……ん? おお、今日は羽娘来なかったな。 気持ちのいい朝だ。 ……隣には母さん。まだ寝てる。 ……さて、今日は休みだし…… 佐祐理さんに、頭下げに行かないと……「……よし」 私服に着替えて、部屋を出る。 母さんは放置で。 台所に降りると……「あら、せつなさん、おはようございます」「あ! お姉さんおはよう!」「おはようございます、秋子さん。……え?」 ……俺の席に、なんかいる。 クリーム色のセーターを着た、カチューシャ娘。 ……こ、こいつ! 羽娘か!?「お、せつなおはよう……」 あ、祐一も降りてきた。「祐一さん、おはようございます」「祐一君おはよう!」「あ~……秋子さん、おはようございます。せつな、どした?」「あ、いや、おはよう。……そうか、幻覚か」 祐一も反応しないってことは、幻覚なんだな、この羽娘は。 いかんな、本気で疲れてるのか、俺。「二人とも、朝御飯食べますか?」「「頂きます」」「わぁ。二人とも息ぴったりだよ」 幻覚の声は無視して、その隣へ。 名雪の席だが……どうせ起きてこないだろう、あの眠り姫。「せつな、今日はなんかあるのか? もう出る準備してるみたいだけど」「あ~……ちょっとな? 友人の家に行かないと……」「秋子さん! ご飯おかわり!」「はいはい」 ……幻覚の癖におかわり要求するとは、生意気な奴だな。「祐一君はどこか行かないの?」「祐一はどうするんだ?」「うーん。家で寝てようかな……」「あ、だったら、僕と、で、デートとか、どうかな?」 幻覚の癖に色気づくな。 本当に生意気な。「……やはり寝ていよう。どうも、さっきから幻覚がうるさい」「そうした方がいい。俺も幻覚がうるさい」「……うぐぅ……二人とも酷いよ……」 ……うーむ、苛め過ぎたか?「「おお、あゆ(羽娘)いつの間に?」」「さっきから居たよ!! 二人して無視するなんて酷いよ!!」「「いや、今気付いたんだ」」「絶対嘘だよ! しかも、声合わせて言わなくていいよ!」 はっはっは。 ……申し合わせてもいないんだが。 気が合うにもほどがあるな。「まあ、落ち着け羽娘。血圧上がるぞ?」「そうだぞ? 朝から叫ぶな。うるさいし」「うぐぅ~。ホントに祐一君が二人いるみたいだよ……」 む、失礼な。 こいつほど性格悪く……同じ事考えたんだろな。 指を指そうと腕上げてる。もちろん俺も。 そして、視線が祐一と合う。……うん。 「やはり双子か、俺ら」「だな。ここまで一緒だと怖いくらいだ」 まったくだ。「……そうですね。お二人とも、よく似てます」「秋子さんもそう思います?」「ええ。その、雰囲気……でしょうか。纏っている空気が、お二人とも似てますよ?」 ……人に指摘されるレベルって…… うーん。世の中広いな。「ともかく、俺はご飯食べたら出るから。……秋子さん、母さん起きたら伝えといてください」「はいはい……あら? リンディ?」 む? 母さんが降りてきた。「せつな? なのはさんからお電話よ?」 え? なのはから? ……しかも、通信機じゃなく、携帯の方に? 既に通話状態なので、そのまま電話を受け取る。「ありがと、母さん。……あと、おはよ」「ええ、おはよう。……秋子~? 朝御飯~お願い~」「はいはい」 ……母さんの方が年上のはずだが……何故だろう、秋子さんの方が年上に見えますよ? ……まあいいか。「もしもし?」『あ、せつなちゃん? おはよう。……今、下宿先だよね? リンディさん来てるんだ?』「おう。遊びに来たんだと……それよりお前、こっちに連絡するってことは、海鳴に戻ってるのか?」 ミッドからは通信機ないと連絡付かないからな。 携帯電話を使うってことは、地球に下りてきてるってことだ。 ? あれ? こいつ仕事じゃなかったか?『え、えっとね? ……今、そっちの駅にいるんだ』「……はい?」 そっち? ……こっち?『せつなちゃんの下宿先がある街の駅。……迎えに来て欲しいな?』「マジか!? お、おう。今行く!」 なのはがこっち来てるだと? ……仕事休んで? なにかあったか? ええい、ご飯食べる時間がもったいない!「母さん! ちょっと出てくる! 俺のご飯食べていいから!」「は~い。いってらっしゃ~い。……秋子~? 甘くないジャムちょうだ~い?」「はいはい♪ せつなさん、行ってらっしゃい」「げぇ!? ……ほ、本当に食うのか、この人……」「うぐぅ?」 えっと、とりあえず突っ込むべきところは……祐一君? その化け物を見るような目で母さんを見ないでね? 気持ちはよく分かるけど。 まあ、発生してるカオスは放って置こう。 まずはなのはだ。 ……駅までダッシュ。学校と同じ距離走ったよ、俺。 駅前の時計の前に、栗毛の横馬発見。「なのは?」「あ! せつなちゃん! おはよう!」 ……うわ、本当になのはだ。 ……たった六日離れてただけなのにな。何か久々に思える。「お前、仕事は?」「えへへ……休んじゃった」 ……む、悪戯っぽく笑う仕草がキュート。 けど、珍しいな。なのはが仕事休んでまで俺に会いに来るなんて……「……何か、あったのか?」「ん? ……せつなちゃんに、会って確かめたいこと、一杯できちゃったから。……我慢できなくなっちゃった」 確かめたいこと? ……そう言えば、昨日、教導隊の飲み会に参加したとか言ってたな。 ……む、レーツェルさんあたりから、なんか聞いたか?「あー……とにかく、下宿先行くか? 母さんもいるけど」「……駄目だよ。リンディさんに話せないよ」 ? え? 母さんに話せないことなのか? ……ま、まさか……抱かれたいとか!? ……あるわけないか。「えっと、母さんに話せないことって、何かあるのか?」「……せつなちゃんが、聞かれたくないでしょ? ……タイムダイバーとか」 !? ……い、イングラムから何か聞いたのか!?「どこか、二人で話せる場所ないかな? ……聞きたいこと、一杯あるんだ」「……わかった。何処がいいかな……」 ……百花屋は、この時間なら……開いてるな。 なのはを伴って、百花屋へ。 入って、一番奥の席へ。 ……モーニングセットを二つ頼んで、来るまでに、ちょっと雑談。「……昨日の合同訓練、どうだった?」「うん、結構楽しかったよ。あ、リュウセイ君酷いんだよ? 朝、私の顔見て、表情引きつらせて怖がってた」「……ま、まあ、あんだけやればなぁ……」 先日の出稽古、ちょっとした特訓だったし。 なのは信者によくある病状です。 最初の訓練で苦手意識持ったり。 鬼教官だからな、こいつ。「それに、帰り際には、不審な目を向けるし」「不審? ……その反応は初めて聞くな」 なのはの何を知ったのだろうか……あ、もしかして。「誰かから、俺らの関係聞いたな……?」「あ。……確か、リュウセイ君、怪我してすずかちゃんに治療受けてたみたいだから、その時に聞いたのかも……」「すずか、言いふらすような子じゃないだろ?」「ううん? エクセレンさん来てたし、お昼に」「……なるほど。あの姐さんか」 うん、ばれたね。 ……頼むから噂広げないでくれよ~? ただでさえ、俺、ハーレム作るためにスカウトしてるなんて噂立ってんだから。 ウェイトレスがセットをテーブルに置いて、立ち去ったと同時に防音&意識逸らしの結界を張る。 ……さて。「で、なのは? ……誰からそれ聞いた?」「……プリスケン一尉から」 やっぱり……? あれ? そんな簡単にばらしていいのか、あいつ。 いくらなのはが俺の近くの人間だからって……「あのね、せつなちゃん。……昨日、教導隊出身の人たちの飲み会があったの」「あ、ああ。聞いてる。レーツェルさんやゼンガーさんに、キタムラ教官と飲みに行ったんだろ?」 そこに何故イングラムが出てくる?「……プリスケン一尉も、ゼンガーさん達の同期で、教導隊で同じ班だったんだよ」「な……そうなのか?」 げげ。それは未確認情報だった。 ……それで、一緒に行ったのか、あの人。「その時に、せつなちゃんの話になって、プリスケン一尉が、アカシックレコードって話を皆にしたんだ」「……あの野郎。余計なことをぺらぺらと……くそ、ゼンガーさん達には内緒にしとく予定だったのに……」 ち、やはりとっとと潰しとくべきだったか……「……それで、一尉がタイムダイバーだって話をして」「はぁ!? ちょ、待てなのは? それ、親分達にも話したのか、あいつ!?」「えっと、ゼンガーさん達、一尉の仲間だって言ってた。タイムダイバーを支援する為の仲間だって」 ……うわ、それ、俺の世界の設定と違う。 だって、タイムダイバーは常に一人で行動して、その正体は極力明かさないことにしてるはず。 ……これも、世界が違うから起こったパラドクスか?「それで? なのははタイムダイバーの事を聞きたいのか?」「ううん? その事は一尉に聞いたよ。ある悪魔を倒す為に行動してるって」 ユーゼスの事だな。「でも、ゼンガーさん達にも悪魔の名前は話せないって言ってた。資格がないからって」 ……俺には話したよな? もしかして、あいつの行動を阻害する可能性があると話せないとか? ……思いっきり、エルザム兄さんの目的だもんな、あの研究所。「……でね? 私、念話で聞いて見たの。……ゴッツォ研究所がそうなのかって」「!?」 ……そ、そんな直球な…… し、心臓止まるかと思った……「それで、一尉、教えてくれたよ……その悪魔の名前。ユーゼス・ゴッツォの事」「……聞きたいのは、それか?」 あの男……殺したほうがいいか? いや、まだ早いか? しかし、このままだと…… いやいや。まだ待て、俺。 あいつは二重スパイで、まだターニングポイントは来てない。 ……それに、まだ、なのはに危険が迫っているわけじゃない。「それもあるんだけど……せつなちゃん」 俺の目をじっと見つめ、息を吸って、なのはがその口を開く。「せつなちゃん、研究所の場所、知ってるね?」「……いや、知らないな」 目処はついてるが、確証できない。 ……そして、それがどこにあるのかも、俺はまだ知らない。「せつなちゃん。私も、そして、プリスケン一尉も、せつなちゃんが研究所の場所に目処をつけてるって思ってる。……どうなの?」「……目処だけはな? けど、明確な場所が分からないんだ」 うう、なのはつええ…… 何で今日はこんなずばずば聞いてくるんだよ……「そう、なんだ……」「う、そ、そんなに暴れたかったとか?」「そうじゃないよ。……私……私たち、せつなちゃんの邪魔したんじゃないかって」 え? 邪魔?「せつなちゃん、研究所を早く見つけて、潰したいって言ってたのに、私たちの勝手な約束で、その邪魔したんじゃないかって思って……もしそうなら、謝りたいなって……それで、私……」 ……あ~! もう! 情けないのは俺かよ! しかも、なのはに心配かけて……くそ! 何やってんだ、俺!「……謝るのは俺のほうだよ。ごめん。……心配かけた」「え?」「……いろんなこと秘密にして、なのはを心配させて……ごめんな、なのは」 話せないことが、たくさんある。 言えない事も、たくさんある。 ……それは、未来の事でもあり、今までにやってきたことでもある。 その一部が俺以外の口から聞かされたら、そりゃ、不安にもなるだろう。 ……これは、俺のミスだな。 なのはに、裏の情報が流れないなんて高をくくってた、俺の慢心が生み出したミスだ。 ……もう、過保護なこと、出来ないな……「……うん。せつなちゃんの気持ち、分かったから。……今日、ここに来ることね? フェイトちゃんだけしか知らないんだ」「そうなのか?」 なのはが、皆に秘密にしたのか?「きっと、この事は皆にまだ話したくないだろうなって思って。……秘密にするって、辛いね? 皆に言えないのは……凄く、辛い」「……あはは。そうだな。全部言ってやろうかって事もあるよ。……けど、言ったら、みんなにも迷惑掛かる」「うん。分かっちゃった。……せつなちゃん。辛かったんだね? ずっと、この辛さ、一人で抱えてたんだね?」 ……そう、だな。 うん、凄く、辛かった…… 先を知ってるのに、話せない事実が辛かった。 大声で告白したい事実を、押さえ込むのが辛かった。 ……けど、それすらも、楽しみに変えないと、俺自身がやってられない。「だから、せつなちゃん。……少しずつでいいから、私に話して欲しいな? みんなには内緒だけど、私に言える事があるなら、話して欲しい。……せつなちゃんの辛さを、少しでもいいから、分けて欲しい。……私だけじゃなく、みんなも、多分そう思ってると思うけど」「……そうだな。はやてやすずかがよく言ってるもんな……」 まったく。俺はライ君に大きな口叩けないな。 何時まで経っても、みんなを信頼しないで…… ……よし、今日は話しちまおう。 なのはだけに。聞かれたことは全部。 ……それで、なのはの肩を借りるとしよう。「よし! じゃあ、何でも聞け! 無制限で答えちゃる!」「えっと、開き直ってるね……」 もちろん、やばい話は無理だけどな!「じゃあ……せつなちゃん。……私の事、好き?」「……いきなり脈絡もなくそんなことを聞くお前が大好きだぞ?」 席を立ち上がり、彼女の隣へ。 ボックス席なのに二人寄り添う。かわいいよなのは、なのはかわいいよ。「……えへへ。なんか、恋人同士みたい」「む? なら、男になろうか?」「そ、そこまでしなくていいよ……じゃ、じゃあ、ちゃんとお話聞かせてね?」 よ、よし……軽くなのは分を補給したところで、今度こそ質疑応答へ。「じゃあ、まず、研究所の目処立ってるって言うけど、具体的には?」「……いったい所聞いてくるなぁ……」 一番話し辛い所を……まあ、いいか。「……古代ベルカのロストロギアにな、『聖王のゆりかご』って言う、戦艦クラスの巨大遺失物があるんだが……おそらく、そこを根城にしてると思う」 明らかにあれ、ネビーイームやヘルモーズに似てるからね! 無限のように出てくるガジェットとか! ヴィヴィオの扱いとか! 「……戦艦クラスの……それを発動するのが、ユーゼスの目的なの?」「いや、確かに戦力として使うかもしれないけど、目的はそれじゃない。……因果律って知ってるか?」「え? ……聞いたことないよ」 まあ、そうだろな。 ……因果律というのは、簡単に言って運命の別名だ。「例えば、お前が魔法使いになったのは、ユーノと出会ったからだよな?」「え? うん。そうだよ?」「これを解析すると、なのは+ユーノ(レイジングハート)=魔法少女なのは。という式が成り立つ。この式が因果律の基本だ」「……えと、つまり、私がユーノ君に出会って、レイジングハートを受け取ったから、魔法使いになった。……誰が、如何して、そうなったから、こうなった。……みたいな感じかな?」 そんなところでいいと思う。 上手く説明できないが、要は今の状況が起こった原因だな。 その原因を解析し、式としたのが因果律と考えてもらえばいい。「で、ユーゼスの目的は、その因果律を操作することにある。……つまり、今を自由に操ることが目的だ」「……今を自由に操るって……?」「そうだな。さっきの話を例題にして、なのはが魔法使いになれない方法を作り出すには?」「……ユーノ君を消してしまえばいい?」「その通り。そうすれば、なのはは何時までたっても魔法使いになれず、ただの小学生でいられたわけだ」 これが因果律の操作。 ユーゼスの最終目標。 自分の都合の悪いものを消して、何時までも自分の天下を保持できる、最悪の手段。 ……俺も同じようなことしてるってのは、内緒。「それって、せつなちゃんが今までやってたことと……同じ?」「……いや、まあ、ぶっちゃけるとそうなんだけど、ね? ……けど、今の段階から過去を変えるのはできないだろ? ……因果律を操作できる様になれば、それが可能になるんだ」 今の段階から、過去のユーノを消せば、今、俺の目の前にいるなのはが消えるという現象を引き起こすことができる。 ……そんな恐ろしい真似、許すわけにはいかない。「確かに、悪魔だね……じゃあ、そのゆりかご見つけないと」「まあ、そうなんだが、それの居場所を探すより、まず、それをできないようにしたい。……因果律の操作を可能にするシステム『クロスゲートパラダイムシステム』には、二つの要素が必要なんだ」「二つの要素?」「一つはサイコドライバーと呼ばれる、強力な念動力者。もう一つは、ラプラスデモンタイプコンピューターと呼ばれる未来を予知する演算装置」 サイコドライバーの力でパラダイムシステムを操り、ラプラスコンピューターで未来を見る。 ……この二つがないと、パラダイムシステムは上手く使えない。「じゃあ、それを確保することが、私たちの仕事だね?」「だな。……ゆりかごはその後でもいい。……ユーゼス自身、結構チート性能らしいし」「チートって……せつなちゃん以上の?」「ああ。……魔法無効化体質の上、サトリ持ちだとよ」 魔法はノーダメージ。物理攻撃は避けれます。 なんだその反則性能。 「それを打ち倒せる戦力が欲しい。……頼むぞ、なのは?」「うん! 任せといて!」 最終戦には、SRX部隊にも力借りると思うし。 ……多分、俺だけじゃ勝てないだろうな……「他に何か聞きたいことあるか?」「……えっとね。一尉関係の事は、今はこれだけでいいんだけど」「ん?」 別の話かな?「……せつなちゃん、サイバスターって知ってる?」「何でお前がそれ知ってるの!?」 びっくりしたぁ! 何故それを知ってる!「え、えっとね? ……それを使う人にあったの。マサキ・アンドーって男の人」 わ、わーぉ。マジですか? ……聞くと。 また誘拐に遭いそうになったなのは。今度はちゃんと対応できて、その違法魔導師と対峙。 しかも、誘拐事件の被害者が、魔法の力と引き換えに誘拐犯になってしまったらしい。 一応特徴を聞いて……うわ。悪徳ゲーマー……あいつかよ……「私、激レア魔導師なんだって。……レアかな?」「いや、まあ、その年齢でSランク魔導師はレアだよな」 うん、納得。 まあ、そいつが仕向けたバルシェム量産型を捕縛したがいいが、そいつの魔法に意外と苦戦したそうだ。 弾速が見えないほどの射撃魔法か……レールガンかな? で、ピンチになった時に、それが援護攻撃してくれたと。「お兄ちゃんかと思っちゃった。声、よく似てるから」「……ああ、そうですね。グリーンリバーですもんね、二人とも」「にゃ?」 そのマサキ君と連携を取り、砲撃で打ち抜こうとしたが、転移魔法で逃げられたと。 しかも、防御中に転移魔法多重起動。捕縛してたバルシェムにも逃げられたらしい。「……ふーん」「あれ!? 反応薄い? ……まさかせつなちゃん、同じことできるの?」「ああ、パラディンで防御しながら、クラウンに転移魔法使わせれば出来る。……つまり、転移魔法専門のデバイス持ってたんだろ、そいつ」 それで、マサキ君に事情聴取をしようとした所、誰かが彼らを召喚してしまい、どこに行ったか解らなくなってしまったと。「えっと、クロちゃんは『イブン様の転送法陣』って言ってたけど……」「なるほど。イブン様ねぇ……うん、いたわ、そんな人」 マサキたち魔装機操者を呼び出す人だ。 後、修行場の管理人。「レイジングハート? 彼の言ってた辺境世界、なんて言ってたっけ? えっと……ラティアス?」『マスター。ラ・ギアスです。第八七管理世界の』 ほうほう、辺境世界扱いなのな。 ……後、なのは? それはポケ○ンだぞ? まあ、似てるけど。「それで、マサキ君なんだけど、非魔導師なんだ。……そのロストロギア、ATデバイスみたいな物かな?」「……話を聞くと、ユニゾンデバイスも混ざってるみたいだな……ファミリアとのユニゾンと精霊機のデバイスか……」 そりゃ、ロストロギアだよ完全に。 ……後で、無限書庫に問い合わせておこう。「じゃあ、そのマサキ君も、サイバスターも、刹那さんの世界のゲームに?」「お前を襲った犯人もって付け加えてやる……あったこいつだ」 パラディンに入れてた行方不明者リストで、比較的古い時期に被害にあった少年。 名前はテンザン・ナカジマ。……苗字が俺の懇意の人と同じなのがムカつく。「あ! そうだよこの人! ……よし、次は捕まえるよ」「……な、なんか燃えてないか? 何があったんだ?」 いつぞやみたいに胸でも揉まれたか?「この人、私と同じ戦い方してたんだよ!? 動きは鈍かったけど、防御は硬いし、遠距離射撃だし!」 ……あーバレリオンね? でも、確かあれって。「近距離攻撃できんかったろ、あれ」「あ、うん。マサキ君に攻撃しなかったよ?」「やっぱり」 全部の武装遠距離から中距離で、隣に行ったら攻撃できない機体だからな…… そんなところを忠実に再現するな。 「なのは、次があったら、バインドで縛ってゼロ距離砲撃かましたれ。……それが一番速い」「あ、そうだね」 ディバインバスターなら抜けるかな? エクセリオンACSでも可。 まあ、サイバスターについては、今は保留だな。 休暇開けにその辺境世界に出張いったれ。「……うん。私の聞きたかったことはこれだけだよ。……ごめんね? 無理言って」「いや、構わないよ。……けど、とうとう動き出したか」 研究所の所有の手駒が動き出した。 ……彼の性格上、独断先行ってことも考えられるが、向こうの手札が多少把握できた。 非魔導師を魔導師に変える研究。 ……ATデバイスとはまた毛色の違う方向だろう。 頭痛いな~…… しかも、実用化されてるとなると、本編に追いついたころには、結構な数揃えてくるはず。 ……Sts通りには絶対に行かないな。 結界を消して、コーヒーを追加注文。なのはは紅茶。 「そういえば、せつなちゃん結構スパイみたいな真似してるんだね?」「は? スパイって?」「えっとね……エルのロックとか」 ……おうしっと。「誰から聞いた?」「キタムラ教官から」「あの親父ーーーー!!」 なのはに悪いこと教えんなーー! 「暗号とかかっこいいね。他にも貸切の暗号とか」「あー……それ、通用するところって決められてるからな? 変な所で使ったら、大恥かくから気をつけろよ?」「あ、そうなんだ?」 しかも、その暗号使ったらチップを払うのが暗黙の了解。 払うの忘れたり、無視すると、顔や名前が裏に出回ります。 結構厳しい。「まあ、使えるところって、大体、犯罪まがいや犯罪すれすれの取引場になってるから、あんまり多用しないでくれ。……お前とフェイト連れて行ったところは覚えてるか?」「あ、うん」「あそこは管理局に友好的なマスターだから出来るだけあそこ使え。……キタムラ教官に連れて行ってもらった場所はお前一人で使うな。……その、厳しいこと言うようだけど」「わかったよ。……まあ、せつなちゃんじゃないから、裏取引なんて私できないし」「それもそうか……」 大体、秘密の話するなら、俺の家使う方が早いしな~? マオねえやエクセ姉さんが酒盛りに使いやがるから、酒の種類が多い多い。 もっとも? 未成年者には飲ませませんが? 「……昨日の事でよく解ったよ。せつなちゃんがどんな世界にいるのかってこと。……私たちと同じってわけじゃないんだね?」「……まあ、な? ……本当に全部話したら、余罪だけで俺、フェイトに捕まっちまうよ」 クローン作成依頼も出しちまったし。 これまでにも、犯罪幇助くらいは軽くやってる。 違法捜査も何度もやってる。 ……達磨やイングラムを馬鹿にできないな、俺。「……それでも、せつなちゃんは止まったりしないよね? ……私たちを守る為に」「ああ。それは絶対だ」「……なら。もう止めたりしない。……けど、せつなちゃんの背中だけは、私に、私たちに守らせてね? いつも言ってることだけど」「……ああ。お願いするよ」 本当に、いつも言われてるよな。俺。 ウェイトレスがメニューを置き、立ち去る。 ……二人並んでゆったりする。 ふと、視線を感じて、横を向くと、なのはがじっと俺を見ている。「……どした?」「……えっとね? ……せつなちゃん分の補充」 と、頭を肩に乗せる。 ……うわ、マジで恋人同士みたい。 「一週間近く離れてただけなのに、凄く久しぶりに感じたよ」「俺もだ。……お前を隊に呼んでからは、一日一回は会ってたからな」 みんなと一緒に仕事したいがために……違うな。 みんなと離れたくなかったから、この部隊を作った。 俺の知らない場所で、みんなが傷ついてしまわないように。「……我侭だよなぁ、俺。自分の秘密も全部話せないのに、みんなに離れて欲しくない。……話さなくちゃ、理解もしてくれるはずもないのに」「……大丈夫だよ。私も、みんなも、せつなちゃんを分かってる。……せつなちゃん、こんなに暖かくて、優しいんだから」 俺の首に腕を回す。 ……顔を見て、目を閉じるなんて……誰に教わったんだか。 背中に手を当てて、そのまま……「……」「……?」 ? あれ? 視線を感じる?「……はえ~……」「!? さ、佐祐理しゃん!?」「わ!? だ、誰!?」 け、気配がしなかっただとう!? 俺らの向かいの席に座って、こちらを見ている佐祐理さん。 思わずなのはと離れちまったい。「あ、佐祐理に構わずどうぞどうぞ」「構う! てか、いつの間に!?」「えっと、『一週間近く~』って所からですね。……お二人とも、ラブラブでドキドキです~」 う、うぬれこの人は! 本当に性格変わったな!「え、と、せつなちゃん? 彼女は?」 そして、なのはは何故ジト目で俺を見る? 「ああ、俺の通ってる学校の先輩で、倉田佐祐理さん。……佐祐理さん、こっち、俺の幼馴染の高町なのは」「はじめましてなのはさん。活躍は聞いてます」「あ、はじめまして……活躍?」 ああ。「佐祐理さん、魔導師だから……あれ? なのはの活躍って?」 管理局辞めてるのに、何で知ってるんだ?「……ええとですね。送られてくるんですよ、管理局の会報が。……それで、教導隊のエースと銘打って乗ってましたから」「なるほど……」 会報ね……ああ、あったなぁ、そんなの。 結構嘘記事載せてたり、プロパガンダに近い内容だったりするから、斜め読みしかしてないけど。「お二人はデートですか?」「え!? ……そ、そうなるのかな?」「ま、まあな? ……佐祐理さんは?」「……舞と遊ぶ約束してたんですけど、朝に断わりの連絡入っちゃいまして……お散歩してたら、せつなさんを見かけたので、お話しようと」 ……そ、それってやっぱり…… 気にしてるのか、舞の奴。 よし。丁度いい。「えと、佐祐理さん……ごめん!」「はえ?」 テーブルに手をつけて頭下げる。「舞に話しちまった! すまん!」「!? ……せ、せつなさん……そんな……」 ほんわかした声が一変。 詰まりそうな声に変わる。 「……その、どうしてですか?」「それは……」 問い詰める佐祐理さんの声。 か、顔上げ辛い……? 何だ、このコンコンって音? 道路沿いの窓を見る……あ。「……あの人のせいです」 指を指す。窓の外で手を振ってるお天気お姉さん。「リンディさん!?」「ハラオウン提督!?」 おのれ……嬉しそうに笑いやがって! 唖然とする佐祐理さんとなのは。 入店した母さんが、俺らのテーブルに来て。「佐祐理さんお久しぶり。……なのはちゃん、こっち来てたのね? せつな、それならそうと言ってもいいじゃない」「舞に魔法ばれた原因です、この人」「……あ、あはは~……」 遠慮なく指を指してやる。 力なく笑う佐祐理さんが凄く可哀想だった。 佐祐理さんの隣に座った母さんを交えて、昨日の謝罪。「……そうですか。舞、毎晩そんなことしてたんですね……」「え、えっと……と、咄嗟だったから、その……ご、ごめんなさい……」 流石に捕縛魔法はまずいよなぁ…… お陰で一体倒せたけど。「……それで、佐祐理さん。……舞、魔力持ちだったこと、知ってましたか?」「ええ!? 知らないです! 舞とずっと一緒ですけど、魔力持ってるなんて、信じられません!」 ……じゃあ、やはりあの魔物が関係してるのか。「多分、舞は自分の魔力を切り離して、それを魔物と称して戦ってる。……ずっとって言ってたから、一年や二年どころじゃないと思う」 そうじゃないと、あの身体能力は不自然だ。 魔力なしの俺と互角なんて信じられねー。 これでも、美由希さんからは勝ち拾えるんだぞ、俺!「……えっと、よく分からないんだけど、その舞さんは……元々魔導師だったの?」「いや、多分違う。……魔法の事は知らなかったから、魔力持ちだっただけだと思う」「舞……」 おそらく、過去に何かあったんだろう。 舞が魔力を捨てざるを得なかった事が。 捨てた魔力が、舞を狙っているのは、帰ろうとする本能か、もしくは……舞自身を傷つけたいのか。 「とにかく、俺は舞を手伝う。……あの魔物、舞を狙っているのは確かだから、助けないと」「……はい。お願いします。……それと、佐祐理も、舞と話してみます。……親友に隠し事は、辛いですから」 は、はい、そうですね。 すっごく辛いですね、はい。 ……なのはー? こっち見て微笑むなー?「……それで、佐祐理さん?」「あ、はい、何でしょう?」 母さん? ……あ、ハリセン準備しとこ。 嫌な予感する。「管理局に復帰する予定あ「勧誘禁止!」りゅぅ!?」 おし、いい音。 おお、佐祐理さんが呆然としてはる。「せちゅな! 舌きゃんだ!」 何語だそれ。 涙目で凄く可愛いぞかあ様。「だまらっしゃい。……佐祐理さん? あなたから復帰すると言い出さない限り、勧誘はしないし、させない。……安心して欲しい」「……あははー。せつなさん、ありがとうございます」 にっこり笑う佐祐理さん。 悲しい顔は彼女には似合わない、絶対に。 ……舞だって、佐祐理さんの笑顔は守りたいはずだ。 「にゃのはしゃ~ん……せちゅなが苛める~……」「えっと……その、泣きつかないでください……」 ふん。自業自得だ。「でも、スカウト狂のせつなちゃんが珍しいね? 佐祐理さん、結構魔力あると思うけど?」 む……まあ、確かにな。 戦力強化に入れたい、是非。 ……けど。「魔法を捨てて、平穏を望む人を強引に入れるような真似はしたくない。……その分、俺達が前に出ればいいだけだ」「……せつなさん」「……そうだね。私たちが、佐祐理さんの代わりに頑張ればいいんだよね?」 そのための剣だから。 俺達の魔法は。「うう~……で、でも、気が変わったらいつでも言ってね? 門は開けて待って「母さん? もう一撃逝く?」……せつなの意地悪~……」 この娘は母親に容赦しません。 我に断てぬ物なし。 佐祐理さんは舞のところに行くため、百花屋を退場。 また明日笑顔で会う事を約束して、舞の家に向かって行った。 で。「なのはさんは今日仕事どうしたの?」「う……せ、せつなちゃんに会うため休みました!」「ちょ、おま、そんな直球な……嬉しいぞ?」 そういえば、フェイト以外知らないんだよな、なのはがここに来てる事。 口止めしとくか?「……ふ~ん? 二人ともラブラブね~? ……他の子に教えてしまおうかしら?」「……そうか、母さんはそんなに近親相姦プレイがお望みか」 性別転換……「う、わ、分かったわよ。内緒ね? ……最近せつな質悪いわよ?」「ほとんど母さんの自業自得でしょうが。……後、なのは? ジト目はやめれ?」「だって、リンディさんにまでエッチなことしちゃ駄目だよ……」 いやあ、これが一番効果的なんで。 「リンディさんも、せつなちゃん誘惑しちゃ駄目ですよ?」「し、してないわよ! せつなが私を変な目で見るから!」「いやぁ~。母さん可愛いから、いろいろと」 涙目なところとか、顔赤らめたり、脅えて不安げな表情とか。 苛めたり、からかったりすると凄く可愛いです。「……せつなちゃんの鬼畜。変態。……泣くよ?」「あ、はい。ごめんなさい」「……ひょっとして、母親より、嫁に弱いの? せつなは」 いや、泣かれたら弱い。 ……母さんにだって、泣き出したら謝ってるじゃん。 よっぽどの事やらないと泣かないけど。「まあ、二人とも仲良くやんなさい。母さん、今日はもう帰るわね?」「帰るって、海鳴に?」「ええ。休暇、今日までだから。……エリオ、エイミィに任せてるから、戻ってエリオとデートしてくるわ」 ……えっと、俺とどう違うんだ、それ?「あら? せつなより可愛いわよエリオ。……ちゃんと私を母親として尊敬してくれるし」「……あのな、前世分入れて俺もう三十七年生きてんですけど? ……今更、エリオのような純粋さ出せるか」 正確には、二十九年だけどね。 生誕から八年間はほとんど記憶ないし。「……せつな、結構オジサンなのね、そういうと」「うん。……なんだその目は、二人とも」 一応自覚はしとるわい。 けど、俺に渋い仕草や立ち振る舞いは似合わん。 練習してその似合わなさに愕然としたわ。「あ、ううん、そうじゃなくて。……オジサンって言うなーーー! とか言い出すかと」「うんうん。……せつなちゃん、オジサンでいいの?」「俺以上のオッサンいるだろ……うちの嫁の中に」「「ああ」」 あれ以上と言われるまでは大丈夫。 ……誰とは言わんが?「せつなちゃん、私たち以外には手を出さないもんね? 制裁ならともかく」「まーな? ……お前達で精一杯だ、これ以上増やせるか。……妹ならともかく」「それもどうなのよ……」 さぁ? 妹は可愛がる者ですよ。うんうん。※今日はここまで。後編はまた次回に。作者でした。