マシュー・バニングスの日常 第七十三話○年×月△日 さて地球にはクリスマスってもんがある。 これは別にキリスト教徒で無くても祝うもんだなんて話は今さらだが、まあ一般的な日本人ならそれなりに祝うもんだ。 欧米ではそれなりに本当に聖なる日だったりして宗教行事の一環という側面もあったりするのだが、幼少期からずっと日本にいた俺はどっちかといえば日本的な感覚が強く、クリスマスといえば互いにプレゼントしたりパーティしたりくらいの印象しかない。 この頃には俺は当然知っていたが、クリスマスの頃に、八神の最初のデバイス、初代のリインフォースⅠが亡くなったそうで、だから八神はこの時期には一度地球に戻って彼女が消えた場所に花を供えたり、さらに両親の墓にも参ったり・・・つまり八神にとってはクリスマスってのは・・・正確にはこのクリスマス前後の時期ってのは感傷的になってしまうそれなりに重要な期間なんだな。 俺は墓参りには毎年付き合ってきた。別れたとは言っても今年も付き合うつもりだった。 クリスマスパーティは高町家で開催される予定、それに俺も姉ちゃんも月村さんも八神もフェイトさんも出席する。 久しぶりの全員集合だから楽しみである。八神と連絡とると墓参りに付き合うのはOKしてくれた。 待ち合わせ時刻も決めてと、よし間違いなく行かねばな。 クリスマスは平日で、だから当然俺には仕事の予定は無かった。 大学も休みで、つまり完全フリーだったが、俺は日本のバニングス邸で、大学の勉強の予習復習をしていた。 一人っきりでのんびりと好きな勉強するこの時間は、俺は結構好きだ。 でもそろそろ八神との待ち合わせに間に合うよう準備をしようかなという頃に。 いきなり静寂が破れる。デバイス通信が入ったか、サウロンからコール音が・・・ うーん、ここに直通で掛けてこれる人となると限られている。姉ちゃんか、八神か、高町か・・・ まさかギルさんあたりから緊急の患者が入ったから手を貸してくれとかは・・・無いよな・・・とりあえず出てみると・・・「先生! すいません!」 ディスプレイに現れたのは予想だにしなかった・・・グスグスと半泣き状態のスバルちゃんだった。 あーそういえばスバルちゃんにも番号教えてたなあ。 しかし緊急時しか使わないようにとの言いつけをきちんと守る子だったから、ということは・・・「ギンガさんに何かあった?」「そ、そうなんです! ギン姉は言うなって言ったんですけどでもあたし心配で・・・!」「とりあえず冷静に。何があったか教えて。」「は、はい・・・」 スバルちゃんは半分泣いてる上に、話をまとめるのがもともと苦手なようだったが・・・ そこをなんとか聞き出して、いくつかのキーワードをピックアップしてみると・・・「死者が出るほどの大事件」「次元犯罪者」「武装隊すら退けられた」「援護部隊に駆り出された」「前線に立ってたわけじゃない」「なのに運が悪くて」「巻き込まれた」「骨折」「かなりひどい」「何箇所も」「なるほど分かった。それで今、ギンガさんはどこの病院に?」「・・・それが・・・この程度なら治るから大丈夫だって言って・・・」「病院に行ってない?」「・・・はい。」 ・・・あまり自分の体のことを知られたくない、か・・・気持ちは分かるが。この程度なら治るって言ってるってことは・・・経験済みか? 確かに骨折のような傷であれば強引に修復する機能とかありそうな体ではあったが・・・やれやれ、意外と悪い患者だったみたいだな、ギンガさん。隠し事してたか。「今は家?」「はいそうです。」「うーん・・・地上本部第一病院前に30分で来れる?」「はい? はい、行けますけど。」「よし、じゃあそこで待ち合わせしよう。すぐに向かう。」「は、はい! ありがとうございます!」「いーからいーから。」 少しずつ仕事を研究方面にシフトさせて来てはいるが、他ならぬナカジマ姉妹の治療なら、俺には最優先だ。 急いでミッドに向かうとしよう。 そしてこの時、俺は、それ以外のことは・・・忘れてしまった。 病院までスバルちゃんと会って、急いでナカジマ家にかけつけ。「先生! どうして・・・」 ナカジマ家はなんつーか普通の家で・・・日本の一般家庭みたいな雰囲気であった。その一室でギンガさんはうずくまって痛みに耐えていたらしいのだが・・・ゲンヤさんとスバルちゃんの案内で俺が入ったときの第一声はそれだった。「やーれやれ、まーそれはいいから、まずそこに仰向けに寝て。」「・・・でも。」「怪我人は医者の言うこと聞く! ほら早く!」「は、はい。」 サウロンをかざして軽く走査っと・・・ううん、この頑丈な半分機械の体の、半分金属製みたいな骨を折るか・・・左鎖骨、左側の肋骨数本、さらに左腕の橈骨も折れてるな・・・さらに左上腕骨もヒビが入ってるし・・・手根骨にもダメージが・・・しかし確かに既に治り始めている?・・・いや本当には治っていない、正確に言うと体内のナノマシンが強引に繋ぎ合わせて当面の機能維持だけはしようとしてるのか・・・骨折しても戦闘続行できるようなシステムってわけか・・・本人の痛みとか無視するなら優れたシステムだな確かに・・・恐らくこのまま放って置いても自然に治る、それも本当だろう・・・しかし強引に折れた部分を機械で補って繋いだ状態がその間続くわけで、恐らく普通なら耐えられない痛みがあるのではないか?「やれやれ、あんまやっちゃまずいんだけどな・・・」「先生?」 麻酔の魔法ってのは、実はそんなに難しい魔法では無いのだ。だがだからこそ恣意的に使用することは規制されている。悪用されたらシャレならん魔法の一つだからな・・・個人認証パスまで必要なロック状態で保存されてて、使った記録は必ず残るように調整されてる。しかし負傷者などを見つけた時の応急処置として使うことは許されているのだが、事後承諾となると後で色々書類とか審査とか面倒な事になるわけで・・・だけどこの状況、使わないわけにもいかんだろ。 サウロンから麻酔魔法プログラムを呼び出し、パスコードを入力して本人認証を通過。 他の魔法よりも手間を取りつつ、サウロンをギンガさんの肩のあたりに軽く触れさせ、麻酔展開。「あ・・・」「どう? 痛みは。」「楽になりました・・・」「ふー。これは一応、24時間は持つかな・・・でもそれだけじゃあ骨折が直るまでは、もたないかな?」「はい、私の体でも3日は・・・って、あ!」 まずいことを言ってしまったと気付いたらしい。「やっぱり前にも経験あったわけか、骨折。黙ってたわけだ。」「・・・すいません。」「なんで黙ってたか、は聞かないよ。想像つくし。しかし・・・事情を知ってる外科の先生とかは心当たり無いの?」「はい・・・」「分かった、んじゃ俺から紹介するから。大丈夫、信頼できる先生だからさ。」「はい・・・重ね重ねすいません・・・」 とりあえず居間に行ってゲンヤさんと話したのだが・・・なんといっても娘二人の肉体は特殊だ、信頼できる筋からの紹介でなければ医者にかかるのも怖かった、ギンガ自身も知らない医者にかかるとか非常に嫌がるので強くも言えず、と。 だからってこれから戦闘魔導師として働くなら医者と係わり合いにならないわけには行かないだろう・・・ あと、まあ重要な話では無いが、一応何があったのかを聞いてみると・・・ 何でも元々は本局の管轄の事件だったそうで、とある次元犯罪者が武装隊によってミッドまで護送されてきたらしいのだ。 ところがそこで、そいつの味方らしい連中からの襲撃があって、護送されてきた犯罪者は脱走し、武装隊も大きな被害が出た。 武装隊の空士の一人が死ぬほどの大事件だったとか・・・ 本局武装隊すら大きな被害を出すほどの事態だ、本来なら本局のほうで片付けて欲しかったのだが、場所が地上だったので陸士部隊も出撃することとなった。とは言っても援護程度で、犯罪者たちがいると思われる場所の周囲を遠巻きに囲む程度だったのだが・・・ その遠巻きの輪の、さらに一番外くらいに、まだ正式には陸士ではないギンガさんも研修で参加していた。 ところが運悪く・・・犯罪者たちの逃走経路が、正にその位置だったため巻き込まれ、主犯である次元犯罪者の強力な魔法によって吹き飛ばされて重傷を負ってしまったのだ・・・「とりあえずさっき、ざっと診た感じでは、あのまま普通に回復して元通りになりそうですね・・・」「そうか・・・」「その・・・信頼できる医者ってのは・・・意外といるもんですよ? そんなヒドイ医者に変なことされたから、信じられなくなるって気持ちも分からないことはないですけどね・・・」「いや、分かってるよ。君が紹介してくれるなら大丈夫だろう・・・ただな・・・」 まあそういう問題じゃない、か。 怪我しても治せる態勢を敷くのも重要だがそれ以前に・・・ 本当はそんな危険に近付かないで欲しいと・・・ ゲンヤさんの悩みは尽きることが無さそうだ・・・ んで、その後すぐに病院に連絡したり、管理局に連絡して入院患者の搬送だからって言って転送許可を取ったり、地上本部病院で信頼できる老練の外科医を紹介したり、その際に事情説明を俺からしたり、ナカジマ家の3人が揃って頭を下げるので恐縮したり、麻酔使用についてちゃんと書類をまとめて提出したり・・とかしているうちに時間が過ぎて・・・ 時間を確認したら・・・地球の日本時間では午後8時!!! がああ! やっちまった! 八神との待ち合わせをすっぽかしたあげくに! パーティも遅刻だあああ!! 全速力で高町家に向かう。 急患だった旨を説明して何とか分かってもらったものの。 八神、わかったからと言うばかりで何というかよそよそしい、それ以上話させてくれない。 月村さん、本当に大変だったねっていいながら妙に近い、姉ちゃん何処かイライラ、高町は上の空・・・ 考えて選んだプレゼントを渡して、それでやっと皆普通程度の機嫌に戻ったくらいが限界でした・・・ 今度みんなに埋め合わせしないとなあ。△年○月○日 年が明けてしばらく経った頃。 ギルさんとも時間をかけて話し合い、今は俺自身の治療に専念する時間を増やしたい旨を了解してもらった。 役に立たなくて済まないと謝ってくれるのだが仕方ない。彼は優れた医者ではあっても研究者では無いからなぁ。 でも推薦して貰って、クラナガン第一技術研究所という、管理局所属としては最大の研究所に籍を置くことが出来るようになった。 まだ研究所の方に専業というわけではなく、両属という形ではあるが。 そこに所属できるだけで前より一ランク上の情報にアクセスできるようになったのが非常に大きい。 しかしだな、結局の所、そのレベルの情報なら既にギルさんならアクセスできてたわけで。 そしてそれでも俺の治療法は見つからなかったのだよな、んなこた分かってたが。 あーダメだ。 やっぱこういう普通な経路を辿ってるだけではダメだね。 今の俺は単なる一介の若手医者ってだけに過ぎない、これでは大したこと教えてもらえん。 不本意ではあるが・・・何らかの派手な功績でも挙げて見せなくては・・・ もっと深い所に入り込み、より多くの情報を得るってわけにはいかないだろう。 俺にどんな研究をして欲しいのか、上の人の思惑は、実は分かりきっている。 歪んで傷ついたコアを修復することが俺には出来るわけだから、そこから一歩進んで。 健康なコアに手を入れて、魔力の出力増幅とか出来ないものかと。 その辺の研究をして欲しいと思ってるのだ、研究所の上の人達は。 実は出来るだろうとは思うのだ。 でもだなぁ・・・俺が頑張って何人か・・・魔力出力を例えば上手くいって、10%以上増幅させる手術を成功させたとして? それって管理局全体にとっては、どれほどの意味があるのだろうか? 皆無に近いね。 俺の体力には限界がある、生涯費やしても多分、数百人にそういう手術できる程度? やっぱり意味無いねえ。 例えば高町なら結果的にそれくらい魔力保有量増幅とかしたけどさ、それが彼女の魔導師としてのランクとか決定的に変えたかと言えばそんなことは全然無いのだ。あいつは元から無茶なバカ魔力を既に持っていたのであり、さらにその上で多少増えたってだけなんであり。つまり健康なコアに手を入れて魔力増幅固定したとしてもそれが決定的な違いを生むとは思えん。保有魔力なら確かに高町は多い、例えばシグナムなんかより多い、ヴィータよりも多い、だけどそれじゃあ高町とシグナムとかヴィータが一対一で本気で戦うとかしたりすると仮定して、魔力多い高町が絶対勝つか?って言ったらそんな単純なもんじゃあない。それでも百回模擬戦でもすれば、最終的には、今では凄く技も巧みになった高町が勝率では上回るかもしれんよ、でもそれだけだ。もしも後の無い一回限りの命が懸かってるような真剣勝負とかした場合はどうだろうね。修羅場になれてるシグナムとか本気で殺す気で戦えばいざというときはどんだけ強いか分からんぜ? ああ、でも高町なら父親譲りの戦闘民族の血がギリギリになると目覚めてさらに強くなってとかあるかも・・・ うん、高町だと例えとして悪かったなw だがつまるとこ魔力量の問題なんて単純なもんじゃ無いのは確かだ。高町が強いのは元からで魔力多いのも確かだが、それは非常に重要な要素ではあるが、決定的な要素とも思えん。 そういう正論はミッドの人間は全員分かっている、分かっているがしかし。 それでも、保有魔力量の多寡は非常に重要な問題として・・・魔導師の生涯を大きく左右するほどの問題として存在する。 BとBマイナー程度の魔力量の違いなら、客観的に言えば、後は努力の差でどちらが上か決まるから本質的には変わらんのだが。 しかしそうは行かないのがミッド社会で、そういうランク付けの差は、進学就職雇用待遇賃金などに大きな影響を与えるのだな。 人生そのもの全てに影響を与えるといっても良いくらいだ。 悪名高い闇の書の主でありながら八神が出世できてるのも結局、あいつが異常な魔力保有量を誇るから。 それさえあれば、他の事は多少、目が瞑られる傾向さえあるわけだ。 そういう文化、価値観にケチつけても始まらん。単に文化が違うってだけだし。 例えば日本では生まれながらの日本人であるかどうかって凄い大きいんだぜ。外国人に対しての登録義務の強制とか相当きつい。 アメリカに比べれば段違いだ。それじゃあアメリカにはそういうの無いかって言えば実際にはあるよね。同じアメリカ生まれのアメリカ人でも、白人、アングロサクソン、プロテスタントって人間と、それ以外の人間とは、生まれが違うってだけで物凄い差があったりね。 んで、魔導師か、そうでないかに区別・・・いやはっきり言おう、差別があるのがミッド社会というものだ。 そして魔導師内でも、地道な実績とか、見事な功績とか、そういうの以前に、魔力保有ランク付けで差別が存在する。 まあ完全な自由と平等の社会なんて存在しないってことで。それが現実。 だが同時に、実際には魔導師としての力の全く無い人が、頭脳だけで中将とかになってトップになってる例とかもあるし。 その差別は存在するが、しかし絶対のものでも無い、それも現実と。 話が逸れたが、まあとにかく。 ミッドにおいて魔力保有量の多寡は大問題。 だからそれを少しでも上げる技術でもあれば・・・大うけすることは間違いない。 そして、俺には、そういうこと、多分、できると思う。 リンカーコアは半分エネルギー体みたいなもんだが、逆に言えば半分有機体みたいなもんで、よくよく見れば「コアの中のコア」と言うべき部分が存在し、その中核部から螺旋状に魔力の筋みたいなもんが通ってるように俺には見えるのだが、従来のコア増幅試行例ではそういう構造を無視してただ外から強烈な魔力を浴びせていた、そんなことしても周辺部にほとんど弾かれて中核部には届かず、余分な魔力はコアの構造を破壊して結果的には魔力量も減るだけだった。もしも中核部を明確に特定して、そこに魔法的な針みたいのを差し込んで、中核部だけに一時的に、構造を破壊しない程度の魔力を流すことが出来れば、そこからの魔力が放出される経路にも一回、強く魔力が流れて筋道が整理強化されて、安定したまま出力が上がる可能性が高いのではないかと。 「中核刺激法」によるリンカーコア安定増幅。 その論文は、前から考えていた方法でもあったので、すぐ書き上がったのだが。 これを研究所の上司に提出するかどうかは・・・しばらく迷った。 つまりだな・・・これも・・・悪用しようと思えば・・・できる技術なんであって。 悪用される危険性がある技術でも、それが「治療」の技術なら発表することにためらいは無い。 必ずその技術で救われる人がいると断言できる技術なら問題無い。 でもこれは、治療の技術ではない・・・・・・ 管理局の中枢に近づき、より多くの情報を得るため、それも我が身を治すためではあるのだが。 つまり俺が俺の命を救うための技術にはなる、世の中には「緊急避難」てもんがあるじゃないか? 二人で溺れてて掴まる板が一枚しか無ければ、殺してでもその板を奪っても良いのだ。 だが俺は現状、別に死にそうってわけでも無いぜ? 養生すればそれなりに普通に生きていけるだろ・・・ この技術を発表したことでどっかで違法研究者が、俺みたいに中核部をきれいに特定できない違法研究者が、数打ちゃ当たるだろって適当に多くの人体実験とかして犠牲者が出たりとか、ありえるのかも知れない。エリオ君のような例もある。 数百数千と実際にコアの構造を精査して、中核部の存在確率が高い位置を、俺みたいに直接に見えなくても、把握できるようにして、その上で発表するなら問題無いのだが、それにはその調査統計整理が済むまでは絶対的な機密として扱ってもらわなくてはいけない。 実際の手順としては、まず論文を提出する、志願実験者を募って実際に何人かで成功してみせる、有効性が証明された後で、本格的な統計調査に入り、手順を標準化して安全性を高め、一定の設備がある環境なら実施できるように持っていって・・・ その過程で、恐らく・・・有名になること、評判になってしまうことは避けられない。最初に成功して見せた時点で大評判になるだろ。そして俺は成功する自信がある、本質的には直接整形術の応用に過ぎないから、高町にも実際には似たような施術を行ったしな、だから成功する、そこまでは良いのだが、それで評判になると、どういう技術なのか問い合わせが殺到するだろう、それもきちんと正規の手順を踏んでくれるなら良いのだが、ことがコアの出力増幅となれば、非合法な方面から情報を奪取しようという動きも出かねない。 だけどだな。 例えば、視力回復手術ってあるじゃないか。レーザーで角膜削るやつね。 あれをやって視力が回復する、それはどういうことかといえば具体的には「眼鏡がいらなくなる」程度。 別にいきなり鷹のような視力が手に入るとかそういうわけではない。 俺の「リンカーコア中核刺激による魔力出力安定増幅」も、それと似たようなものなのよ。 高町みたいな若さと、異常な魔力量をもともと持ってる人で、10%程度のアップ。 それはランクBの人が、B+になる程度の違いで、すごーく運がよければAになるかも? 程度だ。 それも魔力の出力だけだからなあ。 実質的には魔力保有量が増えたと見て間違いでは無いだろが。 だけどそれだけだとあんまり意味無いんだってば。 魔導師としての実力とは・・・それに技術や知識や経験が積み重なって総合的に決まるものなのであって。 つまり要点は。 これは決定的な技術では無い!ってことなんだ。 コアの出力を増幅して安定させる! とか聞けば魔導師なら、もう夢の実現みたいで有頂天なるだろうが。 でもこれだけで何かが決定的に変わるかといえば絶対にそんなことはない! 比較的に、いろいろと有利になるかもだけど・・・でもそれだけだ。 そのへん、冷静に皆さんに分かってもらえれば、それほどフィーバーしないで済むかな。 そうなるとむしろ隠すよりは、積極的に情報開示すれば。 分かる人にはわかるだろ、なんだその程度かって。 でもそれでも新しいアプローチであることは確かだから違法研究者とかに流れて悪用される可能性も・・・ でもだからそれほど決定的な力を生み出すような技術じゃ無いんだってば。 断言するが、Bの魔導師にこの手術受けさせてB+にするくらいなら、最初からB+連れて来る方が早いし安く済む! この技術が敷衍しても、若手魔導師全体の微妙な底上げ程度の意味しかない! そしてそれだけだと管理局全体にとっても、微妙にプラスになるって程度の意味しかない! だからもう発表してしまおう! 論文提出しちゃおう! そしたら上の人は驚いて喜んでくれること間違いなし! そして実験成功させて、大いに実績を上げることで、より深く管理局中枢の情報を得られる立場になれる! なんといっても俺は管理局に命を救われた恩がある、恩返しはせねばならない、これは大いなる恩返しになるだろう! これでもう貸し借りなしのイーブンだぞと言えるくらいだと思う、そういう状態になりたい! それが俺の正直な感情なのだが。 すぐに記憶がその気持ちを引き止める。 つまりエリオ君だな・・・ 彼は、実際に、俺達の研究成果を悪用されて、人体実験とかされてた、その惨状をこの目で見た。 でもどーだろね。 それは俺の管轄じゃないだろ。 俺は情報漏洩など絶対しない。だからその情報が流れるとしたら俺以外からで。 そういう情報漏らすやつが悪いんだろ。そしてそういうのを捕まえるのは捜査官とかの役目でさあ・・・ できることしかできんのだよ人間は。 持ち場があり、役目がある、その中でベストを尽くす、それが組織に所属するものの義務であり。 自分の役目では無いところまで心配して、今、研究員であるという立場に求められる義務を果たさないというのも違うよな。 とは思うがでも悩む、悩む悩む結論出せん。 迷いに迷った俺は、書きあがった論文を研究所にも置かず、地球の家に持ち帰り、自室の机の引き出しにしまった。 相談したい。 誰かに。 いや、八神に、か。 おおう! 少し驚いたのだが。 こういうときに。 姉ちゃん → いいからやってしまえという。姉ちゃんにとっては俺が第一で他の事はどうでもいいから。 高町 → 相当悩む、そして大して有効な忠告は出来ない。 フェイトさん → 高町よりは少しは詳しいかもだが現場止まりの情報しか持たず。 月村さん → 悪いがあんまりミッドの事情とか詳しくないしこの件では頼りにならない。 ユーノ → 違法研究の実態とかそれほど詳しいとも思えん。彼が詳しいのはあくまで蓄積された過去の情報で現状では無い。 クロノ → 艦隊勤務に移って結構経ってる。今はほぼ純粋な軍人。もともと前線での部隊指揮が多かったタイプ。 リンディさん → 既に後方勤務に移ってるし元から艦隊勤務の人。でも八神に次ぐくらいは頼りになるかも? それに比べて。 八神なら、元々は特別捜査官でありさらに上級管理官を兼ね、情報関係は彼女の専門。違法研究の捜査など前線で当たってる担当者でもあり、しかもそういう捜査官全体の動向とかも把握できる立場にもあり。 こういうときには、どう考えても一番、頼りになる! よし何とかしてあいつを捕まえて、相談に乗ってもらうとしよう・・・(あとがき) ギンガ選択イベント「隠していた負傷」。発生条件はスバルにも直通番号教えておくこと。 これを選ぶことで「お墓参り(1)」は実行できませんでした。でもこれは断れないよね普通・・・ ギンガの方で、続くイベントが起こるフラグは立ちましたが・・・八神の傷心度アップ。 また「クリスマスパーティ(1)」にも出席できず。ただしこのパーティに最初から出ると、すずかが各人の気持ちをはっきりさせるために挑発を繰り返すイベント「本当に好きなの?(2)」が強制発動、かえって雰囲気は悪化、体力ゲージが30%強制的に削られ、しばらく休息以外できなくなるだけでなく、各ヒロインの傷心度が軒並み上昇(すずかも含めて)します。 うーんデスイベントですねえ。ただし出なくては写真かなり逃すのでフルコン目指すには出るしか無いのですが。 治療イベント「中核刺激法による魔力中枢安定増幅術」論文完成。年明けに起こる固定イベントです。 現状の選択肢。 すぐ提出 → 治療イベント次の段階に進みます。スカさんルートに近づくかも? すぐ破棄 → 治療イベントはもう進みません。八神攻略は事実上不可能になります。 八神に相談 → もう一度、選択肢が与えられます。ためになるアドバイスも貰えます。 ここまでで一連の初期イベントは終わり。 ここから本格分岐。「なのは・はやて」方面「フェイト・ギンガ」方面「すずか・その他」方面が大まかな流れ。 書いてみて分かったんですけどフェイトさんとかギンガとかもね、本気で書くとなるとそれ一本に集中せんとどうにもならぬ。 すずか方面はそれなりに堅実なルートだけに書きやすいのだが、他のヒロインの好感度を上げなかった場合の裏道すなわちスカさんルートとなるとこれはもう全然別の話になるし、そっちにも色気出すとか無理だあw ゆえに他のヒロインも・・・とか考えるのは先の話、まずは明確に「なのは・はやて」方面に進みます。 さらばだフェイト、さらばだギンガ。さらばだ隠しヒロインたち、味方としてのドクター。 ちょっと筆が滞ったのには訳がありまして。 つまりですね、しばらく皆、悩む段階に入るのです。マシューも治療に自分の気持ちにと悩む、八神も仕事に嫉妬にと苦しむ、なのははうじうじと気持ちを認めず後ろ向きになって悩む、ユーノもそれに振り回されて暗くなるなど。 恋愛話って、くっついてしまえば甘甘ラブラブな明るい雰囲気になるけれど・・・そこに行く前の悩んでる状態って暗いですねえ。 でもどうしようも無いようです。そうして真剣に悩んで成長していく過程を正面から描く以外に出来ることは無さそうです・・・