朝、早めに起きてトレーニング。 戻って昼用の弁当を作る。重箱で。 名雪を起こして先に降りてきた祐一。 いつものように寝ぼけて起きてきた名雪。「……今日は休みだったか?」「うにゅう……」「パジャマって……着替えて来い」 学校休む気か、あいつは。 で、その間に。「ええーーーーーーー!! ここどこーーーーーー!?」 真琴の声。 そりゃあ、びっくりもします、はい。 眠った場所と、起きた場所が違えば。経験者は語る。 てか、今日は爆音しなかったな? 目覚ましの。「ああ、鳴る前に止めた」「グッジョブ祐一。被害は少ない方がいい」 部屋から飛び出して階段を駆け降りる音。 食卓に姿を現す狐娘。「……あ」「「おはよう」」「……おはよう……どうして?」 不思議な顔をする真琴。 祐一に返事を任せることにする。「あー……まあ、お前の帰る場所はここだろ?」「……うん!」 正確には美汐の所ですけどねー? 今は祐一に懐いているようなので、ここはスルーする。 で、ぺたぺたと降りてくる……「着替えたよー?」 私服姿の名雪。 ……秋子さん?「甘くない邪夢を」「いらないよ!? ……あれ? 祐一、せつな、おはよう」 やっと起きたか。「学校、それで行く気か?」「わ。……き、着替えてくるよ」 慌てて上に上がる名雪。甘くない邪夢効果恐るべし。 ……そして、にっこりとそれを準備している秋子さんがさらに恐るべし。「……いただきます」「どうぞ♪」 あの笑顔には逆らえないんだよもん。 真っ白になりながらダッシュとか。 走らないと遅刻だよ。「まったく、お前は~」「ごめんー」「ご、ゴールはまだ~?」 うう、まだ舌が変。 毒物耐性ができても、きついことには変わりないんだよもん。「つーか、何で食うんだお前は」「あ、秋子さんのあの微笑には勝てん……友人の母親と同じオーラが出てるんだから……」 桃子さんと同等なんです。勝てるはずがない。 なお、リンディ母さんには逆らえます。 予鈴ギリギリで到着。 着席したと同時に突っ伏する。「……相変わらず心臓に悪い登校の仕方ね?」「「こいつのせいだ」」「二人とも酷いよ~」 ええい。元凶がなにを言う。 可愛い顔しても、もう誤魔化せんぞ?「二人とも息ぴったりだな。……まさか、できてるとか?」「北川君? ……絞められたい?」「いや、なんでもないです、はい」 男と付き合う気はないというのだ。本気で! 昼までに決算報告見積書を確認。 ……前年度より、シエル対策費が上がってる…… おかしいな。ペースは落ちたはずなのに……来年に期待。 後、技術部の開発費用も上がってる。 AMF対抗策に費やしたからな…… ……対抗策にアリサたちが提示したのは、アンチマギリングフィールドを中和するフィールドを発生させる装置を作ること。 デバイスの追加装備として組み込み、半径一km前後に中和フィールドを張る。 原理として、AMFって言うのは、魔力結合を分離させる波なんだそうだ。 その波を受けると、組み上げられた魔法が分解され、ただの魔力素になって、効果を失う。 中和フィールドはその波を打ち消す違うリズムの波。 波長の違う波同士をぶつけ、AMFを打ち消して魔法を通すことができる。 ……これまでは、その波にぶつかっても、突き抜けられるように貫通属性を付属させて使ってたが、これで、自由に魔法を使えるようになったわけだ。 ……飛行魔法にすら貫通属性つけないと駄目だったから、よっぽどの人じゃないと、制御できずに激突しちゃってたんだよな。 それを制御できたエクセ姐さんは凄すぎ。 とにかく、その中和フィールド発生装置を、前線部隊隊長陣四人と、はやて、なのはのデバイスに組み込んだ。 来年度はもう少し作ってもらって、交代部隊にも回すつもりだ。 ……それまでは、ゼンガーさんに頑張ってもらうしかないな。 昼はみんなと別れ、舞たちと食事。 と、言っても、今日は土曜日。 お昼を食べたら、下校だ。「……みまみま」「舞ー? 美味しい?」「……とても嫌いじゃない」 この会話にもなれたよ、うん。 二人を見てるのも和むしね。「それじゃ、俺はこれで」 食事が終わって、二人と別れる。 舞との訓練は、今日はおやすみだそうだ。 用事があるらしい。 校門玄関へ向かう途中、階段の踊り場で知り合いの姿を……「あれ?」 祐一と……美汐? いつの間に知り合ったんだか……二人の視線の先に。「……真琴か?」 校門前で待ってる真琴。 下校中の生徒が、横目で見てるのがわかる。 ……そういや、昼で終わるって伝えといたよな…… 祐一を迎えに着たのか? ……祐一がその場を離れ、美汐だけが残される。「……よ」「せつなさん……」 浮かない表情…… この間別れた時と、同じ顔だ。「祐一に、話したのか?」「いえ……ただ、真琴に、優しくしてあげてくださいと」 昨日、甘やかすなって言われたんだが、俺。 ……甘やかすのと優しくするのは違うか?「せつなさんも、真琴を……お願いしますね?」「言われるまでもないよ」 最後まで、見ているつもりだ。 あの子が幸せに、旅立つまで…… 視線の先で、真琴が嬉しそうに祐一に飛びついた。 今日は寄り道せずに家に帰る。 リビングに立ち寄ると。「あら? 今日は早かったのね?」 ……おかしいなぁ? 何故、この人がいるのか。「……はぁ。今日は疲れてるな。幻覚が見える」「む。おかーさんに対して、その物言いは失礼でしょ?」 はっはっは。幻覚の癖に、なにをおっしゃる。 俺に戯言は聞こえません。「じゃあ、秋子さん。夕食まで部屋にいますかr「秋子~~~、娘が苛める~~~」「せつなさん? 駄目ですよ、せっかく来てくれたのに」……何の用ですか、母さん」 ち、認めちまった。 暢気にお茶してたのは、我が母リンディ母さん。 いい大人が秋子さんに泣きつくな。「休暇取れたから遊びに。秋子に会うのも久しぶりだから」「そうですか。じゃあ、お帰りはあちらです」 玄関を指差す。 あ、また秋子さんに泣きついてる。「……せつなさん?」「……く、秋子さんを味方につけるのは、卑怯なんだよもん」「私と秋子は友達だから、当然よ? ……でも、何で秋子には逆らえないのよ?」「桃子さんと同じオーラ持ってるから……こういうタイプの母親には逆らえません」 最強属性持ちだからね、二人とも。 リンディさん? まあ、一応持ってるけど……娘なら対抗できるんだよ? それに、弱点もわかったし。「むぅ、おかーさんにも、優しくして欲しいんだけど?」 下手に甘えると、こっちも考えがありますよ? 性別転換【刹那】。 その弱点を突いてあげよう。「じゃあ、優しくしてあげようか? リンディ?」「なぁ!? そ、それは止めてと言ってるでしょ!?」 ぜってぇ止めない。 そのまま頭を両手でホールド。 耳元まで顔を近づけて、優しく囁く。「この格好で学校行って、知ってる知識ひけらかされて、退屈すぎる授業受けてるこっちの身にもなってください。まるで拷問なんだぞ? ……帰ったら覚えてろ? 揉み倒してそのまま食ってやる」「!? あ、あなたわ~~~~!? は、母親よ! 私は!」「知らんな。……俺はリンディの事が大好きなのに、あなたは俺の事が嫌いなようだし? ……これまで受けた屈辱、倍にして返してやる」 本気で鬼畜です。 リンディさん相手に容赦しません。 ……あんまりやると泣き出すけど。「……せつなさん。それぐらいにしてください。……私にも責任はあるんですから」 ……そう言えば、秋子さんからの依頼だったっけ。 ち、なら仕方ない。性別転換【せつな】。「……なら、ここまでにします」 頭を離すと、瞬時に秋子さんの後ろに隠れる母さん。 ……本当に可愛い人だなぁ。 警戒モードに入ってるし。「うう~。せつなのいじめっ子~~……」「なんとでもどうぞ。……で? 本当に遊びに来ただけなのか?」 カバンを置いてソファーに座る。 おいてあったお茶を啜り……あ、リンディ茶か、これ。甘い。「そうよ? せつながちゃんとやってるかどうか不安で。……なんか、なのはさんたちが言うに、休んでるのにやつれていってるみたいって言ってたから」「そうなんですか? せつなさん、いつも楽しそうですよ?」 うん、そこそこ楽しい。 授業以外は。 それはともかく。「一ヶ月の休みはいいんだけど、何で学校? 今更未練ないんだけど?」「それは……えっとね?」 何か言いづらそうにしている。 ……どういう理由だ?「それは私から話します。……リンディ? 話してなかったのね?」「だって、言ったら断わりそうだし……」 どうも、指示したのは秋子さんらしい。 後、いい加減秋子さん盾にするのはやめい。「実は、この街にロストロギアによく似た反応があるんです」「ロストロギア……」 始めに反応があったのは、七年前の冬。 丁度、祐一が最後に訪れた時だそうだ。 その時は勘違いかと思ったそうなんだが、つい最近、同じ反応が観測された。 それも、二回。 けど、秋子さんは管理局から離れて久しく、頼れるものはリンディ母さんだけ。 それで、俺が派遣されることになったそうなんだが、何しろ、七年も潜伏していたものだけに、どのようなことが起こるかわからない。 さらに、反応はあるが、どこにあるかまではっきりしない。 だから、俺に学校生活を送ってもらい、いろんな場所を探索してもらうつもりだったと。 ……ただの休みなら、俺、あんまり外でないしね? てか。「それならそれでちゃんと言えば、外出て探すのに……」「それじゃ休みの意味なくなるでしょ? ……あなた、仕事となると無理するんだから」 いやぁ……そうか? 母さんにまで指摘されるレベル?「……と、言いますか、ロストロギア事件なら、普通に仕事でしょうが。……のんびりしてていいんですか?」「ええ。次元震がおこったり、災害が起こるとかいった危険なものではないと思います。……ただ、なにが起こるかわからないだけですから」 ……いやいや。それが一番怖いんですって。 「秋子がこう言ってるんだから、大丈夫よ。秋子の勘は当たるのよ?」 ……まあ、否定できる要素が見当たらないのは確かだけど。 「……とにかく、これも仕事というなら、我慢しますよ」「だから、仕事じゃなく、休みのついで。……あなたが最近無理してたのも、知ってるんですからね?」 うげぇ。あれは仕方ないんじゃー! その後、祐一達が帰ってくるまで、懇々と休むことの大切さを説教された。 ……うう、俺だって休みたいんだけどなぁ…… 帰ってきた祐一達に母を紹介。 ……何故か納得されたのは何故だろう。 血は繋がってないはずなんだがなぁ…… で、みんなで夕食。 ところで真琴?「その鈴はなんなんだ?」「祐一に買ってもらったの! いいでしょ~?」 ……明らかに安物の鈴のついた髪留め。 けど、それを鳴らして嬉しそうにする真琴……「よかったな、真琴」「うん!」 けど、髪留めは髪にするものであって、腕につけるものではないと思うのだが…… まあ、いいか。 真琴嬉しそうだし。「ふふ。祐一君優しいのね?」「え!? あ、いえその……妹みたいなものですし」「真琴いいなー?」 名雪はそんなもの欲しそうな顔するな。 そして、祐一は顔真っ赤にするな。人の母親に。「(だってこんな美人に微笑まれたら、我慢できるか!)」「(その意見には同感だが、少しは落ち着け)……で? 母さん今日は泊まっていくの?」「え? ええ、そのつもり。せつなの部屋でいいわよね?」「……だ、そうだ、真琴。……今日は母さんと寝てくれ」「あう? ……せつなは?」 あのベッドに三人は多い。 「床に布団でも敷く。……布団あります?」「ええ、ありますよ?」「て、せつな? 真琴ちゃんと一緒に寝てるの? ……むぅ、たまには一緒に寝ようかと思ったのに」「勘弁してください」 我慢できません。「あ、なら、真琴が祐一の部屋で寝ようか?」「「「却下」」」「あう~……」 却下したのは俺、祐一、リンディ母さん。 名雪は困り顔で静かに反対意見。 ……秋子さん? 何故ニコニコ顔で?「了承しちゃ駄目ですよ?」「……残念です」 なにが? とにかく、俺が床で寝ることで決着はついた。 お風呂に入って一息ついてから、外に出る準備。「……今から出かけるの?」「ああ。……ちょっとね」 真琴を母さんに預け、家を出る。 ……また、着いてきそうだけど…… 今日はコンビニによってフランクフルトを四本購入。 缶コーヒーは三本。 保温処理施して、学校へ。 ……校門についてから、一応確認。「……母さん? いる?」「……やっぱりばれた?」 いや、勘ですが。 幻術で姿を隠してた母が、姿を現す。 真琴は祐一に預けてきたらしい。……そのまま寝るな、あいつ。「戦闘になることがあるから、気をつけて」「戦闘って……」 母さんの言葉を遮って、サーチャーを校内に飛ばす。 ……!? 始まってる!「ちぃ!」「ちょ、せつな!?」 母さんを置いて走り出す。もちろん追いかけてくるが…… リンディさん、魔法なしだと実は運動音痴。けど、今は舞のほうが先! 戦闘現場の裏庭に行くと、「!? せつな! 上!」 舞の声に反応して、前に転がり込む。 後ろに振動。……降って来たのか。 デバイスから木剣を取り出し、『それ』に切りかかる。「はぁ!」 手ごたえはない。避けられた? 空気が動く……飛び掛ってきた!?「『チェーンバインド』!」 声と共に、『それ』に絡みつく魔力の鎖。 て! 魔法使うなよ母さん! ええい、ままよ!「でぇえぇぇっぇぇい!!」「せぃ!」 俺と舞とで同時に切り裂く。 ……打撃と斬撃が通ったようだ。気配がその場で霧散していく…… ? ……何かの姿が見えた?「せつな! 無事!?」 駆け込んでくる母さん……それにむかって。「アホかい!」 スパーンとハリセンですっぱたく。 蹲るリンディ母さん、呆然とする舞。「いたぁい……何するの!」「……」 無言で舞を指差す。……事態を把握し、青くなる母さん。 ……舞の反応を恐る恐るうかがう……「……一体、倒した……ありがとう、せつな」「あ、ああ。……あーそれでな?」「……?」 ……まさかと思うが、この娘……気にしてない? つか、気付いてない?「……いや、いい。それより、夜食買って来たんだが、食うか?」「……」 こくんと首を縦に振る。 ……聞いてこないところをみると、マジで気づいてない様子。 ……大物なのか、天然なのか気になるところだが、もう、気にしないことにした。 缶コーヒーとフランクフルトを一本ずつ渡し、校舎を背にして座る。 頭を押さえながら、母さんにも渡し、一息入れることに。「……今の鎖は、何?」「て、反応おそ! 気付いてたのかよ!」 首を傾げる仕草が可愛い。 ウヌレ、天然だったのか、こいつ。 「……あー、今のは……母さんパス」「ええ!? あ、え、っと、ね? ……魔法って知ってる?」 おいおい、話すのかよ。 俺らの魔法の基礎的なことを教えて、俺と母さんがその魔法使いだということを話してしまった。 ……佐祐理さんに怒られる……うう、全部母さんのせいにしたれ。「……じゃあ、せつなのインチキは、魔法。……そう?」「ああ。……その、黙ってて、すまん」「……いい。……佐祐理には、内緒?」「そ、そうしてくれると……ありがたいよ?」 また悲しい顔されたら溜まらん。 「……そう。……佐祐理に、内緒……」 ……うう、何でそんな悲しそうな顔するかね? あれか? 親友に隠し事するのは心苦しい人なのか、お前も。 ……うちではなのはやフェイトがその部類に入ります。 「……ねえ、せつな? その佐祐理さんって、倉田佐祐理さん?」「げ!?」「……? 佐祐理を知ってるの?」「だって、その子も魔導師よ?」 ぴんと人差し指を立ててぶっちゃけやがるその母の額に、容赦なくハリセンを叩き込む。 「……佐祐理が?」「舞~? この人の言うこと信じちゃだめだぞ~? ちょっとした酔っ払いだからな~?」「よ、酔っ払い扱いは酷いわよ! 後、母親をそんなにパシパシ叩かない!」「てか、魔導師の秘匿性はどこいったぁ!!」 さっきから聞いてればぺらぺら喋りやがって! 魔法は秘匿するものじゃないのか、管理外では!「……知らなかった……」「舞~。この人のは冗談だからな? 嘘だぞ、嘘」「せつな……佐祐理は、魔法使い?」「じゃ、ない。……ことにしといてくれ」 すっごい切実に聞いてくるから、誤魔化しようが…… うう、そんなチワワみたいな目で見つめないでくれ。 「……せつな、本当の事を話して。……佐祐理、どうして内緒にしてたの?」「……理由は解らん。けど、黙っててくれと言われた。……悲しそうな顔で」「……そう。……佐祐理が悲しくなるなら、聞かない」 ……よ、よかった……助かった…… もう、思いっきりアウトだけど。「……今日はもう帰る……」 すっと立ち上がり、振り向きもしないで、校門に向かう舞。 ……むぅ~。明日あたりに佐祐理さんに土下座しに行かなくては…… こうなったら、嫌われても仕方ないよなぁ……「せつな? ……その、私、やっちゃった?」「……帰りましょうか?」「う……で、でも! 仕方ないじゃない! 舞さんにも、リンカーコアあったんだし、知ってるものと「なんだって!?」……せつな、気付いてなかったの?」 ……いやいやいやいやいや! 今日の昼の段階じゃ、舞にそんなもんなかったぞ!? 佐祐理さんだってそんなことは一つも……「……母さん? ……本当に、舞に魔力が?」「え、ええ。微弱だけど、確かに感じられたわよ?」 ……どういうことだ? 俺だって魔法使い始めて、結構経つから、魔力のあるなしわかるけど、今の今まで、舞から魔力を感じたことなかったはず…… 変わった事と、言えば……あ。「魔物……倒したんだよな……」 ……魔物を倒して、舞の魔力が戻ったのであれば。 あの魔物に、魔力を取られている? 取り戻す為に戦って……いいや、違う。 それなら、舞が魔法を知らないのはおかしい。 ……無意識で舞が魔物を作り出しているのなら? ……なら、他にも、舞の魔力で生まれた魔物がいる? 何のために? ……魔物と戦っているのは舞一人で……「……遠回りの、自殺?」 ……な、わけないな。 でも、舞は、魔物を狩る。 ……駄目だ。情報が足りない。「……帰るか」「あのー……おかーさん置いてきぼりにしないでほしいなー? ……なんて……」「……俺に母さんなんて人はいません」「がぁん!!」 激しく落ち込む母を尻目に、舞が消えた方向を見つめていた。 ……家に戻り、祐一の部屋へ……「……ありゃりゃ……」 やはり寝てる。 部屋主はおらず、そのベッドで真琴が寝てる。 母はショボーンとした顔で俺の部屋に入っていった。 ……流石に苛め過ぎたか? いや、甘やかすとつけ上がるから、あれでいいはず。 てか、一般人に魔法をぺらぺら喋るなよ。何考えてやがる。 ……いつもの勧誘癖が出たか? 「あ。せつな、戻ってきたのか?」「ああ、祐一。……真琴、どうしようか?」 階段を上ってきた祐一に、眠っている真琴の処遇を聞く。「……お前の部屋に置いた布団。こっちにくれ」「了解。……悪いな、祐一」「いいよ、別に。……あ、それと」 祐一が腕を上げると、「にゃぁ」「? ……猫?」 白地に茶色のぶちのついた猫を持っていた。 まだ子猫のようで、人懐っこそう。「名雪に見つからないように、お前のところで匿ってやってくれ。……名雪、猫アレルギーなんだ」 そ、そんな愉快なアレルギーが……「おまけに、無類の猫好きだから……」 ……不憫な。猫好きでアレルギーだなんて…… あ、またすずかとの共通点が…… すずかにアレルギーないけど。「しかし、どこの子だこれ」「ああ、そいつだよ。真琴が落とした奴。……庭にいたから、回収してきた」 ……トラックに運ばれたって奴? 祐一から猫を受け取って、まじまじと見つめる。「……女の子か。じゃあ俺が保護しておこう」「女なら猫でもいいのか。お前は」 そういうわけでもないんだが。猫好きだし。 俺の部屋に戻り、準備してた布団をたたみ、祐一に渡して、おやすみの挨拶。 ……さて、と。「あ~……と、言うわけで、一緒に寝ましょうか、母さん」 俺のベッドの上で丸まっている母さんに声をかける。 ……なんでいちいち行動が子供っぽいんだこの人は。「……苛めない?」 そして、そんな可愛いことを言うな。 苛めたくなってくるだろうが。「苛めません。……反省してくださいね?」 はーい、と、返事して、寝巻きの準備するお母様。 ……とりあえず、部隊に連絡するか…… 今日はなのはだっけ?『……あ、せっちゃん?』「あれ? はやて? ……なのはは?」『今日は先帰ったで? ゼンガー隊長とレーツェルさんとキタムラ教官と教導隊の飲み会に誘われた言うて』 飲み会って……おいおい。 あいつまだ未成年……まあ、その面子なら、酒なんて飲ませんか。『それで、あたしとなのはちゃん交代や。嬉しい?』「……ちょっとびっくりしたけどな。じゃあ、今日の連絡事項を頼む」『むぅ、つれへんの』 下手に返事して、なのはの機嫌を損ねるのは勘弁したい。 もちろん、目の前のはやてにも。 ……で、今日の出来事。 先日に約束してた陸士部隊との合同訓練が行われ、成果は順調。 ただ、SRX部隊のメンバーが連携ミスする場面もあったとか。『あれやね。ダテ三尉。……お調子者気質のせいか、チーム内で浮いてるみたいやね。……ブランシュタイン三尉とも仲悪そうやったし、あれじゃあかんな』 まあ、それは後々に期待。『それと、せっちゃんに伝言預かってるで。プリスケン一尉から』「? なんだって?」『えっとな。『風が決まった』と、言えばわかるゆうて。……なんかの暗号?』「ああ、そんな感じだ」 そっか、サイバスター操者が決まったか。 シラカワ博士とは連絡取ってるようなこと言ってたから、それ経由だろうな。 他の進展はなし。 後、こちらで確認した決算報告書について。「シエル対策費、なんか多くないか?」『……決算前に、後一回ぐらいやるかもと多く見積もっとる。……グリフィス君、この関係でほんま頭悩ましとるからなぁ~』 俺も頭痛の種だよ、まったく。『それで……後ろにおるんはリンディさん? 何で一緒におるん?』「ああ、遊びに来たんだと。……迷惑な」「酷い!? もう苛めないって言ったのに!?」『……せっちゃん? あんま、リンディさん苛めたらあかんよ? ……援助切られたら、元も子もないで?』「いや、別に? 切られたら兄さんに泣きつけばいいだけだし。……大体、今日のは自業自得だ」『きょ、今日は随分強気やね……』 当たり前だ。今回ばかりは母さんが悪い。 人の人間関係引っ掻き回しやがって。 「じゃあ、今日はゆっくり休んでくれ。俺も明日はゆっくりできるし」『そっちは日曜やもんね? ……ゆっくり休みな?』「あいあい。じゃあ、はやて。おやすみ」『おやすみ~』 通信終了。 ……振り向くと、壁に『の』の字かいていじけてるお母様。 ……本当に、可愛い人だこと。 寝巻きに着替え、猫を空いたダンボールに入れ、布団に入る。 母さんもおずおずと布団に入る……「……」 微妙に俺と距離を開けてるのは、警戒してか、それとも何か思惑が? ……おそらく警戒。俺揉むし。「……せつな、最近私に容赦しなくなったわね? ……私の事、嫌いになったの?」 ……いや、そういう台詞はいろんな意味でアウトです。「むしろ、俺が嫌われてるのかと思ってるんですが? ……初登校時、何人に奇異の目で見られたか……」「ご、ごめんなさい……」 登校時や教室で、いちいち俺を見ないでください。一般生徒の方々。似合ってないの分かってるから。「さっきの舞だって、最初会った時が私服だったから、制服着て話しかけたら凄く警戒されたし……」「……スカート履けばいいじゃない」「絶対拒否します」 いざって時に行動し辛いんです、スカート。 そんなに簡単に、スカートの中身は見せません。 「……まあ、もういいけど。慣れたし」「……ごめんなさい。……せつな、高校までは出たいって言ってたから、悪いことしちゃったなって……それで、今回気分だけでも味わってもらおうと思ったんだけど……」 罪滅ぼし? 何を今更。「なのは達と一緒に高校行きたかったってのはありますけどね? 俺一人じゃ、意味ねーです。……あいつらと離れるのが、一番辛いのに」「……そんなに、あの子たちと離れるのが不満?」 不満、じゃない。「不安だ。……こうして、離れてる間に、もしもって事が起こったら……」 奪われるのは、消えてしまうのは、何時だって、唐突で。「……せつな。……あなたの夢は、まだ癒えないのね……」「ペースは落ちたんだけどね……」 あの、屍は、いまだ俺を見つめている。 ……それがいつか、なのは達に代わったらと思うと。 ……一度、その悪夢を見た。 ……気が、狂いそうだった。「……今日は、甘えていいわよ? ……お母さんが、傍にいてあげるから」 俺を抱きしめてくれる母の腕。 身長差から、母さんの顔が凄く近くて…… ……何時まで経っても老けないよな。もう四十いった筈なののののののの!?「せ・つ・な?」「か、母さん苦しい苦しい! 魔力強化して抱きしめない!」「……女性の年齢をどうこう言うのは、マナー違反よ?」「言ってないし……てか、それって普通男に言わないか?」 一応女だよ、俺? 男性意識強いけど。「あなたは息子でもあるでしょ? ……は、母親の体に欲情するなんて……」「……だってー。この胸は私のだも―ん」 と、カグヤ風味に言ってみるテスト。 もちろん、揉むのは忘れない。「あ、コラ! せつな!」「……甘えていいんでしょー? うりうり」「そ、そういうことじゃ……せつな? お母さん怒るわよ?」 とと、あぶないあぶない。 調子に乗って、こないだみたいに泣かれてもな。 ……一度調子に乗りすぎて、風呂場で揉み倒したら、旦那の名前呼びながら泣かれたからな。 家に誰もいなかったからよかったものの、兄さんがいたら……串刺しものです。「……ごめん。母さん、何時まで経ってもキレイだから、ちょっと嫉妬した」「……褒めてる?」「もちろん。……母さん大好きだから」 これは本当。 ……ほ、ほら、好きな子ほど、苛めたくなってくるよね?「……馬鹿」 あはは~? 馬鹿を極めるつもりだからね~? 母さんの腕に抱かれながら、眠りに着く。 今日はいい夢見れそうだ。※皆さんお久しぶりです。作者です。 リアルホームレス生活から何とか脱却し、復活のための準備中です。 とりあえず、続きだけ上げときますね。 テスト板に題名と名前が一緒の私がいますが、それ、私じゃないのでお間違えなく。 ちゃんとした復活はまだまだ先になりそうなので、気長に、本当に気長に待っててください。 ……あ、それと、多次元のほうですが。 リアルが落ち着いてマシンを手に入れたら、全面改訂後再投稿します。 つーか、まるっきり違う話になるかもかも。 本編とゼロ魔編はしばらく置いておきますね。 以上、作者でした。