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No.714の一覧
[0] うずまきナルトのカレーな生活[ヤドクガエル](2008/10/04 23:40)
[1] うずまきナルトのカレーな生活 プロローグ2[ヤドクガエル](2008/02/18 00:44)
[2] うずまきナルトのカレーな生活 プロローグ3[ヤドクガエル](2007/12/07 01:04)
[3] うずまきナルトのカレーな生活 1話[ヤドクガエル](2008/01/31 13:36)
[4] うずまきナルトのカレーな生活 2話[ヤドクガエル](2007/12/07 01:05)
[5] うずまきナルトのカレーな生活 3話[ヤドクガエル](2007/12/07 01:02)
[6] うずまきナルトのカレーな生活 4話[ヤドクガエル](2007/12/11 23:16)
[7] 外伝1 顔合わせ イビキ編[ヤドクガエル](2010/01/04 07:11)
[8] 外伝2 顔合わせ アンコ編-1[ヤドクガエル](2008/01/31 13:41)
[9] 外伝2 顔合わせ アンコ編―2[ヤドクガエル](2010/01/04 07:13)
[10] 外伝3 顔合わせ ハヤテ編[ヤドクガエル](2008/02/24 02:45)
[11] うずまきナルトのカレーな学校生活 0[ヤドクガエル](2008/02/24 02:39)
[12] うずまきナルトのカレーな学校生活 1[ヤドクガエル](2008/02/24 02:39)
[13] うずまきナルトのカレーな学校生活 2 修行編[ヤドクガエル](2008/02/24 02:40)
[14] うずまきナルトのカレーな学校生活 3 修行編2[ヤドクガエル](2008/10/04 23:45)
[15] 外伝 うみのイルカのカレーな一日[ヤドクガエル](2008/10/22 00:24)
[16] 外伝 見える人[ヤドクガエル](2008/11/29 15:39)
[17] うずまきナルトのカレーな卒業試験1[ヤドクガエル](2009/01/03 23:49)
[18] うずまきナルトのカレーな卒業試験2[ヤドクガエル](2009/01/24 11:35)
[19] うずまきナルトのカレーな卒業試験3[ヤドクガエル](2009/01/24 15:34)
[20] うずまきナルトのカレーな教示 1[ヤドクガエル](2009/05/10 22:48)
[21] うずまきナルトのカレーな教示 2[ヤドクガエル](2009/07/26 19:42)
[22] うずまきナルトのカレーなサバイバル演習 1[ヤドクガエル](2009/09/12 11:29)
[23] うずまきナルトのカレーなサバイバル演習 2[ヤドクガエル](2010/01/04 07:02)
[24] うずまきナルトのカレーなサバイバル演習 3[ヤドクガエル](2010/02/02 15:34)
[25] うずまきナルトのカレーな人物紹介 卒業時[ヤドクガエル](2010/02/11 23:42)
[26] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 1[ヤドクガエル](2010/03/03 13:24)
[27] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 2[ヤドクガエル](2010/03/12 20:55)
[28] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 3[ヤドクガエル](2010/03/13 00:50)
[29] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 4[ヤドクガエル](2010/04/02 19:33)
[30] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 5  鬼の目にも涙[ヤドクガエル](2010/06/24 16:06)
[31] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 6  決着[ヤドクガエル](2010/10/20 15:59)
[32] お知らせとお詫び文[ヤドクガエル](2015/05/17 17:22)
[33] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 7 親切心のありか[ヤドクガエル](2015/05/24 16:55)
[34] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 8 目覚め[ヤドクガエル](2015/05/24 17:07)
[35] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 9 再戦のカウント[ヤドクガエル](2015/05/31 19:33)
[36] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 10 木登り[ヤドクガエル](2015/06/06 18:00)
[37] うずまきナルトのカレーな里外任務(波の国編) 11 下剋上[ヤドクガエル](2015/06/14 18:09)
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[714] うずまきナルトのカレーなサバイバル演習 3
Name: ヤドクガエル◆df2d8dde ID:67852236 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/02 15:34

「うぅ…頭痛い……」

うめき声を上げながらカカシは渋々ベッドから身を起こした。
昨日、うずまきナルトのことを言及するためにアスマと居酒屋に向かったのだ。
そこで話を聞いているうちに八つ当たり気味に酒を次から次へと胃に流し込んだのがいけなかったらしい。
普段なら酒を飲んでも、のまれることはなかったのに。
久方ぶりの二日酔いの感触にフラフラしながら洗面所にむかう。
そしてふっと眼にとまった時計。
その示す時間に眠気も吹っ飛び、目をごしごしとこすり、ついでに“左目”まで使ってもう一度確かめる。

―AM 10:50―

ちなみに集合時間は8:30だったりする。

「マジで!!?」





うずまきナルトのカレーなサバイバル演習 3





結局時間はもうすでに過ぎているということで、今更だろ、と開き直りカカシは指定していた場所までゆっくりと歩いて行った。
演習に指定した場所は第7訓練所。
なんとも自分にとっては縁の深い場所である。
ゆっくりと進んでいくと、自分の担当となった下忍(仮)3人の姿が見えてきた。
忍び道具一式を持ってこいと言及してあったためだろう。傍らには大きなバックが見える。
3人が3人ともイライラした様子で待っているのかと思ったが、そのレベルはすでに抜けだした後らしい。
呆れた様子で待っていた。
そんな3人にカカシは片手をあげて近づいた。

「やー諸君、おはよう。」
「「「おっそーい!!!」」」

うむ、息はあっている。
冷静沈着なはずのうちはサスケまでも息ぴったりに叫んでくるのは少々予想外だったが。




◇◆◇◆◇




「よし、12時セットOK!!」
「「「?」」」

3本ある丸太の一つに目覚まし時計を12時に鳴るようにセットする。
現在時刻11:10。
首をかしげる三人の前にカカシはちりん、と二つの鈴を掲げた。

「ここに鈴が2つある……鈴を昼までに手に入れることが課題だ。もし昼までに鈴を手に入れることができなかった奴は昼飯ぬき! あの丸太に縛り付けた上に目の前でオレが弁当を食うから。」
「ふんふん…って昼飯食うなってそういう理由!?」

ぎゅるるるる…と三人からタイミング良く腹の虫が鳴る。
3人とも律儀にカカシの言葉を守って朝食を食べて来ていない。
しかも相手は遅刻してくるし、もう昼を食べてもいい時間だ。
もちろんのことお腹はすいている。

「鈴は一人一つでいい。2つしかないから…必然的に1人丸太行きになる。…で! 鈴を手に入れられなかった奴は任務失敗ってことで失格だ! つまり、この中で最低でも1人は学校に戻ってもらうことになるわけだ。」

どきん、と3人とも引き締まった顔をする。
それを確かめてカカシは鈴をもう一度3人の前で鳴らして手の中に収めた。

「手裏剣使ってもいいぞ。オレを殺すつもりで来ないと取れないからな。」
「でも!! 危ないわよ、先生!!」
「まあまあ、春野さん落ち着いて。仮にも上忍なんだし大丈夫でしょう。それよりも、カカシ上忍。開始する前に一つ確認しておきたいことがあるのですが?」
「ん、何だ?ナルト。」
「どのような手を使っても構わないんですね?」
「? ああ、さっきも言ったが、殺すつもりで来い。」
「わかりました。」
「それじゃあ理解できたところで、始めるぞ。よーいスタートの合図で開始する。」
「「「………」」」

サクラはいまだ納得できてない様子だったが、始めるというカカシに全身を緊張させる。
ゴクリ。
誰かの喉が鳴った音がした。

「よーい…スタート!!」

全員一斉に散開する。
別々の場所へと気配を消し、身を潜める生徒達。
一方、カカシは本気で身を隠してしまうと生徒たちがカカシを見つけられずに時間が過ぎてタイムオーバーということになりかねないため、気配も殺さずに景色が開けた場所へと移動するにとどまった。
周囲をざっと見回す。

「忍びたる者―基本は気配を消し隠れるべし。」

下忍レベルでは合格点といっていいだろう、サスケとサクラがカカシを確認できる位置に気配を消して身を隠しているのが確認できた。

(よし、みんなうまく隠れたな。)

ナルトの姿は確認できないが、どこか別のところで身を隠しているのだろう。
スタートする前に“どんな手を使ってもいい”をいうことを確認していただけに何か企んでいると考えられる。

(まずはこの二人から仕掛けるか。)

カカシは近くにある木に寄りかかると、腰のポーチへと手を伸ばした。
ぎくりとしたのはサクラとサスケだ。
確かにカカシは手裏剣など使ってもいいと自分たちにいったが、カカシ自身も武器を使うのだろうか。
ただでさえ実力に天と地ほどの差があるというのに、武器まで持たれれば勝ち目など皆無だ。
しかし二人の懸念をよそに、カカシがポーチから取り出したモノは武器ではなかった。
一冊の本。
それも忍術書などという高尚なモノではない。
裏表紙に堂々と描かれた18禁のマーク。
表表紙にでかでかと書かれた“イチャイチャパラダイス”の文字。
明らかなエロ小説であった。
おもむろにページを開き、顔をだらけさせる。
ピキ、と青筋を立てるサスケとサクラ。
そしてサスケはだらしなく顔を崩し、隙だらけになったカカシ目掛けてクナイと手裏剣を投擲した。
直線あるいは弧を描きながらカカシに殺到するクナイと手裏剣。
その全てが吸い込まれるようにカカシへと命中した――と思った瞬間、カカシだったものが煙に包まれて一本の丸太へと姿を変える。

(変わり身の術!!)

チッと舌打ちをして、サスケは慌ててその場を離れた。
エロ本を読んだりしてわざと隙をつくったのだ、あの男は。
自分はそれにひっかかってしまった。ざまぁない。
とりあえず、今の攻撃で自分の居場所が相手にわかってしまった以上、速急に別の場所へ移動しなければ。
一方そのころ、サクラは訓練所の森の中を、姿勢を低くしてひた走っていた。
目指すは先ほどカカシに向って武器が飛んできた方向。
あんな攻撃は万年ドベに甘んじてきたナルトにできるとは思えない。
サスケがしかけたものだろう。
とりあえず、早くサスケ君の無事を確認して…

(もしかしたら、もう先生に…いや、サスケ君に限ってそんなこと……!!)

と、ガサっと前方の木々が揺れ、サクラは慌てて立ち止まり木々に身を隠しながら周りを確認する。
すると前方に相変わらずエロ本を読んでいるカカシの姿が見えた。
熱心に本を読んでいるようでこちらに気づいてはいないようだ。
ほっとサクラは安堵のため息を吐いたその時、背後から目の前で本を読んでいるはずのカカシの声がした。

「サクラ、後ろ。」
「へ!?」

慌てて振り返ると、サクラの間後ろにもカカシが立っていた。
絶句しているサクラにカカシは両手で印を組む。
すると木の葉が周囲を舞い、やがてカカシの姿は木の葉に紛れて消えていってしまった。
茫然とそれを見ていたサクラだったがハッと我に返る。
周囲を見回すが、カカシの姿はない。
声をかけられたところまでは覚えているのだが、仕掛けられた覚えがない。
自分の四肢を見回すも、攻撃を受けた形跡もない。

「??? !! へ? え!? 今の何!? どうなってんの!? カカシ先生は!?」

自分が身を隠していることも忘れて大声で叫ぶサクラ。
混乱した頭で周囲をもう一度見渡すと、かすかな声が木の陰からした。

「…クラ……」
(…! この声は、サスケ君!?)

恋する乙女のパワーというものだろうか、かすかな声にも係らずそれが好意を抱く男性の声だと一発で見抜くと、サクラは慌ててその木の陰へと走った。

「サスケ君!」

やっと見つけた、と輝いたサクラの顔が凍りつく。
そこにいたサスケは全身にクナイと手裏剣をはやしており、片腕が切り落とされ、片足が本来ではありえぬはずの方向へと捻じ曲がっていた。
歓喜に沸いた顔が一瞬で凍りつく。

サ…サクラぁ……た、助けて…くれ……!

かすれた声でサクラに助けを求めて手を伸ばすサスケ。
その手にも真っ赤な血がべっとりとこびりついていた。

「あ…あぎゃ嗚呼ああああああああああ!!!」

サクラは恐怖で顔をこわばらせながらおよそ女らしくない叫び声を上げ、そのまま白目をむいて仰向けにバタリとひっくり返った。
その様子を木の上から観察していたカカシはポリポリと頬を掻いた。
まさかあそこまでのリアクションをしてくれるとは予想していなかった。
もちろん先ほどサクラがみたサスケは本物のサスケではない。
カカシが忍術によって作り出した幻想、幻術だ。
サクラがサスケに好意を抱いているためにあのような幻術を見せたのだが…サスケにはとても見せられない顔でひっくり返っているサクラを見、カカシはため息をはいた。

「少しやりすぎたか…」



「……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

響いてきた悲鳴に、サスケは顔を上げ、目を細めた。
聞こえてきた声は女のもの。サクラの声だ。

「今の声は…(サクラか。)」

カカシにやられたのだろう、その声は絶叫に近かった。いや、絶叫だった。
表情をゆがめるサスケ。
その背後に足音もなくカカシが降り立った。

「忍戦術の心得その一、幻術。サクラのやつ、ものの見事にひかかっちゃってな。あそこまで盛大に引っかかってくれると、逆に見事というか何というか…」
「(幻術…一種の幻覚催眠……サクラなら引っかかるのも無理ないか)だが、俺はあいつ等とは違うぜ。」
「そういうことは鈴を取ってから言うんだな。里一番のエリート、うちは一族の力…楽しみだ。」

ちりん、とカカシの腰にある鈴が鳴り響くと同時に、サスケがカカシに仕掛けた。
姿勢を低くして手裏剣とクナイを投擲する。
それらを軽々と避けるカカシ。
サスケの投げたそれらはカカシには掠ることすらできずに背後の木へと突き刺さる。

「馬鹿正直に投げても当らないよ~」

本を読んだまま余裕の態度を変えないカカシに、サスケはにやりと笑った。
その直後、サスケの投げた手裏剣の一つが木々の茂みに隠されていた縄を断ち切った。
カカシが避けることも計算のうちに入れていたのだろう。
縄が切れたことによって仕掛けられていたトラップが発動し、カカシの背後から15本ほどの短刀が襲いかかる。
本を捨て、短刀を避けると、その動きを読んでいたサスケが背後から襲いかかった。
勢いの乗った回し蹴りが放たれ、避けられずカカシは腕で防御し、サスケの足首をつかむ。
が、それも予想のうち。
サスケは掴まれた足首を起点に体をひねりカカシの顔目掛けて拳を繰り出す。
これもカカシにダメージを与えることはなく掌で受け止められてしまうが、サスケは左足と右手をふさがれた状態で残っていた右足を振りぬき、カカシの頭を狙う。

「くっ!」

何とか蹴りをふさぐが、思わず声が漏れる。
と、カカシの目にニヤリと笑ったサスケの顔が映った。

(こいつ…!)

一撃目が左足、二撃目が右手、三撃目が右足。
サスケは残った左手で持ってカカシの腰につけられた鈴へと手を伸ばす。
ちりん、と少し掠めるもののその意図に気づいたカカシが腰を引いたために捕ることは叶わなかった。

「ちっ!」

いったん距離を開け、対峙するサスケとカカシ。
カカシは内心舌を巻いていた。
イチャイチャパラダイスを読む暇がない。
普通の下忍ならそこまでの体術はまだ身につけていない。
事実、今までサバイバル演習で試験を行ってきた下忍(仮)の中ではイチャイチャパラダイスを読んだままでも十分だった。

「(やれやれ…優秀なのはいいことだけど、力加減の具合が微妙で試験するこっちにしてみればやりにくいなぁ。)ま! あの2人と違うことは認め…いや、ナルトはどうかまだわからんから言えないか。」
「ふん。」

微妙な評価をするカカシを気にすることもなく、サスケは素早く手で複数の印を組む。
それにカカシは目を見開いた。
見覚えのある印。
だがそれは下忍(仮)が使用できるような術ではないのだ。
使用するには下忍ではチャクラがたりないはずのもの。
だが、サスケは印を組終えると、大きく息を吸い込む。
次の瞬間、すさまじい炎がサスケの口から放出された。

“火遁 豪火球の術!!”

すさまじい炎が広がった。
下忍とは思えぬ威力。
喰らっていたならば無事では済まなかっただろう。
だがそれも、喰らっていればの話だ。
炎が消えるとそこにはカカシの影も形もなかった。

「! (いない! 後方!? いや、上か!? くっ、どこに…)」
「下だ。」
「!!」

思わぬところから声が響いてぎょっとするサスケ。
だが身動きすることは叶わなかった。
声がかかると同時にサスケの足首はカカシのものと思われる手で、がっちりと捕まえていた。

「なっ!」
「土遁、心中斬首の術…」
「ぬおぉ…!」

足からずるずると地中へと引きずり込まれる。
抵抗する暇もなく、首から下まで地中へ引きずり込まれてしまった。
腕も足も地面の中。
周りに土があるため、もがいてみても思い通りに動けない。

「忍…戦術の心得その3! 忍術だ。…にしても、お前はやっぱ早くも頭角を現してきたか。でも、ま! 出る杭は打たれるっていうしな。ハハハ…」

再びイチャイチャパラダイスを拾い、読みながらその場を去るカカシ。
その様子をサスケは地面から抜け出すことができず、悔しそうに見送った。




「さて、と。後はナルトだけなんだが…仕掛けてくる様子がないな……」

気配を探るがやはり感じない。
こちらにもわからない程に気配を消し、周囲の景色と同化しているのか。
いや、隠れているだけでは鈴はとれない。
一体何を考えて……ちょっと待て、気配を消していて感じられないのではなく、感じられないような遠くにいるのなら。
だがそれでは鈴はとれないはず。
いやいや、相手はあのナルトだ。
三代目や教師の海野イルカまでも妙に温かい視線を自分に送ってくれたではないか。
ここはひとつ常識というものを捨て去って考えてみよう。




◇◆◇◆◇




―火影執務室―

「今日ですよね、ナルトの下忍試験。」
「気になるか? イルカ…」
「まぁ少しは。もし落ちたらまた面倒見なければならないですし。」
「フム…ナルトの担当はカカシじゃったな。難しいかもしれんな。あいつは今まで一人の合格者も出しておらん。あいつの出す課題はなかなか難しいからなぁ。」
「ゼロ…ですか。」
「ああ。」
「……………」
「……………」
「まぁ、ナルトですからね!」
「そうじゃな、ナルトだしな!」

((落ちるところが想像できん!!))




◇◆◇◆◇




「テウチのおっちゃーん、替え玉一つ!」
「こらぁああああああああああああああ!!!」

やはりナルトには常識というものが通じなかったらしい。
訓練所から離れた市街地の屋台、ラーメン屋に彼の姿はあった。
替え玉を頼んでるところからして、すでに一杯食べた後らしい。
肩に乗っている忍鳥がアホーとこちらに向かって鳴いてくるのが憎たらしいことこの上ない。

「あ、カカシ上忍。」
「あ、カカシ上忍…じゃないだろう! 何してるんだ!? 演習は!? 鈴は!?」

普段飄々とした態度を崩さないカカシがここまで崩れるのも珍しい。

「鈴なら、はい。」

ラーメンを食べながらナルトはポイとカカシに向かって鈴を投げつけた。
いつの間に、と瞠目しながら鈴を確認するも、カカシの腰につけられた鈴は2つとも健在である。

「…おい」
「カカシ上忍、自分の言葉には責任を持った方がいい。あなたは12時までに鈴を“手に入れる”ことを課題にした。その腰の鈴を手に入れるということを厳密には言及していない。」
「な!」
「なおかつ、僕は言いましたよ? どんな手を使ってもいいんですかって。」
「ぐっ…! だがな!!」
「ところでカカシ上忍…お酒臭いですね?
「!!?」
「まさか今朝の遅刻…二日酔いのせいだとか、ふざけたことをぬかさないですよね?」

ぎくりとカカシの肩がはね、顔色がどんどん悪くなっていく。
汗を大量に流しながらカカシはナルトから視線を外した。
何とか誤魔化さなければと思うのだが、こういう時に限って聡明な頭は機能してくれない。
それはひとえにナルトの容姿にも関係していた。
ナルトはカカシの師、四代目火影波風ミナトに瓜二つなのである。
まあそれは同一人物なのだから当然と言えば当然だが。
要するに何を言いたいのかというと、複雑なお年頃のころ、カカシは波風ミナトには多大なお世話をおかけしたのだ。
当然その時には怒られた記憶だってある。
波風ミナトは怒るときに大声とかで怒鳴ったり、手を上げるような師ではなかった。
どちらかというと静かに怒るタイプで、しかし妥協は許さず厳しい人物であった。
親のことなどもあって擦れていた時期、カカシはよく怒られた記憶がある。
特にオビトなどと問題を起こすたびに笑いながら静かに、言い聞かせるように言われる一言。
その一言だけでささくれ立っていた心がみるみるしなびていった。
つまりトラUMAスイッチ。
甦るその一言。

…カカシ君?
…カカシ上忍?

「っ!!! すいませんでしたぁ!!」
「つまり二日酔いで遅刻したと?」
「はいっその通りで!」
「上に立つべき人間が、大切な試験の日に?」
「申し訳ありません!!」

もはやははーっとひれ伏す勢いで謝り倒すカカシ。
話す言葉が敬語になっていることも当人は気付いていない。

「………」
「………」

汗をダラダラ流しながらナルトに謝っているカカシ。
その姿勢は直角90度だ。
それを見下ろしてナルトはため息を一つ吐いた。
おそるおそるナルトを見上げるカカシ。
おもむろにナルトは勘定すると、火影の居る火影亭の方へと走り出した。

「三代目火影さふがふが」
「まままままて! 待て待て!! 話し合おう、ナルト!!」
「じゃあ合格にしてくれますか?」
「いや、それはいくらなんでも。」
「ほかげさま~」
「いやー! 待ってー!! オレが悪かった! 合格だ、合格!! 合格にするから!!」

カカシは敗北した。




「ちょっと、ナルト。あんたどこに行ってたのよ! もう12時回ってるじゃない!」

訓練所に影分身を残していたカカシは、分身によってサクラとサスケを最初の場所へと集めていた。
時計を見ると12:05。
どうやらラーメン屋で話し込んでいるうちに時間が過ぎてしまっていたらしい。

「いや、ちょっとカカシ上忍の諦めが悪くて…」
「へ? 何それ??」
「こっちの話し。」
「てゆうか、先生、大丈夫ですか? なんかこの短時間で心持ちやつれたみたいに見えるんですけど…」
「あぁ、うん。大丈夫だ。サクラ…お前はやさしいなぁ」

涙ぐまれるサクラ。
今までの飄々とした態度が嘘のようである。

「あ、そうそう忘れるところだった。春野さん、うちは君、手を出して。」
「? はい。」
「…ほら」
「はい。」

ナルトはカカシにも見せた“買ってきた”鈴を二人へと手渡した。

「へ!?」
「…どういうことだ。」
「二人とも頭固すぎだよ。忍びは裏の裏を読め。カカシ上忍は“鈴を手に入れること”を課題にしたでしょ? 上忍の腰の鈴を、とは言及しなかった。」
「あ! そっか。」
「…オレはいらん。おしいところまでいけたんだ。次は捕れる。施しは受けない。」
「でも捕れないかもしれない。」
「……」
「さっきまではカカシ上忍も油断してたからいいところまでいけたけど、今度はサスケのレベルもわかってるから油断なんかしない。…合格、したいでしょ?」
「………………………………ふん、今回はお前に付き合ってやる。」
「ありがとー。カカシ上忍、いいですか?」

ナルトが二人に鈴を渡す光景を茫然と見ていたカカシはナルトの呼び声で我に返った。
今回の課題は追い詰められた状態でもチームワークが発揮できるかどうかを見るための試験だった。
ナルトの存在により大幅にずれたが、これでともかく3人とも鈴を手に入れた。
想像していたモノとは違ってしまったが、ナルトは他の二人を置いてけぼりにするつもりはなかったのだとわかり、カカシはにっこりと笑い、堂々と宣言した。

「よし、お前ら合格だ!!」








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