汗が流れる。
凄まじい殺気を出しながら、ヒソカは前方の影を見ていた。それも酷く、楽しそうに笑いながら。
月に掛かっていた雲が、ゆっくりと流れていく。それにつれて、ゴンの目にも影の姿がはっきりと見え始めた。
月明かりに照らされた竹林の中心に、静かに佇む女性。
―――受験番号220番、『エリス=バラッド』。
多くの受験生から警戒され、畏怖されている不可思議な人物。
いつも着ていた黒いコートは、今は何処にも見当たらない。それでもなお『黒』という印象を受けるのは、その漆黒の髪と瞳のせいだろうか。
レオリオやキルアからは絶対に近づくなと言われてたけど、クラピカの三次試験の話を聞く限りではそこまで危険な人ではないんじゃないかと思う。
「やあ、随分と探しちゃったよ◆こんな所に居たんだ◆」
「こんばんは。……随分と機嫌がいいみたいですね。ああ、不愉快です」
刺すような殺気をその身に受けながら、彼女は表情一つ変えずに淡々と話し続ける。
……信じられない。なんであんなに平然としてられるのだろうか?
離れた場所に居る自分でさえ、冷や汗が止まらないのに。
人は理解できないものを恐れるというけれど、それはゴンとて例外ではない。
エリス=バラッドは、ヒソカとはまた別の意味で、ゴンの『理解の範疇』にいない。そんな気さえした。
「つれないなぁ。そっちから呼んだくせに、それはないだろう?」
「楽しいお喋りがしたいならば、他の人の所へどうぞ。――生憎私は口下手なものですからね」
クククッと笑うヒソカとは対照的に、エリスはずっと無表情のままだった。
「大丈夫◆これからお喋りよりも、もっと楽しい事をするんだからさ◆」
ヒソカは邪悪な笑みを浮かべて、一歩、また一歩とエリスに近づいていく。
そんなヒソカの行動を見て、エリスは右手で顔を覆うと先ほどの淡々とした様子から一転して、ケタケタと笑い始めた。
そのいきなりの奇行に動揺を隠せない。――まるであれでは、ほんとうに人が変わった様に、ゴンにはみえたから。
「……何がおかしいのかな?」
彼女の変わり様を怪訝に思ったのか、ヒソカが立ち止まってそんな事を聞いた。
「何もかもだよ、奇術師。――――『今宵開かレるは世にモ奇妙な仮面舞踏会!!! サァ 皆様ぺるソナの御用意ハ出来ましタか!!??』」
彼女の狂ったような、それでいて、歌うような言葉が響いた瞬間、この場の雰囲気が大きく変わった。
まるで異空間にでも紛れ込んでしまったかのような、不気味な気配が辺りを包み込む。
エリスは後ろに飛んでヒソカと距離を取りながら、なおも言葉を続ける。
『クルリクルクル踊り続ケる聖者ノ娘 グラリグラグラ傾く儚キ天秤 尚モ踊るハ誰が為?』
彼女の口から紡がれる言葉、―――それは、紛れもなく『歌』だった。
ただ、それはゴンが今まで聞いてきた『音楽』とは全然違うものだと、漠然と思う。
先ほどのヒソカの殺気を目の当たりにした時よりも、もっとずっと酷い『恐怖』を彼女の歌から感じ取っているのだから。
彼女が言葉を紡ぐ度にゴンの体はだんだんと重くなっていく。これではいくら逃げ出したくとも逃げられない。
――おかしい。
確かに歌によって感動や悲しみの感情を揺さぶられる事はある。でも、此処まで理屈じゃない、本能的な恐怖を感じるなんてありえない。
理解できないからこそ、――余計に恐怖が肥大する。
「ははっ!!それがキミの――……なのかい?」
よく聞き取れなかったが、ヒソカがエリスに何か言ったようだった。
ヒソカはひと言、厄介だね。と呟くと、ヒソカは片手にトランプを構えて彼女に襲い掛かった。
『幼き少年ガ見ツメるハ一人の道化 今宵ハ誰と踊りまショうカ? 狙わレテるノも気ヅケなイ』
防戦一方、と言ってしまうと聞こえは悪いのかもしれないが、彼女はヒソカの攻撃を受け止めたりなどはせず、紙一重で攻撃を避け続けていた。
最小限の動きで相手の攻撃を見極める。ある種、戦いにおいて基本的な事だが、こうも簡単に実戦している人を見たのは初めてだった。
だがしかし、どんなに彼女の動きが洗練されていようと、相手はあのヒソカだ。
ヒソカは今までの攻撃は様子見だと言わんばかりの速さで首に切りかかり、グラリとトランプを避けて体制を崩した彼女に、容赦ない蹴りを叩き込んだ。
エリスは咄嗟に腕でガードしたようだったが、あの様子では片腕は無事では済まないだろう。
だが彼女は自身の怪我など、何でも無いとでも言いたげに歌い続ける。そんな彼女の貼り付けたような笑みが、ゴンには心の底から恐ろしかった。
「あははっ!!いいね◆やっぱりキミは思った通りだよ!!」
ヒソカはそう言ってなおも攻撃を仕掛ける。だが、先ほどよりも攻撃のキレが悪い気がする。
よくよく見て見れば、動きも鈍くなっている。何故だろうか?
ヒソカが自身の腕を引く様な仕草を見せると、エリスは引っ張られるようにしてヒソカの方に引きずられた。
それにエリスは一瞬だけ眉を顰めると、躊躇なく自身の服を右肩から破りさった。そのまま切った袖をヒソカに投げつけ、後ろに跳んで距離をとる。
その後の彼女には、もう既に先ほどの不自然に引きずられる様子は見受けられなかった。
……何が起こったのだろうか?
疑問に思ったのだが、ゴンは先ほどから悪化し続ける吐き気のせいで、あまり難しい事は考えられなくなっていた。
『巡り廻ルは輪廻ノ扉 帰れヌ過去に何ヲ思う? 答えハ何時モ箱の中』
エリスの歌声がゴンの頭の奥に響きわたる。その瞬間、ゴンの中の恐怖という恐怖の感情が決壊したかのように溢れ出てきた。
――い、いやだ、もう此処には居たくない。いやだいやだ怖い。
ただ彼女は歌っているだけなのに、ゴンは彼女への恐怖に押しつぶされそうな気になる。
プレートを取る事なんて忘れて、ゴンは耳を塞いで蹲った。心臓がバクバクと異常なほど音を立てていて、今にもあの二人に聞こえてしまうんじゃないかと不安になる。
―――それでも、声は聞こえてくる。
『夢の終わリモ直ぐ其処ニ 最後ノ余興 最後ノ曲を紡ぎマシょウ』
エリスはその言葉の後、初めて避ける以外の行動を取った。
だがそれはヒソカに対する攻撃ではなく、何故かナイフを竹林に向って投げるといった不可解なものだった。
だかしかし、ゴンとヒソカは僅か1秒後に彼女の行動の意味を知ることになる。
―――何本ものしなった竹がヒソカに向って来たのだ。
だがしかし相手は只の竹なので、後ろに下がるだけで簡単に避ける事が出来る。心底油断している時でなければ大抵は避けられるだろう。
エリスはヒソカが後ろに下がったと同時に、自身もヒソカから距離を取る。相変わらず、貼り付けたような笑みを浮かべている。
『踊ル娘 哂ウ道化 観客ノ少年 運命の歯車ハ既に欠ケ 歪ンだ事サエ判らナイ』
「へぇ◆時間稼ぎのつもりかい? ……いつもだったら鼻で笑うところだけど、今回は笑えないね◆」
そう言ったヒソカはいつもの余裕のある顔ではなく、苦しそうに顔を歪めていた。
かく言うゴンも、正直意識を保っているのが限界だった。
ギリギリと、頭をネジで締め付けるかのような不快感が常に襲ってくる。しっかりと気を保たないと意識を失いそうだった。きっと、ヒソカも同じような状況なのだろう。
エリスがどんな力を使っているのかは解からないが、どうやら自分たちに対して悪影響を与える『何か』をしているのだろう。
恐らくは先ほどから彼女の奏でている『歌』が原因だろうが、詳しい事は知りたくなんかない。だって、本当に怖くて仕方がないのだ。
『満月ノ夜の舞踏会 煌ク刃は娘ノ掌に 終りノ終リの終り 狂ッた道化ガ踊り出ス』
エリスは無事な方の手にナイフを持ち、ヒソカに向って走り出した。
ヒソカはその場から動かずに、トランプを構えて彼女を迎え撃つ。
『クルクルクルリと三回転 娘は言ッタ ――首ヲ刎ネろ!!』
ヒソカとエリスが交わる刹那、その最後の言葉を聴いた俺は自分の首が切り落とされたかの様な錯覚をした。
「っつつ!!!?」
反射的に自分の首を押さえる。勿論怪我など負っていなかったが、得体の知れない気分の悪さが消えなかった。
――でも、いま、確かに冷たい刃が首を滑る感触があった。
あまりにも明確な『死』のイメージ。
狼狽しながらヒソカ達の居る方向を見ると、其処には信じられない光景があった。
血塗れでその場に立ち尽くすエリス、血だまりに倒れ伏すヒソカ。
エリスが影になってよく見えないが、かなりの出血をしているようだ。その証拠におびただしい数の好血蝶がヒソカの周りに集まってきている。
恐らく、ヒソカはもう………。
その時、ドサリ、とゴンの後ろから何かが落ちるような音が聞こえた。
一瞬何かと確認しようかと思ったのだが、それどころではない事が起こった。
今の音に気づいたのか、エリスはゴンが隠れている茂みをジッと見つめてきたのだ。
ゴンの居る場所は背の高い草に覆われていて、彼女の位置からではめったな事がないかぎり発見される事はないはずなのに、その視線は真っ直ぐにゴンの方を向いていた。
『終リノ鐘が鳴り響ク 聖者ノ娘 血塗レ道化 幼キ少年 皆目ヲ閉じル』
血に染まっている脇腹と足を庇うようにして、エリスはゆっくりとゴンの方に近づいてきた。
逃げたいけど、逃げられない。ゴンはもう一歩も動けない程に心が恐怖に囚われていたのだ。
『今宵ノ舞踏会は之ニテ閉幕 サぁ皆様ペルソなを外シマしョウ』
その言葉を最後に、ゴンの意識は刈り取られるかのように消え去った。
◇ ◇ ◇
朝の日差しで目を覚ましたゴンは、昨日の事を思い出し、顔を青ざめさせながら飛び起きた。
「う、うーん。……エ、エリスは!!??」
「此処に居るけど」
「ええっ!!!??!?!?」
まさか返答が返ってくるとは思って居なかったので、ゴンはその場から後ずさった。
――な、なんでここにいるの?
「体調は?」
「へ?」
「……だから、体の調子は? 頭が痛いとか、変なものが見えるとか、そんなのは無いの?」
淡々とした様子で聞いてくる彼女の、夜に見た姿と変わらない様子が何故かとても――――――恐ろしかった。
「え……、あ、大丈夫、です」
「そう。ならいいんだ」
そう言うと、彼女はゴンに背を向けて歩き出した。
……何だったのだろうか?
エリスは地面に置いてある小さなカバンを手に取ると、中から小さな白い何かを取り出した。
警戒はしつつ、ゴンはしっかりとエリスの動作を見つめた。
「あぁ、そうだ。―――これを、君に」
エリスは振り返って、ゴンに向って何かを投げてきた。咄嗟の事にうろたえつつも、ソレを受けとる。
「………ヒソカの、プレート?」
彼女が投げてきたのは44番、ヒソカのプレートだった。
――え、何で、彼女がコレを自分に?
ゴンが驚いた表情で見上げると、彼女は一瞬怪訝そうな顔をすると、直ぐに納得したような表情になり、話し始めた。
「私にそのプレートは必要ない。……それが無くても、もう6点分は集まってるから」
そこまで言うとエリスは、もう用は無いとでも言いたげに、ゴンの存在を忘れたかのように歩き始めた。
……ぜ、全然答えになっていない。
だってゴンは彼女からプレートを無償で受け取れるほど親しくはないし、何よりゴンは自分自身の手でプレートを手に入れたかったのだ。こんな同情みたいなのは、死んでもごめんだった。
「俺も、いらない。……返す」
プレートを前に出すようにして、エリスに突きつける。
ゴンのその行動に彼女は面倒くさそうに溜息を吐くと、ゆっくりとゴンに近づいた。
手を伸ばせば届きそうな距離にまで近づくと、彼女はいつもの無表情でこう言った。
「――暫く、寝てろ」
その直後に頭に強い衝撃を受け、ゴンの意識は無くなった。