新暦七十四年一月一週目年明けそうそう。 ……捜査の結果。結構な数の行方不明者が判明した。 海の方はそうでもないんだが、ミッドチルダ本部の方は結構いなくなってる。 さらに、出向命令を出した者を捜査。 ……すると、あっさり見つかり、事情を聞いたところ、そんな指示は出してないと言い張った。 脳内思考捜査でもそんな事実は浮かばず、思いっきり空振ってしまった。 やばい、手詰まった。 とにかく、各部署、各部隊の隊長に注意を呼びかけるに留まった。 ……これで、少しは減ってくれるといいんだけど。 レーツェルさんに確認を取り、エルザム執務官として対話。「……ふふ、ばれるとは思わなかったよ。さすが、せつな君だね」「いや、ゴーグルだけじゃん変装……ばれない方がどうかしてると思うよ?」 登録証の写真にゴーグル書くとレーツェルさんの出来上がり。 ……この世の理不尽を垣間見た。 さて、エルザム兄さん曰く、まだまだ調査不足との事。「必ずどこかで一度切れるんだよ、走査線がね? その先がどこに繋がるのか、分からないんだ」「……くっそ~、そっちでも駄目か~」 とにかく、そのまま独自で捜査してもらうことを依頼。 俺の視点以外でわかることもあるかもだし。「そう言えば、何で俺のスカウト乗ったんです?」「ああ、地上の方に拠点があるような気がしてね。本部近くの拠点を探す前に君からスカウト来たから、そのまま乗らせて貰ったよ」 むう、渡り舟出しちゃったか。 でもまあ、優秀なコックと裏ネットワークは儲け物だ。 このままこの部隊にいてくれるそうだし、これからもお願いします。「……それで、頼みがあるんだが」「はいはい?」「……私の弟が航空隊にいる。……よかったら、こっちにスカウトしてくれないかな?」 すまん。それ既に接触済み。 さらに。「……すんません。蹴られました」「……あいつは……どうしてだい?」「……航空隊で、探したいんですって。義姉の仇と、実の兄を」「……馬鹿者が……」 流石に、俺が言い出すわけにもいかず、残念ですがと蹴られてしまいました。 くそー、惜しすぎるー……? R-2って陸戦兵器だよな? 何で航空隊なんだろう……わからん。 まあいいや。「では、後一つ。……これは、見つけたらでいいんだが、私とゼンガーのデバイスを、あるマイスターに渡してあるんだ。……ただ、その人がどこにいるか分からなくなってしまってね。もし、見つけたら、受け取ってきて欲しい」 おいおい。 そんなん見つけるの、かなり骨だぞ。「名前とか、分からないんですか?」「私もあったことがなくてな。父が懇意にしていたマイスターで、女性の方だそうだ……辺境世界の出身者だといっていたが……まあ見つけたらでいい。デバイスの名前は『ダイゼンガー』と『アウセンザイター』だ。よろしく頼む」 ダイナミックゼネラルガーディアンキターーーーーーー!! &作らなくてよかったーーーーー!! ……ど、道理でゼンガー親分の初期デバイスがヘボかったと思ったら! くそ、これで仕事が増えちまった。 なんとしてでも探し出さないと! カグヤからの連絡。 スクールプラントを一件潰してくれたそうだ。 これで八件目。……ただ。『クレイドルで作られたクローンがいたみたい。……ほら、石田声』「アンサズ? スリサズ? ウルズ? ……おいおい。聞いてねえぞ」 プラント防御に、その三体が襲い掛かってきたらしい。 当然、ゼスト隊長とカグヤとノーヴェの三人で撃破。 ……調べた結果、クレイドル製と判断。 ……クレイドルって言えば、イーグレット・フェフだよな。 後、仮面親分。 ……ま、まさかねぇ? 気になって、親分に聞いたところ。「……クレイドルプラントか? ……俺が教導隊にいたときに、破壊した。……責任者のソフィア・ネート博士が情報をリークしてくれてな」 クレイドルプラントの防衛手段に、ナノマシンを注入し、機械化処理をした戦闘機人を配置する計画がでていたらしい。 防衛主任はイーグレット・フェフ博士。まんまかよ。 クレイドルプラント責任者、ソフィア・ネート博士がその事実を管理局の教導隊に内部告発。 ゼンガー親分率いる教導隊強制捜査部隊が突入し、これを制圧した。 ……なお、この作戦で助け出されたのがイルイであり、なのはもこの作戦に参加していたとの事。 以前言ってた、一緒に仕事したってこれの事か。 で、問題のイーグレット博士。 いまだ捕まってないらしい……ち、スクールに拾われたか。 そういや、アラドとイーグレットシリーズって似てるよな。 ……くそ、そういう繋がりかよ。 ネート博士は今技術局で保護観察中だそうなので、会いに行くことに。 「イーグレット博士ですか?」「はい。どんな人だったんですか?」 聞けば、ナノマシンを専門に研究している人で、性格は冷酷。 密かに人体実験もしていたようだ。 防衛手段の戦闘機人はセトメラボの戦闘機人の遺伝子から作られたクローンを使うつもりだったらしい。 おいおい。「……あの、ゼンガー一尉に、これを渡してもらえますか?」「今は三佐ですが……これは?」「……彼の、剣。斬艦刀ユニットです」 ……も、もう作ったとは言えん。 とにかく預かり、ゼンガー親分に渡す。 ……びっくり。 俺らが作った参式斬艦刀より、かなり魔力圧縮率いいんでやんの。 コンセプトはまったく同じ。日本刀型と大剣型。 後、親分の魔力に合わせて作ってあるため、多少の形状変更も出来る。大車輪とか。 データ取りだけして、参式と真打(ネート作)を交換。 ……羨ましそうな目で参式斬艦刀見ているシグナムは、全力で無視した。 てか、レヴァンティン泣くぞ。 協議の結果、ブリットが持つことに。 『ヒュッケバインMk-2』に組み込んであげた。 ……どっかに竜と虎落ちてないかな? ……落ちてるとしたら、ロストロギアだろうなぁ…… 行方不明者の捜査で浮上した、一人の不穏すぎる名前。『イングラム・プリスケン』 ……来やがったなタイムダイバー。 陸士実験部隊『SRX』隊長。……そのまんまだ。 なんでも、新しい魔導師の実験研究を主として活動する部隊で、メンバーは本気でネタだろと思った。 フィンファンネル姉さんにシスコン弟にロボット馬鹿。 部隊専属技術者にロボット馬鹿博士と無口な博士。 担当研究者は禿モノクルとまさしく極東基地そのまんま。 ……発足は、二ヶ月前。下準備等は本局で秘密裏に行われていたらしい。 そりゃ気付かねーよ馬鹿野郎。 早速打診して見学依頼。なのはとフェイト連れて見学に行った。「ようこそ。SRX部隊へ。隊長の、イングラム・プリスケン一等空尉だ」 ……う、胡散くせえ……裏切る事確定な人だこいつ。 とにかく見学……「ああ!! 高町教導官に、テスタロッサ執務官!? うお、初めて見た……」「こら、リュウ! ちゃんと敬礼する!」「……ふん、うるさい奴だ」「何だと、ライ!」 ……まんまだ……おもわずorz 「せ、せつなちゃん? どうしたの?」「ごめん……聞かないで……」「もしかして……この人達も?」「うん。そのまんまだ……」 ダテ三尉がなのはとフェイトのファンってことなので、二人を前線部隊の囮にして、イングラム一尉に接触。「……実験部隊と聞いてますけど、具体的にどんなことを?(くおら、タイムダイバー。今度はなに企んでやがる)」「!? ……ええ、魔法の他に、レアスキルの可能性を伸ばすことを主題にしています(……何故それを?)」 食いついたな? このまま思考捜査開始じゃ。 パラディン&クラウンと繋いで嘘発見器プラス思考を探ってもらう。「(聞きたいことがあるだけだ。聞きたいことは二つ。あんたは敵か?)レアスキルですか? 例えば?」「念動力というのはご存知ですか?(……味方だよ、今はな)」(【マスター。嘘は言ってません】『代わりに、裏切るつもり満々ね』) だろうな。 捜査続行。「ええ、知ってます。サイコキネシスと呼ばれるものですね(二つ目だ。ユーゼスの手駒か?)」「……彼らは、その素質があります。詳しいことは、奥で(……人目の付かないところへ。普通に話そう)」(【……襲うつもりはないようですね】『こっちも同じよ。普通に話したいみたい』) おーし、交渉開始だ。 リリカル世界にああいう外道関係はいらないんだよ面倒な。 ただでさえ評議会が面倒だってのに、こいつらまで相手にしてられるか。 フェイトに警戒をしてもらいつつ、隊員を見て置くように指示。 イングラム一尉に連れられ、隊舎の物陰へ。 防音結界を張って、密談開始。「……どこまで知っている?」「最近の誘拐事件がゴッツォ研究所の手の物だってこと。管理局内部からも結構な数誘拐していること。誘拐された被害者を使って、違法研究していること。バルシェムシリーズの製作元がゴッツォ研究所だってこと……あと、あんたが裏切るつもりであいつらの上官をしてること」「……お手上げだ。確かに、俺はスパイだよ。……バルシェムシリーズは、俺がオリジナルになっている。……よくここまでかぎつけたな?」「特務隊の銀狐を舐めんなよ? ……二つ目の答えは?」 銀狐。 まあ、俺の鎧と魔力光、後、小隊名の組み合わせでこんなあだ名になってしまった。 誰が広めたのか知らないが、地上の監視人として恐れられているらしい…… 本人ただの男女だけど。「……ユーゼス・ゴッツォ。俺の上司で、ゴッツォ研究所の代表責任者だ。……彼から言われて、ある素質を持つものを探している」 えっと、α基準だから……「サイコドライバー? ……なんとまぁ、けったいなもんを……」「そこまで知っているのか!? ……はは、君は凄いな」 ん? あれ? こいつ、感じが……(『マスター? この人、今まで演技してたみたい。……思考捜査を騙すほどの演技って、凄いわね。ああ、敵じゃないわよ? この人』) ……まさかこいつ、スパイはスパイでも…… 二重スパイか?「そのとおり。俺は、ユーゼスが提唱するサイコドライバー資質の持ち主を探している。だがそれはユーゼスの計画を成就させるわけではなく、あの悪魔を倒す為だ」「悪魔と来たかい。……詳細を教えてくれ」 話によると。 ユーゼスがバルシェムシリーズに限界を感じ、新しい戦闘機人を作るため、そのサンプルを数人誘拐した。 その中の一人に、レアスキル『サイコキネシス』を持つものがいて、このレアスキルを伸ばせば、戦闘機人をより強いものにすることができるのではないかと画策。 さまざまなサンプルを集め、誘拐事件を巻き起こした。 市内から直接誘拐する場合は、チンピラや犯罪者に誘拐した被害者一人に付き、一般局員の三か月分の給料と同じ額を払って買い取り、非合法の郵便組織を使って中継地点に配達。 その後、中継地点『虫篭』から研究所に送られ、実験体にされるらしい。 管理局からは、正規局員の名前で偽の出向依頼を出し、のこのこ出てきた局員を拉致。そのまま、『虫篭』に送っているらしい。 『虫篭』内部は随時AMFが張り巡らされ、魔導師はただの人間と化す。 そして研究所内では、戦闘機人の研究は勿論、後付けのハイブリットヒューマンの研究も行っているらしい。 機械と人間の融合品だ。改造人間と言っても過言じゃない。 「俺は、そこで生まれた純粋培養の戦闘機人だ。……そして、君の言うとおり、タイムダイバーでもある」「……勘弁してくれよ。そういうのは外宇宙の発展が終わってる世界でやってくれ」「ははは……すまんな。迷惑をかける」 とにかく、彼は自分の計画通り、SRX部隊の隊員を育て、サイコドライバーを目指してもらうらしい。 そして、彼自身が裏切り、後はユーゼスの情報をこっちに流しながら、敵としてSRX隊員を成長させる計画だそうだ。 ……αとOGそのまんまやね……本気で……「……あのさ。そいつって、サイコドライバーでないと勝てないの?」「……魔力無効化体質というのを知っているか?」「うわ、キャンセラーかよ……」 あれだあれ。 子供魔法先生のツンデレパートナーだ。 魔法が一切効かない奴。「じゃあ、物理攻撃は?」「……サトリのレアスキルも持っている」「……何その反則性能……」 ……ホントに人間か? そいつ…… て、サトリ?「……あんた、裏切って戻った後、速攻で脳改造されるんじゃね?」「……それはどういう意味だ?」「あんたの計画、もろばれじゃないのかってこと」「……その可能性も考えた。だが、この手段でないと、サイコドライバーは……」 育たないと。 ……サトリ持ちの、魔法無効化体質…… ふむ。 厄介極まりないな。 仕方ない。替え玉使うか。「あんたの血液、採取させてもらっても構わないか?」「? どうする気だ?」「俺の知り合いに、クローンと戦闘機人に強い人がいる。……あんたの替え玉作って裏切る時に記憶転写して、研究所に替え玉を送る」 で、本人は陰から援護してもらう。 ……なりふりなんて構ってられるか。 ドクターに貸しはあるんだ、こういうときに返してもらうぜ?「……君、本当に局員かね?」「は、俺は身内を幸せにするなら、鬼になるよ……あいつら、俺の嫁に手をつけようとしやがったんだから、それなりの報いは受けてもらわないと」 向こうはそんなつもりないだろうけどな~? 後呆れた顔すんな。あんただって同じ穴の狢だろう。 とにかく、そのつもりで血液を採集。 彼自身のスペックも調べ、ストレージに記憶。 ……むぅ、彼自身ナンバーズと遜色ない……これの路線で行ったほうがよかったんじゃないか? ……ああ、それじゃナンバーズと同じだから、別の路線を模索したかったのか。 「……最後に二つだけ。ユーゼスの奴、何が目的なの?」「ああ、あいつの目的は、特異点の操作だよ。クロスゲートパラダイムシステムといって」「因果律の完全操作? だからそういうのは宇宙の果てでやってくれよ、本当に迷惑な……? 何だよその目は」「い、いや……君のほうが凄いなと思ってね……」 俺はチートだからいいの。 でも待てよ?「パラダイムにはラプラスデモンタイプコンピューターいるだろ? 目処あるの?」「……まあ、一応な。辺境世界のロストロギアに、風の精霊王を封印したデバイスがあって」「サイバスター、ロストロギア扱いかよ……ち、やっぱり龍と虎もその方向だな」「一体何者だ君は? 何故俺の説明一部だけで把握できるんだ?」 おいおい、何でそんな涙目なんだよ? いやイメージだけど。「はん。あんたがタイムダイバーなら、こっちは天下無敵のチートトリッパー様だぜ? ……観測者とも言うがな?」「!? ……あ、アカシックレコードを紐解いたというのか! 君は!」「一部だけな? ……それに、情報量が膨大だから、時々飛んでる部分もある。……だから、簡単な説明で大体分かるよ」「……し、信じられん……」 俺のほうが信じられんわい。 魔法少女物にグログロ陰謀物入れるんじゃない。 夢が穢れるだろうが、メルヘンが! まあ、実際にはアカシックレコードのアの字も触れていないけど、向こうにはそう考えてもらった方が便利だな。「どうせ、サイバスターの操者はもう決まったかそろそろ決まるだろうし、後は特異点を持ってるあいつだけだな……」「シュウ・シラカワ博士だな?」「……どこにいる?」「その辺境世界に行っている。……作戦の開始は、七五年の四月からだそうだ」 は、そうかい。 三期本編に合わせてくれるつもりか。 ……面白い。「乗ってやろーじゃんユーゼスのシナリオに。……途中でメッタメタに掻き回した上で、アロンダイトでぶった切ってやる……ベルカの騎士、舐めんじゃねえぞ」 どうも、俺がゾルダーク博士の代わりになっちまったみたいだな。 望むところだ。 「二つ目の質問は?」「もういいや。……あ、こっちから忠告。……俺の身内に手ぇ出したら、計画前に殺してやるって馬鹿に伝えといて? ……それまでは、直接攻め込んでやらないよ」 居場所聞こうと思ったんだけど、目処ついたし。 まだ五分だけど、多分、あそこだ。「……君は、怖いな……鬼神だな、まるで」「は、鬼は嘘が嫌いなんだけどな……」 俺は嘘つきだからね? ……定期的に話し合うってことで話を終わらせ、フェイトたちのところに戻ったら、「ほら! 回避甘いよ! アクセルシューター!」「でぇえぇぇぇぇ!?」 ……おやまあ。 教導魂に火が付いたか、ダテ三尉に稽古つけてるなのは様。「……どうしてこうなったのさ?」「うん……その、私たちのようになりたいって言ってたから、じゃあ、少し訓練しようかって事になって」「はぁ……なのはの琴線に触れたか……まあ、ちょっとした底上げにはなるかな……」 たまに出張訓練か出稽古させるか、こいつら。「トワ・ハラオウン査察官」「……なんですか、ブランシュタイン三尉?」 ライディース・F・ブランシュタイン三等空尉。 エルザム兄さんの弟である。 「すみません。査察官の勧誘を蹴っておきながら、実験隊の隊員になってしまって……」 あれま、気にしてたんだ。 律儀なことで。「……ブラ……呼びにくいからライ君でいい?」「え!? は、はぁ」「お兄さんから伝言受け取ってる」「!?」 を、凄く目を見開いた。「『馬鹿者』……以上だ」「……そうですか……兄は、今、どこに?」「教えるなといわれてるんでな。黙秘させてもらう……が、俺から言わせてもらうとだ」「……」 経験者からの訓辞と受け取れ。青二才。 ……まあ、この人俺より年上だけど。「お前一人で何でもできると思うな、たわけ! ……経験者の言葉だ。説得力はあるぞ?」「……ハラオウン査察官も、同じようなことが?」「俺はいっつもだよ。……一人で問題抱えて、しばらくやってみて、出来そうならやるし、出来なかったら仲間を頼る……俺の師匠がさ、最初に怒鳴ってくれたんだよ。お前一人でできることは、一掴み分しかねえってな?」 ゲンヤのとっつあんと仕事して、最初に怒鳴られたんだっけか。 一人で突っ走って、犯人もろもろ逃がして、最初に担当させてもらった事件だったな。「あんたも同じだよ。……下手な意地張ってないで、仲間を頼れ。いなけりゃ作れ。……あそこで走り回ってる阿呆でも、何かの役には立つはずだ。お前らのリーダーも、お前を見てくれてるはずだし、隊長……は、胡散臭いからいいか」「……は、はぁ……」「ま、俺からの説教だ。……多分、あんたの兄さんも同じ気持ちだと思うぜ?」 一言で済ましてるけど、ここまで言わないとわかんないよな、普通。 ……わかんなかったらシラネ。俺の部隊じゃないし。「……ハラオウン査察か「名前で呼んでくれ。長かろ?」……せつなさん、ありがとうございます」「あんたの方が年上なんだから、呼び捨てでいいのに」「……仕事中、ですから」「律儀なことで……」 査察官だからって、給料減らしたりする権限ないんだよ~? ボーナス査定もやらないし。「よかったら、フェイトに稽古つけてもらえ。……技術の底上げにはなるだろう」「はい!」 つーわけでライ君はフェイトに預け、ラストのお嬢様のところへ。「はじめまして、トワ・ハラオ「も、名前で呼んで。長い」……えっと、いいんですか?」「いいよいいよ。……格好つけて二重姓なんかにするんじゃなかったな~。自分も言いにくいとか……」 最初、舌噛みまくって練習したのは秘密である。「じゃあ、改めて……アヤ・コバヤシ二等空尉です。せつなさんの活躍は耳にしてます」 え?「俺の活躍って? ……たいしたことしてないけど」「謙遜しないでください。低ランク魔導師の部隊をエリートに押し上げた、最大の功労者と聞いています」 ……ああ、そっちね。「あれは完全に部隊の連中の努力のお陰だよ。俺はそのサポートにまわっただけさね……俺は、もっとのんびりゆったり仕事したいんだがなぁ……」 どこぞの馬鹿のせいでまた仕事増えたやんけ。 とりあえず、関係者に殺気送っとく。 ……あ、周り見てる。 こっちじゃたわけ。「……その、せつなさん。……一つだけ、お願いしてもいいですか?」「ん? なに?」「……もし、手が空いていたらでいいので、私の妹を探してほしいんです……行方不明になって、もう三年たちます」 ……だとよ、このエロ兄貴。殺気を多方向からビシバシ。 ……ふふふ、慌ててる慌ててる。 本当に殺気の使い方だけ上手くなってくなぁ……「マイ・コバヤシ……で、合ってる?」「!? ご、ご存知なんですか!?」 第一被害者だからな。 よく覚えてるよ。生贄の巫女。「今、絶賛捜査中。……つっても、まだ尻尾すらつかんでないが、期待しないで待っててくれ……被害者も犯人も必ず捕まえるつもりだ」「……ありがとうございます……」 礼はいらんよ。 知ってて知らん振りしてるようなものだし。 ……はあ、やるせないなぁ、マジで。「んじゃ、あぶれ物同士、仲良く訓練しますか?」「……はい! お願いします!」 はい、お願いされました。 ……兵装使わずにパラディンのみでファンネルの誘導講座。 もとい、空間把握の概要を指導。 本当は、これこそなのはの本領発揮なんだけど。「ほらほら! ちゃんと飛ぶ! ふらふら飛んでたら、いい的だよ!」「ひぃぃぃぃぃ!!」 ……南無南無。 見学(出稽古)終わって隊舎に戻る。 お、アイビスだ。「お疲れ、アイビス。調子はどうだ?」「……ほっといてください」 あれ? ……ひ、久々に負け犬オーラ見たよ?「どしたの? ……はじめて会った時以上の負け犬オーラ出てるけど?」「!? ま、負け犬……」「違うというなら、何があったか話してみろ……」 ……聞けば。 人のいない間に、航空隊の部隊が来て、訓練隊との模擬戦を頼んだらしく、留守番のキタムラ教官はこれを受理。 その部隊にあのプレスティ女史がいて、一対一の模擬戦で負けたらしい。 ……ふむ。 なるほどな。「……まあ、お前は長期コースで訓練頼んでるしな。まだまだ、彼女には勝てんさ」「そんな……」「ちなみに、うちのなのはだが」 面白いことを教えとこう。「教導隊に入るまで、フェイトに模擬戦で勝てなかったんだが、知ってるか?」「……ええ!?」 これは実話。 魔法使い始めたときから、リンディ母さんの講習中も、管理局に入った後も、フェイトに勝てなかった。 まあ、フェイトのバックには大魔導師が付いてて、なのはの後ろには結界魔導師。 結果は歴然としている。 勝てるようになったのは、大怪我未遂のあの事件の後。 特に、教導隊に入った後は、6:4でなのはの勝ち。 今もこの数字は揺らがない。 ……原因は全部俺にあるんだけどね?「誰しも、最初からエースじゃないって話さ。俺なんか、今でさえ、シグナムに剣で勝てないし、魔法じゃなのはに勝てない。……まあ、何でもありにすれば勝てるけど」 俺の戦い方は姑息な上、卑怯なんじゃ。 勘弁してくれ。「……まあ、空も飛べるようになっただろ? 魔力値も上がり始めてる……自分は大器晩成型って考えて、芽が出るまで耐えてみな? ……納得できないんなら、俺の胸を貸してやる。……一戦、やるか?」「……はい! お願いします!」 よしよし、立ち直った。 ……しっかし、キタさんよぉ。 勝手に模擬戦受けんなよ。こういうまだまだの奴だっているんだから。 後で文句言っとこ。「パラディン、セットアップ! 【アロンダイト】トレーニングモード! ……来い! アイビス! ベルカの業を、叩き込んでやる!」「はい! せつなさん!」 まあ、先に、ちょっと熱血指導しますかね。 柄じゃないけど。 二時間指導して、やっと第三事務室へ。 先に戻ってたフェイトと今後の打ち合わせを……あれ?『あ、戻ってきたわね、せつな』「せつな、お帰り……アイビス、元気になった?」 あれま、知ってるのか? そして通信ディスプレイに母さん?「おお、さっきすっきりした顔でシャワー浴びに行ったよ。……で? 母さんはどしたの?」 こっちに通信してくるなんて珍しい。『仕事の依頼よ……と、言っても、ちょっと行って貰いたい所があるだけなんだけどね?』「お使いみたいな物?」 そういうのは自分の部下にやらせてください。『……そうとってもらっても構わないわ。期間は一ヶ月前後。……場所は、九七管理外世界。日本の北の都市よ』 ……北? さらに、期間長くない?「あのさ、母さん。俺、一ヶ月も部隊空けられないんだけど?」『あら? あなた一人が抜けたくらいで、部隊運営が滞るような、そんな柔な部隊なのかしら? あなたのドリームチームとやらは』 カッチーン……と、来たい所だが。「挑発は効かないぞ? 部隊は抜けても、仕事が無駄にあるんだから」「それは私たちがやるよ。……えっとね、せつな? 約束覚えてる?」 ? 約束?「む、無理はしてないはずだぞ? みんなを頼ってはいるし……」「……覚えてないね? 『有給が三〇〇日溜まったら、一ヶ月間分消化する』……覚えはある?」「……ま、ましゃか……」『先月の時点で、あなたの有給、三〇四日、溜まったから、その報告をフェイトさんに』 そ、そんなに……うう、忙しくて計算するの忘れてた…… じゃあ、その約束を果たさないと……「覚えてるよね? 休まないと、強制的に部隊から降りて、女子学生に戻ってもらうって」「……うう、何でそんな約束しちまったんだ俺……」 何もこんな忙しい時に……ええい、しょうがない。 一回休むか、長めに。『まあ、この依頼でリフレッシュしてきなさい。ちょっと気温の低い町だけど、いいところよ?』「へいへい。……フェイト? 連絡だけは欠かさないでな? 後、緊急事態には必ず呼び出せ。……頼むな?」「……本当に、仕事の虫だね、せつなは……そんなに、私たちは頼りない?」 いやぁ、頼りがいはありますよ? ただね?「……バルシェム系の奴ら、何やってくるか本気で読めない時があるからな。高ランク魔導師が使い物にならない事態だって、充分考えられる……充分気をつけて仕事してくれ。頼む」「……わかった。何かあったら、連絡する。……せつなを泣かせたり、しないから……ね?」 む、むう……抱きしめられてしまった。 後、頭撫でないでくれ、恥ずい。『あー、ごほんごほん。おかーさんの前でラブシーンは勘弁して欲しいなー?』 むぅ、無粋だぞ母。 もう少し堪能させろ、久々の抱擁なんだから。「……んで? 向こう行って何すりゃいいんだ? ただ休んでればいいのか?」『ああ、それだけで済むなら、それでいいわ』 はぁ? ……意味がわからんなぁ。「何か起こるのか?」『何も起きないかもしれないけどね? ……とにかく、あなたは行って、学生生活してくればいいだけだから』 はあ、学生……なにぃ!?『短期間だけの転校よ? 久しぶりの学生生活だから、ちょっと抵抗あるかもだけど、あなたなら大丈夫よ』「……い、今更俺にスカートを履けとおっしゃる気か、かあ様は!?」『いえす、ざっつらいと』「……マジでか……」 ま、また女装呼ばわりされにゃならんのか……『後、クラウン連れて行っちゃ駄目よ? デバイスもパラディンだけ。ATは不可。兵装は杖のみ。……まあ、これで充分だと思うわ』 何があるかもわからんのに、パラディンとブレイブハートだけ!? ……な、何をさせたいんだこの母は…… よ、読めない……『ちなみに、今週末から行って貰うから、関係者各位に連絡しといてね?』「て、あさってやんけ!? 早く言ってくれそういうことは!」『じゃあ、詳しくは後でね? 行く前に家寄りなさいね~?』 ぶつ切りされる通信ディスプレイ……お、おのれ、お天気母さんめ……「本気で揉み倒してやろうかあの人は……」「だ、駄目だよせつな?」 はぁうう、連絡回さないと…… まあ、戦力増加に繋がったから、悪くはない休暇になったけど、ね? *おお、久々に一話にまとまった。作者です。 次回から思いっきり道が外れ、別の作品に紛れ込みます。 複線を集めると、どこの作品に行くかはわかりますが……ばればれ? 以上、作者でした。