ある晴れた日の午後。
「太史慈!!これはどういう事だ!!」
「や、そんな主語すっ飛ばして質問されても分からないのですが?」
「なぜ、桂花と秋蘭には贈り物をして私には何もないんだ!?」
いやいや、あんたどちらかと言えば面倒起こす側の人でしょうに。
俺は世話になるどころか世話してる側の人間ですよ?
と言いたいがそんなことを言えばさすがに泣くだろうなぁ。
泣かれたら十中八九俺が悪者になってしまうだろう。
何か贈り物ねぇ。
食料は・・・淵さんに送ったばかりだし、しかもまた不機嫌になられたらイヤだし、ボツ。
とすると何かの装飾品か。あまり動くのに邪魔にならない程度の物となると・・
「じゃあこれを惇さんにあげるよ」
「髪留めか?」
「惇さんの髪は長いから闘うときに髪を纏めれたら便利じゃないかなぁ」
あまり細かい装飾を入れていない。シンプルな赤い髪留め。
商会で取り扱うかまだ決めていない商品だが我ながらなかなかの良いチョイスのようだ。
惇さんは満足したのかしたのかいそいそと立ち去っていきました。
12話
さて、商会の情報によると孫策さんは最近黄巾と盗賊などの討伐で名を上げているらしいです。
果たしてこの世界の孫策さんは呉を立ち上げる力と運があるのか。
いや、袁術は倒せるかもしれないけどそこから一大勢力になれるかは微妙だなぁ。
まず、圧倒的に人材不足だな。たしかに呉の旧臣たちはみな優秀だそうだが、圧倒的に人数が足らないだろう。
そして、兵力不足もあるうえ、金も潤沢といえるほどはないだろう。
だとすると、袁術を倒した後、うまく領地を治めれるかに掛かってくるだろう。
いや、他にも問題は山積みだがとりあえず足場をちゃんと固めないことにはどうにもならないわけで。
とりあえず、返事はがんばれとしか書けませんでしたが。
ついに来てしまいましたよ。
反董卓連合。
董卓さんが都で権力を握っているのが面白くないらしい袁紹が各勢力に檄文を送り董卓さんを討つ腹づもりらしい。
ゲスな奴だな。だから袁家の奴らは嫌いだ。何回かスカウトに来ていたが、袁家になんか仕えたくないので全て断った。
メンバーは、袁家の他に馬騰、劉備に孫策などの有名所がいっぱいだ。
確かに名を上げるのには格好の場だろう。
劉備さんの所にはすでに孔明がいるそうです。
三顧の礼イベントはなかったのか~。
と言う感想はいいのだが慌ただしく出兵の準備をしている。
なにしろ、大規模な遠征をするのだからそれだけ準備も大変になる。
大陸中が注目する戦のため、太史慈隊の装備も新調しました。
もちろん赤備えの甲冑ですよ。
曹操軍は基本的に黒を基調とした鎧を着ているので進軍中めちゃくちゃ目立ちます。
合流した所でも他の諸侯たちにどこかの新興勢力と勘違いされました。
軍議が行われるそうですが基本的に客将である俺は参加しません。
【諸侯のとある兵士】
北方から大規模な軍団が近づいてきた。
あれが黄巾と大将を討ち取った曹操の軍だろう。
そこまではよかったんだ。大規模とはいえここには袁家をはじめ少なからず大軍がいるのだから別段珍しいわけではない。
ただその曹操軍のなかに一際異質な隊がいた。
黒を基調にした曹操軍の中でその隊は燃えるような赤を基調にした甲冑を纏い、顔を半分隠れるような面を着けている。その隊が掲げているのは『風林火山』。
そんな風変わりな旗を掲げているのはこの大陸で1人しかいない。
仁にとみ、文においては肥料などを開発し、武においては魏の武神である夏候惇と死闘を演じ、半里も離れた敵の手を打ち抜ける弓の名手。
民に慕われる魏の客将。民は彼をこう呼ぶ『国士無双』と。
通常騎馬隊は神速を尊び、軽装でその機動力を活かした戦法を使うのが普通だ。
だがあいつらは違う。
一目で分かる。あいつらの戦い方はその重厚な装備で相手を押しつぶし、踏み倒す突撃に重きを置いた軍だと。
その凶悪さは西方から来た馬超の兵達の顔を見れば分かるだろう。
彼らは騎馬による戦いに長けた軍だけにその凶悪さがよりわかるのだろう。
馬とは本来臆病な生き物なのだ。
それを敵を押しつぶして戦えるようになるまで調教するのは並大抵のことではない。
その上、馬上で戦える物などごく少数なのだ。それらを全て解決したあの集団は一騎当千の軍団だと言うことだ。
【太史慈】
なにか変な勘違いをされた気がする。
この世界って鐙が開発されてないんだよ。あれがあるのとないとじゃ、かなりちがうよ?
鐙のおかげで家の軍が武田騎馬隊っぽくなれた。この世界って騎馬隊は機動力メインらしいので最初は驚かれました。
曹操さんから自分の部隊(いままでは曹操さんの軍の人を間借りしていた)を作ることを許可して貰い、自腹切って作り上げましたよ騎馬隊三千。
軽く1万の兵を集められる金がかかりました。
まぁ、そのぐらいの価値はあります。足の速さより頑丈さのある馬を買い、その調教をして、兵も一から調練して朝から晩まで訓練の毎日をし続けてやりましたよ。
練習量だったら旧日本帝国陸軍より多くしてやるって感じです。
そして先日出来たのが太史慈隊なわけです。
正直やりすぎた感ありまくりです。
みんな歴戦の兵士みたいな空気出してるよ?
ほらまだ洛陽までの道のりは長いんだからもう少し気楽にしてもいいんだよ?
そしたら
「ハッ!!お心使いありがとうございます。しかし我らの標語は【唯一安らかなる日は、過ぎ去った昨日のみ】であります。常在戦場の心構えで常におりますから心配はありません!!」
ってどこかの軍隊のようでしたよ。
標語?うん何かつけた方がいいかなって思ってつけてみました。確かどっかの特殊部隊の標語だった気がします。
「そ、そうですか。じゃあ適度に休憩は取るようにね?」と言うのが精一杯でした。
【孫権】
その軍は一際目立っていた。
燃えるような赤の甲冑を纏う騎馬兵。
彼らの顔には口元を隠すように面が装備されているため表情は読めないが、纏う空気は歴戦の兵士そのもの。
それを従えるのは七尺七寸の巨漢。
弓の名手であり、剣においては夏候惇と死闘を演じられるほどの達人。
あの他者に対しても自身に対しても厳しい思春が尊敬する人物。
掲げられている旗は、孫子の風林火山。
人は彼をこう呼ぶ『国士無双』。
国に二人といない、得難い人材。
姉様は言っていた。
彼は必ずわたし達の元へ一度来る。
その時に彼をいかに呉に取り入れるかで、呉の将来は決まるかもしれない、と。
根拠はない。ただの勘だ。
しかしその勘がいままで当たってきているだけに馬鹿に出来ない。
もし彼が私の前に立つとき私は彼を次代の呉の王として認めさせることが出来るだろうか。