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No.7000の一覧
[0] マシュー・バニングスの日常[ごう](2010/03/17 21:46)
[1] マシュー・バニングスの日常  第一話[ごう](2009/03/16 04:17)
[2] マシュー・バニングスの日常  第二話[ごう](2009/03/16 04:35)
[3] マシュー・バニングスの日常  第三話[ごう](2009/03/16 04:41)
[4] マシュー・バニングスの日常  第四話[ごう](2009/03/16 04:42)
[5] マシュー・バニングスの日常  第五話[ごう](2009/03/16 05:09)
[6] マシュー・バニングスの日常  第六話[ごう](2009/03/03 09:13)
[7] マシュー・バニングスの日常  第七話(無印編・完)[ごう](2009/03/16 04:37)
[8] マシュー・バニングスの日常  第八話  幕間[ごう](2009/03/16 04:39)
[9] マシュー・バニングスの日常  第九話  入院日記[ごう](2009/03/04 09:45)
[10] マシュー・バニングスの日常  第十話  A’s突入[ごう](2009/03/05 08:56)
[11] マシュー・バニングスの日常  第十一話[ごう](2009/03/06 08:43)
[12] マシュー・バニングスの日常  第十二話[ごう](2009/03/07 07:49)
[13] マシュー・バニングスの日常  第十三話[ごう](2010/05/23 20:30)
[14] マシュー・バニングスの日常  第十四話[ごう](2009/03/09 06:06)
[15] マシュー・バニングスの日常  第十五話[ごう](2009/03/10 03:19)
[16] マシュー・バニングスの日常  第十六話[ごう](2009/03/11 05:38)
[17] マシュー・バニングスの日常  第十七話(A’s・完)[ごう](2009/04/01 23:39)
[18] マシュー・バニングスの日常  第十八話  小学生日記[ごう](2009/03/26 18:27)
[19] マシュー・バニングスの日常  第十九話  小学生日記2[ごう](2009/03/26 18:37)
[20] マシュー・バニングスの日常  第二十話  小学生日記3[ごう](2009/03/15 06:16)
[21] マシュー・バニングスの日常  第二十一話  なのは治療編[ごう](2009/03/27 19:17)
[22] マシュー・バニングスの日常  第二十二話  なのは治療編2[ごう](2009/03/28 22:08)
[23] マシュー・バニングスの日常  第二十三話  なのは治療編3[ごう](2009/03/26 18:43)
[24] マシュー・バニングスの日常  第二十四話  なのは治療編4[ごう](2009/03/19 06:25)
[25] マシュー・バニングスの日常  第二十五話  リハビリ編[ごう](2009/03/26 19:47)
[26] マシュー・バニングスの日常  第二十六話  リハビリ編2[ごう](2009/03/27 19:13)
[27] マシュー・バニングスの日常  第二十七話  リハビリ編3[ごう](2009/03/28 22:06)
[28] マシュー・バニングスの日常  第二十八話  リハビリ編4[ごう](2009/03/30 19:24)
[29] マシュー・バニングスの日常  第二十九話  リハビリ編5[ごう](2009/03/30 19:23)
[30] マシュー・バニングスの日常  第三十話    退院・卒業[ごう](2010/01/05 01:55)
[31] マシュー・バニングスの日常  第三十一話  中学生日記[ごう](2009/04/01 23:39)
[32] マシュー・バニングスの日常  第三十二話  中学生日記2[ごう](2009/04/03 18:30)
[33] マシュー・バニングスの日常  第三十三話  中学生日記3[ごう](2009/04/06 20:48)
[34] マシュー・バニングスの日常  第三十四話  中学生日記4[ごう](2009/04/09 06:16)
[35] マシュー・バニングスの日常  第三十五話  中学生日記5[ごう](2009/04/09 06:16)
[36] マシュー・バニングスの日常  第三十六話  中学生日記6[ごう](2009/04/11 06:54)
[37] マシュー・バニングスの日常  第三十七話  中学生日記7[ごう](2009/04/18 07:47)
[38] マシュー・バニングスの日常  第三十八話  中学生日記8[ごう](2009/04/14 07:53)
[39] マシュー・バニングスの日常  第三十九話  中学生日記9[ごう](2009/04/18 07:58)
[40] マシュー・バニングスの日常  第四十話    中学生日記10[ごう](2010/01/05 01:57)
[41] マシュー・バニングスの日常  第四十一話  中学生日記11[ごう](2009/04/24 21:25)
[42] マシュー・バニングスの日常  第四十二話  中学生日記12[ごう](2009/04/27 08:27)
[43] マシュー・バニングスの日常  第四十三話  中学生日記13[ごう](2009/05/11 02:33)
[44] マシュー・バニングスの日常  第四十四話  中学生日記14[ごう](2009/08/03 18:33)
[45] マシュー・バニングスの日常  第四十五話  中学生日記・終[ごう](2009/08/20 13:03)
[46] マシュー・バニングスの日常  第四十六話  アリサinミッド1[ごう](2009/09/02 01:55)
[47] マシュー・バニングスの日常  第四十七話  アリサinミッド2[ごう](2009/09/13 14:04)
[48] マシュー・バニングスの日常  第四十八話  アリサinミッド3[ごう](2009/09/24 19:31)
[49] マシュー・バニングスの日常  第四十九話  アリサinミッド4[ごう](2009/09/30 21:07)
[50] マシュー・バニングスの日常  第五十話    アリサinミッド5[ごう](2010/05/23 20:24)
[51] マシュー・バニングスの日常  第五十一話  エリオ編[ごう](2009/11/06 04:36)
[52] マシュー・バニングスの日常  第五十二話  エリオ編2[ごう](2009/11/06 04:36)
[53] マシュー・バニングスの日常  第五十三話  エリオ編3[ごう](2009/12/01 21:57)
[54] マシュー・バニングスの日常  第五十四話  エリオ編4[ごう](2009/12/05 03:19)
[55] マシュー・バニングスの日常  第五十五話  エリオ編5[ごう](2009/12/07 21:54)
[56] マシュー・バニングスの日常  第五十六話  「なのは」1[ごう](2009/12/09 18:05)
[57] マシュー・バニングスの日常  第五十七話  「なのは」2[ごう](2010/05/10 07:17)
[58] マシュー・バニングスの日常  第五十八話  「なのは」3[ごう](2009/12/12 00:51)
[59] マシュー・バニングスの日常  第五十九話  「はやて」1[ごう](2009/12/12 18:07)
[60] マシュー・バニングスの日常  第六十話    「はやて」2[ごう](2010/01/05 01:56)
[61] マシュー・バニングスの日常  第六十一話  「はやて」3[ごう](2009/12/15 21:38)
[62] マシュー・バニングスの日常  第六十二話  VS.八神![ごう](2009/12/17 21:01)
[63] マシュー・バニングスの日常  第六十三話  VS.八神! 2[ごう](2009/12/20 00:43)
[64] マシュー・バニングスの日常  第六十四話  VS.八神! 3[ごう](2009/12/21 22:12)
[65] マシュー・バニングスの日常  第六十五話  VS.八神! 4[ごう](2009/12/23 00:55)
[66] マシュー・バニングスの日常  第六十六話  VS.八神! 5[ごう](2009/12/25 05:09)
[67] マシュー・バニングスの日常  第六十七話  VS.八神! 6[ごう](2009/12/27 09:13)
[68] マシュー・バニングスの日常  第六十八話  VS.八神! 7[ごう](2009/12/29 06:54)
[69] マシュー・バニングスの日常  第六十九話  VS.八神! 終[ごう](2009/12/31 00:35)
[70] マシュー・バニングスの日常  第七十話   リスタート[ごう](2010/01/05 04:54)
[71] マシュー・バニングスの日常  第七十一話   迷走日記[ごう](2010/01/08 21:35)
[72] マシュー・バニングスの日常  第七十二話   迷走日記 2[ごう](2010/01/11 13:12)
[73] マシュー・バニングスの日常  第七十三話   迷走日記 3[ごう](2010/01/17 17:04)
[74] マシュー・バニングスの日常  第七十四話   迷走日記 4[ごう](2010/02/10 22:28)
[75] マシュー・バニングスの日常  第七十五話   迷走日記 5  クロノ・エイミィ結婚 1[ごう](2010/02/10 22:16)
[76] マシュー・バニングスの日常  第七十六話   迷走日記 6  クロノ・エイミィ結婚 2[ごう](2010/02/20 22:55)
[77] マシュー・バニングスの日常  第七十七話   迷走日記 7  クロノ・エイミィ結婚 3[ごう](2010/03/08 19:41)
[78] マシュー・バニングスの日常  第七十八話   迷走日記 8  クロノ・エイミィ結婚 4[ごう](2010/03/14 22:15)
[79] マシュー・バニングスの日常  第七十九話   迷走日記 9  ギンガの卒業式[ごう](2010/03/19 22:29)
[80] マシュー・バニングスの日常  第八十話    迷走日記 10  ギンガの卒業式 2[ごう](2010/03/27 05:27)
[81] マシュー・バニングスの日常  第八十一話   迷走日記 11  ギンガの卒業式 3[ごう](2010/04/03 06:40)
[82] マシュー・バニングスの日常  第八十二話   迷走日記 12  レリック[ごう](2010/04/10 06:13)
[83] マシュー・バニングスの日常  第八十三話   迷走日記 13  レリック 2[ごう](2010/04/16 22:37)
[84] マシュー・バニングスの日常  第八十四話   迷走日記 14  レリック 3[ごう](2010/04/22 07:39)
[85] マシュー・バニングスの日常  第八十五話   迷走日記 15  レリック 4[ごう](2010/04/26 07:12)
[86] マシュー・バニングスの日常  第八十六話   迷走日記 16  レリック 5[ごう](2010/04/30 00:11)
[87] マシュー・バニングスの日常  第八十七話   迷走日記 17[ごう](2010/05/03 10:32)
[88] マシュー・バニングスの日常  第八十八話   迷走日記 18[ごう](2010/05/06 23:05)
[89] マシュー・バニングスの日常  第八十九話   迷走日記 19[ごう](2010/05/10 08:03)
[90] マシュー・バニングスの日常  第九十話    迷走日記 20 二年目のクリスマス[ごう](2010/05/16 22:35)
[91] マシュー・バニングスの日常  第九十一話   迷走日記 21  U.D.[ごう](2010/05/23 20:05)
[92] マシュー・バニングスの日常  第九十二話   迷走日記 22  U.D. 2[ごう](2010/06/01 06:26)
[93] マシュー・バニングスの日常  第九十三話   迷走日記 23  U.D. 3[ごう](2010/06/07 05:40)
[94] マシュー・バニングスの日常  第九十四話   [ごう](2011/03/17 20:20)
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[7000] マシュー・バニングスの日常  第六十一話  「はやて」3
Name: ごう◆daa9f0e0 ID:9fced06a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/15 21:38
マシュー・バニングスの日常      第六十一話







 中学卒業後。



 私は仕事に時間全部使えるようになったんで思い切り仕事に打ち込んだ。



 まずは偉くならんと話にならんねん。

 階級で言えば最低でも佐官クラス。

 十代で佐官って、普通はありえへんわな。

 そこを何とかするんや!


 私は仕事仕事とそれに熱中しまくって。



 気付いたらマーくんを・・・ないがしろにしてたんか。

 将来のためにって言いながらも今を犠牲にしてた。

 それでもたまに帰って、んでマーくんに慰めてもらって・・・

 それで私の方は甘える人がいて、帰れる場所があって、それなりに満足やったんかもしれんけど。

 客観的に見たらどうやろな・・・って、問題あるにきまっとるやん、私。


 でもな。

 今は仕事したいねん。

 片付けたいことがあるねん。

 それもなるべく早く!

 早く片付けられたら!

 そしたらあとはのんびり暮らすんや。

 マーくんと一緒に・・・


 それを言い訳にして。

 また仕事に打ち込んでたら。




 マーくん倒れた。



 事故みたいなんに巻き込まれたて。

 健康状態は安定してたから大丈夫やと油断しとった。

 そうやな世の中には事故言うもんもあるんや。



 それを知ったんはニュースでやった。


 デバイス直通メールの方はな・・・事情あって使えへん状態で。

 ニュース見た時最初は何のことか全く理解できへんかったけど。

 きちんと名前を確認して、念のために複数の媒体でも確認して、間違い無いって分かってしまったとき・・・

 目の前が真っ暗になったな。血の気が引くいうんはああいうことを言うんや・・・


 これって・・・なんていうか・・・絶対にやったらあかんことを?

 おもいきりやってもうた?

 どんな言い訳しても許されへんことを?

 私は、やってもうた? 



 ニュースもな、最新のニュースをリアルタイムで受けられる環境や無かったんで・・・

 知った時に既にかなり遅くて・・・


 それから可能な限り早く駆けつけても・・・

 既にマーくん、退院するとこやった。

 よかった元気そうや・・・

 マーくんしか目に入らず、いつもみたいにギュってしようとしたら。


 アリサちゃんが割り込んできた。

 そのアリサちゃんの目ぇ見た瞬間・・・

 ああ・・・やっぱり許されへんこと、してもうたんやなって・・・

 はっきり分かった。


 マーくんはアホやから許してくれるに決まっとるんや。

 そうやマーくんはアホなんや、アホみたいに・・・私には優しいんや。

 そっか私、それに甘えてたんか、それも一方的に。



 これは・・・私が悪いなあ・・・

 ほんまに一かけらも自分を弁護できへん。

 反省して、今後はこういうこと無いようにできる?・・・かな。

 それも分からへん。

 しばらく打ち込まんと仕事の方は片付かへんねん。


 それやったらしばらく・・・どの程度のしばらくか分からんくらいの期間・・・

 私、マーくんに甘えるだけ甘えて何も返さんと、マーくんに負担かけるだけの日々が続く?

 それって・・・許されるんやろか。


 マーくんが許してくれるいうんは置いといて。

 それに甘える自分を許して・・・ええんやろか?

 アリサちゃんは・・・もちろんそんな私に都合ええ話なんて許す気は皆無やし。


 アリサちゃんが私を責める、当然やわな。

 「軽傷で済まなかったらどうするつもりだったのか?」って。

 どうもこうも・・・今回は事故やったけど・・・マーくんなら体調悪くして倒れるって可能性は常にあるわけで・・・

 そんときマーくんが私の家で一人で留守番してたら・・・近くに助けられる人が一人もおらんかったら・・・

 そしてマーくんが私の家で一人苦しみながら万が一・・・とか。

 考えただけでゾっとする。


 それやのに。

 ここ何年かは倒れたこと無かったから。

 それに、近頃は体調良かったし。

 何よりも、帰った時マーくんいてくれればすぐに甘えられて私には・・・すごく都合良かったし。

 せやからそういう状態のままに・・・しとったんやな私は。


 最悪や。

 言い訳の余地が無い。

 アリサちゃんになんて答えたらええんか全然分からへん。


 二度とこんなことが無いように・・・できへんから。

 「状況を改善する気はあるのか?」

 そうやなアリサちゃん、そこが問題なんや。


 私には、その気が、実は・・・・・・無いんか。

 仕事もしたいねん。

 でもそれやったら当然、アリサちゃんは・・・別れろって・・・言うやろ・・・

 でも私マーくんと離れたくないねん・・・

 でも仕事も片付けへんと・・・


 どっちを優先したらええんか心の中で結論が出てない。

 両方とも私にとってすごく重要で。

 そしてその二つが・・・矛盾する可能性とか・・・考えへんようにしてきて・・・

 実際に近頃矛盾してきて・・・負担をマーくんに押し付けてた現実から・・・目を逸らしてて・・・


 どうしたらええんか、なんて答えたらええんか分からんままにしばらく黙ってたんやけど。


 そこに連絡が。実は途中で仕事置いてきたんやけどその仕事に動きが、今いかんと間に合わん!


 でも・・・

 それを無視したらどうなったか。

 この仕事については失敗するやろな。準備して見計らって罠を張って向こうがかかるのを待つだけって状態にしとったんやけど、向こうも

用心深くてなかなか動かへんかったのがやっと動いた、この機会を逃せばきっと今回の仕事は失敗に終わる。

 でもそうなったらどうなんやと、取り返しがつかんのかと言えば違うわな、結局のところ、私の昇進が少し遅れる程度やわ。

 今、マーくんの命に関わる真剣な話をしとるのに・・・それより重要なことがあるんか!って。

 アリサちゃんはきっとそう思っとるやろし・・・


 せやから。

 その呼び出しに従って私が仕事に出たんは・・・

 逃げや。


 逃げたんや。

 どんなに言い訳しても変わらへん。

 アリサちゃんの責める視線に耐えられへんで逃げたんや。


 私は仕事を冷静にてきぱきと効率よく片付けた。

 あんなにうまく仕事かたしたことなんて無いくらい巧みに。

 私って逆境になると頭冴えるみたいやな。仕事関係については・・・


 でもそうしながらも心の中では分かっとった。


 最悪の上に、さらに最悪やな。

 これでアリサちゃん、完全に敵に回した。

 その原因は私が逃げたから。

 話にならんわ。

 一方的に私が悪い。

 マーくんにとって「姉ちゃん」がどんだけ大きい存在かなんて分かり切っとる。

 その「姉ちゃん」に完全に嫌われるような真似して・・・私は何やっとるんや?


 あかんわ。

 マーくんが倒れたって知った瞬間から、私は・・・無茶苦茶混乱しとる。

 ただ混乱して、ひたすら悲しくて、でも無事な姿をみて安心して、でも罪悪感で一杯で・・・



 こういうふうに混乱したとき。

 私はいつもマーくんに抱き締められて。

 ナデナデってしてもらって。

 そんで安心して。

 大丈夫や、私の事をこうして無条件で認めてくれる人がおるんやって思えて。


 でも今はマーくんに頼るわけにはいかへん。

 あ。

 それナシってことにされたら。


 どうしよう。

 今度の大失敗で、今後はそれナシってことにされたら。

 あかん怖い。

 むっちゃ怖い。




 どうしたらええんやろ。

 全然分からへん。分からへん?

 それはウソやな。


 答えとか分かりきっとるわなあ・・・


 私が、私の事しか考えへんと、マーくんに甘えてたのが悪かったんやから。

 今私のするべきことは反省して、今度は、今度こそは、本当にマーくんの事を考えて行動すること。

 マーくんの体の事を考えれば・・・今みたいなペースで仕事仕事では・・・また今回みたいなことが繰り返される可能性が・・・

 でも仕事は、なるべく早く片付けたいしそのためには出来ればもっと仕事に打ち込みたいくらいで・・・


 私が見てるのはどうしても無理なんやったら・・・家で留守番してもらうんは、いざというときマーくん一人やから危険やし・・・

 騎士たちのうち誰かに家にいつも残って貰うようにとか・・・あかんそれも難しいねん現状・・・

 マーくんのためには・・・ミッドにおるときは・・・誰もおらん私の家やなくて、人の多い病院寮とかにいてもらったほうが・・・

 いやそれやったら専属の看護人とか雇って家にいてもらってマーくんの事を注意しといてもらえば・・・

 でも結局、私がほとんど家に帰らへんっていうのは変わらへんのやったらそもそも結局マーくんに留守番してもらってるのと同じ?



 体の事だけ考えるんやったら看護人雇うとか手はあるかもしれん。

 問題の本質は・・・そことちゃうんとちゃうか?

 つまり私が、どちらを優先するんか。

 結局仕事を優先して、家にマーくん放置しとくんか。そうして都合のよい時だけ帰って甘えようっていうんか。

 そんな甘えを許さず、思い切って距離を置いて・・・仕事に専念するって覚悟決めるんか。

 どうしたらええんやろ。

 なにが正解なんやろ。

 あかん全然わからへん。



 千々に乱れる心とは裏腹に、私の頭と手は正確に素早く動いて書類をチェックしとった。

 残してた仕事が片付いたのは二日後。

 予定してたより早く終わった。


 それまで公用の通信端末しか使えへん状態やったんやけど。

 やっと私用のデバイス通信が許可されて。

 見てみるとまず8日前。

 マーくんから救援を求めるメールが来てたことを今になってやっと知る。

 見た瞬間また血の気が引いたわ。


 そうか私はこのメールを・・・完全に無視したと、そう思われても仕方ない状況なわけやな。

 思ってたよりも・・・事態は悪い。

 これっていくらなんでもマーくんも怒っとるんちゃう? 見殺しに・・・したようなもんやもん。



 さらに二日前、私がアリサちゃんから逃げ出した直後くらいの日時で。

 マーくんから、ちゃんと話し合う時間を作ってくれってメール来てた。

 そうやな、そうせんとあかんわな。


 今度はマーくんとの話し合いを優先する。

 でもなんとか時間を空けられたんは、やっと三日後のスケジュール。

 それも相当無理やりやったけど・・・しょうがない。


 今度こそ色々と・・・はっきりさせんとあかんのやろな。

 これまでみたいになんとなくでは済まされへん。






 話し合いの当日が来た。



 マーくんが来る前に。

 一人で部屋に籠もって。

 改めて考えを整理する。




「八神はやて。あんたは仕事を辞められるんか?」


 自分に訊いてみる。答えはすぐに出る。


「無理や。辞められへん。」


 さらに私は自問自答を繰り返す。


「せめて減らして・・・彼のための時間を増やすとかできへんのか?」


 今度は少し考えた、けど答えは決まっとる。


「それも無理。」


 せやな。ということは。


「つまり、彼か仕事かって問題で、仕事をとるゆうことか。」


 そういうことになるな。


「それでええんか?」


 ええんや。しゃあないやんか。

 ・・・・・・簡単に言うなあ、私。それやったら考えてみ?


「彼が・・・例えば、なのはちゃんをぎゅっと抱きしめて・・・キスとかして・・・」


 言いながら言葉が震えてきた。


「そしてなのはちゃんがマーくんに甘えて・・・優しくされて・・・」


 あかん。


「あかん! そんなん許さへん! あかんあかんそんなんイヤや!」


 しばらく・・・ぜいぜいと乱れた息を整えんとあかんくなった。

 彼が誰か他の女の子に、私にしてたみたいに優しくするとか・・・考えただけで、許せへん。


「それやったら彼を優先するしか無いんちゃう? この際、仕事は適当に諦めようや・・・大丈夫、私ら二人なら絶対幸せになれる。」


 小さいころからずっと一緒に苦しみを支え合いながらも・・・それなりに毎日楽しく過ごしてきた私ら二人なら・・・きっと幸せになれる。


「せやから、仕事は、諦めよう。」


 って言ってみる。ところが。


「それは無理や。仕事はせんとあかん。」


 なんで?


「仕事して、ある程度は偉くなって、色んな権限を得て・・・そうやないと・・・」


 そうや。そうせんことには・・・私は・・・仕事を・・・


「辞めるわけにはいかへん。」


 凄く静かな声で・・・私はそう断言した。

 ギリギリのところに来てもうたな。

 これまで誤魔化してきたことが。

 はっきりとしてしまった。



 もちろん「どっちも」がベストや。

 けどそれは理想論。

 実現は不可能、か。

 不可能やのに無理押しして、最悪にも・・・

 マーくんに負担押し付けるような真似をしとったわけや。

 やっぱり結論は決まっとる。



 私は、仕事を、とる。とるしかないんや。



 そう腹を据えると。

 実は考えたくなかったから頭に浮かばへんかっただけの事実を・・・思い出してしまう。


「単に仕事優先にするからマーくんのための時間が取れへんってだけやない。これから私は仕事の関係で・・・きっと危険な所にも踏み込む

必要とか出てくる、そういうときマーくんがそばにおったら最悪・・・巻き込むかもしれへん。それで万が一のことでもあったらどうするん?

アリサちゃんになんて言い訳するん? ただでも何の世話もせんと一方的に甘えて負担かけて、さらに危険に巻き込むとかなったら・・・

ほんまに・・・どうしょうもないで?」


 それやったらもっと早くに離れるべきやったん違うん?


「それは今更言ってもしゃあないな。アリサちゃんやないけど問題は『これから』や。大体、私、ほんまに昔は・・・少なくとも中学生に

なったばかりくらいのころは・・・マーくんと・・・こんなふうになるなんて・・・思ってへんかったんやもん。気付いたらもう手遅れで、

一度そうなったらもう離れるなんてイヤになって・・・せやからなんとか両立せんかなって思ってたけど・・・」


 もともと私ら二人は・・・距離が近かった。子供のころから本当に身を接して支え合うみたいにして生きてきた。病院で介護されながら

入浴するマーくんの髪を洗ってあげたこととかあるし。ベッドから降りて歩こうとしてふらついて私の方に倒れてきたんで腕の力だけで、

マーくんを支えて膝の上にどっこいしょって抱き抱えたこともある(そのくらい軽かった)、マーくんはむっちゃ嫌がったけど・・・私が

足、治ってからはマーくんが疲れてるときとか寄り添って文字通り支えるくらいは日常茶飯事やったし、せやから中学入った後、週末に

一緒に暮らすくらい私らは両方とも全然心理的に抵抗なかったし、一回ぎゅっと抱き締め合うとかしたらすぐにその距離が平気になったし、

一回ちゅーとかすると・・・またそれもすぐ平気になって・・・

 互いになんも特別なこととか言わへんでも・・・一緒にいるのが当然で自然で・・・身を接しても触れてもそれも当たり前みたいな感じで。


 そのままなにも無ければ私ら二人は・・・そのうち「そろそろ一応ちゃんとしとこうぜ」「せやなーじゃあ適当に明日にでも書類を」とか

そんな感じで普通の日常の延長みたいに・・・一緒になってたと思うねんけど・・・



 仕事。

 仕事!

 仕事か・・・



 順番で言ったらどっちが先ってことも無いなあ。

 つまり仕事に私が、のめり込んでいく過程と。

 私とマーくんが距離をどんどん縮めていく過程が。

 時期的にはほぼ同じくらいやったんかな。


 途中までは両立できてたと思うんやけど。

 ここまでくると・・・

 もう無理か。


 ほんまにマーくんの事、思うんやったら・・・マーくんとは、距離を置く、しかないな。

 いや、ハンパに距離を置こうとかしても逆効果になるかもしれへんし。

 思い切って突き離す・・・しかないか。


 マーくんを突き離すって言うんは具体的には・・・つまり・・・その・・・

 いわば・・・いってみれば・・・世間一般で言うところの・・・

 「別れる」ってこと?


 「わかれる」?


 はい?

 ずっと一緒やったマーくんと別れる?

 なんでそんなこと思えるん? そんなことできるわけないやん!


 立ち上がって部屋に備え付けてある姿見の前に立って、鏡の中の自分を睨みつける。


「なんで!? もうマーくんにぎゅってしてもらえへんようになるかもしれんねんで?!

 マーくんが他の女の子の所に行ってまうかも知れへんねんで?!

 それやのになんで・・・なんで・・・そんなんイヤや・・・イヤやぁ・・・」


 言いながらも・・・涙があふれてきて・・・力が抜けて膝をつき・・・鏡の中の泣いてる自分の顔を呆然と見てたけど。

 みっともない自分の顔を見てられへんようになって、いつの間にか目を瞑って下を向いてた。


 私にとって最悪やった時期・・・両親共に死んで下半身不随になって一人で泣いた日を思い出した。

 泣くだけ泣いたなあ・・・あの時も。

 でも泣いた後で、泣いててもどうにもならんって腹を据えて。

 あの日から私は一人で戦い続けてきた。


 そうやな、泣いててもどうにもならんのや。

 大丈夫や、今の私は一人やない、家族もおるし、きっと大丈夫。

 これはどうしょうもない。どうにもならん。


 今日はマーくんを突き離す日。今日はマーくんと・・・お別れする日。そうせんとあかんのや。腹が決まった。


「そうと決まったら、うん、普通に話してても難しいな・・・嫌われるつもりで行くしかないか。」


 マーくんを傷つけるようなことを言おう。

 マーくんが言われたくないことを言おう。

 マーくんが後で泣くかもしれんくらいのことを言おう。

 マーくんの事は良く知っとる。マーくんがマジ切れするくらいにまで持っていこう。


「ふ、うふふ・・・わたし・・・最悪やなぁ・・・」


 鏡の中の私は歪んだ泣き笑いの・・・変な顔してた。

 涙は途切れた、さらに目の周りを拭く。

 軽く化粧して、涙の跡とか絶対分からんようにしとかんとな。



 泣いたらあかんで、八神はやて。マーくんの前では。

 泣いたら優しいマーくんはまた私を抱きしめて私の決意を一瞬でぐらぐらにしてまうし。

 とにかく冷たく・・・突き離す、そう決めた。









(あとがき)

 足が治ってからは、公私ともに順風満帆、一切挫折も失敗もナシ、それが八神はやてでした。

 初めての大失敗。ものすっごく後ろ向きになってます。別れるしか無いんだと思いつめてます。

 それにマシューがどう対応するか。やっと今度こそは本当に「VS八神」を始められそうだ・・・


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