Side:??
繰り広げられている戦闘を冷静に観察する。
体術は再不斬がわずかに勝っているようだが、忍術の印の組むスピードは相手の方が早い。
何度か刃を交わした後に、現在は相手の上忍を“水牢の術”で閉じ込めるのをみて、強張っていた肩の力を少し抜いた。
主要な戦力を封じられた相手の護衛の者たちの命はもはや風前の灯だ。
見る限りまだ下忍になったばかりの少年少女達だが、忍びになった以上こういうことになるのは平和になった今の世とはいえ、考えられる未来だった…はず。
胸にチクリとした痛みを感じつつ最後までは気を抜けないと下忍に視線を戻す。
そこではイタぶるように再不斬が3人のうちの一人を吹き飛ばしたところだった。
上忍で首切り包丁の持ち主として選ばれた再不斬に、下忍なりたての彼らが敵うことはありえない。
現に今も本体の十分の一程の力しか持たぬ水分身に吹き飛ばされている。
彼らの未来を思い、暗い気持ちを隠しながらそれを観察していたが、ゾクリと背筋を悪寒が走る。
その原因は3人のうちの一人、吹き飛ばされた金髪の少年が発している気配だった。
空気が変わる。
ゆっくりと顔を上げる少年。
その眼は再不斬がする眼と同じ…………忍びの眼だった。
うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 5 鬼の眼にも涙
『お前らァ!! タズナさんを連れて早く逃げるんだ!! コイツとやっても勝ち目はない!! オレをこの水牢に閉じ込めている限りこいつはここから動けない! 水分身も本体からある程度離れれば使えないハズだ!! とにかく今は逃げろ!』
カカシ君が水牢の中から何かを言っているが、聞ーこーえーなーいー。
視線を鬼人から離さずにナルトは茫然として腰の引けているサスケ達へと近づいた。
「うちは君、ちょっと耳かして。」
「…何だ。」
「いいから早く。作戦があるの。」
(この状況で作戦だと?)
「フン、お前がチームワークかよ…」
「クク…敵の前で堂々と宣言とは、勝算はあるのか、小僧?」
再不斬の顔が笑みにゆがむ。
その鬼人にナルトはハンと鼻で笑う。
忍びとして戦争中に活躍してきた中で、敵の神経を逆なですると友人達に評判だった笑みだ。
目の前の再不斬の顔もピクリと引きつった。
「煩いよ、眉なし。眉毛を生えそろわせてから出直してこい。」
「テメェ…」
「ついでに助言しておいてあげるけど、服装センス最悪。眉毛は百歩譲ってまあいいとしても、その服はありえない。何? 自分を見てもらいたいという自己主張の現れ? そんな格好をしたら逆効果だから。引くし。ドン引き。」
「…小僧……っ!!」
再不斬のこめかみには血管がくっきりと浮き上がっており、ぴくぴくしている。
水牢をカカシにかけているためその場から動けないが、動けたら真っ先に攻撃を仕掛けた。
水分身がいるにはいるが、再不斬は自分でいたぶりたいのだろう。
仕掛けてくる様子は今のところ見られない。
それなら分身と本体の位置を変えればいいのに、そこまで頭が回らないほど頭に血が上っているらしい。
動けないが今にもとびかかりそうな再不斬の様子にナルトはもう一度鼻で笑ってやる。
ついに我慢の限界だったのか、水分身がこちらに刃を向けてくる。
ふ、何のためにうちは君に声をかけたと思っているんだ。
ナルトは移動し、再不斬と自分との間にサスケを入れた。
怒りの形相(まさに鬼)でこちらに向かってくる再不斬に顔を蒼くするサスケ。
すかさずその手をひねりあげ、ナルトは…
「死ね小僧!」
「なんの。うちはバリアー!!」
「ナルトてめっぐはあ!!!」
「サスケ君!?」
し~ん。
場が静まりかえった。
依頼主であるタズナも顔をひきつらせてナルトを凝視している。
カカシは半眼で(元からだけど)ナルトを見ている。
いち早く硬直から抜けだしたのは、この場を静まりかえした張本人であるナルト。
固まったままの水分身の再不斬に躊躇なくクナイを振り落とし、水に返す。
ばしゃっという音で全員(notサスケ)我に返る。
「何やってんのよ! ナルト!!」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと白眼向いてピクピクしちゃってるけど、急所には当たらないようにちゃんと調節したから☆」
「そういう問題じゃないの! 後、語尾に星つけるな!! ムカつく!!」
「おい…」
「だってうちは君腰引けてたし…あのままじゃ役にたた…んんっ! 足でまといだし。せめて盾ぐらいには役に立ってもらわないと。」
「ひどっ! 言いなおした意味、超なくない? なあ、そう思うのはワシだけか?」
「てめぇら…」
「あぁっサスケ君! こんな姿になって…!」
「とか言いながらにいそいそ膝枕してるし。顔にやけてるよ、春野さん。」
「いい加減に……」
「いいじゃない! こういう時にあぴっておかないと、点数稼ぐ機会なかなかないんだから!」
「春野さんてしたたかだよね~。僕には真似できない。」
「………………」
俯いてプルプル震えだす再不斬。
水牢内のカカシが同情的なまなざしを送っている。
ぐすっ 寂しくなんかないんだからね!!(涙目)
「分身を倒したぐらいで勝ったと思うなよ! 水分身の…」
「うちは君ぼでぃアタック!」
再不斬が再び水分身を出そうとすると、これまた何のためらいもなく、ナルトは白眼をむいているサスケの首根っこをつかみ、再不斬へと投げつけた。
回転しながら再不斬へと迫るサスケ。
予想外の攻撃(?)に再不斬は自分がどう対処するべきか迷った。
しかも白眼をむきながらこちらに迫ってくるサスケは想像以上に気持ちわるかった。
殴りたくない、ていうか、触りたくない。
だからと言って刀を抜くには距離がもう迫っている。
結局、気持ち悪いサスケには触りたくなかった再不斬は、体をひねって避けることにした。
結構な勢いで再不斬の横を通り過ぎ、かなりの勢いで顔から水にぶつかるサスケ。
ザパーン!! という大きな音が響き、再不斬の後方でぷかぷかとうつぶせで浮いている。
敵ながら同情を誘うありさまだ。
「馬鹿にするのもいい加減にしろ! てめえは絶対殺す! 覚悟しろ小僧!!」
血走った眼をナルトに向ける。
そして感じる違和感。
何だ、何かがおかしい。
…………何故
何故、うちはサスケが、そこに。春野サクラの膝元にいる?
「しまっ!」
「遅い。」
再不斬の背後からかかる声。
それは間違いなく、金髪の少年うずまきナルトの声だった。
バリアーにしたのはうちはサスケ本人だったが、皆の注意がサスケに向いている間にナルトは影分身の術を使用。
その後、再不斬に投げつけられてきたサスケはナルトの影分身がサスケに変化した偽物。
今の再不斬は水牢にカカシをとらえているため行動は極端に制限されているし、頭に血が上り怒りのままにナルトに攻撃しようとしていた為、前かがみになっていた。
つまり、背後がお粗末。
いくら弱体化しようと、そんな隙を見逃すようなナルト君ではない。
ナルトは再不斬の背後から、両手を揃えてぐっと指に力を加えて叫んだ。
「喰らえ! みたらしアンコ直伝、対大蛇丸用おっとこ殺しの術パートⅡ、千年殺しぃいいいい!!」
反応の遅れた再不斬はナルトの攻撃をまともに食らった。
そう、ケツに。
みたらしアンコがにっくき元師匠用に用意した男殺しの術、パートⅡ。
原作購読者なら言われずともわかるだろう、そう、あれ。
それをまともに食らった再不斬は…
「ぐげらぷ@あれ*のがで#ぶでへろ!!?」
この世のモノとは思えないうめき声とも叫び声ともとれる言葉(?)をもらし、もんどりうって水面に倒れこんだ。
もちろん、ケツを押さえながら。
カカシは無事水牢から解放され、形勢は逆転したものの、何とも言えない空気が辺り一帯を包み込む。
「むごい…」
し~んとしている中、ナルト達の依頼主タズナの一言が響いた。
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注)あれ:ものすごいカンチョウ
没ネタ
「うちは君、ちょっと耳かして。」
「…何だ。」
「いいから早く。作戦があるの。まあ、返事は期待してないけどね!」
「なら聞くなあぁああああ!!」
電凹ネタ。わかる人が限られているので没。
没ネタ2
「死ね小僧!」
「なんの。ローアイアス(うちはバリアー)!!」
「ナルトてめっぐはあ!!!」
「サスケ君!?」
現代人憑依ではないので、没。