Episode 1 : Raising Heart06 「新感覚と癒し系」***Side Wilhelmina***「十一日前のスオムス補給船団奇襲の際に負傷したため、着任が遅れていましたが。 彼女が、本日付で本航空団に配属となった、ヴィルヘルミナ・H・バッツ中尉です。 通常任務は私やフラウ、トゥルーデとの訓練が大部分を占めてしまうけれど……皆さん、仲良くしてあげてね」「ヴィルヘルミナ……ヘアゲット、バッツ。 今後とも……よろしく」 うん、皆の前での挨拶くらいしっかりやりたかったけど、この言語能力じゃ無理だわ。 変人だと思われるのはまぁしかたないが、これがオレの本性じゃないんだ、解ってくれ……! 今オレは、教室のようなミーティングルーム、壁に掛かっている黒板の前に立っていた。 目の前にはウィッチーズの面々が座っている。 あ、ルッキーニだけ毛布に寝転がりながら何か微妙に敵意を含んだ目でこっちを見つめている。 うげぇ……まぁ、予想してたけど、皆美少女過ぎる。 男だった頃にお知り合いに……と一瞬思ったが、よく考えたらこの子等ほとんどローティーンだよな。 ……うん、もうちょっと後でいいや。 具体的には五年後くらい。 この年頃だとみんな可愛い感じが強いからなぁ……一部を除き異性として見れん。「今居ない人もいるけれど……みんなの紹介をしましょうか。 今更紹介する必要も無いでしょうけど、私はミーナ=ディートリンデ・ヴィルケ。 階級は中佐。 この航空団の司令を務めているわ」「……はい」 何かあったら遠慮無く言ってね、とウィンクしてくるミーナさん。 やべぇ可愛い。 昨日怖いとか思ってすんませんっしたーっ!「今此処には居ないけれど、副官として美緒……扶桑海軍少佐である、坂本美緒さんが居るわ。 今、彼女は扶桑に新しいウィッチをスカウトしに行っているの。 彼女には戦闘隊長も務めて貰っているから、彼女が帰ってきたら色々相談しないとね」「……はい」 坂本さんですか。 多分帰ってきたら芳佳さんと一緒にめっちゃしごかれる予定です。 ミーナさんが視線で、最前列に座っているバルクホルンとエーリカを促す。「ゲルトルート・バルクホルンだ。 階級は大尉。 今更自己紹介するのも何か不自然な気もするが……改めてよろしくだ、バッツ」「エーリカ・ハルトマン。 中尉。 また楽しくやろうね」「ん……」「ヴィルヘルミナさんは、欧州戦線で彼女たちと同部隊だったの。 それに、昨日の模擬戦で、トゥルーデの相手をしていたのも彼女よ」 ミーナさんの捕捉に、カールスラント勢以外がへぇ、と声を漏らす。 うん、今君たちが何を想像したかは予想が付くが、それは現実とは大いに剥離した想像だから考え直すように。 あと、エーリカ。 今オレが履いてるサイハイソックスはお前の私物で。 貸してくれる、というのはほとんどの私物や生活用品が船と一緒に沈んだらしいオレにとっては非常にありがたい事だが。 てめーのおっぱいを揉みまくるという復讐、オレは忘れた訳じゃないからな……! ちなみに上はバルクホルンの姉ちゃんのです。 15cmも身長差があるとずいぶんだぼだぼですが、余り肌を晒したくないオレにとっては助かります。 お給料入ったら私服とか制服とか、なるべく丈の長いの貰おう…… あーくそ股がすーすーするぜ…… タイツも買おう。 では次の方お願いします。「わたくしはペリーヌ・クロステルマン。 ガリア空軍中尉。 バルクホルン大尉やハルトマン中尉と共に戦っていたというのは、頼りになりそうですわね。 よろしくお願いいたしますわ」「……うん」 うん、それ無理。 頼らないでくれ。 あとごめん。 こんな喋り方なんです。 眉をひそめないでください。 っていうかペリーヌ、普通に挨拶できるのな。 作中だとツンデレが強調されてたけど普通に普通の子だった。「わたしはエイラ・イルマタル・ユーティライネン。 スオムス空軍少尉。 こっちはサーニャ・リトヴャク。 オラーシャ陸軍中尉」 うつらうつらしているサーニャを支えながら挨拶してくるエイラ。 エイラーニャは相変わらず仲が良いですね。 あと棒読みですね。 というかサーニャはあれだな、昼間はずっと寝ッ放しな感じだな。 オレが昨日正午頃気絶して、今朝5時まで爆睡してた理由であるところの魔力切れの所為もあるだろうけど。 寝過ぎてちょっと頭痛いのは秘密だ。 「昨日の模擬戦、格闘戦はダメダメだったけど、その後の速度は凄かったな。 新型使いらしいけど、あんま機体に振り回されてんじゃないぞー?」「……大、丈夫……」 大丈夫です、既に振り回されております。 っていうか、Me262で格闘戦して落とされなかったオレの運の良さをほめて欲しいね! 一生分の運を使い果たしてる気がして仕方ないんだけどね。 次、おっぱい二号こと、リーネちゃん。「あ、と……リネット・ビショップです。 ブリタニア空軍所属、階級は軍曹で……ついこの前配属されたばかりです。 よろしくお願いします……」 ……あー、暗いね、そういえば自信ない子だっけ。 目線あわせてくれないし。 いや、左目の周りの火傷と、微妙な無表情が怖いのは解るけどね。 確かに修羅場慣れしてそうにないしなぁ…… フォロー入れとくか。 こんな面だけど、オレも新参だから何かと仲良くしような! にっこり~「すまん……こんな……顔だけど……よろしく」 …… ガッデム!! なんかオレめっちゃ威圧してない? っていうか多分片唇つり上げて嘲笑ったりしてるよ、オレの表情。 ひっ、とか小さく言われたよ! 涙目だし。 泣ける。 もうオレ下手なこと言わない方が良いよなぁ……でも練習しないと改善は見込めないし。「まぁまぁ、そんな睨んでやるなって」 お、次はシャーリーさんですか。 フォローあざーっす。 良いおっぱいですね。「あたしはもう自己紹介したよね。 シャーロット・イェーガー。 出身はリベリオンで階級は中尉。 シャーリーで良いよ。 いやぁ、それにしてもあの速度は凄かったねぇ! 背はちっこいのにさ」「背は……関係なく……ない?」「あっはは! そうかもね、まぁあたしより若いんだしこれからだろ?」「ヴィルヘルミナはこれでも17歳で、私やシャーリーより年上だよ」 一杯食べなきゃな、と言いかけたシャーリーに対し。 エーリカがそう発言した瞬間、部屋が凍り付いた。 いやー、そうだろうな。 オレ、身長とかルッキーニとほとんど変わらないしな。 17だと成長期も終盤だしこれ以上伸びないんじゃね? 「ほ、本当? 中佐?」「……事実よ、シャーリーさん」「あー、ええと、悪いことを聞いちゃった……かな?」「……気にしてない」 事実だ。 別に身長なんて高いところのモノ取りやすいかどうかだけだし…… 身長高いと靴のサイズ大きくなって値段上がったりするしな。「あ、でもさ、確かヴィルヘルミナって結構胸おっきかったよね」 ――風が、吹いた。 その早さは、後に聞いた彼女の使い魔たる黒ヒョウを容易に想起させるモノであり。 にわかに立ち上がりかけた、歴戦の勇士たるエイラを超え。 彼女はその双腕を伸ばした。「……なッ!?」 胸の辺りに圧迫感と。 まるで体験したことのない異様な感覚が走る。 一瞬で後ろを取られた。 ……殺られた、と思った。「おー……さーにゃんよりおっきい」「なんだって!?」「なんですって!?」 あ、その、ルッキーニさん、貴女何を。 あと、エイラが驚くのは解る。 何でお前まで驚くんだペリーヌ。 う、あー! と、いうか、揉むな。 こねるな。 つねるな! う、ぐぎぎぎぎぎぎぎ、死ぬ、殺される、この、感覚は オレの男が殺される……ッ「おい、ルッキーニ、いい加減にしないか!」「えー? にひひー、いいじゃん、ちょっとくらい。 でも背はアタシと同じ位なのに……ずるい!」「あらあらまあまあ」 助けてお姉ちゃん! ミーナさんは当てにならないから! オレの心のライフはもうゼロよ! ……あ、もう無理。 「……ふぇ」 意識したらもう無理。 ああ、年甲斐もなく涙が勝手にぼろぼろと…… うううう……「う……ぐっ」「え? あれ?」「ルッキーニ!」 もうやだー! おうちかえる! おうち帰って寝る! 変な趣味に目覚めないうちに帰って寝るのー!***Side Witches*** まさか、胸を揉まれて泣き出すとは思っていなかったが。 その場で皆に慰められて、ルッキーニが素直に謝ったことで場は収まり。 むしろ、口調や顔に残った火傷の跡からくるその堅い印象が泣き顔で崩れたためか、ウィッチーズの面々もヴィルヘルミナに接しやすくなったようだ。 と、ミーナは感じていた。 今はヴィルヘルミナは自室待機中であり。 他のウィッチ達が各々の任務に就いている中、カールスラントの三人は今後のための話し合いをしていた。「結局の所……誰がMe262を使用するか、よね」 ミーナが呟き、手元の書類をのぞき込む。 トゥルーデの署名が為されたそれは、スオムスからの補給の納入書だ。 ネウロイに襲撃された補給艦艇の損耗は激しく。 回収できたユニットは、ヴィルヘルミナが装着していたMe262A-1a/U4を除けば、半分の2.5機だった。 訓練用の複座型も片足分しか回収できておらず。 補修部品はほとんど回収できていない。 1機を予備機、片足分しかない訓練用複座型と制式型を緊急時のパーツ取り用に取っておくなら、実質三人の内誰か一人しか使用できないことになる。 操縦技術に難のあるヴィルヘルミナにBf109かFw190を使用させ、Me262を他の二人で運用する案も考えられたが。 むしろ、彼女がMe262を使用し、その圧倒的な性能で生存率と戦闘力の底上げを行うべき、というトゥルーデとエーリカの意見により、これは破棄されていた。 それに、Bf109やFw190ではまた荒療治で操作方法を思い出させなければならないかも知れない。 技量と運と勘が生死を分ける最前線である。 訓練ですり切れてしまっていては元も子もないのだ。「私は戦場に出る際は戦闘指揮官としてだから……ストライカーユニットの戦闘力は二人ほどは必要ないかしら」 ミーナの魔法技術は狭い範囲ながら、周囲の敵味方の位置・速度情報を三次元的に認識するというものである。 現代で言う戦域管制であり、彼女自身は指揮官と言うこともあり積極的に戦闘には参加しないでいた。 逆に、バルクホルンやエーリカはその速力と戦闘力を生かしての前衛――いわば切り込み役である。 戦ってなんぼの役割であり、速力や魔力増幅率は高ければ高い方が良い。「私は別に良いかなぁ……ヴィルヘルミナが持って来てくれた機体には興味有るけど……あまり小回りの効きそうな機体じゃないし」 増速ならシャーリーほどじゃなくても魔法で出来るしね、と。 眠たそう言うエーリカに、トゥルーデが応える。「……となると私か。 私としては、一通り全員で一機をローテーション組んで使用してみるのも悪くないと思うんだが……」「トゥルーデはアレと実際やり合ったから解るでしょ? どうなの?」「実際に使用してみないと解らないし、ヴィルヘルミナも万全の状態ではなかったようだから、確信はないが…… 起動は遅い、加速は悪い、旋回性能は低い。 あの様子だと魔力消費も高めだろうな」「駄目ユニットじゃん、それ」 その通りだな、とエーリカの言を肯定し。 だが、と否定する。「あの速度。 あれが全ての欠点を帳消しにするだろう。 ひとたびトップスピードに乗りさえすれば、遊撃役や囮役として戦場を引っかき回せる。 魔力増幅率の高さもあるから、重火器も装備出来る……高速打撃戦力としては既存機体の追随をゆるさないだろう」「そうすると、大型相手にはヴィルヘルミナさんともう一機……今の段階ではトゥルーデね、がロッテを組んで先行、攻撃を行い敵の目を引きつける。 足止めと誘引を行っている間に私たちが有利な位置に展開し、勝負を決める……と言った感じかしら」「でもそれだと二人の負担が大きすぎない?」 トゥルーデは兎も角、ヴィルヘルミナには難しいのではないか、と。 エーリカは問う。「あいつの勘を信じる……と言いたいところだが、楽観はできんな」 「今後の訓練次第……かしら。 一度思い出し始めれば後は早いって聞いたことがあるし……」「んー……」「どうかしたのか、ハルトマン」「いや、なんでもない」 そうか、とトゥルーデが応え。 それじゃあ、とミーナが続けた。「……とりあえずMe262は全員が触ってみる事にしましょうか。 ローテーションを組んで、とりあえず今日はトゥルーデで……明日がエーリカ、その後が私。 いいかしら?」「うん、いいよー」「かまわない」「トゥルーデ、ヴィルヘルミナさんに基地を案内してあげて。 その後、そのまま訓練に入って頂戴」「了解した」 では、そういうことで。解散。 ミーナのその言葉で、席を立つ音が三つ響く。 「あ、フラウ、ちょっと良いかしら」「ん? どうしたの、ミーナ?」 トゥルーデに続き部屋から出ようとしたところを止められ、振り向く。 足音が、遠ざかっていき。 聞こえなくなる。「……言い留まってくれて、ありがとう」「本当は……トゥルーデが守ってくれれば安心なんだけど、さ」 負担はこれ以上増やせないから。 未だに妹の事を引きずる友のことを、もっと上手く支えてあげる事が出来れば、と。 少女二人は、思った。***Side Wilhelmina*** 耳のすぐ側で重低音が響き、肩を起点に全身を衝撃が貫く。 構えた機関砲から放たれた洩光弾は、光っている為か驚くほど簡単に目で追えた。 海の彼方に飛んで、消えていく。「……どう?」「駄目だな。 元々命中精度に難があるとはいえ、此処まで外れるといっそ清々しい。 左にかなりずれた」 双眼鏡を覗きながらバルクホルンがそう伝えてくる。 そらそうだ……っていうか、魔力の補助があるからって1kmくらい離れた1m四方のターゲットに当てれるか! そりゃあ空戦ではそれくらい簡単に離れることも多いだろうけどさ…… それにこれ、軽くなーれ魔法(オレ命名)つかってもなんか重いし……反動は強いし…… ストライカーユニットの補助がないと厳しいんじゃないか? 先ほどから射撃訓練に使用している機関砲。 Mk108と呼ばれるたそれは、口径30mm、重量60kg、長さ1.3mという、長大で巨大な凶器だった。 ……いやあんた、ジョギングしながら出番待ちしてるリーネの対戦車ライフルより口径でかいじゃない。 サイズも今のオレの身長に匹敵するくらい大きいし。 胸のサイズは無理ですけどね! 何をしてるかって? あの後、バルクホルンに軽く基地内を案内して貰った。 まぁまさかオレも胸を揉まれたくらいで泣けるとは思っても見なかったが……男の自尊心を打ち砕く、何とも凶悪な攻撃であった。 うう、恥ずい……思い出したくない……年甲斐もなく泣くとかマジ恥ずかしい……死にたい……穴があったら埋まりたい…… で、でも、びっくりしたんだからしょうがないじゃないか! げに恐ろしきはルッキーニ……まるで気配がなかったぞ。 ああ、あとは芳佳さんがおっぱい魔神だっけ……前途多難だなぁ。 で、案内して貰った後。 滑走路のはじっこで絶賛射撃訓練中なのである。 オレの立場としては、この基地にMe262の操作教導訓練の為に来ているわけで。 ついでに言うなら記録上、オレは普通にベテランウィッチなわけだ。 射撃訓練など実力維持の為に行う物であり、今更積極的に行っても劇的な能力向上があるはずはない。 が、実際は、オレはそんな歴戦の勇士ではなく、その中に入っている全くのど素人。 確かに基礎体力は男だった頃とそんなに変わらない……一部は上、というのが子供とはいえ流石軍人の身体、と思うのではあるが。 技量はそうもいかない。 よって、書類上、現在オレはバルクホルンにMe262の操作教導をしているはずであり。 実際はバルクホルンに射撃の指導を受けているというわけだ。 書類上の飛行時間と実際の飛行時間に余り齟齬が出ても問題があるから、もうしばらく撃ったらMe262の方に行くけどね。「もう数射してみろ。 魔力を込めるのを忘れるなよ」「……ん」 思い出しかけた胸の感触を必至に振り払って、集中する。 機関砲に、意識の枝をからみつけていくイメージ。 そして、弾倉の辺りで枝を練り上げ、結実させる。 ……と言う感じらしいが、いまいち上手くできてる自信がない。 まぁ、バルクホルンからコメントが無い以上、上手くやれてる……と信じよう。 彼方にある米粒以下の大きさの的を睨む。 魔力による増強のお陰か、多少ズームして見えたりするのが不思議だ。 巨大な機関砲の底部にある、取って付けた感満載のショルダーストックを肩に当て、照準と照星をあわせた。 ……えーと、風がこういう方向に吹いていてさっきはあの辺を狙って左にずれたから……うーん、この辺か? 爆音。 爆音。 爆音。 爆音。 今度は4発連続して撃つ。 うー、反動で肩痛ぇ。 まぁ魔法って便利よね……生身でこんなサイズの大砲抱えて撃ったら吹っ飛んじゃうよ。 というかそもそも重くて持てねぇ。 それに、響く砲声で耳が痛くなってもおかしくないはずなのに、別に何ともありません。 インカムの所為かね。 あと、このケモ耳って別に音が良く聞こえるとかじゃないのね……聞こえてたら今頃悶絶してそうですが。「命中弾1、至近弾1……駄目だな、姿勢が特にぶれている訳でもないのに思ったより集弾率が悪い……砲身が短いせいか」「……そう」「この砲での遠距離狙撃は諦めた方が良いな」 っていうか当たったことの方が驚きです。 うーん……この調子だと大型目標に叩き込む位にしか使えないか?「じゃあ次はMG42だな。 機関銃にしては集弾率、命中精度も高いから今度はまともに当ててくれよ」「……うん、はい」 世界中でパクられまくった傑作機関銃の登場です。 これで命中率悪かったら超恥ずかしいね……頑張るとしますか。 20分後。 超恥ずかしい……結果には、まぁならなかったけど。 うーん、8割くらい……かなぁ? 本当はダメなんだけど、左目使わずに照準した方が当たりやすいね。 やっぱり火傷の関係で視力落ちてんのか……? 三次元認識力が下がるし、視界は歪むし、純粋に視界が狭まるから片目を閉じて射撃しない方が良いって聞いたんだけど。「……こんなものか。 リネット軍曹! もういいぞ」「は、はぁい」「返事を延ばすな!」「はいっ!」 やべぇカールスラント軍人厳しすぎる。 走り終わった直後で息も整わない子に言う言葉じゃねえ。 坂本さんより厳しくないか……? うーん、しかしこのまま飛行訓練に行くのもアレだな…… リネット放置しちゃうし。「……少し、見てって……良い?」「別に構わんが……リネットの射撃を見ても自信をなくすなよ」「い、いえ、私なんかの射撃を見ても……」「……トゥルーデ……先に行って……準備」「! わ、わかった」 双眼鏡を手渡し、バルクホルンは格納庫の方へと去っていった。 やべ、勢いでトゥルーデって言っちゃった。 なんかビクっとしてたけどまぁいいか……あとで絞られるかな。「あ、あの……ご指導お願いします」「……気に……するな」 ……うん、ちょっとフォロー入れとこうかと思っただけなんだけど。 よく考えたらこの子芳佳と一緒に初戦果取るまで超ダウナー系なんだよな…… 今オレが何を言っても届かないだろうし…… あああああもう、オレの考え無し! お馬鹿ー! どうすんだこれ!***Side Witches*** 滑走路脇にはいつくばり、射撃姿勢を取りながら。 リネット・ビショップは緊張の極みにいた。 ぼそり、とヴィルヘルミナのつぶやきがリネットの耳に届く。 「……外れた」「……ッ」 三射目。 当たらない。 いつもより調子が悪い。 知らない人に見られているためか。 リネットは伏射の姿勢のままちらりと横に立っている人物を見る。 ヴィルヘルミナ・バッツ中尉。 怖い人だ、と思う。 可哀想な人だ、と思う。 左目から左頬の周辺と、襟口から覗く火傷の跡が残る肌。 身長は低いが、自分よりも年上だといい。 そして表情に乏しく、ぶっきらぼうな話し方をする。 ルッキーニに胸を揉まれて泣いていたが、この人の本質は、今隣で振りまいているような堅いモノなのだと。 リネットは思った。 坂本美緒のように、わかりやすいものでなく。 ミーナのように、穏やかなわけでもなく。 訓練所の教官達のように、トゥルーデのようにただ厳しいわけでもない。 ただ、淡々と告げてくる声は、彼女にとって初めての経験であり。 緊張に耐えかねた心が、弱音を漏らす。「……駄目ですよね、私」「……」「訓練では、何時も上手く出来るのに、実戦になると本当に駄目で…… 訓練でも、今日はなんだか駄目で……」 吐露する。 胸に溢れる、薄暗い劣等感が口の端からこぼれ落ちていく。「……わたし、役立たずなんで」「リネット」 プラスチックが、コンクリートに触れる音がする。 ヴィルヘルミナが、リネットの傍らに双眼鏡を置いた音だ。 ああ、見限られる。 そう思ったリネットの耳に聞こえてきたのは 「……リネット。 料理は……するか?」「はい?」 全く関係のない単語だった。「……料理はするか?」 何言ってるんだろうこの人、と思いもするが。 律儀に返事をする。「え、ええと……失敗は多いですけど、できます……」「お前の……母親が……料理を、失敗……したことは?」「え……あ、有ったと思いますけど」「……リネットは……調理場の、全部の、道具を……使ったことが……ある?」「え……いえ、多分使ったことのない道具もあると思います」「……その使ったことのない道具は、役立たずだと……思うか?」「……いいえ」「ああ……何時か、きちんと使われる時が来る」 それまでは、いざその時に錆びて使い物にならないように、日々の手入れを欠かさないように。 そう告げて、ヴィルヘルミナは格納庫の方へと小走りに駆けていった。「ええと……励ましてくれた……のかな?」 なんだか要領を得ない、要点の解らない話だったが。 ため息を一つ。 気を取り直して、銃を構え、風を読み、魔力を込め、よく狙い、撃った。 銃声が海に響く。 双眼鏡で確認すると、的のど真ん中が打ち抜かれており。 リネットは、心が少し軽くなった気がした。 ------遅くなってすいません。っていうか公式サイトが! アニメ二期か!? 二期なのか!?始まる前に完結しないと!オリ主だから説教しないとね!説教しないオリ主はオリ主じゃないと聞いたので。オリ主、泣くの回。ルッキーニは乳揉み魔! エイラも揉みたい派!なんかルッキーニだけ自己紹介してないけど有耶無耶になってるだけで実際にしてないです。ルッキーニは、なんかジェットエンジンの音が嫌いっぽいので。ジェットストライカー使いのヴィルヘルミナにはちょっと敵意があります。……全削除してしまった感想から。小咄に出来そうだった質問があったのですが、私生活で時間的余裕がなさげなので此処で回答。ヴィルヘルミナの使い魔は白毛のジャーマン・シェパード。使い魔設定無視してるわけでなく、むしろ中の人が彼のことを見れないので、無視してます。そんな状況でも、ヴィルヘルミナに力を貸してくれる忠義篤いわんこ精霊です。……でも小説媒体持ってないから、使い魔の実際の扱いがどんなのか知らないという暴挙なので引き続き出てこない方向で。