さて、普通に朝が来ましたよっと。 ……母さんも家に戻り、病室には俺一人……いや。「むにゃむにゃ……」 新しく、俺の相棒となったクラウン。 幸せそうに寝てる……リンディさんの顔で。かわいー……ておい。 ……く、寝顔に萌えてどうする俺!? ちくしょー、朝日がまぶしー……「……あん?」 不意に感じる、体の違和感。 ……えっと、えっと…… 腰に……いや、股間になんかある。 ……まてまてまて! こ、この感覚は……もぞもぞ。 つ、ついとるーーーーーー!? ……となると原因は。「起きろ!」「ぱぎゅ!?」 クラウンの腹におもいっきりでこピン。布団から転がり落ちる。 あ、ベシャっていった。「い、いきなり何よぉ~? 赤ちゃん生めなくなったらどうすんのよ~」 生めるのか融合騎。 でなくてだな。「これは一体どういうことだ」 見せるのは腰に張られたテント。 パジャマが女の子のものだけに酷くシュール。「あら、立派」「……よーし、パラディン。アロンダイト出せ。ぶった切ってやる」「嬉しくないの~? ちょっと遺伝子弄って両性具有にしてあげたのに」 ……ホワイ?「ふ、ふた○り?」「切り替え自由の便利なものよ? 男性体と、女性体。……男性体は、筋肉の増加による運動能力の倍増。女性体は、リンカーコアの蓄積魔力量増加と処理能力の倍加による、魔法能力の倍増。……しかも、男女切り替えによる、副作用なし! 頑張りました!」 胸張って、堂々と説明するクラウン。 その笑顔がむっちゃムカつく……が! 正直、その素敵性能はありがたい……無理かと思ってた、あの計画が使える! じゃあ、誰か来る前に。「えっと、どうやって切り替えるんだ?」「女性のイメージを体に映すのよ。女性のふくよかさ、しなやかさ、後、柔らかさ。男性体はその逆ね。男性の硬さ、力強さ、そして、筋肉の質感……やってみなさい?」 えっと、前の体は充分見てるから……ふぅ! ……! と、どうかな?「……よし、ない」 ようやく元の体だ……うん、胸も……ペッタンだけど、女の子の胸だ。 しかし、寝てる間に男に変わると、いろいろ怖いな……あ、そうだ。「男性体は顔も変わるのか?」「まあ、少し彫りが深くなる程度で、基本は同じよ。あなた、中性的な顔立ちだし」 それなら、いっか。 一応、無意識下で変わらないように練習しないと。「で? どうかしら? 男の体を手に入れた感想は?」 うん。「余計なことすんな♪」 真っ向唐竹割り。手刀がクラウンの脳天にヒット。 悶えるクラウン。自業自得じゃ。 「ま、マスター横暴……このドS」「何を今更。ああ、そうだ」 修学旅行潰された恨みもあったな。 両腕を摘まんでがっちりホールド。そのまま頭の上に。「え!? あれ!?」「……十七歳リンディさんはぁはぁ」「犯される!?」「弄り倒したる」 足腰立たなくしてやるわ! おおう、これは見事な造形。ちゃんとやらかい。 マシュマロみたい。「いや~!! 助けて~!! シルビア~!!」【まあ、自業自得ですし】 さすが相棒、分かってくれてる。 さって今度は下のほうに……「せつなさ~ん? お体の具合はいかがですか~?」 ドアを開け、入ってくるのは銀髪ちみっこ部隊長。 ノックぐらいしろよ、取り込み中だぞ……て、まてい。今の俺って…… どこから見ても、人形弄りの変態少女です。本当にありがとうございました。「せつなさんが本物の変態に!?」「誰がか!」 そう見えても文句言えません。 はっはっは……はぁ~。【……まあ、自業自得ですし?】 どやかましいわ。 朝一で見舞いに来てくれたのはうちの部隊長、テレサ・テスタロッサ。 通称テッサ。 なお、今回のロストロギア『忘却の箱庭』は、教会からうちの部隊に探索依頼されたものらしく。「一応、せつなさんの手柄ってことになりました。それで、昏睡中の四日間に関しては、ロストロギア被害申請してありますから、追加で四日間の休暇が取れますよ?」「それは、あさって中将との打ち合わせがある俺に対するあてつけか?」 明日も一回部隊に顔出して、今回の件の報告書と、ロストロギアの性能レポート、後、教会に顔出して、無事な顔見せないと……ふふふ、もうしばらく休めねぇ~。「ま、まあ、あまり重要じゃないことは私たちに任せて、休むことも考えてくださいね? 一応、有給にまわしておきます」「お願いしまーす……あ、そうだ」 「私汚されちゃった」みたいなポーズで不貞腐れてる、性悪融合騎を出して、「こいつ、デバイス登録するから、必要書類を教会から取り寄せといてくれ。後、ロストロギア所持申請書も」「はい、分かりました……何か、どんどんロストロギア化が進んでいきますね、せつなさん……」 それは元々はやての称号じゃ~。 レアスキル『蒐集』持ってないから、そう呼ばれやしねえ、うちのはやてさん。「後、一度身体検査しないとな……」「? どうかしたんですか?」 ふふふふふ。それはですね?「この性悪のせいで、切り替え式両性具有体になっちまった……ロストロギアどころか、だんだん化け物になっていく~……」「……えっと、それは……ご愁傷様です……」 大きなお世話じゃこんちくしょう。 簡単な報告と申し送りをして、テッサ退場。お見舞いのバナナは美味しくいただきました。もむもむ。 後、両性具有の事は黙っててもらう方向で。 検査があるから、すずかには話さないとな~。 ……す、すずかと言えば……「……おいクラウン? なのは達の魂の一部は、ちゃんと本人たちに戻ったんだな?」「ええ、そうなるわね」「……て、ことはあいつら、箱庭の記憶を……」「持ってるわよ? ……一気に思い出して、今頃泣きながら帰ってくるかも」 と、いうことはだ。「俺、生贄免れたわけだから……やばい、もう女性の演技できないぞ俺」「おとなしく泣かれたら? この幸せ者」 く、泣かれるだけならまだしも。「全力全開でなのは的お話し合いとなると……体が持たんかもしれん」「……が、頑張って?」 ちっくしょう……あ、なんだ。「……えい」 再びクラウンをホールド。 逃げられないように、お見舞いのバナナについてたリボンで手足を縛る。「ま、まさか……」「お前生贄にすればいいだけだな。多少は俺にも来るかもしれんが……まあ頑張れ」「い、いやぁぁぁっぁぁぁ!!」 あっはっは。 一蓮托生じゃ、相棒。 一緒に地獄に落ちようぜ。 昼食を食べて、リハビリステーションで体を慣らす。 昨日みたいな間抜けな真似はできません……まあ、一時間もすれば、普通に戻ったけど。「ちょっと筋力落ちたか?」 全体的に。 まあ、訓練始めれば、元に戻るだろう。 もう一回リハビリメニュー一通りこなして、担当医から退院の了承を貰う。 一応、経過を見るため、退院は明日の午前中に。 で、病室に戻ると。「……せ、せつな……これはどういうこと?」 顔を引きつらせた母さんが、縛り付けられてもじもじしているクラウンを指差して固まってました。 そして、その隣には、エリオ。「……お、お姉ちゃん……あ、危ない人になっちゃったの?」 いいいいやあああああ!! 俺をそんな可哀想な人を見る目で見ないでぇえぇぇぇぇぇ!! 「……マスターの変態」「うっさい! 性悪人形!」 それは緑色の三番です。こいつの髪は翡翠色だが!「そいつは生贄です。……逃げられないように固定してるので、放置の方向で」「えっと、同じ姿の私としては、勘弁して欲しいわね……」「なのは達の全力全開を、病み上がりで受けるわけにはいかないんです!」 それこそ『らめぇぇぇぇぇぇ! こわれちゃぅぅぅぅぅ!!』てなっちゃうから! 「とにかく、はずしなさい」「……へぇ~い」 ち、仕方ない。 顔赤らめて恥ずかしがるリンディさんで我慢しとこう。 エリオの情操教育的にも悪いし。 拘束をはずすと、リンディさんに擦り寄るクラウン。「ありがとうリンディさん! あなたは私の女神よ!」「ああ、あなたは、なのはさんたちが来るまで逃げないように……逃げたら潰すわね♪」「……はい」 馬鹿め、リンディさんに逆らえるものなどいないわ……いても、うちの妹ぐらいか。「お母さん強いね」「俺らの母は最強だからな。……エリオ、嫁にするなら、こういう女性を選びなさい」「うん!」 まあ、方向性は違うが、将来有望なお嬢様が二人……一人は最初敵だけど。 君に懐いてくれるさ、うんうん。 ……そろそろ放逐されるはずだから、探しに行って、フェイトに預けないと。 未来を知ってるって、便利は便利なんだけど、いろいろデメリットがあるからな~…… 今回の事でよくわかった。 何も、成長しないのは力だけじゃなく、精神まで作用するのか。 フェイトやはやては精神的に、元が元だっただけに強めに設定されてたけど、なのははよく考えたら、幸せな家庭出身なんだよな~。 ちゃんとイベントこなさなかったから、精神未熟になるはそりゃ。 ううう、でもな、無理矢理きつい仕事こなさせるわけにも行かないし…… これは、後五年間でどれだけ成長するかに期待するしかないか。 まあ、これは仕方ない。 いざとなったら 、俺が盾になろう。……でも、それして泣かれるのも嫌だな。 できるだけ、俺に依存しない方向で……駄目か、リカバリできんなそれに関しちゃ。 くっそ~下手打った~頑張りすぎじゃ、当時の俺~。 でも、フェイトやはやての事考えると、あれが一番だったんだよな~。 なのはすまん。 て、まてよ? ……俺、箱庭で、ぶっちゃけちゃいけないことぶっちゃけなかったか?「……お姉ちゃん? 顔真っ青だよ?」 それはね? 血の気が引いてヘモグロビンが足りなくなっているからです。 さぁーーーーって血が下がっていくのが分かる。 やべ。 インチキばらしちゃった。 ……こりゃ、俺も覚悟しなくちゃだな……「母さん。なのは達が帰ってきたら、いろいろ話したいことがあるから……先に、エリオ家で待たせといてくれる?」「……エリオには、まだ話せないこと?」「うん。……御免な、エリオ。お姉ちゃんのわがままを許せな?」「……うん。お姉ちゃん、直ぐに元気になってね?」「おう! お姉ちゃんは結構無敵だ」 怖い人は沢山いるけどね。ぶるぶる。「じゃあ、エリオ。家に帰ろっか?」「うん!」 手を振って、エリオとはいったんお別れ。 明日にはまた会えるし。「エリオ君可愛いわね~。……食べていい?」「そのサイズでどうやって食べる気だ……」 フルサイズができるんならまだし……あ、できるのか?「できなくはないけど? このまま大きくなるんだし」「エリオに手ぇ出したら、漏れなく母さんに潰されますが?」「……い、命がけは止めとくわ」 それがいいでしょう。 それに。「リンディさんの姿で男誘惑したら、母さんの迷惑になるから止めろ。……やったら、本気で壊す」「……わかった。ごめん」 流石に、男漁りする艦隊提督なんて汚名、母さんの経歴につけられん。 ただでさえ、管理局はゴシップにうるさいからな。 ……家では暢気なほんわか奥さんでも、管理局では敏腕エリート提督様だ。 こいつのくだらない欲望で、それが崩されたら……こいつだけでなく、それを制御できなかった俺自身も許せない。「マスターで我慢するわ……あなた以外の男は見ない。騎士の誓約よ? これでいいかしら?」「……まあ、それは、了承しよう」 リンディさんは好きだしね? 母さんだって好きだし。 ……むぅ、ちょっとどきどき。 これって、プロポーズだよね? 相手が融合騎なのがあれだけど。 時間的にそろそろか。 クラウンとパラディンで連携の相談。 リミッター解除時は兵装システム運用はパラディン、肉体強化系はクラウンで。 リミッターつけてるときは、パラディンで防御、強化系。クラウンはバインドなどの補助系を担当してもらうことに。 なお、クラウンは魔導師ランクでいうとAA+。 保有制限があるから、魔導師登録申請しないけどな! さらに、こいつの能力資質は、幻影、幻惑などの幻術系が得意らしい。 戦術の幅が広がる! これは嬉しい。 後、ユニゾン効果として、処理能力の倍加もある。試したら、ツヴァイの約二倍。リインに勝らないまでも、その次くらいに位置する処理能力。 くたびれ儲けにならずにすんだな。 京都旅行の代換えにはなる。……休暇と旅行はやっぱ惜しいが! ……そして、運命の時間がやってくる。 多人数が近づく気配……来たか!「せつなちゃん!」 第一声はなのは。 続いて、フェイト、はやて、アリサ、すずか。 最後に、リンディ母さん。「(……ちょっとだけ悪戯するから、防音結界だけよろしくおねがいします)」「(ほどほどにね? ……さっきまで本当に泣きそうだったんだから)」「(あざーす)」 さてと。「なのは、みんなも、おかえり。……迷惑かけて、ごめんね?」 久々の女言葉。顔引きつらないように我慢我慢……「せっちゃん……ただいま……」 はやての泣きそうな顔……まったく、そんなに悲しそうな顔しなくてもいいのに。「せつな。あの、あのね? ……やっぱり、刹那さんは……」「……ごめん」 フェイト、マジごめん。 実はここにおる。「……せつなちゃん、刹那さんの分まで、私たちが一緒に居るから。寂しい思いさせないから……」「すずか……ありがとう」 あ、あかん。 ぼろが出ないように一言一言喋るしかできん。 ぐぅぅぅぅぅ! いつもどおり喋りてぇぇぇぇ!「……せつな。もう無理しなくていいから……あたしたちが、あんたの分まで頑張るから! だから……だから……」「泣かないで、アリサ……私は大丈夫だから……ね?」「せつなぁ……」 くっそっぉ! アリサマジかわええ! 抱きしめたい~押し倒したい~!「せつなちゃん、せつなちゃん……いつもどおりに、笑ってようぅ、男の子っぽく、笑ってよぅ……こんなお別れ、嫌だよう……」「なのは……ごめんね……私で、ごめんね……」「……ごめん……わがまま言って、ごめん……でも、でもぉ!」 いやぁぁぁぁぁ。 もう限界。 いいや、そろそろネタばれを……「せっちゃん? ちょっとええか?」 ? あれ? はやて? 真面目な顔に戻って何事?「……なに?」「……えっとな、せっちゃん。……あたし、おもたんやけど」「うん」「せっちゃんの女性意識……ほとんどカグヤちゃんに渡したって言ってへんかったっけ?」 ……言いましたねぇ。「それで、アリサちゃんがおうた子供のせっちゃんは言うたんやったな?『せつなの中に、女性意識はこれだけしか残ってない』って……小学生分の意識で、今のせっちゃんを運用するには、ちょっと無理があるんちゃうか?」 ……相変わらず鋭い! そうですよね? リソースぜんぜん足りなくなって、ほとんど人形化するのは目に見えてますよね? なのに、普通に受け答えするってのは無理がありますよね!「そして……最後に。女性意識のせっちゃんはな? 声が一オクターブほど高いんや……せっちゃん、男性意識の時の声で女言葉喋ってるやろ? ……それらの事をあわせると……」 どこぞの名探偵張りに、ずびし!っと指を突きつけて。「せっちゃんはいつものせっちゃんや! 何も無くなっとらん、何も失っとらん、本物の、本当のせっちゃんや!」 ……ちぃ、さすがはやて。 捜査官の名は伊達じゃないか。「……よくわかったな」「何年あんたの背中見とるおもとるん? ……あたしはあんたの妻やで? ……せっちゃんの事なら、そっくり全部まるっとお見通しや!」 わぁお。トリックかよ。 そっちで来たか。「え? じゃ、あ……」 唖然と俺を見る残りの四人……その顔を一通り見て、はやてを見る。 強気の笑顔。 さらに奥のリンディさん。 ……優しげな目を向けないでください。 ため息一つついて。「……まあ、そういうわけだ。……恥ずかしげもなく、帰ってきました~!」 お手上げ!「せつなちゃん!」「ちょ、脅かせるなバカーーーー!」「せつな……よかった、せつなぁ……」「よかった……本当に、よかったよぅ……」 はぁうぁ。結局泣かせてしまった。 そこは全員で突っ込んで欲しかったなぁ…… まったく。 ほんとに愛されてるよ、俺は。*多大な爆弾だけ置いてここまでとします。作者です。古代ベルカの技術は化け物か!? 設定しといてなんだけど、やり過ぎた感が否めない。BINさんには勝てませんよ。うん。明日から仕事だし。以上、作者でした。次回は説明編。