――――― ゆめ ――――― ――――― 夢を見ている ――――― ――――― まっしろなゆめ。あかいゆめ ――――― ――――― 悔しくて ――――― ――――― 悲しくて ――――― ――――― ただ、泣いている、おとこのこ ――――― ――――― あれは、だれ? ――――― ――――― あれは…… いや、誰よ本当に……? む、朝か……「む、うう~~~~~~ん」 ベッドの上で伸び。 ……窓から日が差してる。 いい天気だ。「あれ~~~~……ないよ~~~~」 ? なんか廊下が騒がしいな、ぺたぺた。 パジャマ姿のまま部屋の外へ。 あ、祐一も出てきた。「何だ朝から、騒々しい」「どうしたの、名雪ちゃん?」「あ、二人とも、おはよう」 ……あ、うん。「おはよう」「どうしたんだ?」「ゆーいち? 朝は、おはよう、だよ?」 ……いかん。普通に萌えてしまった今。 うん、名雪ちゃんが正しい。「あ、ああ。おはよう。……で? どうしたんだ?」「あ、うん、制服がないんだよ。時間ないのに~~」 ……焦ってるつもりなんだけど、焦ってるようには見えん。 「制服って、あの変なのか?」 その意見には同感だ! 激しく!「変じゃないよ、可愛いよ」 ……似合わない人の事も考えてくれ、頼むから!「……ゆーいち、知らない?」「俺が知るか」 知ってたら、ちょっと付き合い方を考えなくちゃいけない。 つーか。「洗濯にでも出したんじゃないか? 秋子さんにも聞いて見た?」「……あ」 パタパタと下に降りる…… 仕草がいちいち可愛い…… ……あ、戻ってきた。「あったよ~~~!」 いちいち見せんでよろしい。「急いでるんじゃないのか? 早く着替えろよ」「そうなんだよ~……時間ないよ~~……」 自分の部屋に入って、着替え…… く、布ズレの音聞こえるとか……強化しすぎだ俺の感覚!「まだ冷たいよ~~」「我慢しろ」「うー。肌に張り付く~……」 ……可愛いんだけど、いい加減うざくなってきた。 すずかよりものんびりやさんだから、ちょっとね……「おまたせ~」 着替えて出てきたのはいいが、俺らは別に待ってない。 「じゃあ下行くか」 朝御飯用意してくれてるみたいだし……匂いでわかる。 三人で下に降りると、台所に秋子さん。「あら? みんなおはよう。祐一さんもせつなさんも、まだ休んでてもいいのに」「「いや、こいつに起こされました」」「二人して言わなくてもいいよ~……」 ……気が合いすぎるな。 まさか、生き別れの双子? ……な、わけないか。「それより、急ぐんじゃなかったのか?」「そうだよ~。時間ないんだよ~」「じゃあ、早く行け」「う~。朝御飯……」「諦めろ。……ああ、そうだ、名雪。帰ってきたらでいいから、街の案内頼む」「……うん! いいよ~」 そういえば。「今日まで休みなのに、何で学校?」「……部活なんだよ。陸上部。……わたし、部長さんだから」「名雪が部長ねぇ……」「走るの好きだから」 ……だからインテークなのか? いやそれはないか……「それじゃ、行ってくるね~?」「おう、気をつけてな」「頑張ってな~」 ……うーん。最後までのんびりしてたな彼女。 冬休みなのに部活ねぇ……「もったいない」「なにがだ?」「せっかくの休みに部活なんて……こっちは休めなくても休めないのに……今月休まされたけど……しかも、学校行かなくちゃならなくなったし……」「……本当に不憫な……」 どうせ休むなら、温泉巡りに行かせて欲しい。 もしくはなのは達と旅行がいいな。 ……無理か。「二人とも? 朝御飯は食べますか?」「「食べます」」「じゃあ準備しますね?」 ……えっと。「さっきから思ってたんだが。祐一?」「ああ、俺も思ったぞ、せつな」 せーの。「「もしかして俺ら双子か?」」「……気の合い方が尋常じゃないなこれ……はやて以上とか……」「まったくだ……そのはやてって人は知らないが……」 よい友達になるかもしれんよ。俺ら。 ……朝食は美味しくいただきました。 ……昼までのんびりくつろぐ事に。 祐一と雑談。「じゃあ、中学でてすぐに仕事か……高校は行ってなかったのか?」「ああ。母さんの仕事の手伝いだからな。……まあ、大検はとったから、大学生レベルの頭はあるんだわ、俺」 中学卒業式の翌日に試験。 その後合格、六人とも。 ……中学の担任、最後まで皆の進学を惜しがってたな。「じゃあ、もし分からないところがあったら教えてくれ。俺、あんまり成績よくないからさ」「おう、構わんぞ~? ……女教師と年上の先輩とどっちがいい?」「……せつなじゃどっちも微妙じゃね?」「……すまん、俺もそう思った……」 谷間が~……あ、そういえば。「ちょっと待ってな?」 居間から二階へ、そして部屋に。 服を着替え、ブラに仕込み、制服に着替えて…… 再び居間へ。「どうだ!」「……お前、それ……に、偽乳?」 はやての京都土産を詰めてみました。 ……カリムに渡したら流石に泣かれて、シャッハに怒られた。 ……真相話したら、はやて呼び出しの上、俺共々説教喰らった。 何故、俺まで…… 教会内で『騎士カリムに偽乳を渡して泣かせた騎士』と有名になったのは自慢にならない逸話。「うん。……どうよ? 色っぽい?」「……すまん、やはり微妙だ」「……そっか」 orz「くそー。中学の修学旅行の土産なんだけどな、これ」「ああ、先輩の?」「んにゃ、同級の。……俺、病気でいけなかったし(と、言う設定)」「ああ、そうなん……設定?」「小学は親の病気で二日目に連れ戻されたし(てことにしとく。くそー、あの親父めー)」「……そ、そうなのか……? 親父?」「高校行かなかったから、修学旅行なんて概念ないし!(ちくしょー!! 何が悲しくて剣振りまわさにゃならんのだ!)」「……お、おーい?」「青い空なんて、だいっきらいだーーー!!(俺の青春を返せーーー!!)」「……なんだこれ?」 くそう、ついつい叫んじまった。 修学旅行関連全部おじゃんだからな…… なのは達に苦笑いされること請け合い。 中学の件はいまだカリムに謝られるんだぞ、これ。「(……? えっと、これか?)」 え? ……ふと、祐一を見る。 向こうも不思議な顔をしてる……「(……せつな?)」 !? え、ええ!?「……え、えと?」「あ、ああ……さっきから、言葉の裏になんか聞こえてるから、何かなー……て」 やば、台詞に隠した思考読まれ……まさか? 祐一って魔導師? ……じゃ、ないよな。秋子さん隠してくれって言ってたし。 てことは……リンカーコア持ちか。 「……えっと。(これ、聞こえる?)」 口に人差し指を当てて、念話を送る。 あ、反応した。「……(聞こえた。……なにこれ? テレパシーかなんかか?)」「……(似たようなもんだ。思念会話。通称念話。……まあ、何で俺らに通用するかは、聞かないで)」「……理由がある……とか?」「口止めされてる……まあ、使えれば便利ってだけにしといてくれ」 わざわざ教える必要もないだろ。 魔導師なんて因果な職業。「……まあ、話せないって言うなら、聞かないさ」「悪いな。あれだ。双子のテレパスでもいいぞ?」「似たようなもんか? ……まあ、それでいいか」 すまんね。 ……君は平和な世界で生きればいいよ。 危険な世界に、わざわざ首突っ込むことはない。 そういうのは。 既に突っ込んだ人間の仕事なんだから。 昼前には名雪ちゃん帰ってきた。 昼食後、祐一と名雪ちゃんは買い物ついでにお出かけ。 誘われたけど、確認があるので辞退。「……秋子さん。ちょっといいですか?」「はい? どうしました?」 祐一が念話を使えることを話す。 ……顔色からするに、どうも知ってたようだ。「……そう、ですか……」「すんません。俺の不注意で。……一応、誤魔化してはおきました」「ありがとうございます……祐一さん、魔力持ちだって知ってたんですけど……」 秋子さんは語る。 彼女の旦那が魔導師で、秋子さんとは幼馴染だったそうだ。 旦那についていく形で管理局に入局。 しばらくして、結婚し、名雪ちゃんを生み、その後、旦那が死亡する。 局から離れ、この地に住み、姉が生んだ甥の祐一と出会う。 その時には、彼はもう魔力持ちだったそうだ。 秋子さんは非魔導師だが、魔力持ちを見分けることが出来るらしい。 デバイスマイスターはよくそういうスキルを持つという。 ……そう言えば、アリサやすずかも最近そんなこと言ってたような……「祐一さん、七年前に、悲しいことがあって、実家に戻った後も、しばらく塞ぎこんでいたそうです。……今は、吹っ切れたように思えますが……」「……吹っ切れてませんよ、あれは」 あれは、忘れていると思い込んでいるだけだ。 悲しいことを押さえつけ、忘れていると、信じ込んでいるだけ。「……あなたも、同じようなことが?」「……俺の場合は特殊ですよ。……でも、四年間、生きた人形でしたよ。見るものも見ず、喋る事もせず。……動くだけのお人形」 それでも、乗り越えようと努力して、いる。 そう信じたい。 悲しいだけじゃ、辛いから。 忘れるだけじゃ、足りないから。「……もし、あいつが気付くようなら、俺の力を貸します。……そうでないなら、あいつは、平和なこの世界で暮らさせてやってください」「……そうですね。……もし、その時が来たら、祐一さんの力になってあげてください」「ええ。友達になりましたしね?」 友人には、悲しい思いはしてもらいたくないし。 まあ、力くらいならいつでも貸してやるさ。 ……求めれば、な? 夕方に二人戻ってきた。 が。「あら、大きなおでん種」「あ、秋子さん?」 別の意味で食べるとか? 祐一君、誘拐はいけないよ?「まさか祐一がロリペドだったなんて……」「誰がロリだ! ……てか、これロリか?」 担いでいる女の子を手渡される。 ……? あれ?「真琴? ……みっしーのところの真琴か」「? せつなさん、知り合い?」「あ、ああ……」 無限書庫のお局……いやいや。 美少女司書長補佐、天野美汐の使い魔だ。 幼い頃、大怪我をしたこの子を見つけ、同じ魔導師の母に使い魔処理をしてもらい、自分の使い魔にしたと話している。 狐ベースで、炎熱変換資質持ち。 そのせいか、無限書庫には入れてもらえず、受付で本を読んでいた覚えがある。 ……主に漫画本だったので、俺も持ってきて貸したら懐かれた。 ……なお、主はユーノと恋仲である……本人否定するけど、傍から見たらあれ夫婦だって絶対。 で、何で真琴がここに?「ああ、なんか、帰り道で襲われた」「はぁ!? ……人襲うような子じゃないんだぞ、こいつ」「でも、いきなり殴りかかってきたぞ? ……頭抑えたらリーチ足りなくて、当たらなかったけど」 ……ああ、うん。想像にたやすいな……「で、そのまま倒れて、意識不明」 ……はぁ。仕方ないな。「俺の部屋で休ませるよ。友人の……友達だし」 あぶね、使い魔言いかけた。 部屋に戻り、ベッドに真琴を寝かせてパラディンに体調を調べてもらう。 結果。「……主とのラインが薄れてる?」【はい。酷くラインが細くなってます……それで、供給魔力が足りなくなったのかと】「仕方ない。俺のを分けようか」 魔力バイパスをパラディン経由で繋げ、供給開始。 ……真琴の顔に、赤みが差し、「……? ふぇ?」「と、起きたな? 俺が分かるか? 真琴?」「……!? ええ!? せつな!?」 よっし、起きた起きた。「どうしてここに!?」「それは俺の台詞。……お前、祐一に襲い掛かって倒れたって聞いたぞ? 祐一に恨みでもあるのか?」「……祐一って?」 知らんのかい。「倒れる前、誰かに殴りかかったのは覚えてるか?」「……うん。覚えてる」「そいつの名前。相沢祐一って言うんだ。……人襲うなんて、お前やらないだろ? 何があったんだ?」 むしろ、知らない人間が来たら隠れるしな、こいつ。 餌は漫画か肉まんで釣れる。 与え続けると懐く。 あまり続けると保護者が出てきて怒り出すが。「……わかんない。でも、許せなかったの」「許せないって……憎いってことか?」「うん……あいつ、許せないの」 ……確かに、憎しみは感じられるんだけど…… どっちかと言えば、構ってもらえなくて、拗ねてる子供の顔だ、これ。 「……とにかく、美汐のところに帰るか? この近くなんだろ?」 主とのラインが細まってるって言うんなら、なんとかしないと。「……やだ。帰らない!」「……へ?」「あいつにふくしうするまで、帰らない!」「……真琴? ふくしゅうな? 復讐」「あう?」 ……舌っ足らずなんだよな、こいつ。時々噛む。 「……じゃあ、その、まず、連絡だけするけど、それは構わないな? ……美汐を心配させるな?」「……うん。せつな、ごめん……」「構わんよ。友達だからな」「……えへへー。せつな好きー」 ううむ。使い魔に好かれてもな…… とにかく通信を……「せつなー? 飯できたって……あ、起きたのか?」 と、でたな祐一。「む! てぇりゃぁー!!」「て、まてい!」「むぎゅ!」 飛び蹴りモーションに入った真琴を掴んで落とす。 人の部屋で喧嘩は困ります。「せつな! 離して! こいつ懲らしめてやるんだからー!」「な、なんなんだ? 俺、何かしたのか?」「……弄んだ上に捨てたとか? 祐一意外と鬼畜?」「してねぇ! てか、こいつでどうやって欲情するんだ?」 うわぁ。 あんた結構セメントですね。 可愛いのに。「真琴、懐くと可愛いとこあるんだがな。……この反応は始めてみた」「うぁ、そうなのか……なあ、俺になんか恨みでもあるのか?」 しゃがみこんで聞いてみる祐一。「……わかんないわよ! でも、許せないの! あんただけは!」「……俺がわけわからん」「俺もだ。……と、とにかく、飯だって? ……秋子さんに頼んで、あと一人分用意してもらえるよう言ってもらえないかな?」 真琴にも食べさせないと。 一応魔力供給したけど、食事させて自力で魔力生成させないと。 「……分かった、言ってくるよ」「すまん。……ほれ、真琴。祐一にお礼」「な、何で私がこいつにお礼言わなくちゃなんないのよ!」「……いきなりのお客さんのご飯を頼むんだ。それで、その役目を俺の代わりに、祐一に頼む。……お礼を言う人物は誰だ?」 元が野生なものだから、こういう礼儀とかは逐一教えないといけないって美汐言ってたからな。 俺も、現場に出くわしたらこうやって教えてる。「……あ、ありがとう……」 そして、俺の言葉は美汐とユーノの次に正しいという認識を与えることに成功した。 ……こいつ、ユーノの言う事もちゃんと聞く、いい子なんだけどな…… 言ったとおりに、祐一にお礼を言う真琴。ただし視線は向けない。「あ、ああ……じゃあ、言ってくるな?」「ありがとな? ……さて、今の内に」 連絡……て、あんまり待たせるのもあれか。 どうせあの二人の事だ。 遅くまで仕事してるに違いない。 なら、今の内に……「真琴、手と顔、洗おうな?」「あう?」 よく見たらドロだらけである。 今日のご飯はおでんだった…… 秋子さん、いくら狐ベースでも、使い魔煮ちゃ駄目ですよ…… 美汐の教育がいいので、真琴は食事のマナーは完璧。 頂きますからご馳走様まではきちんとできる。 ……幼児を躾けてる様だとこぼしていたのは秘密。「……それじゃあ、保護者の方に?」「あ、はい。俺のほうから連絡入れて……もし、よかったら、俺の部屋に泊めたいんですけど」「了承」 ……返答時間0.1秒? これが母さんのあれの本家か……「だって。真琴?」「あ、ありがとう! 秋子さん!」「……それで、俺が懲らしめられなきゃならんのか?」 ……あれだ。「運命という奴だな。真琴の自由攻撃にやられるまで逃げ続けないとだ」「……じゃあ俺は正義を出せば何とかなるのか?」「? 何の話?」 種死は名雪ちゃんには通じないようです。 「ふふん! 覚悟しなさい! ゆーいちは私が成敗してやるんだから!」「……せつな。保護者に送り返せないのか?」「すまんな祐一。俺は基本的に可愛い女の子の味方だ」 準妹分だからな。……その、使い魔を妹扱いしないでくれって保護者に言われて…… その保護者は妹分五号だが。 賑やかな食事になりました。 お風呂から上がって(ついでに真琴も入れた)、無限書庫に連絡。 一発でユーノが出た。実は暇か?『あれ? 休暇してるって聞いたんだけど?』「休暇中に拾っちまったんだから仕方ないだろう、問題を。……奥さんいるか?」 みっしーの事なのだが、もうこの言葉じゃ動揺しないから、つまんないよユーノ。 本人悪い気はしてないみたいだし。『美汐さんなら、家のほうに帰ったはずだけど? 家は、そっちの方にあるよ?』「て、ことは……真琴? みっしーの家の電話番号は?」「……わかんない」 おいおい。 一度服を漁らせて貰い、何かないか調べる……ないだとう? 持たせといてくれよ、こういう時困るから!『あ、あったよ? 通信機、家においてるみたいだから、番号言うね?』「ナイスだユーノ」 その気遣いに感謝します。 無限書庫との通信を終え、すぐにみっしーの回線へ。 ……でない。「……くそー。でないぞー?」「あう……」 もうしばらく待ってみる……『……はい』「美汐か? せつなだけど」『せつなさん! あの、真琴見ませんでしたか!?』 やっぱり、外探し回ってたな?「安心しろ、俺のほうで保護した」『よかった……』「ほら真琴! ご主人様、凄く心配してるぞ!?」「ご、ごめんなさい……美汐、ごめんなさい」『……無事でよかった……真琴……』 ……みっしーは優しい子だからな。 使い魔のために泣いてあげられる子だ。 ……フェイトも、同じだろうけど。「それで、お前とのラインが細くなってるみたいなんだが、心当たりあるか?」『……いえ、私のほうは分かりません……真琴? 私の念話、届かなかったの?』「……うん。美汐の念話、届かないよ……」「お前の方から送ってみな?」 ちょっとまずいか、これ?「……どうだ?」『……駄目です、届きません……』「あうぅ……」 長距離念話は無理か……美汐自身、あまりランクの高い魔導師じゃないしな。 ……よし。「とにかく、しばらくはこっちで預かるよ。お前は明日は仕事?」『あ、いえ、その……学校が始まってしまうので、しばらくはこっちにいます』 ……学校? ああ、そう言えば、通学しながら書庫の方に通ってるって話だったな…… ……げ。「それって、まさか、あの、赤い制服の? 誘惑してるとしか思えないあの制服の?」『……ど、独特なデザインの制服ですよね? ……まさかせつなさん、そこに……』「……明日から通う……お前と同じ制服で……」『……そんな酷な事はないでしょう……』 可哀想なものを見る目で言うな。 すげー泣きたくなる。「じゃあ、明日、会うことにしようか。……笑いたかったら笑って構わん」『そ、そこまで不出来に出来てません! ……そ、その、私も、あまり似合っているとは思えませんし』「いや、それは嘘だろう。……ユーノが見たら淫獣モード確定だ」『ユーノさんは関係ありません!』 ふはは。やはりこの子は弄りがいあるから好きだわ。 真っ赤にしてかわいー。「じゃあ、また明日」『……では、明日に』 通信終了。……はぁ。「どうしたものかな……? 真琴?」 ……静かだと思ったら、寝てやがる…… ベッドに入れて、俺はその隣で、布団をかける。 体温高いなー……お子様みたい。 ……あ。 まずいまずい。 フェイトに連絡入れるの忘れてた。『あ、せつなちゃん』「あれ? 番号間違えたか?」 何故になのは?『ううん? ちゃんと第三事務室だよ?』「あれ? 何でなのはが?」『フェイトちゃんから話聞いて、それならみんなでローテーションで連絡しようって。……これなら、安心だよね?』 ……そうだな。 いやはや。「すまん、迷惑かける」『いいよ。……えっと、今日の連絡事項だけど……』 特に目立った動きはなし。 災害救助で出動が一件。 被害者に怪我はなし。よしよし。 あと、『アイビスがね? せつなちゃんに聞きたいことがあるんだって。えっと、魔力圧縮系の質問みたい』「うあ、今そっち戻るとお前ら怒るしな……えっと、圧縮系ならゼンガー隊長の得意分野だからそっちに直接聞くように言ってくれ。もし、それでも俺の意見が聞きたいって言うなら、質問文と自分なりの回答を添えて次の連絡係に渡すように言ってくれ。頼む」『うん、わかった。……それと、聞いたよ? アイビス、せつなちゃんに憧れてるんだって?』「あ、う、そ、そうらしい……二年前のほら、航空隊の隊員蹴ったやつあるだろ? あの時の喧嘩まがいの模擬戦、見られてた……」『そうなんだ? 凄くキレイだって言ってたんだけど……せつなちゃん、局で模擬戦しないから、珍しいなって。せつなちゃんに憧れる人』「……あいつのデバイスな? 俺のアロンダイトをベースにしてるらしい。……わざわざ俺にデータ借りて作った、あいつの兄貴分の遺品なんだと」『……じゃあ、せつなちゃんの弟子になるんだね? ふふ、大切に育てないとね?』「……そうだな」 奇特な子だよ。 俺なんかに憧れるなんて…… まあ、「本来の俺の戦闘スタイル見てないからかもしれんがな~?」『……せつなちゃんは、基本的に卑怯だもんね。……挑発や言葉責めや人の苦手な位置からちくちくやるの大好きだし』「文句はパラディンに言え。あいつの生前も、同じ事やってたらしい……敵兵士が女だったら、必ず揉んでたって話だし……」『古代にもはやてちゃんいたんだね……』 古代ベルカの騎士は変態か、マジで。 守護騎士の前では言えないけど。 ……そう言えば、あいつら、クラウンスルーしてるけど……もしかして気付いてないのか? 分からん……『それじゃあ、明日ははやてちゃんだから』「わかった。おやすみ~」『おやすみ、せつなちゃん』 ……よし、寝る……「……」「……い、今の、何?」 ゆ、祐一君……? 俺の部屋のドア開けたまま固まっている。 いつの間に……「……ノックはした?」「……何度も……」 き、気付かんかった…… 知らない土地の上、仕事休みだからって気が抜けてるのか? い、いかん、早朝訓練ちゃんとやらないと……「……あ、あれだ! テレビ電話!」「おお、テレビ電話!」「そうそう! テレビ電話……」「……まあ、そういうことにしとけばいいんだな?」「……お願いします……」 誤魔化しきってないけど誤魔化せたか。 祐一君の広い心に感謝。「……ああ、それで、目覚まし時計余ってないかな?」 普通余るもんじゃないが……パラディンに起こして貰うことにして。「じゃあ、一日だけ貸すよ。明日には返してくれ」「む、いいのか?」「まかせろ。元々早起きだし、もう寝るし」 小学の頃は五時起きが普通でした。 今でも、意識すればそれくらいに起きれます。「……分かった、じゃあ借りるな?」「おう。……じゃ、おやすみ」「おやすみ~……せぇふ?」 お情けでセーフ。 ……祐一君は話せる人だなぁ…… ……ん? あれ? 真琴がいない……時間……て、目覚まし、祐一が持ってったんだっけ? 真琴はトイレか……て、場所知ってるのか? 音を立てないように部屋の外へ。 ……? いたにはいたけど、どこに入ろうとしてる? あれ、祐一の部屋だよな…… ……入ってっちゃった……おいおい。 寝てるすきに、首絞めようって……ないか、真琴だし。 後は、簡単な悪戯あたりか? とにかく、フォローにまわるか。「……!? ……!!」 はぁ、なにやった? 今の悲鳴は祐一のだな。 音を立てずに接近。 祐一の部屋へ。「お~ま~え~な~!!」「あ、あうぅ!?」 真琴が頭に手をやって痛がっている。 拳を握った祐一。 ……えっと、制裁した後か。「真琴? 何やったの?」「あ、せつな」 声に気付いて近づいてくる。 その手には……こんにゃく?「祐一が酷いの! 頭ゴツンって!」「お前の方が酷いわ! 寝てる顔にこんにゃくぶつけやがって!」 ……低レベルな喧嘩だなぁ…… なんか、癒される……「……おいせつな? 何でそんな微笑ましい顔になってんだ?」「ううん? 気にしないで? ……人の安眠妨害で起こされて、部下の喧嘩制圧して、理由聞いたら『市販の紅茶は何処がいいかを話し合ってたら言い合いになった』なぁんて言って来る部下に比べたら、可愛いもんだなぁ……と」 まあ、タスクとユウキの事だが。 当然弾幕訓練の的にしてやった。「……真琴? 夜中の悪戯は住人迷惑になるから、やめなさい。……今度やったら、美汐のところに強制送還な?」「あ、あう……ごめんなさい」「それって、昼間ならやっていいって言ってないか?」 ち、鋭いじゃないか。「すまんな祐一。真琴の代わりに謝っておくよ」「俺は本人から謝って欲しいが……まあいいけど」「べーだ」 こらこら。 あっかんベーは顔が醜くなるからやめなさい。「じゃあ、おやすみ」「おう……真琴? 今度やったら、容赦しないからな?」「ふんっだ!」 祐一の部屋から出て、真琴を連れて自分の部屋へ。 布団に入れて、自分も入る。「……真琴? 夜中の悪戯はやめること。その代わり、明日は肉まんを買ってきてあげよう」「ホント!? ありがとせつな!」 布団の中で抱き付かれる……うーん。 本当に犬猫に懐かれてるようなもんなんだよなぁ…… 欲情もしねぇ。 ……密かに胸あるのはみっしーの趣味か……? ……そんな酷な事はないでしょう。