<はやて> はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。 せつなさん、家におらへんかったぁ。 クロノ君に聞いたら、散歩に行ったらしいし…… さっきから町を歩いとるのに、その姿がまったく見えへん。 運命は、あたしらを引き離そうとしとるんか?「ううううう。せつなさぁーん」「はやてちゃん! せつなさん発見です!」「でかしたでツヴァイ!」 ツヴァイが指差した方向に、ふらふら歩くせつなさんの後ろ姿! ……なんか疲れとる? なら、あたしが行って癒したる!「せつなさ~ん!」「……うわ、はやてさんも知り合いかよ……」 ? せつなさんがなんか変や。 あたしの顔見て、凄く凹んだ。 ……な、何やろ、あたしどっかおかしいんやろか。「せつなさん、あたしどっか変なんか?」 そう聞くと、せつなさん苦笑い。「いや、変なのは俺だから、気にしないでほしい」「……確かに、なんかせつなさん変ですねぇ」「うぉ! リイン?」 ? あれ?「せつなさん、この子はツヴァイやで? リインは今仕事や」 リインはうちの稼ぎ頭やからな。あんまり無理して欲しくないんやけど。 でも、せつなさんほんま変や。 今の台詞聞いて、頭をひねってはる。「……なに? もしかして、はやてさんの家に、リインフォースと、このツヴァイがいると?」「……そ、そうやで? あたし、話さんかった?」 ツヴァイ紹介したときに、話したはずや。 リインフォースに似てるから、リインフォースⅡ。「……すまんはやてさん。怒るかもしれんが、ちょっと聞いてくれ」「さっきからどうしたん? 他人行儀な呼びかたして」 むう。ぜんぜん苦笑いを止めてくれん。 いつもの優しい笑顔見せてー?「ああ、じゃあはやて。……今の俺は、昨日までの俺じゃない」 ……えっとそれは、「生まれ変わったってことやろか?」「むしろ、他人が憑依したってことかな……」 ……他人? 憑依? そんな漫画じゃないんやから…… ……う、嘘やろ?「ほ、ほんまなん? いつもみたいに『ちなみに嘘だが』……とか、言わんの?」「……こっちでも同じ言い回ししてるのか俺……残念だが、本当だ。昨日までの記憶が曖昧なんだ」「そ、そんなーーー!?」 き、記憶喪失!? そんな、あほな!?「あ、そ、それじゃ、あたしをお嫁さんにしてくれるって、言うたんは、嘘なん?」「……いやぁ、俺の性格からして、まずそんなこと言わないと思うんだが……」 く、引っかからんか! ならば!「せやったら、先月貸した三千円も、忘れてもたん?」「え? そうなのか? ……ああ、よかった手持ちあった」「ごめん、嘘や」 ……ほんまに忘れてもとるんやね。 せつなさん、どっか頭ぶつけたんやろか?「ほんまに大丈夫なん? 頭痛いとかないか?」「頭は痛くないんだが、さっき思いっきり蹴られた顔がなぁ~」 ……ああ! ほんまや! 顔なんか腫れとる! え、えらいこっちゃ。「ツヴァイ!」「はいです~。少しじっとしててくださいです」 ツヴァイの治療魔法で、せつなさんの顔を癒す。 ついでに記憶も戻ってくれへんかな~?「おお、きもちいいぞ。ありがとな、ツヴァイ」「えへへ。お役に立てて、ツヴァイ嬉しいです」 ……く、私かて、魔法使えれば~。「……はぁ、はやても魔法使えないのか?」 あ、声に出てもた?「あたし声に出してもたやろか?」「いや、凄く羨ましそうな顔してたから……むぅ。流石にベルカ式は俺あんま知らないからなぁ~」 ……あれ?「せつなさん? 結構詳しい?」「そんなことはないぞ? ……設定資料ちょっと読んだだけだし」 設定資料? ……やっぱせつなさん変や。 しかも、結構重症っぽい。「せつなさん。あたしの家いこ。シャマルに見てもらおうや。ひょっとしたら、何かの糸口に」 と、そこに、大きな黒塗りの高級車が停車した。 ……車から出てきたんは、黒髪の……お嬢様。「……八神、はやてちゃん……ですね?」 へ? あたし?「うぁ、――の―――さん……」 ? せつなさん、この子しっとるん?「!? 私を知ってるんですか?」「あ、ああ、あれだろ? たしか、―――の友人の。……あ、まさかはやて? お前この子知らないのか?」 ……な、なんでなん?「何であたしが知らんのに、せつなさんがしっとるん!?」「ええ!? せつなさん!?」「て、あんたはせつなさん知らんかったんかい!!」 なんやなんや!? あたしばっかツッコンどるやん! 訳わからんわー!!「はやてちゃん落ち着いてです!」 う、うん、落ちつこ……「……はやてちゃん、私を覚えてないんですね? ……で、せつなさんは、私を覚えてますか?」「……その口ぶりだと……俺の顔は知らないけど、俺を、せつな・トワ・ハラオウンを知ってるってことだよな? ……ちなみに、俺は君を知ってるだけだ」 なんかの言葉遊びやろか? せつなさんの目に、真剣さが増しとる。 ……うう、シリアス苦手や。「ええ、私の知っているせつなちゃんは、女の子でしたから……でも、あなたの口調は、覚えてます。せつなちゃんと同じ話し方。……えっと、もしよかったら、二人とも私と一緒に来てもらえますか?」「はぁ!? なんであたしがあんたに」「ああ、わかった」「せつなさん!?」 な、なんでやの!? 物凄く怪しいで、この子!?「……はやて、君は来ないのか? ……俺は、ちょっと聞きたいことが沢山ある」 それはちょっとやない思うんやけど…… せやけど……「……ご、ごめん、せつなさん。あたし、買い物の途中やから!」 そう言って、その場を逃げ出してもた。 ……あたし、何しとるんやろ。「! ……!」 ? せつなさんが、なんか言うとる。「ま……! ……!!」 ……また、話に行く? ……うう、こんな臆病者のあたしに、そんな優しい言葉を…… ごめんな。 ほんまごめん。せやけど、あたしは、今は逃げの一手やぁぁぁぁぁ!! ところで、なんか頭軽いなぁ~。 <すずか>「……あ~。で、どうしようか? ツヴァイ?」「は、はやてちゃんの薄情者です~」 ……逃げるのに必死で、ツヴァイちゃん置いていっちゃった…… どうしよう?「……まあ、一緒に来いよ。後で、はやての家に送っていくから」「うう、ありがとうです。せつなさんは本当に優しいです~」 嬉しそうにせつなさんに懐くツヴァイちゃん。 ……あ、せつなちゃんに、似てる。「……? どうした?」「あ、いえ、どうぞ? 私の家に……あ、ごめんなさい」 携帯電話が音を立てた。 これは……アリサちゃん?「はい、すずかです」『あたしよ? 今、全部思い出したわ』 !? 全部? じゃあ、せつなちゃんのことも?『詳しいことはあって話すわ。今どこ?』「えっと、じゃあ私の家に来て? 実は、せつなさんが話しに応じて……あ、せつなさんっていうのは」『ええ!? せつな、そこにいるの!? いいわ、連れて行って。直ぐに行くわ!』「あ、ちょっと、アリサちゃん!?」 ……き、切れちゃいました。 何事なんでしょう……「アリサから?」「え!? せつなさん、アリサちゃんに会ったんですか?」「……出会い頭に飛び蹴りされた。……むぅ、俺行ったら、また蹴られるんじゃ……」 ……アリサちゃんってば…… もう、やきもち焼くのは、時と場合を考えて欲しいよ。 て、そうじゃなく。「大丈夫です。私が、せつなさんを守りますから。……どうぞ?」「あ~。まあ、そのときは頼む」 ふふ。台詞回しも、やっぱりせつなちゃんです。 ……でも、この人は、永森刹那じゃなく、せつな・トワ・ハラオウンと名乗った。 ……もしかして、このせつなさんは。 せつなちゃんの理想の姿?「……ファリン。出して?」「はい、お嬢様」 まあ、今は、いろいろお話を聞こう。 家に着く間に、今のせつなさんの状況を教えてもらいましたが…… 私が、二次元のキャラですか……不思議なものです。 試しに、私の血族について話したら、『ああ、そうそう、そういう設定だっけ。……まあ、魔法使いもいるし、今更今更。ああ、献血する? 女の子に吸ってもらうって萌えね?』 ……なんでしょう。本当にせつなちゃんです。 ……お付き合いしたら、毎日が楽しそう。 あ、アリサちゃんはもうついてるみたい。 「……むぅ、来たわね?」「アリサちゃん……」「あ~……さっきはごめん」 え? いきなり謝るんですか?「いいわよ。あたしが悪かったんだし……? 何でツヴァイがいるのよ?」「ええ!? 何でツヴァイの事知ってるですか!?」「ああ!! 青チビじゃねえか!」「む!? 誰が青チビですか! えっと……あ、赤チビです!」「誰が赤チビだぁぁ!?」「人の頭の上で騒ぐなやかましぃ!!」 ……うう、どこからどう見てもせつなちゃんです……男の人ですけど。「てめぇら、これ以上騒ぐと、服はいで綿棒で犯すぞ!」「直接的卑猥発言禁止!」「おうち!!」 ……そして、アリサちゃんも絶好調の突っ込み。 やっぱり、この人はせつなちゃんなんですね? でも、そろそろお話聞かせて欲しいです…… リビングで……せつなさんの現状説明の後、アリサちゃんは凄く納得してます。「なるほどね……じゃあ、本来なら、あたしは普通の中学生だったってわけだ」「おう、すずかさんと一緒にな? で、なのは達だけは、仕事と中学校の二重生活をしてたってわけだ。……しかし、何でなのは達が管理局知らないのに、アリサさんが管理局入ってんだ?」 ……その、管理局って言うのも、いまいち分かりません。 魔法ですか。……分かりませんね……「ああ、じゃあ、この世界について分かったことね。……せつな、ロストロギアは知ってる?」 アリサちゃんの話によると、この世界はロストロギア『忘却の庭園』の中らしくて、私たちは『大切なこと』と、それにつながることを忘れるようにされたらしいです。 確かに、私も忘れていることがあります。 ……それで、その使用者が、「俺か」「あんたよ。……あたしは、あんたが小学校のときのあんたに会ったの。そいつが言うには、あんたに依存しているほど、魔法の掛かりが深いって言ってたわね」「……その点ですと私、そんなにせつなちゃんに依存してないってこと……なのかな?」 結構、せつなちゃんには依存してるはず。 だって、私が管理局に……あれ?「アリサちゃん、私も、管理局に、入ってたんだっけ?」「……そっか、あんたも忘れてるのよね。……ええ。入ってたわ。すずかが、最初にせつなについていくって言い出したのよ?」 ……なんだっけ、どうして、そうなったのかな…… せつなちゃんを守りたくて、癒したくて……その悲しみを、忘れて……忘れて?「せ、せつなさん?」「おう、なんだ?」「―――――――――――――――」「……はぁ? ……お、おい、それは、何の冗談だよ……」 ……やっぱり。 この人は、永森刹那さんの意識。 でも、刹那さんはその悲しみを忘れてる。「俺が? 死んで……輪廻転生? ……その前に、……あすかと姉さんが殺された?」「……す、すずか……」「はい。せつなちゃんは、そう言っていました。……そして、その事実は、夢で……貴方の夢で、確認しています」「おいおい。夢かよ……ただの悪夢だろ? 何で、そんなこと……」 でも、あれは、ただの夢でない。 あれは、記憶の再生。「……すずかさん? ……マジで言ってるのか?」「……はい。本当の事です」 ……せつなちゃんの根源たる記憶。 多分、せつなちゃんの忘れてる、大切なことは……「はぁ……マジかよ、勘弁してくれよ……」 せつなさんは、そう言うと……私を、押し倒しました。「ちょ、せつな!?」「……なぁ、それがマジならさ。……あんた、その体、賭けられるか?」「……」 その目は……とても信じられないくらい……でも、酷く辛そうな、怒りの瞳。 あの夢で見た、せつなさんの、怒りの目。「……どうなんだ?」「……はい。賭けます」「すずか!?」 そうだ。私の忘れていた、『大切なこと』は。 せつなちゃんの……せつなさんの悲しみを、癒すこと。 そのために、私は。――――― 月村すずか、封印解除 ――――― 管理局に入って、せつなちゃんの傷を、悲しみを癒す為に。「それで、貴方の悲しみが癒えるなら、私の体を、好きにしてください」 ……それが、私の全て。「……馬鹿やろ。いくら俺でも。そこまでするか」 せつなさんは顔を私の顔に近づけて。 ……「あ、え、なぁ!?」「たく、これくらいは勘弁しろよ? あんたの言ったこと、信じるさ」 ……えっと、キスですよね? ……キス、されちゃいました。「……しっかし、そうか~。無茶苦茶だな、俺。……ツヴァイ~俺、一度死んでるんだってさ~?」「うう、せつなさん可哀想です~」「し、信じてないわね?」「いやいや。すずかが体張ったんだから、信用するよ。……唇、美味しかったしな?」 はぅ。 か、顔が、凄く、あ、熱いです。「うわ、すずか顔真っ赤」「ふふふ~。すずかマジかわええ~。これは萌えますな~」「……せ、せつなさん、意地悪です」 あ、あう…… わ、わ、私……「わ」「わ?」「……わ、ワンモア!」「……はい?」 さっきのじゃ分かりませんでしたので、もっと分かりやすいのを要求します!「ワンモア!」「す、すずかが壊れ……」「えっと……」 少女(を)吸引中「……ええと、これでいい?」 ……はぅ……「な、なんつぅ……あんた鬼か!」「え、エロエロです~~はぁぁぁぁ!?」「てぇ! ツヴァイまで!?」「見てるだけでオーバーヒート起こすとは……恐ろしい子!?」「あんたでしょうが! ちょ、ファリンさーーーーーん!!」 あ、え、っと、せつなちゃん…… 元の世界に戻ったら……もっとお願いしますね……?[月村すずか、封印解除]