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No.6790の一覧
[0] とことんリリカルを引っ掻き回してみた・リリカルオリ主多重クロス[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:33)
[1] 1.りーいんかーねいしょん[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:57)
[2] 2.海鳴の街の眠れない夜[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:54)
[3] 3.空飛ぶ魔法少女の不思議な毎日[4CZG4OGLX+BS](2009/02/25 19:15)
[4] 4.幸せは儚き少女の為に[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:22)
[5] 5.夜天の主は彼女なのか?[4CZG4OGLX+BS](2009/03/02 11:12)
[6] 6.オリエンタルスターフライト・前編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:21)
[7] 6.オリエンタルスターフライト・後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:26)
[8] 7.スノーホワイトケージ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/07 12:21)
[9] 8.悲しみは散り、夢は幻想に[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:58)
[10] 9.海鳴温泉館 一つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:32)
[11] 9.海鳴温泉館 二つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:35)
[12] 9.海鳴温泉館 三つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:56)
[13] 10.明治十七年の温泉アリス[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:36)
[14] 11.管理局が見ている[4CZG4OGLX+BS](2009/03/14 09:01)
[15] 12.星色マスターブレイカー[4CZG4OGLX+BS](2009/03/16 10:55)
[16] 13.Retrospective of Mid-childa[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:44)
[17] 14.サクリファイスドール[4CZG4OGLX+BS](2009/03/19 08:02)
[18] 15.夏色脇路[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:45)
[19] 16.ボーダーオブライフ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/27 14:26)
[20] 17.ボーダーオブライン 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:35)
[21] 17.ボーダーオブライン 中編(微グロ表現あり・選択肢あり)[4CZG4OGLX+BS](2009/03/28 22:42)
[22] ↑の選択肢解説特番。もしくは、作者のお遊び。[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:05)
[23] 17.ボーダーオブライン 後編 ライン……[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:18)
[24] L18.人間と機人の境界 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:46)
[25] L18.人間と機人の境界 後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/30 21:29)
[26] L19.インペリシャブルシューターガール[4CZG4OGLX+BS](2009/05/20 18:30)
[27] L20.人生遊戯 -ライフゲーム-[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[28] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女[4CZG4OGLX+BS](2009/05/22 21:08)
[29] L22.ブレイジングシューティングスター[4CZG4OGLX+BS](2009/05/23 04:07)
[30] L23.プリズムコンチェルト ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 02:45)
[31] L23.プリズムコンチェルト 海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[32] L24.マジカルガールズウォー リリカルサイド+α[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:38)
[33] L24.マジカルガールズウォー オリジナルサイド[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:07)
[34] L25.新難題ロストロギア 出発編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 19:58)
[35] L25.新難題ロストロギア 一日目前半[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 20:07)
[36] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『アリサ』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:39)
[37] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『すずか』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 01:03)
[38] L25.新難題ロストロギア 一日目後半[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:59)
[39] L25.新難題ロストロギア 二日目朝~昼[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 19:43)
[40] L25.新難題ロストロギア 二日目昼~夕方『刹那』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/27 00:10)
[41] L25.新難題ロストロギア 二日目夕方~夜『はやて』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:34)
[42] L25.新難題ロストロギア 三日目前編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:44)
[43] L25.新難題ロストロギア 三日目後編『なのは』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 23:01)
[44] L25.新難題ロストロギア 四日目朝の風景[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 17:49)
[45] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:40)
[46] L25.新難題ロストロギア 四日目夜の風景『最終試練・せつな』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 20:35)
[47] L25.新難題ロストロギア 五日目リザルト[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 23:24)
[48] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・表[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:01)
[49] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・裏[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:02)
[50] L25.新難題ロストロギア 五日目おまけ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 19:35)
[51] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[52] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 23:44)
[53] L26.百万鬼夜行 夜の行軍[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:18)
[54] L26.百万鬼夜行 午前の任務[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:04)
[55] L26.百万鬼夜行 午後の策謀[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[56] 現在、更新が乱れております(謝罪と説明という名の言い訳)[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 19:14)
[57] L27.大魔導師の死 史実の死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:15)
[58] L27.大魔導師の死 希望のための死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:41)
[59] L28.トリップパラノイア アジトにて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:46)
[60] L28.トリップパラノイア 外にて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:47)
[61] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『地上本部の人攫い』[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 22:51)
[62] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『特務隊の銀狐』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:07)
[63] L29EX.シューティングスターレヴァリエ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:05)
[64] L30.奇跡降臨の道しるべ[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 23:12)
[65] L31-1.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と雪の街[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:43)
[66] L31-2.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と新しい生活[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:37)
[67] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 前[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:04)
[68] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:16)
[69] L31-4.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と夜の学校[4CZG4OGLX+BS](2009/07/23 14:35)
[70] L31-5.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と迷子の子狐[4CZG4OGLX+BS](2009/07/25 10:28)
[71] L31-6.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと舞と素敵なお母さん[4CZG4OGLX+BS](2010/05/05 13:20)
[72] L31-6EX.彷徨える命題[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:04)
[73] L31-7.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなとなのはと休日のデート 前[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:13)
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[6790] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後
Name: 4CZG4OGLX+BS◆2f25cb4b ID:f6b928c8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/21 12:16

 全授業終了。
 ……これが一ヶ月続くとなると、本当に鬱になる。
 おのれ、リンディ母さん。
 戻ったら絶対揉み倒してくれる。

「……はぁ……」

 ため息しか出てこん。
 ……なのは達に会いたいなぁ……

「休暇なのに疲れてるわね?」

「まぁなぁ? ……てか、せっかくの休暇なんだから、温泉行きたかった……」

「まあ、しばらくのんびりしなさい。……あたし、部活あるから、行くわね?」

「頑張って~」

 ……香里は部活か。北川はもういない。
 祐一は……

「私、部活あるから。先帰ってていいよ?」

「ん? わかった。……レコード屋にでも寄ってこようかな……」

 お前はいつの生まれだ。
 CD屋だろう普通。

「……? と、きたきた」

 目当ての人物が通り過ぎたので、席を立つ。
 
「お? 帰るのか?」

「ちょっと用事。先帰ってて?」

「おーう」

「せつな、気をつけてねー?」

 二人に別れを告げ、赤みがかった髪の持ち主に接近。
 テンパなのか猫っ毛なのか、少しソバージュ掛かったようになってる。
 むむ、頭一つ分ほど背が低いんだな。

「……人の背後に立ってじろじろ見るのは失礼ですよ?」

「すまんな。……やっぱり、みっしーだと似合うな、ここの制服」

 うん、可愛い。
 ユーノにはもったいないね。
 立ち止まって、振り向くみっしー……

「……意外に似合いますね? かっこいいです」

「……すまん、結婚してくれんか、美汐」

 凄く感動した、今。

「ちなみに嘘ですが」

「orz」

「……冗談です。かっこいいですよ?」

「ふ、やるようになったじゃないかみっしー……お姉さんは感激だよ」

 俺の芸風を盗るとは。
 やってくれる。

「んじゃま、どっか行くか? ……ここの学食、量少ないから夕飯までもたん」

「……魔導師の運動量からしたら、少ないですよね。……私には丁度いいんですが」

 まあ、司書じゃね。
 ……天野美汐。五年ほど前に入った司書で、一応魔導師だ。
 ただ、ランクが低い上、使える魔法も戦闘向きでない為、本人の希望もあって無限書庫に配属になった。
 専攻は古代風俗史と老古学。後、妖怪などの東洋幻想生物系も得意。
 真琴は元々、妖狐と呼ばれる妖怪狐だったそうで、その関係で調べてたら詳しくなったとか。
 後、老古学は絶対ユーノの影響だと思う。
 現在司書長補佐。ユーノの奥さんと言えば、誰でも気付く。
 本人否定しているけど。

 ……その彼女と、学校を出て、街の方向へ。
 ……市街地には駅から水瀬家に行く最中に通っただけで、どこに何があるのかさっぱりわからん。
 また暇を見て散策するか……て、暇だらけだが。

「お仕事の方は順調ですか?」

「まあ、そこそこにね……大きなヤマ抱えてるのに、一ヶ月休みとらされてまいってる」

「……せつなさん、働きすぎですから。はやてさんもぼやいてましたよ?」

 うわ、マジでか?
 最近無限書庫に顔出してないので、六人の中で使用率ナンバーワンははやてになった。次点はすずか。
 
「……あいつら守るだけでなく、ほっといたらろくなことしそうにない奴が相手だからなー……」

「……その、せつなさんは、まだ、悲しい夢を?」

 俺の事はユーノ経由で聞いたらしく、真相を話してある。
 もっとも、前世の記憶があるってだけだが。

「見てるよ……月に一回のペースにまで落ちた」

「……そうですか……」

 きっと、そのうち見なくなる。
 その時には、なのは達と笑い会える自分になってるだろう。
 ……けど、もし、その最中になのは達の誰かを喪えば。
 その夢が上書きされるはず。
 その、誰かの悪夢に。

「……悲しいことを忘れられる人に、なれてればよかったんだがな……大概、俺も不器用だ」

「……私も、不器用ですよ……」

 美汐の顔にも、影がある。
 ……暗い話しても、仕方ないか。

「あ、ここです。百花屋。……結構人気の喫茶店なんですよ?」

「ほう? どら、翠屋マスターの俺が味比べしてやるとするか」

「……えっと、あそこと比べるのは酷な気が……」

 今のところ、翠屋以上の喫茶店に出会えていない。
 ……まあ、海鳴とミッド以外の街に行かないけど。
 入って奥のボックス席に。
 みっしーは甘味。俺はチョコパフェ。

「……ここのイチゴサンデーも美味しいそうですよ?」

「むぅ。居候先の娘さんが好きそうだな……」

 朝のジャムの塗り方は異常だった。
 昼もイチゴが付いてるというだけでAランチを頼んだそうだ。
 ……イチゴ馬鹿?

「……それで、真琴はどうしてますか?」

 ようやく本題へ。

「今のところ元気にしてる。そっちからの魔力供給が滞ってたらしくて、一回倒れたけど、俺が魔力分けた」

「!? 倒れたんですか!?」

 ? ちょっと、その反応は食いつきすぎ。

「魔力不足だよ。……俺が魔力流したら、すぐに起きたよ」

「……そ、そうですか……」

 うーん。真琴にもなんかあるのかな?
 ウェイトレスが来たので、一度口を紡ぐ。
 立ち去った後、聞いてみる。

「真琴に、何かあるのか?」

「……真琴が妖狐だって事は話しましたよね? ……あの子、この街の特殊な狐なんです」

 聞くところによると。
 曰く、その狐は呪いを振りまくという。
 人の姿に化け、人に懐き、そして、人として死んでいく。
 呪いの名は悲しみ。
 だからこそ忌み嫌われる妖怪狐。
 ものみの丘の妖狐。

「……じゃあ、真琴は、祐一を呪いに来た狐だってことか……? あれ? でも、真琴、使い魔だよな? お前の」

「……もしかしたら、真琴は私と会う前に、その祐一さんに会っていたのかも知れません。そして、その時に……」

 祐一に酷いことをされた……
 ……いや、もしかしたら。

「捨てられた……か?」

「……推測に過ぎませんが。そして、祐一さんがこの地に現われたことによって、妖狐の血、もしくは、その力が発現して、祐一さんの元に行ってしまったと、考えられます」

 ……と、なると……
 
「……おいおい。じゃあなにか? 真琴、最終的には死んでしまうってことじゃ……」

「……」

 俯く美汐。
 ……その表情には、いままで見たことないような悲しみがある。

「……とにかく、今は真琴のしたいようにさせればいいのか? ……その、呪いを掛け終るまで」

「……そうして、あげてください。……たとえ、どんな結果になっても……」

 そういった美汐の声は、震えて、今にも泣きそうで……
 ……推測だが。
 美汐は別の狐に、既に呪いを掛けられた後だったんだろう。
 その悲しみを忘れる為に、傷ついた真琴を拾い、使い魔とした。
 その狐の変り身にするために……
 ……真琴自身も、別の人物に復讐しなくてはいけないという事実を知らずに。
 ……なんて、悲しみの連鎖。
 一番苦しみ、悲しむのは、祐一ではなく、美汐かもしれないと、漠然と思った。
 ……やるせないな……



 店を出て、美汐と別れる事に。
 最後に聞いた。一度、熱を出して倒れたら知らせて欲しいと。
 ……それが、合図だと。
 ……彼女の背中を、呆然と見送るしかなかった。
 
「まったく、勘弁してくれよ……」

 真琴も、俺の大切な友人だというのに。
 ……それが死んでしまう。
 それも、仕方のないこと。仕方のない別れになってしまう。
 ……今はまだ、考えないことにするか。
 合図があるまで。
 ……と? 
 誰かが背中にぶつかった。

「?」

 振り向いてみると、幼い女の子?

「あ、ごめんなさい……」

 買い物袋を両手で抱えた女の子が、ぺこりと謝った。
 ……髪の色に、見覚えがある。
 最近見たような?
 ……髪質は違うが。

「ああ、気にしないでくれ。ぼぅっとしてた俺も悪い」

 全体を見ると……寒そうな格好。
 肩にかけたチェックのストール。防寒具はそれだけで、セーターとエプロンスカート。
 ……寒く、ないのか?
 地元の人間は。

「……その格好は寒くないか?」

「? いえ、ストールありますから」

 ……わからん。
 けど、分かることはある。

「じゃあ、どっか痛いところでもあるのか?」

「え?」

「……いや、泣きながら歩いてると、危ないぞ?」

 泣いているということだ。
 ……本人気付いてないのか、瞳からボロボロ涙こぼしている。

「……あ……」

「病院行くか? 教えてくれれば連れて行くぞ?」

 どこにあるのかわからんからな。

「……ごめんなさい……気に、しないでください」

「いや、無理」

「え?」

 泣いてる子を放って置くほど、薄情にできてない。
 彼女の手から荷物を奪い取り、片手で持つ。
 空いた片手で彼女の手をとって。

「せめて家まで送らせろ。……荷物持ちぐらいはしてやる」

「……強引です」

「それが持ち味だからな」

 ニカッと笑ってやる。
 彼女はその顔に……笑ってくれた。

「……それじゃ、お願いします」

「おう。お姉さんに任せなさい」

 彼女の手を引いて歩き出す。
 が、彼女は動かない。

「? どした?」

「……家、こっちです」

 指差す先は反対方向。
 ……台無しである。

 彼女の案内に従い、歩きながら話す。

「じゃあ、一ヶ月の間だけここにいるんですか?」

「ああ。お姉さん意外と働き者でな? ……そして、仕事が一杯あるんだ」

 休み明けのデスクが怖い。
 
「……その、お姉さんって呼んでいいですか? 名前知らないので」

「? 教えて欲しい?」

「……いいんですか?」

 ……名前を聞くのを遠慮する子は初めてかもしれない。
 もう泣いてはいないが、何か遠慮しがちな子だ。

「ああ、いいよ。俺の名前はせつな・トワ・ハラオウン。十七歳だ」

「……えっと、私は、美坂栞です」

 美坂?
 ……まさか。

「香里の妹?」

「……お姉ちゃんを知ってるんですか?」

「奇遇なことにクラスメイトだ」

 本人の次に妹に会うとは。
 本当に奇遇なことだな。

「……お姉ちゃん、元気ですか?」

「? 元気にしてはいるが、別々に暮らしているのか?」

「……一緒に暮らしてます。けど、私、嫌われてますから」

 ……そりゃ、いけない。

「明日、香里に説教しなくちゃだな……」

「え!?」

「俺にも妹がいるんだがな? そいつが言うに『姉は妹を嫌ったりせず、愛でに愛でてメロメロにしなくちゃいけない』らしい。……そいつも俺にメロメロなんだと」

 やりすぎな感はあるが、姉が妹を嫌うのは間違ってる。
 どんな理由があるにしろ。

「だから、香里に栞を可愛がるように言って置くぞ? なんなら、洗脳するか?」

「……あの、洗脳はやり過ぎだと……」

 やっぱり?

「……それに、お姉ちゃんは頑固だから……言っても無駄です」

「……お姉ちゃん、嫌いか?」

「……じゃあ、嫌いってことにしてください」

 じゃあって……はぁ。
 香里と栞の間にも、何かあるんだろうな。

「あ、ここです」

 立ち止まった家には、美坂の表札。
 荷物を手渡し、家を仰ぎ見る。
 ……ひょっとしたら、俺のお節介なのかもしれない。

「……まあ、困ったことがあったら言ってくれ。力になるよ」

「……そのときは、お願いします」

 あまり信用してない様子。
 表情は暗いままだ。
 ……もったいない。可愛いのに。

「じゃあ、これで」

「……ああ。またね?」

 返事は返ってこず、さっさと中に入ってしまった。
 ……うーん。お姉ちゃん力が弱まってきたか?
 こっちも結構まいってるからなぁ……

「……帰るか」

 来た道を取って返す。
 できれば、彼女にも笑ってもらいたいところ。
 何かできることはないのかなぁ……

 
 ……コンビニで肉まんを買い、帰宅。
 夕食の時間もすぐなので、真琴には食事後に食べてもらうことに。
 ……おいしそうに食べるその顔に。

 少し、悲しくなった。



『……せっかく休んどるのに、えらい景気の悪い顔しとるな?』

「……むしろ拷問だ……」

 今日の連絡ははやて。
 アイビスの質問レポートがあるくらいで、他には特に連絡はないそうだ。

「知ってる知識を延々話されても、つまらないだけだぞ? 夜しっかり寝てるから、眠くもならない……時間の無駄だよ~」

『……まあ、中学の最後の方はそんな感じやったな。休み時間のお喋りだけが楽しみやったなぁ……』

 その頃には、俺もはやても高校以上の頭あったしな。
 
『まあ、一週間も続けたら慣れるやろ。ゆっくり休み』

「そうする……じゃあ、今日はここまでだな」

『うん。明日はアリサちゃんやからな~?』

「うぃ。おやすみ~」

 通信を切る。
 真琴は既にお休みだ。
 ……俺も寝るとしよう……






 ――――― ゆめ ―――――

 ――――― 夢を見て

「だから来るなと言っているだろう羽娘」

「うぐぅ!? ぼくだって来たくて来てる訳じゃないよ!?」

 堂々と人の夢の中に入ってきといて何を言う。
 なお、首根っこ掴んで目線まで上げている。
 この娘、俺の頭一つ分ほど小さい。

「ならばさっさと成仏するなり、自分の夢に帰るなりしろよ」

「うう~~。お兄さん意地悪だよ~~!!」

「だから、誰がお兄さんか!」

 服装は男物だが、れっきとした女である。
 ……体に引っ張られているせいか、夢の中でも、きちんと女だ。

「? え? ちがうの?」

「違う。俺は、女だ。お姉さん」

「うぐぅ。見えない……」

 ほほう?
 そんな直球なことを言う子には……

「擽り倒してくれる!」

「え? や! わき腹はダメェ~~~~~!!」

 うははははははは!!
 泣け、叫べ、笑い死ねぇ!

「……で? 俺が何に見えるって?」

「お、女の、ひ、と……うぐぅ」

「分かればよろしい」

 アイムウィン。
 むしろいじめだこれ。
 夢なのにリアルだな。

「うぐぅ~~~。お姉さんいじめっ子だよ~~」

「自業自得という言葉を知ってるか? 生意気なお子様にはこれぐらいの制裁は必要だ」

「ぼくお子様じゃないもん!」

 いやぁ、どこから見てもお子様です。
 頬を膨らませて怒るさまがプリチー。

「……まあ、とにかく、早く出て行くことを推奨する」

「……出方分からないもん」

 ……おいおい。

「俺が起きるまでここにいるつもりか?」

「……駄目……かな?」

 むぅ。そんな上目遣いで見られても……
 ……うーん、まあ。

「いいか。少し、お話でもしようか」

「ありがとう!」

 お、笑った。
 ……ニコニコ笑う顔は可愛いな。

「じゃあ、まずは……」

 それから、俺が起きるまで雑談が続き、起きる前にはお別れした。
 ……あれは、一体、何のつもりだろうか?
 俺の夢に来るなんて、酔狂な……


 怖い思いしても知らないぞ?





 *今更だけど、主役の容姿イメージは天王星の戦士の人……ではなく、竜之介な人と言ってみる作者です。どこの竜之介かは……『俺は女だーー!!』で分かるかなぁ?
  なお、声のイメージは中学入学前までは薗崎の姉っぽく(カグヤの方は妹の方)、現在までは今度こそ天王星の人。カグヤはそのまま。
  さらに、パラディンはアンバーな人で、クラウンはゴットゥーザ様でイメージしてます。
  こんなんでどうでしょうか? 作者でした。

  ……寝てないせいか、ぐだぐだなあとがきになってしまいました。
 
 


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