今回は珍しく嬢ちゃんと一緒に黄巾の討伐に向かったのだが・・・
嬢ちゃんがなんか機嫌が良いです。
何かいつも難しい顔しているだけに、怖いです。
部下とか何か信じられない物を見るような顔をしています。
ただ1人嬢ちゃんの補佐官のみが呆れた顔をして俺を見てきます。
なんでだ?
8話
どうしようか?
黄巾の軍勢に接敵するのにも時間があるし。
弓の調整をしていると嬢ちゃんが入ってきた。
「準備はできた?」
「一応は出来てはいるが、時間があるから再確認中だな」
答えながら弓の調整をしていると
「貴方の使っている弓は秋蘭の使っている物とは少し違うね。何と言うか堅そうね」
さすが軍師というか。良い着眼点をしてるなぁ。
堅いというのは言い得て妙だな。
秋蘭の弓はあくまで後方支援を想定して作られているが、俺の弓は単独行動を前提に作られているから、接近戦になっても相手を弓で殴り跳ばせるぐらいの頑丈さを持ち合わせている。
「というわけだ」
「なるほどね。それなら多少大きくなっても頑丈なほうが使い勝手が良いのね」
ふあぁ~。と大きなあくびをする嬢ちゃん。
「な、何よ仕方ないじゃない。ここ最近きちんと寝てないんだから!!」
いやいや、そんなに怒らんでも。
「ご、ごほん。な、何なら貴方の膝を借りてあげても良いわよ?」
いやまぁ、貸すのは別に良いのだが、何か話しの流れが無理矢理過ぎないか?
「ど、どど、どうなのよ。何とか言いなさいよ!!」
「?、まぁ別に良いが一刻半ぐらいは寝れるからそのくらいに起こせばいいんだな?」
「そ、それで良いわ」
嬢ちゃんが膝の上に頭を置く。
いつものように頭を撫でる。
びくっと体が震えたが、慣れたのか落ち着いて来た。
【荀彧サイド】
あいつは頭を撫でながら不思議な歌を歌っている。
思えばおかしなことになってしまったものだ。
男なんて嫌いだったのに、触られるだけで拒絶反応が出るほどだったのに。
何故かこの男だけは大丈夫だった。
こいつと春蘭と話したり、一緒にいるだけでイライラしていしまうのはつまりはそういうことだと思う。
本で知ってはいたが、まさか自分が、しかも男にそんな気持ちを抱くとは思ってもいなかった。
優しい夢を見た。
少し先の未来の夢で、大好きな主とあいつとであわただしい毎日を送っていた。
あいつはいつものように頭を撫でながら苦笑しながら私の話を聞く。
そんな夢。
「おい嬢ちゃんそろそろ時間だぞ?」
その声で起こされる。
目を開けるといつもの少し困った顔のあいつがいた。
暖かい気持ちになるが、そこから軍師として気持ちを入れ替える。
「じゃあ、作戦の指示を頼むぜ嬢ちゃん」
あの夢が正夢かどうかは分からない。
しかしそんなことは関係ない。例え不可能と言われていることでも可能にしてみせるのが軍師の仕事なのだから。
だからこそ私はこう答える。
「任せなさい。私の作戦で死ねるなんて甘いことは思わないことね」