今回はナルオロの続きですが、どうにも妙な話になってきてしまいました…とにかく楽しんでいただけたら幸いです。
「原作ではありえない展開について考えてみました」
木の葉の里にある火影邸。その中にある火影の執務室にこの部屋の主である綱手に呼ばれ五人のくの一が集まっていた。
この五人というのは、サクラ、いの、ヒナタ、テマリ、多由也という五人。
この里の忍びである前者三名がこの里の長である綱手に呼び出されるのは分かるのだが、後者二名はおかしい…テマリは同盟を結んでいるとはいえ他里の忍びであり、多由也に至っては今まで何度か戦った事のある敵対する音の里の忍びであるはずだ。
また音と砂が組んで、木の葉に襲撃してきたのかと身構えてみたものの彼女達からは敵意を感じない…おかしく思い、サクラが彼女達に何故いるのかと尋ねた所、「さぁ? 何でも木の葉と砂共同で行われる緊急任務らしくて私は火影様に呼ばれただけだからね」「…知らねえよ」とどちらも呼び出された理由は分からない様子。
誰もがどうして良いのか分からず黙り込み、部屋に微妙な空気が漂う中、彼女達を呼び出した張本人である綱手が秘書官であるシズネを引きつれてようやく現れ、よく来たね。と言いながら指定席である執務机に腰掛けた。
「師匠、今日はどうしたんですか?」
訳が分からない状況に呼び出された五人は困惑していて、綱手と師匠と弟子という一番親しい間柄であるサクラが彼女達を代表して尋ねた。
尋ねられた綱手は、顔の前で手を組み合わせ、真剣な表情で五人の顔を睨むように見回すと重々しく呟く。
「…ナルトの身に危機が迫っている」
「「「「「!?」」」」」
その言葉を聞いて動揺した五人を見やりながら、綱手は静かに言葉を続ける。
「我々木の葉の忍びにとって最大の敵であり、音の里の長である大蛇丸事、通称カマ蛇。今奴の体は紛れも無い女らしいんだが…まぁそこは置いておく事にして。とにかく奴の執拗なセクハラ攻撃で現在ナルトは女性不審に陥りかけている」
重々しい雰囲気で何を言い出すかと思えば、その話の内容は特に重要性の為さそうなものだった。
現在のナルトの実力が木の葉の里でもトップであり、次期火影と謳われるほど優秀な忍びとはいえ、別に彼が女性不審になったからと言って里に支障が出るわけでもなかろうに…これは彼を目に入れても痛くないくらい可愛がっている綱手の個人的な危機であり、職権乱用だ。
その発言に集められた五人は呆れるかと思いきや、彼女たちは明らかに動揺していた。
「そ、それがどうしたって言うんですか?」
「べ、別に私には関係無いですよ!」
「そ、そうだ!」
本気で心配している様子のヒナタや、片眉を顰めたくらいで傍観を決め込んでいるテマリと違い、彼の事を気にしていると知られたら負けとでも思っているかのようにサクラといの(ついでに何故か多由也)は慌てて反論した。
そんな彼女達に意地の悪い笑みを浮かべながら綱手は言う。
「ほぉ~、そんな事言ってていいのかねぇ? こっちはあんた達が密かにナルトに恋心を抱き始めているという調べはついてんだよ…まっ、あくまで違うって言うならそれでもいいけど、これを断るなら今後一切あの子との任務は組ませないからね」
火影という夢を追い、ろくに休みも取らずこの里の為に働き続けている彼との時間を持つには同じ任務を受けるしかない。
その脅しには反論していた彼女達も抵抗を諦めたらしく口を噤んだ。
綱手は彼女達の顔を見回して、他の者も反論が無い事を確認すると大きく頷いてから更に話を続ける。
「この状況を打開するために私は里を上げてあの子を守る事を決めた!」
個人的な事に里を上げてと堂々と言い切る綱手。
ただでさえ五大隠れ里である木の葉。息を潜めているとはいえ強力な抜け忍集団暁もまだまだ健在な今、他にいくらでもやる事があるだろうに…この場に居る誰もがそう思いながらも彼女に意見できる者は皆無であった。
「確かに大蛇丸は変態ではあるが、その実力は認めなくてはならない…そこで奴に対抗する為に、密かに木の葉特殊忍具開発班では日夜研究を重ね、つい先日身体能力を飛躍的に上げるアイテムを作り出した」
綱手は一旦言葉を区切り、傍らに立つシズネに視線を向ける。
その視線に彼女は大きく頷くと手に持っていた袋から何かを取り出し執務机の上に置いた。
綱手が今、話した机の上に置かれた特殊忍具…形状は何の変哲もない木の葉の暗部服である。けれどもそれは通常のものとは色が違い赤、青、黄色、緑に桃色と忍び服ではありえないほど色とりどりであった。
「これは一見派手な忍者服だが、木の葉特殊忍具開発班の技術力の粋を集めた代物だ。この服を身に着けた者は何とチャクラ量、身体能力共に大幅にアップする。レッドはサクラ。グリーンがいの。イエローがヒナタ。ブルーがテマリ。ピンクが多由也だ」
この里の特殊忍具開発班は、特撮の戦隊物にでも影響されたのだろうか?
ふざけているとしか思えないが、綱手自身は大真面目に語っている。
本当に効果があるのかと胡散臭く思いながらも、五人はそれぞれが言われた色の服を手に取った。
「ちなみにその忍具はナルトに好意を持たれている者ほど効力は倍増するそうだ」
「要するにナルトに好かれれば好かれるほど能力が上がるというわけだ…強くなるという大義名分の上であの子に近づけるんだよ。良かったねぇ」と綱手自身は台詞とは裏腹に、苛立たしげ。
自分で言い出しておいて自分以外の女と彼が仲良くなるのが面白くないらしい…とりあえずそんな彼女を置いておく事にして。
何故そんな事で増幅効果が上がるのかと疑問に思うかもしれないが、人間がその時の感情により実力以上に発揮されるという話は聞いた事があると思う。これはその効果を転用した忍具なのである。
更に何故、ありがちな敵に対する怒りや誰かを守りたいというものなどではないかと思うかもしれないが、人間にとって愛情とは最も強い感情であり、開発班はその力に目を付け必死で開発したのだ…という風に理由付けさせてもらう。
更に更に何故使用者からの愛情ではなくナルトからの愛情なのかと問われれば…もう理由を考えるのも不可能なので、話の都合上という事で何とか納得していただきたい。
何の解決もしない解説はここらで終わりにして話を本編に戻させていただく。
いのは緑色の忍服を手に持ちながら、綱手に尋ねる。
「何で私がグリーンなんですか?」
色で言えば自分の髪の色から黄色であろうし、赤のサクラのライバルキャラからいえばブルー辺りではないのか? と彼女は疑問に思っていた。
その問いに、今までとんでもなく理不尽な言葉をそれがこの世の真理であるかのように言い切っていた綱手が少し言いづらそうに視線を逸らしながら答える。
「…地味だからだ」
元気で活発な自分は地味とは無縁であるはずと思っていたいのは、その今までつけられた事の無い評価に固まる。
こんな事に巻き込まれた被害者仲間の四人が「ああ~、なるほど…」と納得しているのが更に痛い。
「じ、地味キャラならテンテンさんがいるじゃないですか!」
自分の気持ちに素直になってナルトを大蛇丸から守るという任務を渋々ながら認めたものの、地味キャラ指定は嫌だったらしく新たな人身御供を差し出そうとするいの…何気に先輩に対して失礼だ。
「別にあの娘でも構わないんだが…そうするとお前のポジションが無くなる事になる」
通常、護衛任務は割けるならば人手が多ければ多いほどいいのだが今回は特殊。
戦隊ヒーローは古来より五人と決まっているのだから、確かにテンテンを加えるならばおのずといのは弾き出される事になる。
彼女は何とかしなくてはと慌てて周囲を見回し、話を聞き始めてからずっと表情を変えておらず、今回の任務に全く興味がなさそうなテマリに気づき、尋ねる
「テマリさんはこんなくだらない事に付き合ってられませんよね~?」
「ん? 私は別に構わないぞ」
全く興味が無いと思っていた彼女があっさりと答えた言葉に、へっ? と呆けるいの。
テマリはそんな彼女に笑いながら説明する。
「木の葉と砂の友好を思えば次期火影と言われているナルトに恩を売っておくのはそう悪い話でもないと思う…まぁ、私個人としてもあいつは身長はそんなに高くないが、顔もよく見れば端正なもんだし、最近は結構良い男になってきたしね。見所はあるから今の内に唾付けておくのもそう悪くない」
黙っている間、今回の任務における砂の里の利益と自分自身の利益を計算していたらしくクールに理由を答えるテマリ…彼女は既にブルーのポジションを確立させつつある。
自分が異性に対して好意を覚えているなどという話は年頃の女性ならば頬の一つも染めながら恥ずかしそうに言う所だが、彼女は状況を客観視しつつ淡々と答えてしまった。
その凛然とした姿にこれは役者が違うと判断したいのは、交渉相手を変える。
「じゃ、じゃあ多由也さんは? 敵ですし、ほとんど面識が無いはずですからナルトが女性不審になったって関係無いですよねぇ?」
「そ、その通りだ!」
何故かうろたえながらも自分は関係ないとはっきり言い切った多由也に、これで地味キャラは脱却出来そうだといのがほっと息を吐いたのだが…
「話が纏まりそうな所悪いんだけどねぇ…今回の任務に多由也は外せないんだよ」
綱手の言葉に、ピンク交代で話が纏まりかけていたいのと多由也。話し合いを傍観していた三人も多由也が外せない理由が分からず揃って困惑する。
「それについてはこれを見てください」
そう言いながら綱手の後ろに控えていたシズネがリモコンを取り出し、ボタンを押すと部屋の灯りが落ちて暗くなり、壁一面を覆うほど大きなスクリーンが下りてきた。
その大スクリーンには五人がデフォルメされたキャラクターの上に棒グラフが映し出されている。
「何ですか。これ?」
このグラフは何なのかという彼女達の疑問をサクラが代表して尋ねた。
「これはナルトからの五人に対する愛情値…まぁ、ここではラブポイントとしておく」
「0が何の面識も無い人で、10で友達。20で親友で、50で恋人レベルです。これは最高100ポイントまであります」
「木の葉の暗部を複数人動員して調べたから、この数値に間違いないよ」
何それ? と言いたくなるような説明を綱手が真剣にして、足りない部分をシズネが補足した。
こんなくだらない事に暗部まで導入していたのかと呆れつつも、憎からず想っている彼が自分に対してどれくらいの愛情を持っているのかは彼女達全員が正直言って気になる。
仲間なんだしそんなに悪くは思ってないわよね。等と思いながら恐る恐るグラフを確認してサクラといのが同時に叫んだ。
「「何で多由也さんが一番高いの!?」」
サクラ26ポイント。いの14ポイント。ヒナタ18ポイント。テマリ12ポイント。多由也28ポイント…このグラフを見る限り、ほんのわずかな差だが一番関わっていないはずの彼女が何故か一番高い。
自分に対するナルトの愛情値が高かった事に頬を緩めていた多由也だが、この場に居る全員に睨まれている事に気づき身を縮ませる。
「…多由也は奇行に走った大蛇丸に呆れて里抜けしたらしいんだが、行く当てがなく彷徨っていた所をナルトに拾われて、ついこの間まであの子と半同棲生活をしていた」
綱手の苦々しげな呟きに、衝撃を受ける多由也以外の四人。
ナルトと一番関わりが無いと思っていた多由也が実はある意味一番関わりが深かったのだから彼女達の驚きも当然だ。
「その生活が始まってから一週間で何とか気づいて私の所へ連れてきたんだが、あのままいってたら危なかったね…」
もしも二人の同居に誰も気づかずいたとしたら、一緒に過ごしている内に二人で居る事が普通になり、そのままゴールインという可能性もあったわけで…綱手がそんな未来想像したくもないとでも言うように苦い表情で呟いた。
多由也は自分に集まる視線が厳しくなった事で更に身を縮ませる。
「ということでこの中で一番高い多由也は決定済だ」
「う、ウチに選択権は無いのかよ?」
多由也が痛いほどになった周囲の視線に怯えながらも何とか声を絞り出すが、綱手は冷たい視線を彼女に向けて言う。
「お前にただ飯食わせるような余裕はこの里には無いんだよ」
「うっ…」
綱手の言葉に、余裕が無いんだったらこんな事に無駄な労力を使うなという当然の反論さえ出来ないほど多由也はへこんでしまった。
というのも多由也はナルトと同棲していた頃は生活面でだらしない彼の世話を焼いたり、修行に付き合ったりと色々働いていたが、綱手に見つかってからはこの里に住むことが許され、特に何の制約も無かったものの敵対していたこの里にはナルト以外には特に親しい者もおらず、彼に会いに行くにもそれまでの養ってもらっているから仕方なく世話を焼いてやっているという彼女の中での理由が無くなってしまったので、この里から支給されたお金と里から支給された部屋で日々ぐうたらと過ごしていた。
この里に住んでいるくの一三人が、今まで多由也がこの里に居る事に気づいていなかったくらいなので彼女が引きこもりに近い生活をしていた事がよく分かる…ちなみに彼女の最近の悩みはお腹周りの肉が気になり始めた事。
綱手はナルトに(職権乱用して)つけた暗部からの報告資料を確認しつつ、それぞれのポイントの理由を説明し始める。
「サクラは少し前まで50ポイントを越えていたらしいんだが、大蛇丸の行動の煽りをモロに受けて急降下…ナルトの一方的な想いの上に胡坐をかきすぎていたね」
「すみません」
どんな対応を取ろうが個人的な話なので別に謝る事ではないはずなのだが、その指摘に真面目なサクラは申し訳なさそうに頭を下げる。
「いのは…元々あんたへのあの子の認識はサスケバカ女で、あんたが想いを自覚し始めても避けてるみたいだから変わらずってとこだね」
「…ろくに名前で呼ばれないのよねぇ」
その事については最近になってナルトの事が気になり始めたいのも気にしていたらしく、とりあえず名前を呼ばれる所からと思いながら頷く。
「ヒナタは行動が消極的すぎるね。まともにナルトの顔も見れず、見たら見たで気絶…その状況でここまで上げたのは逆によくやったと褒めたい所だが、今のままじゃ100年掛かっても振り向かせるのは無理だよ」
「ど、努力します」
ずいぶんと成長し、実力がついたがナルトを前にしたときの態度は幼い頃から今でも変わらない。改めてその事を突きつけられ、変わらなきゃとヒナタは意気込む。
「テマリはまぁ、今まであまり関わりあう機会が無かったわけだし、友達の姉って所だろう」
「そうでしょうね」
ポイントが一番低くともやはりテマリは顔色を変えず、いつでも挽回できるとばかりに余裕で返す。
「多由也は…ポイントの理由はさっき言ったからいいな」
「だからウチは関係ないって!」
多由也はあくまでも彼に対して自分が好意を持っているとは認めるつもりはないようで、顔を真っ赤にして叫ぶ。
まぁ、そんな多由也は置いておく事にして、ナルトから見た自分達の立場が分かり、彼女たちはこれからの方針について思い思いに考えていた。
そんな中、いのは三人の中では低かったが何とか最下位ではなかった事にほっと安慮のため息を吐いていたのだが、何故かサクラが半笑いで自分に向けている生ぬるい視線に気づき、眉を顰めながら尋ねる。
「何か言いたい事でもあるの?」
「うーん。言っても仕方ない事だし、多分あんた怒ると思うから止めとくわ」
「…気になるじゃない。怒らないから言いなさいよ」
喧嘩するほど仲が良いを地でいく二人の間では口喧嘩なんて日常茶飯事であり、今更遠慮などないはずのサクラにしてはどうも歯切れが悪い。
いのが不満げに尋ねると、彼女は少し迷っていたがやがて決心した表情で言う。
「それじゃ言わせて貰うけど…あんた最下位でもないわけだし、やっぱ地味よね」
「へっ?」
先ほど言われたばかりとはいえ、サクラから言われるとは思っていなかった言葉に固まるいの。
「う、うん。地味だね」
「地味だな」
駄目押しとばかりに気の弱いヒナタと淡々としたテマリにまで言われ、彼女はとうとう膝を突いた。
「あのさ。何つうか…頑張れよ」
先ほどからいじられ続けている多由也はその姿に同情を覚えたのか、そんないのに近寄り慰めるように肩を優しく叩いたのだが、何だかんだ言いつつも勝者である彼女の哀れみの視線がいのには一番堪えた。
切ないながらもどこか微笑ましいその光景を見ていた綱手は、彼女達の注目を集める為、ぱんっぱんっと手を打ち鳴らした。
「ほらほら、遊んでないで気を引き締めな。あんた達は今日からナルトを変態大蛇丸の手から守り、ついでに世界の平和を守る木の葉戦隊(仮)だ!」
(仮)とついており、不確定らしいまぬけな名前だが、チーム名をつけられるとそれなりにやる気になってきたようで五人は表情を引き締めた。
そんな彼女達の姿に綱手が満足そうに頷いていたその時、突然暗部が姿を現した。
「綱手様。東地区の復興任務を与えられていたうずまき上忍に大蛇丸が接触してきたようです」
その報告を聞き、綱手は彼女達の顔を見回しながら力強く言い放つ。
「早速おいでなすったね…木の葉戦隊(仮)初陣頼んだよ!」
「「「「「はい!」」」」」
少年の危機を救う為、この里の長の我侭により同期の少女達から他里の少女、敵だった少女まで集められ、ついに結成された木の葉戦隊(仮)。
はたして伝説の三忍とまで呼ばれた強大な敵に彼女達は勝てるのか? そもそも木の葉の里はこんな事をやっていて大丈夫なのか?
気になる(人がいるかもしれない)続きは後編にて!