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No.6905の一覧
[0] ミス!テリー! 短!編![石灰](2009/02/26 17:26)
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[6905] ミス!テリー! 短!編!
Name: 石灰◆c1bd08cf ID:b7c96053
Date: 2009/02/26 17:26




 まさか、という思いであった。そう。それは、飛び切りに突拍子がなく、皮切りにもおびただしく、まさに七転八起の事態のめまぐるしい変化であり、現場にいた人は、皆、心の声で呟いたのだった。まさか、と。

 そもそもの発端というのは、と懇切丁寧に初めから説明していきたいところだが、私という主役ではない語り部は、脇役も脇役、まさか君が?というほど意外に思うぐらい目立たない脇役の中の脇役であるので、物語の導入すら分かっていない始末であるから、そもそもの発端から説明することは、残念無念だが出来ない。何しろ、キングオブ脇役である。物語の主軸から程遠いところに、私の場所はあるのだった。

 であるからにして、私にとって、その『物語』とはとても唐突に現れた。

友「大変だ!密室殺人事件だ!」
私「なんだと?俺様が解決することもやぶさかではない!現場はどこだ!」
友「いや、ついさっき、とてもかっくいいお姉さんが華麗に解決したよ」
私「ジーザス!」

 そう。私は、完全に乗り遅れていた。それは時代の波とでもいうのか。思えば、我が20年の年月を思い返して、私は時代のサーファーたるサーファーになっていた試がない。ぱらぱら、なる踊りも、プリクラ、なる証明写真も、バナナダイエットも、ものすごい勢いで私を置いてけぼりにしたものだ。

 否!そこで立ち止まってはならぬ!俺様は、不屈という不屈を闘志に投資し、立ち上がった。大きな波の後に残るさざなみだけでもいいから、余韻に浸りたい……。否否!もっと大きな志を持つのだ!

俺様「現場はどこだ!ワトゥソゥン!」
友「いや、解決したんだよ」
俺様「させてたまるか!解決などさせてたまるか!」
友「何がしたいんだ、お前は……」
俺様「現場はどこだ!」

 引越しのバイトを放り出し、友(彼の名前である)を連れ、私は現場に急行した。現場はその引越し前である大きな館の中の一室であった。家主の寝室であり、一度ならず何度も引越しの荷物運びのために行ったり来たりしていた部屋であった。

私「何故、私は気づかなかったんだ!」
友「あれ?どうしてだろう?警察も来ていたし、サイレンも鳴っていたような……」
私「ま、まさか、あの居眠りしていた時間に!?それとも、イヤホンをつけて、大音響でメタルを聞いていた時に?!まさか!?」
友「寝ていたのか。自業自得だな」
私「お前は気づいていたのか?」
友「事情聴取されたぜ」
私「なんてことだ!」

 誰かが殺されたという寝室に私はたどり着いた。そこには警官の姿も愚か、千田真理の一人や二人もいなかった。そういえば、誰が殺されたのだろうか。そんなことも私は知らない。なんという置いてけぼり!なんという時代の荒波!

私「誰が殺されたんだ」
友「ああ、小林糸丸さんだよ」
私「誰なんだ。その、イトマルというのは」
友「糸丸さんは、見ず知らずの死体だったんだ」
私「は?」
友「屋敷にいる誰もが、糸丸さんの顔を見ても、糸丸さんだと分からなかったんだよ」
私「そ、それは、どういうことだ?君は、ここに、誰かも分からない死体があったと言うのか?」
友「そうさ。だから、皆も混乱した。しかし、あの探偵さんは……」
私「待て!言うな!ネタバレになるだろ!馬鹿!」
友「ネタバレとか、その前に、現実を見ろ。解決したんだ。まあ、お前が気づかなかったのも無理もない。スピード解決だったんだから」
私「スピード?スピードとな?ようし、分かった。私がもっと早く解決してやります!」
友「いや、既に負けてないか?」

 私は、友にネタバレをさせずに当時の現場を口頭で説明することを命じた。役に立たないワトソンは説明することをとても渋ったが、最後には溜息交じりで話し始めた。情報収集も探偵のスキルだ。あんなに非協力的な情報所有者から情報を得られるとは、俺様にはかなり優秀な探偵としての才能が眠っていたらしい。

私「そうか。となると、屋敷には8人の人物がいたわけだな。その内、容疑者は、この部屋に入ることが可能だった5人」
友「ああ。俺も、容疑者の中の一人だな」
私「いや、私もだ」
友「……そういえば」
私「つまり、私を含め、9人の人間がこの屋敷にいて、そして、犯行が可能だったのはそのうちの6人」
友「そ」
私「イトマルさんの死体の当時の状況を教えてくれないか?」
友「あー。外傷は頭。鈍器で殴られたかのような形跡があった。所持品はなし。なんにも持っていない。身元を特定できるものも何にも」
私「密室殺人だと言っていたな。部屋の状況を教えてくれ」
友「ああ。そのままだ。鍵が掛かっていた」
私「鍵を持っていたのは誰だ?」
友「えーと、家主の佐々岡正治さん67歳、と、警備担当の水口さん57歳だ」
私「年齢は言わなくても良い。不要な情報だ」
友「そうか?」
私「そうだとも。余計な先入観が生まれてしまうだけだ。ミステリィというのは、読者の裏を掻こうとしたくてしょうがないものなのだ。だから、一般的常識というものは却って邪魔になってしまう」
友「見事に現実から目を逸らしているなぁ」
私「これは現実だ!」
友「そうか?なんか、コミカルで現実っぽくないような……」
私「ぎゃおーす!煩い、うざい、胡散臭い!お前は三つのち、一つのウを持っているようだな!ぎゃおーす!」
友「お前は全部持っているようだがな。ぎゃおーす」

 私は推理する。部屋をぐるぐると儀式的に歩き回りながら、与えられた情報の中で推理する。誰が、一番、イトマルさんを殺すことが容易だろうか?自分を除外して、容疑者だった5人は誰でも犯行が可能だったという。うーむ。なかなか、むつかしいな?

私「おい。友よ。凶器となる、その鈍器というのをどこにあった?」
友「それは、探偵さんが最後に見つけたよ」
私「犯人が持っていた、というわけか?」
友「ん?いや、うん……」

 煮え切らない反応だった。友は確かに煮え切らない奴だが、ここまでとても煮え切らない、煮え切らない奴ではなかった。例えるならば、いつもの友はミディアムだが、今の友はミディアムレアだ。なんという中途半端な感じ!なんという苛立たしさ!突発的に起った破壊衝動に身を任せるようにして、私は椅子を蹴った。すると、ばこん、という破壊音の後に、椅子は足が取れて半壊し、椅子は倒れるように、地面に衝突して倒れた。倒れに倒れて、私はひらめいて側転をした。

私「そうか!この椅子の足を使ったのだな!」

 側転をしながら見回したが、それ以外に鈍器に使えそうなものは無かった。よし!正解だ!私は勝利の雄たけびを上げる。ぎゃおーす!

友「あまり騒ぐなよ」
私「となると、えーと、友?もう一回、容疑者の名前と職種を教えてくれないか?」
友「面倒だな。覚えられないならメモに書いて置けよ」

 そう言いながらも、友は容疑者四名の名前と職種をそらんじた。彼は記憶力があるのだ。いつもそのことを鼻にかけ、いや華?分からないが兎に角自慢をして、私を馬鹿だと苛める。しかし、馬鹿なのはお前の方だ、支倉友!この程度の、謎、俺様に掛かれば、10分だ!

私「なるほど。分かった。ぐりっとお見通しした」
友「何が分かったんだ?」
私「勿論、この事件の犯人を、だよ!君には分からないだろうがね!はっはっはっは!この優越感。最高なり!」
友「いや、もう周知の事実だから。お前の方は羞恥の事実かもしれないが」
私「犯人の名は、そう。家政婦さんだ!」
友「名前、言ってないじゃん。忘れたのか?家政婦は飯島沼子だろ?」
私「そう。その泥子」
友「沼子」
私「ええーい。煩い!どうだ?正解だろう?」

 友を問いただしていると、どこからか、ぱちぱちという音が聞こえてきた。何の音だ?と耳を澄ましていると、部屋の出口から、手を叩きながら髪の長い女性が現れた。

女探偵「ブラヴァー。正解です。犯人は、貴方の言うとおり飯島泥子さんです」
私「む?誰だ!」
女探偵「見れば分かるでしょう?」
友「彼女が、さっき言っていた探偵だよ。あと、沼子ですから」
私「何?お前が?お前が私の出番を奪った?」
女探偵「奪ったとは心外ですね。私は可及的速やかに事件の謎を解いただけです。私、知恵の輪のような絡まったものが大嫌いなんです。ですから、つい、片手間に解いてしまっただけのこと。恨むのなら、私の目の前に謎を置き去りにした犯人を恨むのですね」

 女性はミスグランプリと小学生の頃、渾名が付けられていたかのような綺麗な女性だった。まさに目も眩むビボー。見につけている衣服はさりげないがブランド物だった。ブランド物は、良い。羨ましい。何故なら、流行とは無縁の、時代の荒波も物ともしない恒久的な耐久度を持っているからだ。

私「た、探偵が何故ここに」

 私は動揺していた。今更ながら自分の脇役としての自覚を思い出したのだ。主役とは、なんと光輝かしいのかと現物を前に思い知った。

探偵「別に。散歩をしていただけです。それより、貴方の推理に興味があるわ。説明してくださらない?」
友「説明?そんなものが必要ですか?貴方は全てをお分かりになっているはず」
探偵「言ったでしょう?興味があるのです。その事実に到達した過程。それが、どうやら私のものとは違うようでしたから」

 女探偵は部屋の立派な椅子に腰掛け、まるで主人のような振る舞いでどうぞ、と目の前のソファーを我々に勧めた。座ると、私と探偵は、正面に顔を付き合わせる形となり、非常に居心地の悪い感じだった。火に油ではなく、油に水のような、あるいは、シリアスにギャグというような、混ざりませんが混ぜてはいけませんという会合を果たしたかのようだった。

私「む」
友「どうした?」

 まさか、ライバル?生涯の宿敵?それが彼女なのか?

私「むむむ」
友「おい」

 負けてはいられぬ。知恵の輪なら私も得意だ。私の12歳の誕生日に貰った最強にして強靭なニッパーの前では、どんな知恵の輪も鉄くず同然。まさに、解き終わった後に鉄くずとなるところが素晴らしい。私も目の前の彼女と同じく、絡まったものなど大嫌いなのだ。全ての謎に終止符を打たんと、日夜奔放している私にとって、同じ志の同士にめぐり合えたことは喜びのはずなのだが、そういった感慨は生まれなかった。感じるのは凶暴的な闘志。この女を跪かせたい!この女の泣き面を拝み、写真で取り、悪戯書きをしたい!という欲求だった。

 いつの間にか、探偵と私は長い間睨み合っていた。

友「……」
私「……」
探偵「……」

 探偵が、友の溜息を皮切りに、まず口を開いた。

探偵「あの椅子の足が着脱可能なことはどうやって気づかれました?」
私「勘だ」
探偵「……では、どうして見ず知らずの人間が、こんな場所で殺されていたんでしょうか?」
私「偶々だ」
探偵「偶々、とは?」
私「ボールのことではない」
友「当たり前だ!」
私「君は黙っていなさい」
探偵「ええ。黙っていてくださる?」
友「何故……」

 私は説明した。

私「そのイトマルという忍者のような名前の男は、まさに、その親戚とも言うべき、泥棒だったのだ」
探偵「!」

 探偵は振り返り、友の顔を見る。

探偵「教えたのですか?」
友「いえ、ネタバレは止めろ、と口止めされていました」
私「どうやら、正解のようだな」
探偵「……では、どのように密室が完成したと?」
私「偶々だ」
探偵「偶々、とは?」
私「ポケモンのことではない」    (注釈1)
友「……」

 私と探偵は、無言の友を睨みつけた。理不尽な暴力を受けたかのように、友は顔を歪め、屈辱的に言った。

友「当たり前だ……」
私「君は黙っていなさい」
探偵「ええ。黙っていてくださる?」
友「不可解だ……」

 私は説明した。

私「私は引越しバイトをしていてね。何度もこの部屋を往復していたから知っていたんだが」

 うんうん、と探偵は頷く。

私「立て付けが悪いのだ!」
探偵「……完璧な推理です」
私「ふふん。であるからにして、おそらく駆けつけてきた人間は鍵が掛かっていると思い込んだのだ!後から鍵を開けたとする家政婦さんが、何か子芝居を打ったことは、想像にむつかしくない!よって、密室は完成された。全く、意味の無い密室がな」
友「この推理にも意味があるのか?」
私「意味など」

 私はふっと息を漏らして笑う。

私「そもそも、君が生きている意味はなんだね?ワトゥスン」
友「お前を死ぬまでにまともにすることかな」
私「そうだ!ない!意味などない!よって、意味などを求める、『意味』がないのだ!」

 探偵は、私の言葉に感服したかのように頬を赤くして、好戦的な目を向けてきた。ライバルの眼差しである。

探偵「……見事なお言葉遣い。私の次に探偵を名乗る資格があるようね。そう。……准探偵、といったところかしら」
准探偵「そんな称号などいらない」
友「いや、結構嬉しそうじゃないか?」
探偵「貴方とは、またお会いしそうな気がします」

 探偵は、腕時計を見て、(五百万はする!)はっと気がついたような顔になった。

探偵「もうこんな時間。名残惜しいですけど、私はもう帰らなくてはいけません。門限に煩い執事がいるのです。では、最後に、貴方たちの名前を伺ってもよろしいですか?」
友「ええと、これで名乗るのは二度目ですが、支倉友、です」
私「名前を聞くのなら、名乗ってから……」
探偵「ええ、申し遅れました。私、にしのそ……いや、違います違います。ええと、藤春香奈と言います。ハルカナ、と呼んで下さい」
私「私の名は、私倉京子」
探偵「シクラですか?どういう漢字を書くんです?」
私倉「左を見れば良いだろう。まあいい。わたしの私に、酒蔵の蔵だ」
友「違うから。クラは、倉庫のそう」
探偵「うん。覚えました。それでは、またお会いしましょう」

 かくして、私の奮闘により、事件は解決された。(違うでござる)

 帰り道。

私「なあ、帰りに証明写真とぱらぱら踊らない?」
友「は?証明写真?就職活動に使うのか?あと、ぱらぱら踊るって何?……ボケは一度に一回にしてくれよ」
私「(注釈1)タマタマという名前のポケモンがいるんだ」
友「なんだよ、いきなり。ポケモンなら知ってるよ。お前にミュウと名前の付けられたコイキングを交換させられた」
私「え?そうだっけ?覚えてないなぁ。それで、私は何を手に入れたんだ?」
友「ミュウツーと名前の付けられたコラッタ」
私「どっちもどっちじゃない」
友「お前と友達やるなんて、大変な苦労なんだよ。騙されるか騙すかの壮絶な子供時代だった……」
私「ふーん。友達?」
友「え?」
私「友達、で良いの?」
友「それって……」
私「奴隷はどう?マゾなんでしょ?」
友「ギャオース!」
私「あ、サンダーの鳴き声」





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