うずまきナルトのカレーな生活
プロローグ 2
パチパチと物の燃える音があたりに響く。
そんな中、ミナトはぼんやりと空を見上げていた。
結果はほぼ予想通り。
屍鬼封尽をかけることには何とか成功したものの、死神の腹の中に九尾の魂は取り込まれず、いずれは元の身体に戻って活動を再開してしまうだろう。
(時間稼ぎにしかならなかったか…)
予想していたとはいえ、もしかしたら…と考えていたのだ。
結局予想通りの結果しか得られなかったが。
それでも、里のものが避難できる時間は稼ぎ出せた。
それでよしとするしかない。
自分の死は無駄ではなかったのだ。
身体の力が急速に失われていくのをミナトは感じた。
ミナトは最後の力を振り絞り、あたりへと視線をめぐらせる。
よくもまあ、もうすぐ死ぬとはいえ、五体満足でいられたな…という破壊っぷり。
自分が口寄せした、一緒に死地へと赴いたブン太の姿は見えない。
屍鬼封尽をしたのとほぼ同時期、口寄せの時間が過ぎ、元の場所へと帰ったのだ。
無事だといいけど…
確認する術は無いが、おそらく無事だろう。
口寄せが切れる直前まで口がよく回ってたし。
四代目は口寄せの切れる直前のブン太を思い出し、苦笑をもらした。
「はっ…ぐ、げほっ!」
大量の血を吐血する。
その血の色は鮮やかな紅。動脈血だ。
内臓をやられているらしい。
数回吐血を繰り返す。
忍びとして見慣れた光景だが、自分のものだと思うとやはり感じることも違う。
もはや視界すら危うくなってきた。
「…死ぬ、のか……僕は…」
見下ろしてくる死神の姿を見つめ、ミナトはポツリともらした。
身体に負った傷は致命傷。
その上、屍鬼封尽をしたので魂は死神に食われてしまうのだろう。
ミナトはふと自分の教え子を思い浮かべた。
自分が受け持っていたときに亡くした、うちは一族の子供。
仲間を、かばって死んでしまった幼い生徒。
死ぬ瞬間には立ち会えなかったが…
「君も…こういう気分……だったんだろうか…」
答えてくれるものはいない。
木の葉の隠れ里の火影になってから、色々思うところがあった。
隠れ里のありようについてとか、忍びのありようについてとか。
先代の三代目火影は忍びとは忍び耐えるものだといった。
それも忍びの形の一つなのだろう。
自分はこれからどのような形をとっていくのか。
そしてめざすのか。
それすら決まっていないというのに…
それほどまでに短い期間しか火影をやっていないというのに……
「…死にたく、ないな……」
これまであまたの命を奪ってきておいて言えた事ではない。
でも、これから里がどうなっていくのか、見てみたかった。
自分が育てた生徒達の行く末をみたかった。
生徒達の子供を抱いたりもしたかった。
幼馴染の子供が産まれる予定もあった。
今アカデミーに通っている子供達がどんな忍びになっていくのか見守っていきたかった。
カカシと成人になったら酒を飲み交わす約束を果たしてもいない。
これまでなのか。
このまま、終わってしまうのか。
今までの出来事が走馬灯のように流れる。
いよいよ死期が近いらしい。
「…死にたくない…っ!」
四代目火影ははそうもらすと、一筋涙を流し、そのまま意識を失った。
先ほどまで響いていた地響きが無くなり、里の者達はいままで伏せていた顔を上げた。
耳をすませてみても、周りに居るものの息遣いしか聞こえてこない。
皆ワケがわからず視線をあたりにうろうろとさまよわす。
そんな中、1人がポツリと呟いた。
「四代目だ…」
それを契機にざわめきが全体に広がった。
「そうだ、四代目火影だ。」
「火影様が九尾をお止めになったんだ!」
「火影様!!」
歓声を上げる里人達。
避難していた者達は、女・子供・一般人をその場において外の状況を確認するため、避難場所から飛び出した。
「これは…!?」
外に飛び出した者達が見たのは、破壊尽くされた、以前の様子とは変わり果てた姿をした里の様子であった。
活気のあった里の姿は見る影も無い。
「そんな…」
「我々の里が…」
呆然とする中、1人の老人がその場に瞬身で現れた。
一般人ではないことは、その格好を見ればわかる。忍びだ。
外に出てきていた者達は一瞬身構えるも、その者の姿を見てすぐに膝をつく。
額にかけられた木の葉のマーク。
なによりその下にある、見知った顔。
少し前に引退し、四代目火影にその場を譲った三代目火影がその場に立っていた。
「三代目…」
引退してからは忍び装束を身に着けていなかったので、その忍び姿を見るのは久しぶりだ。
「皆無事か?」
「は、我々も、ここで避難しておりました者達も皆無事でございます。」
「そうか…他のところも廻って来たが、破壊されたところもあってな…とにかく無事でよかった。」
「あの…それで九尾と四代目は…?」
「それを今から確認しに行くところじゃ。」
「では我々も――」
「ダメだ。まだ九尾が生きているやも知れん。わし1人で行く。」
「しかしっ!」
「これ以上の犠牲は出したくないんじゃ、わかってくれ。近寄っても大丈夫だと確認しだい、のろしを上げる。」
「…わかりました。」
若い忍びの者達はそれでも不満そうな顔をしていたが、先輩達が承諾した手前、反論することもできずしぶしぶ頷いた。
「では、後を頼んだぞ。」
三代目火影はその場を後にし、一番最後に九尾の姿が確認された、ひときわ破壊の爪あとの激しいところへと向かっていった。
続く。