とある学園都市のとある一日。
俺こと垣根 提督はいつものごとく街中で出会った美琴ちゃんに出会いがしらに俺の気持をぶつけた。
「美琴ちゃんの手料理が食べたい!」
「は? 何よいきなり」
始まりは、上条との何気ない会話であった。
いや、正確には上条の部屋でインデックスちゃんと上条に夕飯(餌)を御馳走になった時のこと。
話題は自然と今晩のおかずになったのだが……
「肉じゃが、か」
「? 何だよ。帝督も好きだろう、肉じゃが?」
「いや、まあそうなんだけどね?」
俺は何となく口ごもりながらも、その本日のメインデイッシュである肉じゃがを口に含んだ。
うん、醤油ベースのこの味がたまらなく日本人としての俺を刺激する。実に美味しい。
俺の様子を不思議そうに見る上条に続いて、口いっぱいに肉じゃがを詰め込んだインデックスちゃんは小首を傾げた。
「ふぉおまのひょうひは……」
「インデックスちゃん、先ずはその口の中いっぱいの食べ物をどうにかしなさい」
俺は取りあえずそう注意して、彼女の口元をテイッシュで拭う。
すると、彼女は俺の言葉に従って口の中のモノを飲み込む。
こう言ったことは、上条が以外と甘いので俺がいっつも注意をしたりしている。
と言うか、女の子がそんなんじゃ嫁の貰い手が…いや、上条がいるか。
いや、でも子供を産んだ後に子供をしつけるときに困るからね。
「とうまの料理はいっつも美味しいよ? 私は大好き! いらないなら、私が食べる!」
そう言って即座に俺の肉じゃがへと箸を伸ばすインデックスちゃん。
因みに俺がスパルタで教育したため、箸はしっかりと持てていたりする。
しかし、俺はその猛攻を片手でおさえると、もう一口肉じゃがを食べる。
因みに、その間もインデックスちゃんの手を自分の持てる握力の限りに握り締める。
ん? 子供に本気になるなって?
知るか、俺の食い物を取ろうとしたのが悪い。
「い、痛い痛い! やめてよてーとく!?」
「お、おい帝督! 離してやれよ!」
はいはい、馬鹿っぷる乙。
俺はインデックスちゃんの手を離すと、彼女はすぐさま半泣きになりながら上条に抱きつく。
上条は顔を赤くしながらも彼女を自分の後ろに庇う。
俺はそのやり取りの一切を無視して、溜息を吐く。
「それにしても、肉じゃがって家庭的な女の子の典型だよね? …好きな娘に作ってもらいたいなーなんて帝督さんは思う訳ですよ」
「知るか! てか、文句があるなら食うんじゃねえよ!?」
「いや、でも美味しいからね…っは!? そうだ、上条が今から美琴ちゃんになれば良いんじゃね!?」
やっべ! 俺ってば最高なことを思いついちゃった!?
「死ね!」
だが、その最高の幻想は繰り出された『幻想殺し』によって文字通り殺される。主に、俺の顔面の細胞もろとも。
上条は肩を怒らせながら俺に中指をおっ立てた。
「だったら、端から御坂さんに作ってもらえ!!」
「そ、それだぁぁぁああああああああああ!!」
その瞬間天啓が閃いた。
そんなこんなで現在、俺は美琴ちゃんに土下座を敢行しているのです。
因みにここは大通り。周りの人たちはジロジロとこちらをガン見してます。
「お願いします~。一度だけで良いから~」
「あのね、肉じゃがなんて私が作っても上条君よりもおいしくは……」
「別に良いのです! 美琴ちゃんが作ってくれたという事実に意味があるんです!! むしろ、それだけで俺は天国へと旅立てますから!!」
「てか、こんな人の目がある往来での土下座はいい加減にしなさい! これじゃあ、私があんたらにそんな事を強制させているみたいでしょ!?」
「じゃあ、作ってくれますか?」
「ああ、もう! 作る! 作るから今すぐ止めなさい!」
くくく、計画通り!
美琴ちゃんは基本的にツンデレ。だから、俺に料理を作ってあげたくても、簡単には素直になれない。
ただお願いするだけでは、断られることは必至だ。
ならば、どうすれば良いか?
簡単だ。『OK』と言える状況を、言うなれば逃げ道を用意してしまえば良い。
「べ、別にあんたのためだからじゃないんだからね? 仕方なくよ、仕方なく!」と誤魔化せれば美琴ちゃんの素直になれない心もチョッピリ大胆になっちゃうんだから♪
この場合は、往来のど真ん中でこれ以上恥をかきたくないというのが、それ該当する。
ふふふ、全ては僕の掌の上!
俺は立ち上がりながら、真黒な笑みを浮かべる。すると、どことなく疲れたような表情の美琴ちゃんが俺をじと目で睨んだ。
「あんた、時と場所を選びなさいよ」
「えー、だってー。美琴ちゃんを見つけたのが、たまたまここだったから……(嘘だけど)」
「あのねぇ、私だって鬼じゃないのよ? わざわざこんな往来で頼まれなくたって、その、料理ぐらい作ってあげるわよ…」
え? アレ?
美琴ちゃんのお顔がなんか赤いですよ? え? 何これ?
俺は美琴ちゃんに言われた台詞をもう一度かみしめながら、次第に自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
「そ、それって……」
「ああ、もう! アンタのマンションの部屋で作れば良いの!?」
「え、えっと、そうだけど」
俺は最早自分の思考能力を超えた精神攻撃に耐えきれず、半ば茫然としながらそう答えた。
美琴ちゃんは、すぐに踵を返すとそのまま歩きだす。
何故だろう、周りからの視線がすごく生温くて居心地が悪い。
俺は慌ててその後に着いて行く。
「あ、あの美琴ちゃ…」
「材料はあるんでしょうね?」
「あ、無いかも…」
「なら、買い物からね」
そう言った彼女の顔には、俺が大好きなあの笑顔が浮かんでいた。
そして、彼女はその笑顔に心打たれ立ち止まった俺を不思議そうに見つめる。
「? どうかした?」
「え、あ、いや。な、なんでもない……」
「ぷっ、何緊張してんのよ? 料理を作りに来いって言ったのはあんたでしょう?」
「あ、あぅ。そうですが……」
何だこれ、何だこれ何だこれぇぇええええ!!?
み、美琴ちゃんは何でこんなに余裕があるの!?
はっ!? ま、まさかこれは偽物か!?
「ね、ねえ、本当に美琴ちゃん?」
「…………」
え、アレ? なんで黙る……
俺がそう疑問に思った瞬間、美琴ちゃんはその顔に手を掛けた。
「まさか、見破られるなんて……」
直後、そのまま剥がされる美琴ちゃんの顔。
その下から現れた顔に俺は驚愕する。
お、お前はぁぁぁぁああああああ!?
「と言う夢を見たんだ」
「……それは、料理を作りに来いという催促かしら?」
「うん! ぼく、みことちゃんのりょうりがたべたい!」
「…そうね、一方通行を指一本で倒せたら考えて上げる」
「無理ゲーすぐる!?」
あとがき
もう、無理です。
そもそも甘いってなんでしたっけ?
出直してきますねwwww