「次だ! 次! 失敗すればここにお前らの居場所はないと思え!ほら行くぞ!」
陳腐なセリフを吐いて慌てて立ち去っていく雇い主の姿を見おくり、白は再不斬に向き直った。
「白、余計なことを…」
「わかっています。ただ、今ガトーを消すのは時期尚早です。ここで騒ぎをおこせば、また奴らに追われることになります。今は我慢です。」
「ああ、そうだな…」
「それに…あの。き、傷…治ってませんから…あまり動くのはそのぉ…(汗)」
「………」
ギリィ…と歯のきしむ音がベッドから聞こえた。
うずまきナルトのカレーな里外任務 10
木登り
一日たち、松葉づえをついてはいるが歩けるほどに回復したカカシは言っていた通り、修行するためにタズナの家から少し離れた森に来ていた。
タズナの護衛には、いくら体の麻痺が残っていようともゴロツキ程度ではどうにでも対処できるカカシの影分身を残してある。
「じゃあ、これから修行を始める!」
「「「…はーい……」」」
「修行初めからテンション低いね君たち…」
「気にしないで先生、まだ半信半疑なだけだから。」
「日頃の行いを反省するんだな。」
「どんまい!」
なんか班の中での俺の立ち位置ひどくない?
普段の自分の行動を棚上げして、最近の若人の冷めた態度に内心、苦言を申し立てる。
ま、今から行う修行じゃそういう余裕もなくなるだろう。
「始める前に、チャクラについてもう一度基本から説明するぞー」
「そんなのアカデミーで最初に習うことだろう。」
不服そうに唇をとがらすサスケをなだめ、カカシは簡潔に話をする。
本題は後だ。
「まー聞け。簡単に説明するとだな、チャクラには身体エネルギーと精神エネルギーの二つがある。つまり、術っていうのはこの二つのエネルギーを体内からしぼりだし、練り上げ、これをチャクラを練り上げるっていうんだが…そのチャクラを、印を結ぶことにより発動させる。これが忍術だ。」
「基本中の基本だね。」
「ごちゃごちゃと説明して、結局何が言いたいんだ? そんなの体で覚えるものだろう。現に俺たちは術をつかえている。」
「いーや、今のお前らは、チャクラを効果的に使えていない。いくらチャクラの量を多く練り上げることができても、バランスよくコントロールできなければ術の効果が半減してしまうばかりか、発動さえしてくれなかったり、無駄なエネルギーの消耗は長時間戦えないなどの弱点ができてしまうってわけだ。」
「今のカカシ上忍みたいにね!」
「確かに、いくら上忍だからって一週間動けないのは考え物ね。」
「後先考えないからこういうことになる。」
「………君たちね。」
先生泣いちゃうよ?
「それで結局のところ、どうするんだ?」
「体でそのコントロールを覚えるしかない。命を張って体得しなければならないつらーい修行…」
「―で?」
「…まったく、ノリが悪いね君たち。」
「もう、早く教えてくださいよ!」
「ん、木登り。」
「「木登り?」」
首を傾げるサスケとサクラを尻目に、ナルトは脂汗をかきはじめる。
アカデミー時代よりずっとチャクラコントロールを修行すること数年。
爆破させた樹木は数知れず。
木端になった木々、プライスレス。
まあ、つまり、ナルトのチャクラコントロールは遅々として成長していなかったのだ!
だってしょうがないじゃないかっ!
九尾×2なんだぞ!?
普通にチャクラ練っただけなのに普通の人が必死こいて練ったチャクラ量なんだぞ?
影分身でチャクラを分散させても、焼け石に水っていうか…
そりゃ、爆破させるに決まってるじゃないかっorz
内心焦っているナルトを置いて、カカシはチャクラコントロールの修行について説明を続けていた。
三人の視線の先に、木を手も使わずに垂直に上っていくカカシ。
サクラもサスケも口を開いてその光景に見入っていた。
「―とまあ、説明はこんな感じだな。あとは自分の体で直接覚えてもらうしかない。」
そしてカカシの放ったクナイが三人の足元にそれぞれ一本ずつ刺さる。
「今自分の力で上り切れるところに目印としてそのクナイで傷をうて。そして次はそれよりさらに上にしるしを刻むよう心掛ける。お前らは初めから歩いて上るほどうまくはいかないから走って勢いにのり、だんだんと慣らしていけ。」
カカシの言葉が終わるとともに、サクラとサスケはチャクラを足に練り、木に勢いをつけて上りだした。
木にある程度上ったところでサスケは練るチャクラの量を見誤り、はじかれ落下していった。
実技が苦手なはずのサクラは意外や意外、カカシと同じ高さの枝まで登り切り、得意そうに胸を反らせている。
「…ん? ナルト、お前も早くしなさいね。」
「あー…(汗)」
カカシに促されるも、目の前の木が爆散する未来しかみえない。
どうする、どうするよ僕ぅ…っ!と焦るナルトに過去の情景が思い浮かぶ。
遅刻をするたびに苦しい言い訳をしていた、以前の班のムードメイカーを。
偽りを口にすることもあったが全てが全て嘘だった訳ではなかったのを知っていた。もっともそれを真似て今からナルトが口にするのは偽りだが。
「あいたたたー(棒)、持病の癪が…!」
「…それ嘘でしょナルト。」
さすがに誤魔化されてはくれないカカシに、何としてでも木登りをしたくないナルトは食い下がる。
「なんで嘘だって言い切れるんですか診察もしていないのに。医療忍者でもないですよね、カカシ上忍。」
「いや、確かに違うけどね…」
「ちょっと言いくるめられないでよ、先生! だいたい持病って何よ? 初めて聞いたわよ!」
「実は元々胃腸が弱くてね。」
「はい嘘―っ!! 賞味期限切れた牛乳飲んでピンピンしてたでしょ!」
「何で知って…ゴホン。ストレスに弱くてね。」
「あんだけ場を好き勝手にしといて、あんたにストレスなんかあるわけないでしょ!!」
うんうんとカカシとサスケが頷いている。
失礼だね! これでも繊細な質なのに。
しかし、このツッコミの鋭さ……ちょっとあのお転婆姫に似てるかな。
「とにかく、無理なものは無理なの!」
「子供かアンタは!」
「(肉体は)12歳の子供ですが何か?」
「ぐぬぬぬぬ…!」
サクラとにらみ合う中、早々に説得をあきらめたサスケは自分の修行に集中しだした。
カカシはあきれたような溜息を吐き、ナルトに近付いてくる。
「まあまあ二人とも、熱くなりすぎない。」
「でも先生!」
不服そうに食いつくサクラの耳元でナルトは囁いた。
「僕が抜けたら二人っきりだよ。」
「…!」
効果は抜群だ!
「…サクラもナルトに買収されないの。」
「ばっ!? 買収なんてっ!」
「はいはい、サクラは自分の修行に戻ってね。ナルトは俺が話するから。…ちょうど、聞かなければならないことが色々あってね。そういえば、再不斬戦の時の礼を言うのを忘れていたな。」
「いえ…班のメンバーを助けようとするのは当然ですから。」
「ああ、助かったよ。あの時ナルトが声をかけてくれていなかったら、俺は背後から再不斬の刃でやられていたかもしれない。ありがとう。」
そういってニッコリしながら、肩をギュッと握られる。
食い込む手の強さに、逃がさないという意思をヒシヒシと感じる。
しかし再不斬戦の時?
最初は水牢から解放したことを言っているのかと思ったがどうやら違うらしい。
それ以外で…
『伏せて! カカシ君!!』
『!!』
「………あ。」
ギリギリ表情に出すのは抑えたが、漏れ出た声は誤魔化せない。
特に肩を掴まれていたのが致命的だ。
一瞬だがギクリと強張った体にカカシの目がスッと細くなる。
「まさかとは思いましたが…やはり、あなたなんですね?」
「え、えへ?」
ちょ、肩痛いよカカシ君っ!
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NGシーン
「まさかとは思いましたが…やはり、あなたなんですね?」
「テヘペロッ☆」
「(怒)殴っていいすか?」
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ…(以下略)