外伝2 顔合わせ アンコ編―2
(ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがってぇええ~!!)
三代目に仕返しをしたものの、決定した任務は実行しなければならない。
ましてや三代目火影じきじきの指名だ。
ただでさえ肩身の狭い思いをしているというのに、これでこの任務を放棄すればアンコは忍びとしての信用をコレ以上無く失墜させることになる。
それは別にかまわない。
元々大蛇丸の一件で、信用はがた落ちなのだ。
上からの許可が下りないと、おちおち里の外へも出れない。
だがそれでも三代目が特別上忍として起用してくれているおかげで、今のところは仕事がある。
そのことには感謝をしているものの、この任務、断ればそれすらも危うくなるだろう。
つまりは仕事が入らなくなってしまう。当然給料もなし。
そうなれば待っているのは死だけだ。
ようするにアンコにはこの任務を受ける選択肢しか残されていないのだ。
(この、私が子守!? ただでさえガキはキライだっていうのに。)
ギリギリ…
奥歯をかみ締めるアンコ。
ただでさえ鋭い目が今はかの師匠のような鋭い、かつ危ない目になっている。恐くて誰も指摘しないが。
アンコはその表情のままに、のっしのっしと商店街のほうへと足を向けた。
「だんご。とりあえず20皿。あとは机の上の団子がなくなってしまう前に、次をもってきてちょうだい。団子を机から絶やさないようにね。」
「に、20皿ですか!?」
「そうよ。二度言わせないで。…早く!」
「は、はいっただいま!!」
そうしてアンコは次々と持ってこられるだんごを片っ端から口におさめる。
腹が立つと、やけにお腹がすくのだ。
女とはいえないような所業でもっしゃもっしゃとだんごを食べるアンコの姿に、店の客は自分が食べるのも忘れて見入る。
もうすでに机には倒れんばかりに皿が積み重ねられている。
それでもアンコがだんごを食べる勢いに衰えは見えない。
「うっ」と客の数人が胃のあたりを押さえる。
見てるだけで胸焼けをおこしそうだ。
客は1人、また1人と青い顔をしながら店を後にする。
最終的には店にはアンコと店員しかおらず、次々とだんごを消化して行くアンコに厨房は上へ下への状態であった。
そんな中、1人の小さい影が店の中に入ってきた。
金髪、青い瞳、そして6歳にしては利発そうな顔。
言わずもがな波風ミナト、改め、うずまきナルトだ。
彼は店に入ってくると、アンコが座っている席の向かい側に座る。
ナルトは今日から本格的に引越しを始めたのだ。
といっても業者に頼んでいるわけでもなく元々私物もないし、電化製品など、買い揃えるほうが多いのだが。
そんなわけで今日は一日里内の色々な店を歩いていたのだが、行く店行く店まるで壊れ物を扱うかのような対応をさせられ、疲労困憊であった。
ましてや子供の身体。
木の葉隠れ(隠れてないが)里はコレでも忍びの中では最強の呼び名高い里。
それに値して、忍びの数は多く、その場所は意外に広い。
そこを朝からずっとうろうろしていたのだ、疲れて当然だ。
本当はアスマがついてくる筈であったのだが、急な任務が入ったとかでナルトは1人で1人暮らしに必要な物を買い揃えていた。
今日だけで全部揃えられたわけではないけれど、元々大人であるだけに電化製品など妥協は許さず、値切り交渉にもつい熱が入ってしまったのだ。
そうしてさすがに疲れ、どこかで休憩でもできないかと入ったのがこの店であった。
「あの、ご注文は?」
「だんご。とりあえず30皿お願いします。」
((何ぃ!?))
30皿だとう!?
店の者の声とアンコの心の声が重なった。
アンコでさえ――今でこそその倍以上食べているが――最初は20皿頼んだというのに、この子供…何者!?
アンコはだんごを食べる手を休めて、目の前でおいしそうに団子にぱくつく子供を観察する。
(んん? 何か…誰かに似てない??)
知り合いの子供か何かだろうか。
いや、何かもっと別の……
(金髪…秋道、じゃないわよね体格的に。食欲はそれに追随するものがあるけど。山中? いやあそこの子供は確か女の子って聞いたわ。)
他に自分の知っているものの中に金髪なんていただろうか…
あと思いつくのは、今は亡き四代目火影ぐらいしか……四代目?
(そうよ、四代目火影様! 四代目火影様にそっくりだわ! てか瓜二つ。)
「……隠し子?」
お前もかブルータス。
などと、アンコがそんなことをしているうちに、ナルトは出された30皿を瞬く間に腹に収めてしまう。
「あ、だんご10皿追加お願いします。」
そんなナルトの声に、アンコは我に返った。
だんご好きとして、6歳の子供に負けるわけにはいかない。
「こっちも10皿追加よ!」
「は、はい~」
厨房はますます戦場のていをようする。
後はもうひたすら食べる。食べまくる。
もっしゃもっしゃ。
もぐもぐ。
もっしゃもっしゃもっしゃ。
もぐもぐもぐ。
視線を交し合うアンコとナルト。
(やるわね。)
(そちらこそ。)
やがて根を上げたのはアンコでもナルトでもなく、店のほうであった。
その後、ナルトと顔合わせをしたアンコが、あの時のだんごの子供と知って、監視任務を快諾したのはいうまでもない。
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あとがき
ナルト「あっあの時の団子…じゃない、お姉さん!!」
って感じの再会ではないかと。
この話のナルトは別に甘党ではないです。
極端な味が好き。
今回のようにあま~いのとか、突き抜けてから~いのとか、青汁のようににっが~いものとか…。濃い味が好きってことかな?