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No.6790の一覧
[0] とことんリリカルを引っ掻き回してみた・リリカルオリ主多重クロス[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:33)
[1] 1.りーいんかーねいしょん[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:57)
[2] 2.海鳴の街の眠れない夜[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:54)
[3] 3.空飛ぶ魔法少女の不思議な毎日[4CZG4OGLX+BS](2009/02/25 19:15)
[4] 4.幸せは儚き少女の為に[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:22)
[5] 5.夜天の主は彼女なのか?[4CZG4OGLX+BS](2009/03/02 11:12)
[6] 6.オリエンタルスターフライト・前編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:21)
[7] 6.オリエンタルスターフライト・後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:26)
[8] 7.スノーホワイトケージ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/07 12:21)
[9] 8.悲しみは散り、夢は幻想に[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:58)
[10] 9.海鳴温泉館 一つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:32)
[11] 9.海鳴温泉館 二つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:35)
[12] 9.海鳴温泉館 三つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:56)
[13] 10.明治十七年の温泉アリス[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:36)
[14] 11.管理局が見ている[4CZG4OGLX+BS](2009/03/14 09:01)
[15] 12.星色マスターブレイカー[4CZG4OGLX+BS](2009/03/16 10:55)
[16] 13.Retrospective of Mid-childa[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:44)
[17] 14.サクリファイスドール[4CZG4OGLX+BS](2009/03/19 08:02)
[18] 15.夏色脇路[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:45)
[19] 16.ボーダーオブライフ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/27 14:26)
[20] 17.ボーダーオブライン 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:35)
[21] 17.ボーダーオブライン 中編(微グロ表現あり・選択肢あり)[4CZG4OGLX+BS](2009/03/28 22:42)
[22] ↑の選択肢解説特番。もしくは、作者のお遊び。[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:05)
[23] 17.ボーダーオブライン 後編 ライン……[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:18)
[24] L18.人間と機人の境界 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:46)
[25] L18.人間と機人の境界 後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/30 21:29)
[26] L19.インペリシャブルシューターガール[4CZG4OGLX+BS](2009/05/20 18:30)
[27] L20.人生遊戯 -ライフゲーム-[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[28] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女[4CZG4OGLX+BS](2009/05/22 21:08)
[29] L22.ブレイジングシューティングスター[4CZG4OGLX+BS](2009/05/23 04:07)
[30] L23.プリズムコンチェルト ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 02:45)
[31] L23.プリズムコンチェルト 海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[32] L24.マジカルガールズウォー リリカルサイド+α[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:38)
[33] L24.マジカルガールズウォー オリジナルサイド[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:07)
[34] L25.新難題ロストロギア 出発編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 19:58)
[35] L25.新難題ロストロギア 一日目前半[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 20:07)
[36] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『アリサ』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:39)
[37] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『すずか』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 01:03)
[38] L25.新難題ロストロギア 一日目後半[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:59)
[39] L25.新難題ロストロギア 二日目朝~昼[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 19:43)
[40] L25.新難題ロストロギア 二日目昼~夕方『刹那』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/27 00:10)
[41] L25.新難題ロストロギア 二日目夕方~夜『はやて』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:34)
[42] L25.新難題ロストロギア 三日目前編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:44)
[43] L25.新難題ロストロギア 三日目後編『なのは』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 23:01)
[44] L25.新難題ロストロギア 四日目朝の風景[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 17:49)
[45] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:40)
[46] L25.新難題ロストロギア 四日目夜の風景『最終試練・せつな』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 20:35)
[47] L25.新難題ロストロギア 五日目リザルト[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 23:24)
[48] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・表[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:01)
[49] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・裏[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:02)
[50] L25.新難題ロストロギア 五日目おまけ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 19:35)
[51] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[52] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 23:44)
[53] L26.百万鬼夜行 夜の行軍[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:18)
[54] L26.百万鬼夜行 午前の任務[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:04)
[55] L26.百万鬼夜行 午後の策謀[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[56] 現在、更新が乱れております(謝罪と説明という名の言い訳)[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 19:14)
[57] L27.大魔導師の死 史実の死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:15)
[58] L27.大魔導師の死 希望のための死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:41)
[59] L28.トリップパラノイア アジトにて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:46)
[60] L28.トリップパラノイア 外にて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:47)
[61] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『地上本部の人攫い』[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 22:51)
[62] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『特務隊の銀狐』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:07)
[63] L29EX.シューティングスターレヴァリエ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:05)
[64] L30.奇跡降臨の道しるべ[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 23:12)
[65] L31-1.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と雪の街[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:43)
[66] L31-2.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と新しい生活[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:37)
[67] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 前[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:04)
[68] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:16)
[69] L31-4.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と夜の学校[4CZG4OGLX+BS](2009/07/23 14:35)
[70] L31-5.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と迷子の子狐[4CZG4OGLX+BS](2009/07/25 10:28)
[71] L31-6.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと舞と素敵なお母さん[4CZG4OGLX+BS](2010/05/05 13:20)
[72] L31-6EX.彷徨える命題[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:04)
[73] L31-7.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなとなのはと休日のデート 前[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:13)
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[6790] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』
Name: 4CZG4OGLX+BS◆b9835591 ID:9ee4ff7a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/05 18:40
 <フェイト>

 このままじゃ駄目だって、わかってる。
 私も、記憶を戻して、この世界から抜け出さないとって、わかっているんだけど……

「ほら、フェイト! 右! 左! 正面!」

「ふ、は、と、えい!」

 暢気にモグラ叩きしてます。
 うう、結構難しい。
 なのはと訓練してるときのほうが、まだ楽……あう、また逃がした。

「……56点……いや、まあ、初めてだっけ?」

「あ、あんまりやらない……から……」

 ゲームセンターに付き合うことはあったけど、なのはとアリサの独壇場だったから。
 ダンスゲームや音楽ゲームはすずかと―――の領域だったし……? 誰だっけ、今の顔……

「……おーし、俺がお手本を……? どした?」

 ……せつなの腕を引っ張って、ダンスゲームの前に。

「……えっと、これ、やろ?」

「む、ダンレボ……最近やってないが、まあいいだろ。んじゃ、ステージ乗れよ、二人プレイな?」

 コインを入れ、曲を選択。
 私はせつなの右に。

「まあ、最初は簡単に……よっと!」

 曲が始まる。
 ……せつな、一度もミスしない。
 私のパート……三度ミス。せつなの番に。

「……! ……ふ、ほ!」

 ……うん、真剣な表情。そして……楽しそう。

「? フェイト? お前のパート来てるぞ?」

「え? わわ!」

 あわわ。うう、ぜんぜん踏めなかった……
 私のミスの分、せつながカバー。なんとか一曲終わった。

「……よし、フェイト、降りて見てろ? 面白いことしてやる」

『フェイト、見てて? 面白いことしてあげる』

 !? 今、あの子と被った。
 あの子は……誰?

「さって……できるかなっと!」

 あ、凄い。
 一人で二人プレイ。右へ左へ……手まで使って。
 凄い、ミスがぜんぜんない。
 ……綺麗。

「よ、はぁ! って、ち、の、この! せ、は! よいしょ! と、フィニッシュ!」

 ……パーフェクト……じゃ、ないんだ。
 それでも、ミスが十二個。
 ……でも、凄くきれいだった。

「どうだった?」『どうだった?』

 !? まただ。また被った。
 ……せつなと同じ表情の、女の子の顔……
 誰なんだろう……

「……うん、綺麗だった」

「……凄いとか通り越して綺麗かよ……いや、嬉しいけど」

 あ、せつな照れてる。
 ……可愛い。

「あ、ほれ。ガンシューやろうぜ、ガンシュー」

 拳銃で的を撃つゲーム。なのはが得意なんだけど……
 いいや、今は、せつなと一緒だから。

「……うん!」

 目一杯遊ぼう。



 <アリサ>

「ああ! そこは先に回復アイテムとらないと! あ、フェイト、ちゃんとリロードしなさ、こら、せつな! 引っ付きすぎよ!」

『アリサちゃ~ん? ちゃんと見張ってて~?』

 ちゃんと見てるわよ! しかし、見てれば見てるほど……ただのデートじゃない!
 くぅ……あたしとは、こんなイベントなかったのにぃ~。
 く、悔しくなんかないんだからね!

『アリサちゃん、ツンデレモードやね』

「ツンデレ言うな!」

 まったく……そういえば。

「なのは? 本当にその、あんたとフェイトがアニメになってた動画見たのね?」

『え? う、うん。その、フェイトちゃんと決闘してる動画と……その……』

『え、エッチな画像だね……? せ、せつなさん、そ、その、お、男の人だし……』

 ま、まあ、それは、仕方ないわよ。

 ともかく、あたしたちが、せつなの……刹那の世界では、アニメーションのキャラクターだって事実は本当だったってこと。
 ……せつな、それを元に、私たちの前を歩いて、私たちの問題を解決して行っていたんだ。
 その、恩恵を最も多く受けたのが、フェイトと、はやて。

 詳しく聞くと、フェイトは第一期……その中で、なのはと出会い、戦い合い、最後には、母親とアリシアを失ってしまう。
 はやては第二期、シグナムさんたちがなのはやフェイトを襲い、戦い、闇の書を完成させてしまい、その暴走する闇の書を、なのはやフェイト、アースラのクロノや、暴走から抜け出したはやてと守護騎士で、全力攻撃で破壊。……最後に、リインフォースさんが闇の書と共に消えてしまう。

 両方とも、悲しい別れが待っている話。
 それでも、最後には、みんな笑って、暮らしているお話。

 ……せつなは、その悲しい別れを、自分の知識と裏技で回避してしまった。
 プレシアさんとアリシアを救い、フェイトの家族を助け、闇の書を修復し、はやての家族を助け……
 本当なら、あたしたち……あたしとすずかは、その話の日常の象徴として、描かれるだけのサブキャラだったそうだ。
 けど、あたしたちが管理局に入ったのも、せつなが居たから。

 せつなは……あたしたちの世界からしたら、イレギュラー。居なかった存在。
 でも、せつなはあたしの記憶に、ちゃんと居る。
 ……もしかしたら、なのはが見れなかった『ストライカーズ』は、第三期……つまり、まだ起こっていない未来の話?
 だから、見れなかった?
 ……そして、これまでのせつなの行動は、全部その未来への布石?
 ……せつなは、一期と二期、あまり見ていなかったそうだ。
 そして、せつなのパソコンのDドライブにあった『ストライカーズ』は全部で二十六話。
 未来はすべて見ているって事?
 ……この世界から抜け出したら、しっかり話し合わないといけないわね。
 ……そ、その、エッチなファイルの事も! あたしの画像もあったそうじゃない!
 
「あ、アーム1。ターゲットが外に出るわ。……そろそろお昼の時間ね?」

 手をつないでゲームセンターから出る二人を、追いかける……
 て、フェイトくっつきすぎ! 離れなさいよ、ばかぁ!


 <せつな>

 さっきから、なんか見られてるなぁ~。なんか殺気も混じってるけど。
 まあ、

「? どうしたの? せつな?」

「いや? フェイトは美人だなと」

「は、恥ずかしいよ……せつなの意地悪」

 こんな美人と一緒に歩いてたら、そら見られるわな。
 春物セーターとミニスカート。さっきのダンレボこれでやってたんだよな。
 く、ゲームに夢中で鑑賞し忘れ……いや、待て、俺。
 煩悩退散。渇!
 さて、そろそろ昼だな。

「どこで飯食うかな……」

「……えっと、いつもどおりに、ここじゃ……駄目?」

 指差す先には……翠屋。
 いつもここなのか、俺。
 しかも、昨日の件があるからより辛いが……他の店も知らないし、まあ、いいか。
 
「いらっしゃいませ~……て、せつな君。フェイトちゃんも一緒か~」

 ……えっと、たしか、月村姉か?
 ここのウェイトレスなんかやってたのか。

「じゃあ、二名様ご案内~。好きな席座って~?」

 知り合いにぞんざいなのはテンプレなのか?
 窓に面したテーブルに向かい合って座る。
 ……さて、今日のランチは……

「……水だ」

 ……出たな、凶暴兄貴。

「……なのはとは一緒じゃないのか?」

「今日は違うな。……今度は客に斬りかかる気か?」

 昨日の件があるのでちょっと警戒&険悪モード。
 ……フェイトが心配そうな顔してるので、直ぐに止めるが。

「ふん。昨日は悪かった。……今日の食事代は奢りにしておいてやる」

 ラッキー。
 納得のいかない謝り方だが、奢りは大好きだ。
 思わず高いものを注文してしまいそうになるが……

「じゃあ、カルボナーラ、ランチセット、デザートにシュークリーム、食後のコーヒー付きで」

「えっと、同じものをお願いします」

「……了解した……次は負けん」

 最後、何ボソッと言ってやがる。また襲い掛かられんのか俺?
 ……次が来る前に、ここ抜け出してやる。

「……せつな。喧嘩は駄目だよ?」

「向こうが襲い掛かってくるんだよ……俺のせいじゃないやい」

 魔力強化しても互角以上に競り合えるって本当に化け物だな。
 実に恐ろしきはシスコンなり……

「でも、魔法まで使って……クロノに見つかったら、また始末書書かされるよ?」

「かと言って使わなかったら俺が切られ……え?」

 始末書って、あーた?

「……それ、ひょっとして……外の俺?」

「……多分、そうだと思う」

 あれま。
 いつの間に記憶戻ってたのさ?

「でも、まだ、その……せつなの……せつなが女の子って事を、思い出せないんだ……」

 あ、なるほど。
 外の俺とここの俺がごっちゃになってるのか?
 ……案外簡単に思い出せそうだな。

「お待たせしました~カルボナーラセットだよ~?」

 食事を持ってきたのは美由希さん。
 てか、入れ代わり立ち代わりなんなんだあんたら。
 よく見たら、ウェイトレスとウェイターと店長とパティシエみんなちらちらこっち見てるし……
 おいおい。仕事しろ。

「それで? せつな君はうちのなのはとフェイトちゃん、どっちが本命なの?」

 それが聞きたかったんかい!
 ……両方外の俺のじゃ、ちきしょー!
 でも下手なこと言ってフェイト泣かせたくないし、シスコンに斬られてもかなわんから。

「俺に構ってないで、自分の恋人探したらどうですか~? 高町家のコッペパン候補」

「売れ残ったりしないもん~! せつな君の意地悪~!」

 撃退成功。
 俺をからかおうとは、一万年と二千年はええ。
 八千年後に出直しなってな?

「? コッペパン、美味しいよね?」

「……えっと、フェイトは心が綺麗だねぇ……どうか、そのまま成長してくれると、お兄さん大喜びだよ?」

 皮肉が通じないどころか、そういう直球な台詞……
 本当に、外の俺は幸せ者だな……




 <はやて>

 ……さて。

「二人は翠屋で楽しくランチ~。あたしらは外で虚しくハンバーガー~。……この扱いの差は何やろ?」

「作者の好感度の差でしょ? フェイト萌らしいし」

「えっと、そういうネタは危険だと思うな……」

「うううううう、羨ましいの……せつなさんとデートー……」

 なのはちゃん、本当に記憶もどっとるん?
 あんま変わってないような……

「なのははいいじゃない、添い寝も、きききききキスもしてもらったんだから。あ、あたしキスだけだし」

「私もキスだけ……いいな~? なのはちゃん」

「ちなみにあたしは添い寝だけや……三人ともええな~?」

「しゅ、集中攻撃は止めてよ……」

 みんなそこそこにせっちゃんに依存しとるからな。
 今だけせっちゃん男の人やから、まるで彼氏に飢えとる女学生そのまんまの会話やね。
 それより。

「ほんまにせっちゃん、フェイトちゃんの記憶戻す気あるんかいな?」

「フェイトの大切なことよね? えっと……管理局に入った動機は……」

「せつなちゃんと一緒に居たいから……隣を、歩きたいからだって言ってたと思うよ?」

 ……じゃあ、今の状況そのままやん。
 ほんなら、今、記憶もどっとる?

「……えっと、先月、皆と仕事した後なんだけど……」

 なのはちゃん?

「あんたが誘拐されかかったってやつ?」

「それの前に、せつなちゃんとお話したの。フェイトちゃんと一緒に」

 ああ、そうなんか。
 道理でなのはちゃん、ATデバイス見てもなんも反応せんかったと思えば。
 
「そのときに、フェイトちゃん言ってた。自分は、せつなちゃんにいろいろしてもらってばかりだから、何かお返ししたいって。私もだけど」

 ……そうやんな。私も、せっちゃんにお世話になりっぱなしや。
 何も返せてない。
 ……むしろ、迷惑かけそうになったし……ツヴァイの件でかけてもたし。

「……あたしは、早い時期にせつなの計画に乗れたから、ATの件でフォローに回れたけどなぁ……」

「私も、せつなちゃんのお陰で、計画に乗れたから……でも、そんなにお返しできてないかなぁ……」

 皆、せっちゃんのお世話になっとる。
 けど、せっちゃん自身は、それを笑って気にしとらへん。
 それが当然だとでも言わんばかりや。

「……もしかして、フェイトちゃんの大切なことは、そこらへんにあるんかも知れへんな……」

 期限まで、あと一日と半分。
 もう、時間も迫ってきとる。
 ……頼むで、せっちゃん。あんまり、あたしらを待たさんといて……?



 <フェイト>

 食事を終えて店の外へ。
 相変わらず、シュークリームを食べてるときは、幸せそうな顔をする。
 そのことを指摘したら。

「いや、お前には負ける」

 と、返されてしまった。
 ……し、しっかり見られてたんだね。恥ずかしい……
 この後は商店街へ。
 海鳴の町を、のんびりと歩く。
 ……おかしいね?
 いつも歩いている道なのに、いつも、隣に、せつなが居たのに……
 今日は、いつもと違うみたい。

「……あ、ほら、あの服。お前に似合いそうだな?」

 指差した先には……あ、あう。

「う、ウェディングドレス……せ、せつな?」

「ふむ、貸衣装屋だったか。……写真撮影ありとか、どこの文化祭かと……」

 そ、そういう出し物もあるよね……
 ? あ、あれ? なんかせつなの顔……
 あの顔は知ってる。
 悪戯を思いついたときの顔だ。

「えっと、せつな? つ、次見にい「よし、入るぞ~?」え、えええ!?」

 私の腕を掴んで、強引に店に入る。
 ま、まさか、あのウェディングドレス着せられるの!?
 そ、それは嬉しいけど、その。

「いらっしゃいませ」

「えっと、表のウェディングドレス、この子に着せてあげてもらえます? 後、写真撮影と」

 ほ、本気だ~~~!!
 女の店員さんに、まったく躊躇しないで言い切った。

「……じゃあ、彼氏さんはタキシードですね? ご用意いたします」

 た、タキシード!? え、それって、もしかして……

「……ほむ。元の体に戻ったら、着られないし……いや男装はオーケーか? まあいいや。フェイト、ふぁいとー」

 店員さんに腕を掴まれ、連れて行かれる。
 うう、店員さんまで強引だぁ。
 待つこと数分。持ってきてくれたドレスはフリーサイズらしく、ちょっとした調整で誰でも着られるらしい。
 普通はオーダーメイドだもんね? もしくは貸衣装だって母さんが言ってた。
 ……母さんも着たのかな?
 
「でも、お客さんスタイルいいですから、着せ甲斐がありますよ」

 えっと、そ、そうなのかな?
 せつな、そこのところ、あまり褒めてくれないし……

「ああいう人は、照れているだけです。大丈夫、自信を持ってください」

 照れているだけ……か。
 ……着替え終わって、鏡を見せてもらう。
 ……黒い服ばかり着てたから、白なんて似合わないと思ったけど……
 その、本当にこれが私なんだろうか?

「とても、お綺麗ですよ? さあ、花婿様のところに行きましょうか?」

 は、花婿? そ、それって、もしかして……
 店の奥の撮影スペースに、彼はいた。

「……思ったとおり、よく似合ってる」

 真っ白なタキシード。せつなのバリアジャケットと同じ色……
 髪も整えたせつなが、私に微笑みかけてくれた。
 ……たとえ、ままごとのような遊びでも、本当に、迎えに来てくれたみたいで……

「せつな……私……」

「綺麗だよ。フェイト……」

 どうしよう……凄く、嬉しい……

「じゃあ、こっち向いてくださーい……」

 あふれた涙を、せつなが優しくふき取ってくれる。
 ……これが、本当に、結婚式だったらいいのに……

「ほら、フェイト。写真とって貰おう」

「はい、せつな……」

 このまま、時が止まれば、いいのに。



 <すずか>

 ……あ、出て来た……?

「フェイトちゃん……泣いてる?」

 えっと、貸衣装屋で泣くようなことあるんですか?
 ……嬉し泣き?

「い、一体、あいつどんな格好させたのよ! ま、まさか……泣きそうになるほどエロチックなやつ!?」

「あかーん!! それはあかんで! フェイトちゃん素でエロエロなんやから、そんな格好したら……ホテルまでお持ち帰り確定や!」

「そ、その前に入り口で止められそうな……でもなんか、フェイトちゃん嬉しそう……」

 なのはちゃんの言うとおり、とても嬉しそうに笑ってる。
 あ、せつなさんも、凄くやさしい顔してる……
 ……悲しい目じゃ、なくなってる……

「む、むう……あ、あいつ、あんな顔もできるんじゃない……ちょ、ちょっとかっこいいかも」

「はぁううううう、あたしの前ではあんな顔……あ、布団の中で見たわ」

「はやてちゃん? ちょぉぉぉぉぉぉぉぉっと頭冷やそっか? 私使った事ない術式あるから、練習台になる?」

「ごめんなさい」

 外で土下座は止めてーーー!
 みんな変な目で見てるから!

「あ、移動するわよ? 尾行尾行!」

 そ、そうだね。追いかけないと……
 尾行して一時間後……あ、あれ?
 ちょっと人込みに混ざった瞬間に、二人を見失った。

「……く、手分けして探すわよ! 私右! なのはは左! はやては前! すずか! あんたはこの周辺を探して! 見つけたら全員に報告!」

「「「了解!」」」

「ゴー!!」

 ……え、えっと。アリサちゃん、こういう時張り切るなぁ……
 魔法の力が強かったら、アリサちゃんも武装隊合いそうだね?
 ……まあ、でも。

「……行ったか。まだまだ甘いな、あいつら」

「え、えっと、せつな? その……」

「……やっぱり、直ぐ近くにいましたね?」

 もう少し、周りを見るべきかな?
 直ぐ近くで、魔力反応が出てたから、幻術を使ったんだね?

「うぉぁ! すずかさん!? ……お、俺の幻術がばれただとお!?」

「……せつなさん。デート、楽しんでるみたいだね?」

 私の言葉にあわてるせつなさん……デートしてる自覚はあるんですね?

「す、すずか……その……」

「……フェイトちゃん、今、幸せ?」

 この世界の幸せは、偽りの物だと言うのに。
 それでも、彼女は幸せを享受したいというのか?

「……わからない。嬉しいこと、多すぎて、でも、これが、夢だって、わかってるのに……」

 ……せっかくの笑顔を、私が壊してしまう。
 その事実に、傷つく、けど。
 私は、こんな偽りの世界で、笑うのは、嫌だから。

「でも、ここは……この世界は」

「はい、そこまで」

 ? せつなさん?

「まあ、もう少し待とうや。……今日が終わるまで、まだ数時間残ってる。魔法が解けるまで、まだ時間はあるぜ?」

「……私たちは、随分待たされてるんですよ?」

「わかってる。……けど、ま、奴さん、もう諦めムードだしな」

 奴さん?
 
「と、言うわけなんで、見逃してくれると、嬉しい」

 ぽんぽんと頭を撫でて、顔を上げたら……逃げられました。
 遠ざかっていく二人の背中……あ、追いかけないと……あ。

「ば、バインド!?」

 ……や、やられた……
 もう、酷い人です。ベルカ式だから、はやてちゃんを呼んだ方が早いですね……

「もう……ちゃんと、フェイトちゃんをお願いしますね?」

 フェイトちゃんも、大切なお友達なんですから。




 <せつな>

 四人を撒いて、公園へ。
 ……都市部の、中央公園。店仕舞いし始めているたい焼き屋から、つぶ餡とこし餡を二個ずつ。
 お茶缶を購入して、噴水前のベンチに移動、二人して、腰を下ろす。

「ほい。二匹ずつな?」

 缶とたい焼きを渡す。

「ありがとう……あ、おいしい」

 どらどら……? げ!?

「あ、あのおっさん、またカスタード入れやがった……」

 これで通算六回目だぞ……? 何でこんなくだらない記憶はあるんかね?

「? カスタードって美味しいの?」

「凄く、甘い。……あ」

 ひ、人の手のものをパクって……か、間接き……ええい、どこの純情少女か俺は!

「……私、結構好きかも。交換しよ?」

「あ、ああ……い、言わないと気づかないな、こいつ……」

「?」

 おいしそうにハムハム食ってる。おのれ。
 俺だけが恥ずかしいとか……
 ……まあ、いいけど。

「今日は、楽しかった?」

 時間は既に夕刻。夕日で、真っ赤に染まった空が、酷く、感傷的。
 
「……うん。楽しかった。……ごめんね? 結局、何も思い出せなくて」

 せつな。俺じゃなくて、五年間付き合ってきた、友人のせつなだけが、彼女の中から消失してる。
 そのぽっかり開いた穴に、無理矢理俺を入れてるようだ。
 ……ちゃんと、塞がる筈がないのに。

「違うって、わかってる。せつなと、思い出せないそのせつなは、違うってわかってる……」

 俺も、わかってる。
 この世界は、ただの夢だ。
 夢が覚めれば、きっと、俺も、元の女の子に戻るはずだ。
 ……自覚ないけど。

「でも……私は、せつなも失いたくないよ……貴方も、失いたくない……」

 ……一時の夢。
 その場に、借り出された、男の姿の俺。
 ……そうだな。俺も、できれば、この姿を、失いたくない。
 俺が女の子だって、信じたくない。
 でも。

「フェイト。写真、持ってるよな?」

「……うん。持ってる……」

 偽りの、ままごとの、結婚写真。
 この世界に、生きた、証。

「じゃあ、大丈夫。俺は、そこにもいる。……それに、元に戻るだけさ。俺が消えるわけじゃない。……だろ?」

「……うん、そうだね……せつなは、ここにも、いるんだね……?」

 偽りの新郎、本物の新婦。
 しかし、その写真の二人は、幸せそうに笑って。

「ああ……俺は、幸せだよ。お前みたいな、綺麗な嫁をもらえた。……なに、傍にいてもらえるだけで、外の俺も、頑張れるからさ」

 外の、女の子の俺と。

「一緒に歩こう。長い人生を」

「うん、傍にいるよ。貴方とも、せつなとも」

 ずっと、一緒に。




――――― フェイト・テスタロッサ、封印解放 ―――――




 さって。時間かな?

「……せつなは、ずっと、私たちと一緒だよね?」

「……ああ、外で、また」

 意識が、落ちる。薄れていく、自分の存在。

「せつな!」

 ああ、大丈夫。迎えが来ただけだから。
 そんな泣きそうな顔するな、フェイト。
 ……最後の、試練が、来ただけ。
 終わらせて、修学旅行に行くんだ。
 ……昔も、似たようなこと思ったっけ?

 あの時は確か、温泉だったな。

 周りの気配が、全て消えていく。
 フェイトも声も、もう届かない。
 白い、闇が、広がる。














「はぁい? 最終試練へようこそ。我が主候補様?」




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