マシュー・バニングスの日常 第三十一話△&年○月○日 俺たちも中学生である。皆で揃って聖祥の中等部に進学した。 この頃には俺は人並み程度の体力は既に持っていたと思う。痩せ気味なのは変わらないが、体重も男子の平均よりも一回り軽い程度になってたし。激しい運動とかはまだ自信無いが、静かに継続する作業などだと、人より長時間できるようにもなった。それもこれもまだリミッターに命を保ってもらっているからだという状況には変化は無いが・・・偽りの健康であるにしても、確かに見せかけだけは健康に見えるようにはなっていたのだ。 俺と姉ちゃんはほぼ同じ身長で、少しだけ俺が高いくらい。あとは高い順にフェイトさん、月村さん、高町、八神だった。 八神評価によれば、今の俺は「70点くらい・・・やっぱまだ逞しさが・・・」だそうだ。 畜生、この年頃は女子の方が成長早いんだよ。腕相撲しても結構良い勝負になる程度・・・もしかして俺の周りの女子が、異常に強いのではないだろうかと疑いたくなる・・・特に月村さんとか、あの強さ絶対おかしい! そうは言っても、今でも小学生と大して変わらないようなのは八神だけで(本人に言うと殴られるがw)、他の面々はかなりきれいになって来ている。特に姉ちゃんとフェイトさんはシャレならんな。スタイルも既に女性らしく出るとこでて引っ込むところ引っ込んで、中1とはとても見えない。聖祥の太陽の女神と月の女神って呼ばれて写真が高値で売れるとかどうとか・・・ 高町はまあ普通だ。今ではすっかり元気で前と変わらない・・・いや前よりパワーアップしてる印象が・・・それなりに少しずつ女の子っぽくなってはきてるが、まあ普通だな。月村さんは将来的には、お姉さんの忍さんみたいな美人さんになることは間違いないのだろうが、今のところはまだ、高町とおっつかっつかな。八神は少し背が伸びたそうだが・・・俺の方が伸びてるので昔より小さく見えるw言うと怒るから言わないけどね。 俺の外見は・・・また八神の表現だが「ただでも色白のアリサちゃんをさらに漂白した上で適当にベタを塗って、少しだけあっちこっちをホネっぽくして、目つきを悪くして頬をこけさせた感じ」だそうだ。双子だから基本的に似ているはずなのだが、逆に言えば基本的な部分しか似ていないというか・・・パっと見の印象では血の繋がった姉弟にも見えないと評判である。金髪碧眼で彫りも深く、ミルク色の健康な輝く白い肌、見るからに外人であるゴージャス美人な姉ちゃんと、ほとんど黒に見えるダークブラウンの目と髪に日本人平均より貧弱な体格、肌の色が白いというより青白く見えるというのは正直あんま改善されてないし、さらに姉ちゃんと似てるはずなんだけど微妙に地味な顔立ちで、日本人の中に紛れていても誰も分からない俺。 まあ別に俺としては目立たない方が好みだから、全然問題無いんだけどね。 高町が退院・復帰して以降は、大きな事件も無く、皆がそれなりに仕事をこなし、学校を楽しむ平和な日々が続いていた。 ずっとこんな日が続くといいんだけどね。△&年X月○日 高町家では五月初頭の連休には家族全員で温泉に行くのが恒例である。 それは高町家だけでは無く、姉ちゃんや月村さん姉妹など親しい人たちも誘い合わせて一緒に行くもので・・・ この年はみんなの都合が上手く付き、大層な大所帯となった。 つまり高町家5人、月村姉妹にメイドさん二人、姉ちゃんと俺、八神と守護騎士4人とリイン、フェイトさんにアルフさんにリンディさん、ついでにたまには休めと強制的に連れてこられたクロノ、さらに何故かユーノまで。総勢22人。 車で移動して景色を楽しむのも旅行のうちということで、高町家に集合した面々はそこから小型バスで移動。 月村さんとこのメイドさんの一人(ノエルさんとか言う人)は大型車両も運転できるそうなのだ。 バスの中での盛り上がりは・・・女性陣は凄い。女3人寄れば姦しいとは言うが3人どころの騒ぎじゃないからな・・・ 男性陣は・・・なんとなく固まって比較的静かにしてた。 士郎さん、恭也さん、俺、クロノ、ユーノ、そして一応ザフィーラ(犬のままなので一応)。 恭也さんが明るく騒ぐ高町をちらりと見て・・・ぽつりと呟いた。「なのはは・・・もうすっかり元気になったな。」「そうですね。」 答えたのはユーノである。恐らく高町に一番注目してたのはこいつだったためだろう。 クロノは無理に連れてこられたため、なんだか手持ち無沙汰で暇そうで・・・気まぐれに俺に質問してきた。「その辺どうなんだマシュー?」「おいおい、折角の旅行なんだし、あんまそういう話はだなあ・・・」 と俺が嗜めるのだが・・・「何か問題あるのか?」 恭也さんが真剣な顔で聞いてきた。うーん。俺は士郎さんをチラリと見ると・・・「そうだな。恭也にも一応は、一通り話したつもりだが・・・うん、いいよマシュー君、君の口から聞けばまた違うだろう。」 士郎さんの許可を得たので・・・「一言で言えば、全く問題無いです。後遺症ゼロ。」 簡潔に事実だけを言う。「ああ、それは一応聞いたのだが、いまいち納得いかないと言うかだな・・・」 恭也さんはまだ心配そうな顔だ。ううむ、どう言えば納得してもらえるのか・・・「骨折した部分については、昔より頑丈になってるくらいですし・・・」「肋骨とかなら分かるんだよ。経験あるしな。でも腰椎って・・・つまり背骨だろ? その粉砕骨折ってのは・・・」「全部じゃありません、あくまで一部。第二・第三腰椎の、さらに一部が粉砕骨折だっただけです。少なくともそれだけならば、地球の医学でも、日常生活なら問題ない範囲まで普通に治るレベルかと・・・」「だが脊髄が・・・」 恭也さんの顔は苦しそうだ・・・今でも思い出すとそうなってしまうようだ。「脊髄再生は、ミッドの医学の中でも高度な技術ですが、主治医の先生がその専門家でしたし。術後の経過を見ても完治してますね。それでも後遺症が無いのか・・・と心配なさるのは分かるんですが、既に術後一年近くを経過して、足にも下半身のどこにも何の違和感も無い状態ですし、他の臨床例と比較しても、非常に良好な状態でして。なのはさんご自身も若いですし・・・」「・・・そうだな・・・」 恭也さんは、やはりそれでも心配そうだ。やはり完全に安心させるなんて、出来るもんでも無いなあ。 場を暗くしてしまったことに反省したらしいクロノが明るい?と思われる話題を振ってきた。「そうだマシュー、聞いたぞ。最終的には10%増加したそうだな。」「あ、僕も聞いた。ちょっとしたニュースになったよね。大評判なんじゃない?」「おいおいその話かよ・・・」 俺はちょっとブルー。「何の話だい?」「マシューが彼女のリンカーコア・・・魔力中枢への画期的な治療法に成功して、彼女の魔力が10%も向上したって話ですよ。」「それって凄いことなのかい?」「凄いですよ! 普通はリンカーコアへの負傷があれば、完治させて違和感ない状態まで持っていけても、どうしても魔力の出力は前より落ちるものなのに、逆に上昇したわけですからね! 本当に前例が無いんです。凄いですよ!」「えーと、マシュー君。完治したとは聞いてたが・・・」「その・・・つまりですね、完治以上のレベルになってしまったと言いますか・・・まだ確定したわけじゃ無いですし・・・」「なに、確か術後半年くらいだったか?を過ぎて、計測結果も出揃って来たんだろ? 医療誌じゃなくて、本局の普通の情報誌にも記事が載ったくらいだぞ。いや大したもんだよマシュー。謙遜することは無い。」 クロノは空気を読めないやつだと思った。「つまり・・・なのはは前よりも魔力ってやつが強くなったと?」「はい・・・そうなんです。」「つまり前よりも・・・」「魔法を使いやすくなったと言いますか・・・強力な魔法が使えるようになったと言いますか・・・」「それではなのはは・・・」「はい・・・力が上がったのが嬉しくてしょうがないようで・・・さらにのめり込むみたいな状態に・・・すいません・・・」 士郎さんは額に手をあて、しばし目を瞑り・・・「いや・・・マシュー君がベストを尽くしてくれたってのは分かる、分かるよ・・・しかしなあ・・・」「こんなに上手く行くとは予想外でした・・・いやこうなると上手くいったと言えるのかと・・・」「いや、いいことですよ? 間違いなく。」 お前は黙ってろクロノ。 んで旅館について その後、温泉に入ってみれば、俺が一番貧弱なのは当然としても意外とユーノもかなり貧弱なボーヤだったり。士郎さんと恭也さんの余りにも圧倒的な体格を羨ましいなーと思ったり。 宴会のとき、余興ということで、姉ちゃんに強制的に女装させられ化粧までされて酌をしてまわったり。 それを見た高町や八神は笑い転げて、美由希さんには何故か凄い気に入られてしばらく捕まってしまったり。 関係者しかいない宴会場だから問題無いので、魔法の実演ショーが見たいと要望されて、高町とかフェイトさんとか八神とかが、飛びまわって見せて、俺は出来ないのかと言われたので出来ないと言ったら何か高町が鼻で笑ったような気がしたので転送して、畳の上で前回り受身をさせてやったり。 今日こそはリベンジしてやるといきり立つ高町に、よしまたボコボコにしてやると俺が受けて立つと、瞬間に俺の後ろに美由希さん、高町の後ろに恭也さんが現れて捕まえ(見えなかった・・・どうなってるんだ)、仲直りさせられたり。 んで以前、俺と高町が模擬戦したことがある話が引き出され、高町は強力だけど単純だし足払いして転がして罠に嵌めるみたいな手を使えばちょろいと俺が言えば、マシュー君はずるい本当にずるい絶対に正面からやろうとしないんだから納得できない!と高町が絡んできたり。 しかしそこに姉ちゃんが夜叉となって降臨し、少しお話しましょうねと言いながら高町を引きずって一時退室し、帰ってきたときは高町は真っ白に燃え尽きていたり。その後、やっぱり俺も説教されたり。 寝るときは一応、クロノとユーノと同室だったのだが、俺は姉ちゃんに連行されて一緒に寝るハメになったり。 朝起きたとき、俺がいることに気付かなかったフェイトさんが下着姿になってしまい、そこで気付いて一悶着あったり。 そのことでクロノにチクチク嫌味を言われ、ユーノからは羨ましそうな目で見られたり。 周囲の散策に出かけた時、ユーノに頼まれたので高町と二人きりになれるように工夫したのだがどうにも上手くいかなかったり。 渓流釣りに初めて挑戦したところ、俺も3匹釣れたし他の人もそこそこ釣れたのだが、なぜかクロノは坊主だったり。 高町とフェイトさんが昔戦ったという古戦場巡りに付き合わされたけど、正直どうでも良かったり。 俺のテキトーな態度にちょっとムカついたらしい高町が睨んできたので、ヘッと笑ってやったらまたデバイスを構えたので、よし、ここなら遠慮なくやれるな川の中で岩魚と競泳させてやると言ったところで、八神がシャマル先生と共にえーかげんにせえと強制的に止めに入って来たり。 その夜の宴会で、大人たちから恋バナを振られたのだが、ユーノ以外は誰も反応せず、詰まらないわねえと呆れられたり。 わーユーノ君て好きな人がいるんだー誰なのー?と高町本人から問われるユーノが余りにも哀れでかばってやったり。 こうなったらいっそこの場で言うか・・・とテンパるユーノを息を呑んで見守るが・・・結局やっぱり言えなかったり。 マーくんは気になる子とかおらへんのーと八神が聞くのでいないと断言したら何かすげえ不機嫌になったり。 大人たちは酒が入って子供たちを酒の肴にしようとして、それじゃあ結婚するなら誰か、この場から選べとか無茶振りしてきたり。 この場にいる人間限定、絶対に一人は挙げることと厳しく命令されてしまったり。 クロノは調子良く、やっぱり桃子さんみたいな人がいいですねーとかわしたが士郎さんに睨まれていたザマァw ユーノは頑張って、な、なのはかな・・・と言ったのだが、本人はへーって言うだけで反応薄いし。 俺はちょっと考えたが、やっぱり八神かなと呟くと、八神の機嫌は超良くなったみたいだったり。 しかし姉ちゃんが、私マシューと結婚する!と抱きついて来たのでなんかまた・・・姉弟だしそれは無しだろうと大人たちから突っ込みが入ったのだが、姉ちゃんは一切異論を受け付けず目がマジで・・・なんか怖くなったり。 月村さんは、うーん敢えて言うならクロノ君かなーマジメそうだしと堅実な答え。クロノ顔赤い面白いw フェイトさんは、あわあわと慌てて色々考えたようだが、恭也さんみたいな人がいいかも・・・と顔を赤くして答え、その余りの萌えに恭也さんも顔を赤くしてしまい、隣の忍さんの機嫌が急降下していた。俺とかは、恭也さん忍さんの二人は昔から仲の良いカップルとしか思って無かったのだが、実はちゃんとまとまるまでは紆余曲折があったそうで、「高町恭也のハーレム伝説」というのは知る人ぞ知る凄まじいものだったのだと忍さんがグチりだしたり。なかでも強敵に金髪美女がいた、まだ油断できない、あんた恭也そんなに金髪が好きなの!とか・・・ なんか理不尽な言いがかりをつけられる恭也さんを皆が生暖かく見守り・・・事実上見捨てたりw 八神は、しゃーないな、この場から選ばんとあかんのやったらマーくんで妥協したるかと偉そうだ。 高町は・・・お父さんがいいーと士郎さんに抱きつき、士郎さん感涙・・・ダバダバと泣いていた。 あーなんとかユーノ君がいいかもとか言わせてやりたかったのだが・・・ユーノは既に諦めた表情だ・・・ 男3人の部屋に帰ると、ダメだ! 僕はダメだ!と打ちひしがれたユーノがいたり。 まー気にするなよ、高町自身がまだ子供なんだよ、これから気長に攻めればいいんじゃないかと慰めたり。 そういうお前は八神はやてと良い雰囲気なんじゃないかとクロノがうざかったり。 クロノは本当はそういう人いないのかと逆襲するも、別にいないとあっさりしてて詰まらなかったり。 一体どうすれば、なのはに分かってもらえるんだ!と苦悩するユーノを慰めるも、そのうち面倒になってきたり。 告白すればよいだろうとクロノが断言するも、それを聞いたユーノは苦悩が深まるばかりだったり。 まー面倒だし寝るわ・・・あっさり眠りについたり・・・ まあ色々あったけど、楽しい旅行でした。(あとがき)4月1日のうちに書いておきたかった。冗談優先の話を・・・今後どういうふうに繋がっていくのか時間軸はどうなるのかとか一切不明五里霧中です。とりあえずこれをノリで書いただけっす・・・