その少女は、少年が傷ついたと知って涙を流した。
ただし、それは心の中だけ。
実際の彼女は唇をかみしめて何かを思いつめるかのように、ただギュッとその瞳を閉じていた。
だから、俺はその頭を優しく一撫でし、
「なあ、俺が知っている最高の女の話をしてやるよ」
彼女の話をしてやった。
俺が愛している世界で最高の女の話を。
上条があの女によって傷つけられてから3日がたった夜、上条の馬鹿がようやく目を覚ました。
その前、眠っている馬鹿に飯をやったり水を与えたり、さらにはトイレの世話は俺が引き受けていたので、これでようやく一安心と言ったところだ。
今はあの少女が看病イベントを今さらのように発生させて、上条のポイントを稼いでいる。
畜生! 今まで看病していたのは俺だったのに! あの泥棒猫が!!
お前にあのエグイ一物を触ることができんのか、あ!? しかもあれから小便を絞り取るのがどれほどの苦痛か……
ともあれ、俺は上条が気絶してから久しぶりの休息として、小萌先生の煙草臭いアパートの一室を出てその前にベンチに座っていた。
疲れた。
冗談抜きで、意識がない人間の介護はつらかった。
昼は寝がえりを手伝うことはもちろん、小萌先生の指導の下関節を曲げたりなどしていたし、右手の怪我のせいか発熱したので、その治療に追われていたのだ。
従って、俺はこの3日間不眠不休であの馬鹿の面倒を見てやったのだ。
途中、小萌先生やインデックスちゃんに頼んで仮眠は取ったものの、その合計は6時間にも満たない。
「あー、今度なんかおごらせてやる」
それぐらいのご褒美があってもいいはずだ。
そう言えば、あいつの携帯から勝手にコピーした美琴ちゃんの携帯番号があるのだった。
俺は自分の携帯を取り出して、操作する。
うん? 勝手に番号を取るのは犯罪じゃないかって?
そんなもん、俺と美琴ちゃんの間には治外法権に決まってんだろうが。
うん? お前の携帯はこの前ぶったぎられただろって?
安心してくれ、アレは数ある俺の携帯の中の一つだ。言っておくが俺の携帯は百八式まである。
まあ、それはどうでもいいが、そろそろ俺も本気でしんどくなってきた。いい加減に美琴ちゃんが出てこない回が続き過ぎている。
彼女の番号を探しだした俺は、そのまま通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。
数回のコールの後、ピッと言う携帯を取る音と共にコール音が途切れ、変わりに恐る恐ると言ったあの子の声がする。
「……もしもし?」
ああ、この声が聞きたかった。
俺は口元に満面の笑顔を浮かべると、自分も口を開いた。
「もしもし、美琴ちゃん? 俺、あなたの垣根 帝督」
「っ、なんであんたが私の携帯番号を……って、あんたの連れの上条君か。絶対に教えるなって言っておいたのに!!」
え、何その上条君って、いつの間に親しくなりやがったあの馬鹿は!!
まずい、このままだと美琴ちゃんとの間に確実にフラグが立つ!! 何とかしなくては……
俺はそう考えながら、苦笑し口を開く。
「そう、邪険にしないでよ。…今日は、本当に少し話してくれるだけでいいからさ」
「……なんかあったの?」
ああ、この子は本当に優しいなあ。
「ちょっと、ね」
「…ちょっとであんたがそんな声を出すか」
こうやってすぐに俺の心を暴いて、癒そうとしてくれる。
俺は、そんな君だから大好きなんだ。
「うん、実は滅茶苦茶なことがあったんだ。…今は詳しくは言えないけど、落ち着いたらもう一回連絡する」
「…できれば、あんたと携帯で会話するのはこれっきりにしたいんだけど」
「そんなこと言わないで。でさ、その時に都合が良ければ一緒にデートに行ってくれない?」
「あんたね、自分が弱っているのを利用しようとしてない?」
「当たり前っすよ。こんな時じゃなきゃ美琴ちゃんはそんな約束してくれないよ」
「あんたは…! はぁ、分かったわよ。でも、その一回きりだからね?」
美琴ちゃんは疲れたような声を出しながらも最後にはそう言ってくれた。
ふふふ、計画通り。
うん? 美琴ちゃんの優しさを利用した最低行為? 犯したら官軍だ。好きに言え。
「ありがとう。俺はそんな美琴ちゃんが大好きです! むしろ今すぐ押し倒したいね」
「っ! 死ね!!」
「あっはははは、じゃあ日時はもう一回電話したときにでも」
「あんたの電話なんて誰が出るか!」
「場所は行ってからのお楽しみ。夜のホテルは無理強いしないから」
「ほ、ほて!?」
「それじゃあ、もう切るね~」
「ちょ、あんた待ちなさい!!」
「今日は話せて楽しかった。ありがとうね、美琴ちゃん」
俺はそう言って電話を切った。因みに、美琴ちゃんが何か言いたそうだったけどスルー。
時間にして1分もない会話だったが、実に実りの多い会話でした。
…あ、やべえ。久々に愛しの美琴ちゃんヴォイスを聞いたせいか、股間がエレクトした。
そう言えば、上条の看病をしている間、小萌先生の家と言う事もあって一回も抜いていない。
「……一回抜いとくか」
そうと決まれば欲即射!!
俺は左右を確認する。……敵影はなし。
次いで、正面。そこにはなんか見たことがある赤髪の神父と、この前の女が立っていた。
しかも、眼があったせいか気まずい。
…見なかったことにしよう。
俺は彼らから視線をそらすと携帯を開いて美琴ちゃんの画像を取り出す。
因みに、それは美琴ちゃんが自販機にとび蹴りをしている際のモノで、中の短パン代わりのスパッツがもろ見えの貴重なワンショットだ。
俺はこれをおかずにすることにすると、いそいそとズボンを脱ごうとし、
「あ、あなたは何をやっているのですか!!」
顔を真っ赤にした女に鞘で思いっきり殴られた。
「ばぐら!?」
俺はその直撃と共に座っていたベンチから投げ出され地面を転がる。
畜生、見逃してくれるんじゃなかったのかよ!!
「いってぇな! 何すんだよ!!」
俺は即座に立ち上がると女に中指を突き立てた。
すると、女も顔を真っ赤にして何やらまくしたて始める。
「それはこちらの台詞です! 私たちが見ていながら、とつぜんズボンを脱ぎ出すなど何を考えているんですか!?」
「んなもん、美琴ちゃんの画像で一発抜こうとしただけだろうがよ!」
「ぬ、抜く?」
「オナニーですよ、オナニー! 和風に言えば手淫!! どっかの誰かさんが上条の馬鹿をのしたせいで、面倒を見ていたから3日間溜まってんだよ!」
「おな!? しゅ!? たま!?」
「てめえだって、あの赤髪神父みたく俺を無視してさっさと中に入ればいいだろ! 俺の至福の時間を邪魔すんな!!」
女はそれっきり真っ赤になって口をパクパクさせる。
……ふむ、この反応からしてこの女は未経験者と見た。
と言うか、普通の女性だったら道端で糞の匂いを必死で嗅ぐ野良犬を見るような眼で見るから間違いない。
どれ、少しからかってやるとしようか。
「それとも何か? お前が俺の相手をしてくれんの?」
「な!?」
「俺は別にいいぜ? あ、でも俺の心は美琴ちゃんのモノだからね! 体は自由に出来ても心までは自由に出来ない!!」
「ふ、ふざけないでください! それ以上の侮辱は許しません!!」
「侮辱、そいつは違うさ」
俺はそう言って真顔になって女に一歩近づく。
「こんなに美人で、スタイルも良い女なんだ。男がいたら放っておく訳がないだろ?」
「っっっっ!! 死ね!!!!」
俺がそう言った瞬間、女は本気でその腰に下げた2m余りもある長剣を抜刀し、斬りかかってきた。
って、待てぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!
「のわああああああああ!?」
叫び声と共に思わず地に伏せた俺。運良く初撃を回避できたが、それは追い詰められたと同義であった。
そして、俺の目の前の地面にその刀が尽きたてられる。
俺は迷わず謝罪の言葉を口にした。
「す、すんませんした」
「…次に私をからかったら、その粗末なものを斬りおとします」
ひぃ!? こいつはなんと恐ろしいことを言うのだ。
まだ美琴ちゃんの未使用の穴にぶち込んでいない俺のモノを斬りおとすなんて、美琴ちゃんが悲しむわ!!
「…なんだか、今すぐ斬り落とすべきだという電波が」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
俺は眼からハイライトを消し去ってひたすらに謝り続けた。
男の尊厳が無くなりそうなんだ! 親友を失いそうになった時より必死になってしまうのは仕方がないだろう。
俺のその無様な姿を見てようやく落ち着いたのか、女はため息をつくとその長い刀身を鞘に納めた。
「はぁ、無駄な時間を使ってしまいました」
そして、すでにアパートの中へと消えてしまっていた赤髪の神父を追いかけるように歩きだしかけ、ふとその歩みを止めて俺を振り返る。
その視線はまるで俺を探るように、全身をなめまわすかのように移動する。
ま、まさか、この俺を視姦するつもりか!? くそ、なんて鬼畜な女なんだ!
こっちは美琴ちゃんの電話で高ぶっているのを利用するというのか!?
く、来るなら来い!
………………く、悔しい! でも感じちゃう!!
俺がビクリビクリと身体を動かし始めると、女は気持ち悪いモノを見るかのような目で俺を見る。
っぐぅ!? その蔑んだ眼で俺を見て俺のM心を刺激するつもりか!?
俺が悶え続けていると、女は呆れたように溜息をついた。
「はぁ、あのアレイスターが見捨てたというのは本当のようですね」
「?」
アレイスターと言う名はどこかで聞いた気がするが、生憎と心当たりはない。
まあ、大かた『見捨てた』という言葉からして俺を研究していた奴らの一人だろう。そんな話を引っ張ってくるとはね、どうやらこいつは本気で俺に喧嘩を売っているらしい。
「……『情報』しか知らない奴が語るんじゃねえよ」
「貴方の事など、それだけ知っていれば充分です」
張りつめた空気が俺と女の間で流れだす。とは言え、俺はこの化け物女に勝てるわけがないので、ほぼ諦めモードな訳ですけど。
すると、その雰囲気が分かったのか女は明らかに俺を馬鹿にしたように口をゆがめて口を開いた。
「…貴方など私たちの『敵』ですらないですが、一応教えておきましょう。あの子はもう持ちません」
あの子と言うのは、インデックスちゃんのことだろうな。
持たないってのは、どういう意味だ?
「そうですね…タイムリミットは残り十二時間と三十八分。今夜午前零時にあの子の記憶を消せるように、準備を進めています。
そうでなければ、脳の要領を使いきった彼女は持たない」
そう真剣に言ってくる女の言いたいことはよく分からないが、要するにインデックスちゃんは午前零時に上条の手から離れる。
あいつと笑い合っていた記憶すら消え去る。
そう言うことなのだろう。
だから、俺は真面目な表情を作り女を真っ向から見据え、口を開いた。
「ばっかじゃねーの」
「んな!?」
驚愕する女。
ああ、馬鹿だなこいつは。それもどうしようもないほど馬鹿だ。
わざわざそんなことを言うこいつらも、こいつらをインデックスちゃんの件に使っている組織も、そしてこの程度のやつらと真正面から向き合っている上条も。
みんなみんな大馬鹿野郎だ!
「やり方がまだるっこしいんだよ。良く分からんが、お前らはインデックスちゃんの記憶を消すんだろう?
なら、俺らなんか相手にせずにさっさとそれを実行するべきなんだ」
「っ、私たちはあの子のために執行猶予を……」
「それが馬鹿だって言っているんだよ。執行猶予? あの子のためとかほざくなら、そんなくだんねえもんを設けるなら、さっさとあの子の記憶を消してやれ。それが最善の道だ。
まあ、お前たちは悪役みたいだし? あの馬鹿の心に傷を負わせたいんだろうけどな」
俺は口を噤んだ女を睨んだ。
「結局甘いんだよ、お前らは。結局は周りに被害しか撒き散らさない無能と言う名の害悪。最低だな」
「うるっせぇんだよ! 何も知らない癖に偉そうに!」
「うるさいのはお前だよ。知らないことを非難するなら教えて見せろよ」
「っ、あの子は、あの子は記憶を一年しか持たせられないのです!! そうしなければ、あの子が死んでしまうから!! その為に私たちはあの子の記憶を消すんだ!!」
女は血を吐きだすかのようにそう言った。
俺はその内容に正直ついていけなかったが、取りあえずはすました顔で「で?」と続きを促した。
「私は、友達だったあの子の記憶を消したくなどなかった!! あの子もそれを望まなかった!! あなたに私たちのその気持ちがわかりますか!?」
「…分からんが想像はできる。それは死にたい気分だろうな」
「だったら……」
「それでも!!」
俺は声を張り上げて女の言葉を遮った。ビクリと身体を震わせて女は俺の次の言葉を待つ。
「お前が選んだ道だろうが! お前があの子に生きてて欲しかったから、あの子の記憶を消し続けているんだろうが!!
そんなことで苦しみを前面に出して喚き散らすぐらいなら、さっさと殺してやればよかったんだよ!!」
「てめええええええ!!」
女は激昂して声を張り上げると俺に掴みかかった。
その動きは俺には視認できず、体が浮いたと思った瞬間に身体を衝撃が駆け抜け、俺は自分が大地に叩きつけられたと知った。
目の前には必死の形相で涙を浮かべた女の顔。
「もう一度言ってみろ! あの子の『記憶を消したくない』とうなされながら涙するところを見ても、もう一度同じことを言えるのか!!」
「っごふ、げほっ、何度だって言ってやるさ! お前らが耐えきれないんなら、始めからそんな選択をするんじゃねえよ!!
俺の言葉ぐらいで取り乱すほど弱い心を持ってるんじゃねえよ!!」
「私たちは、私は…!!」
「俺は、上条のためだったらあの子を見捨てる!! それで例え上条に恨まれることになったって、俺がそうしたいからそうするんだよ!!」
俺は女の腹を蹴ってその体をどかすと、立ちあがった。
「覚悟を決めろよ糞ったれ! やるんだったら徹底しろ! 俺は決めたぞ、上条の傷をこれ以上深くしねえために、あの子と上条を引き離す!」
「な!?」
俺はその言葉と共にアパートの中へと駆けこむ。
ちょうど、小萌先生の部屋から赤髪神父が出てきたところのようだった。
「お前は…………」
そいつが何かを言う前に俺はその脇を駆け抜け、室内に入る。
中には気を再び失った上条と涙を流しているインデックスちゃん。俺は彼女の腕を掴むと無理やり立ち上がらせた。
「きゃ、て、てーとく!?」
彼女が驚き俺の名前を呼ぶが、それらを一切無視して俺はドアの所で呆然としている赤髪神父と、俺を追いかけてきたらしい女に彼女を突きだした。
「連れてけよ! やるんなら、徹底しやがれ!!」
その言葉にインデックスちゃんは泣きそうに眼を見開き、男は呆れたように口を開く。
「っ、そこの寝ている馬鹿に執行猶予を与えてやったんだ。どうせ、彼女は逃げられないから……」
「ふざけんな!! なら、上条を人質にするなりなんなりして、さっさとこの子に自主的についてくるようにすりゃ良かったじゃねーか!!
それを執行猶予? 冗談じゃない! これ以上上条の心をズタボロにすんじゃねえよ!!」
「だったら、てめえがまずその口を閉じやがれ!! 僕たちは伊達や酔狂で…」
「この子は上条と一緒にいるだけで、あいつを傷つける!!」
「だから、それ以上さえずるな!!」
神父はどうやら、俺の言葉に傷つくインデックスちゃんを見ていられないらしい。
やはり、こいつもあの女と同じインデックスちゃんのことが好きな奴らしい。なら、話は簡単だ。
俺は腕を掴んでいるインデックスちゃんに視線を向ける。
彼女は、俺の視線の冷たさに気がついたのか、その身をさらに硬くした。
「悪いけど、ここまでだ。君はさっさとあいつらに着いていくべきだ。そして、記憶でもなんでも消されてくると良い」
「……てーとく、それはとうまの為?」
俺が容赦のない言葉を投げかけたにも関わらず、インデックスちゃんは何かを見通すかのように俺を見た。
まるで、俺の心の中を見通すかのように。
俺はそんな彼女と視線を合わせられず、俯きながら頷いた。
「そうだ。俺は君よりあいつを優先する。あの馬鹿を壊さないためにも、君とあいつをこれ以上一緒にいさせない」
「…てーとくは、とうまのこと、大好きなんだね」
「…あいつは、俺の親友だからな」
「そして、とっても優しい」
「っ! 俺は、君をこいつらに引き渡す。謝らないぞ」
「良いよ。心の声が聞こえたから」
そう言うとインデックスちゃんは俺の手から逃れて神父の前に立った。
「良いよ。私を連れて行って」
「ぼ、僕たちは……」
神父は一瞬何かを言おうとして口を開く。その目には横の女と同様に何か、良く分からない感情が渦巻いていた。
しかし、その感情は一瞬にして凍りつ。そして、インデックスちゃんにゆっくりと手がのばされ……
「帝督、この馬鹿野郎が!!」
いつの間にか起きたのか、俺に駆け寄ってきた上条の左手が俺の顔面に突き刺さった。
「サバンナ!!?」
俺は奇声をあげながら吹き飛んだ。
そして、床に倒れ伏す俺に上条は声を荒げた。
「俺がいつお前にそんなことをしてくれって頼んだよ!? それにな、俺のやりたいことは俺が決める!」
その言葉に、顎に綺麗に貰ってしまった俺は薄れゆく意識の中でこの大馬鹿を心の中で罵った。
(この、バカたれが。いつもそうやって苦しむのは、お、ま……)
そして、俺は意識を手放した。