<せつな> ……さて、一年ほど早い合同任務が無事終了し、カグヤが帰って、宴もお開き。 俺も帰ろうかと思ってたら……なのはとフェイトに拉致られた。「……せつなちゃん。ちょっとお話に付き合ってもらうの」「せつな、無駄な抵抗はしないでね?」 うわはーい、二人とも物騒ですよ? はやて……は、もう守護騎士連れて帰還した。 すずか……は、打ち上げの後始末。 アリサ……は、今日はミッドのほうにお泊り。アギトのデバイス登録があるらしい。 ……ユーノもみっしーと帰っちゃったし、母さんエリオ連れて帰った。 兄さん……今日の報告書作成か、く、もう防衛線がねぇ。「……はいはい。しょうがない。とりあえず、ここにいてもあれだから、場所変えようぜ?」 流石に、アースラに居座るわけにもいくまい。 二人を連れて、クラナガン中央の秘密の士官バーへ。 ……まあ、よく情報とか集めたり、裏取引とかに使う店だから顔パスだ。 マスターは……まあ、元管理局の人。 「……せ、せつな? 私たち未成年……」「大丈夫。酒は出さないように頼んであるから」 マスターは元執務官なので、そこはかなり厳しいのです。 お酒は二十歳になってから。 俺の指定席の奥のテーブルに陣取る。 結界魔法の応用が仕掛けてあって、防音&隠蔽の結界が敷かれる。 ……一応、これは認可済みだ。「……どうぞ」 マスターが結界を越えて、飲み物を置いてくれる。 三つともカルーアミルク、ノンアルコール。「さて……何から聞きたい?」 最近二人とちゃんと話してないからな。 聞きたいこと沢山あるだろう。 最初に口を開いたのは、フェイト。「……せつな。私たちに隠してること、どれくらいあるの?」 ……あれ、とあれと……あれもか。 真剣に聞いてくるフェイトには悪いが、「沢山」 としか言えん。 ばらすとヤバげなことばかりあるんだもん。 話せることも沢山あるけど。「まあ、二人に隠してることは、二つ三つぐらいかな? ……はやては知ってたり、アリサやすずかが知ってることもあるし」 うーん、二人には悪いけど、この二人結構おしゃべり。 二人にばらすと、いつの間にかいろんな人に伝わってる場合がある。 そこらへんは少し自重して欲しい。「……私たち、せつなちゃんの重荷になってるのかな……」「いや、それは……ないぞ? ただ、話せないだけで」 周り……特に、リンディさんあたりにばれるとヤバげなこともあるんだ、勘弁してくれ。 ……地上で少し動きすぎたかな? やばいネタが増えてしまった。 しばらく自重しよう。「じゃあ、もう少し、私たちにも頼って欲しい……私も、できる限りの力になる。……ミナセ提督に口利いてくれたのも、せつなだって聞いて、私、せつなにしてもらってばかりだから……何か、お返しがしたいよ」「そうだよ。せつなちゃん、私たちにいろいろしてくれるけど、お返し、全然できてない……そんなの、やだよ?」 ……まあ、昔からの付き合いだしなぁ…… 「うーん。フェイトは結構頼ってると思うけど? こないだのエリオの件とか」「あれは、ほとんどせつなの後詰めだよ。……私一人じゃ、あんなに早く突き止められなかったし……」 あれま。フェイトも前から動いてたのか。 ……うーん、なのはは武装隊だから、俺から頼むってのないし…… 結局は。「仕事で二人に頼める接点が少ないんだよなぁ。俺の仕事。……見事に陰謀ばっかりだし」「せつな? もしかして、犯罪犯してるんじゃ!?」「ないない。それはない」 すれすれだけど。「……そだな。ネタ晴らしは必要かな?」 もう少し粘りたかったけど、まあいいや。「……話してくれるの?」「話せることだけな? ……二人とも、最近はやてがいろいろ動いてたのは知ってるだろ?」 自分の部隊設立の根回し……俺から見たら、もどきにしか見えんけど。「うん。はやてちゃん、自分の部隊持ちたいって、いろいろ調べたり、相談したりしてたから」「私も、相談に乗ったりしてたし……最近、のんびりしてるけど、目処立ったのかな?」 いんや、しばらく諦めさせてるだけです。「目処立つどころか、しばらく修行しろってこき下ろしたからな。……俺が」「……せつなちゃん。それ酷い。はやてちゃん、せつなちゃんと一緒に仕事したいって、それで」「ああ、分かってる。……まあ、落ち着いて聞け」 ふふふ、防音結界張っててよかった。 ぜってぇ叫ぶから、この二人。「実はな? ……その部隊、もう用意してある」「……え?」「……用意って……」 ? あれ? 理解できてない?「うん、はやての理想の部隊。俺が既に準備済みだ」「「ええええええええええええええええ!!」」 うは。やっぱり。「ほれ、メンバー表……て、紙持ってきてないな。パラディン。データ表示」【はい。マスター……最近こんな役ばっかりです】 勘弁しろ、現場出てないんだから。 で、今日までの組織図を映す。既に了解取ったので、はやてとリインズも組み込み済み。「……うわ~。凄いメンバー……あ、アリサちゃんにすずかちゃんも入ってる」「これ、全部決定済みなの?」「おう。こないだはやて勧誘して、了解も貰った。……まあ、しばらくここで修行してもらうつもり」 まだまだ部隊の頭は張らせられね。しばらく支援隊の隊長で我慢して欲しい。「ああ!! ぜ、ゼンガーさん入ってる! レーツェルさんまで!」「なのは? 知り合い?」「教導隊の人だよ! 私、近接戦闘講義でお世話になったし、レーツェルさんに頼まれて、レシピ買って来たりしたから覚えてるもん!」「おお、そういや、そんなことも言ってたな。いや、お前にばれずにスカウトするのは骨だったぞ?」「せつなちゃん酷い! レーツェルさんのご飯おいしかったのに!」「いや、そっちかよ」 せめて、親分のほうを惜しがってくれ。泣くぞ親分……想像できんけど。「まあ、お前らに黙っててすまないな。今年はほとんど人集めや練兵。連携訓練とか、各部署からの依頼だけしかこなせない準備期間だから、正式稼動してから教えたかったんだ」 結果が出ないと、保有枠も広がらないしね。 今年中に二人を入れることは無理だわ。 勘弁してくれ。「……う、うん。それはわかったよ。……でもね、せつな?」 あ、気づいたな? ……気づくよなぁ。この人達とも付き合い長いし。「前線部隊、ほとんど非魔導師だよ? ……どうするの?」 ……話してもいいけど……よし、話すか。 こいつら経由でばれたら、俺の首飛ばせばいいだけだし。 そうなったらはやてに後任せよ。 テッサもサポートしてくれるから、大丈夫だよな?「……まあ、特秘事項として聞いてくれ。……あ、一応聞いておくけど、特秘研修は受けてるよな? 当然だろうけど」 管理局に入って、すぐに教わる必須研修だ。 どこの会社でも行われる項目だから、受けてないなんて言わないだろう。 ……そう言えば、アニメのほうのスバル、ロストロギア知らんかったな……いやいや、こいつらに限ってそれは「……なんだっけ?」「な、なのは? 訓練校の初日に受けたの忘れたの?」「……あ、うん、受けたよ?」 信用できねぇぇぇぇぇぇ!! 寝てたな!? 寝てたんだな!?「……よーし、なのはは回れ右してゴーホーム」「う、ううううう、せつなちゃん意地悪ぅ……」「いや、今のはなのはが悪いよ……」 まったく。「まあ、簡単に言うとだ、絶対他の人間に喋るな。関係者以外の人間にはな? ……この関係者って言うのも、管理局の事じゃないぞ? ここの部隊の人間の事を言ってるからな? ……理解したか?」「分かった」「……う、うん」 ……やっぱり、なのは信用しきれん。「よし、テストしよう。なのはだけじゃ可哀想だから、フェイトもな?」「うん」「わ、わかった」 よしよし。じゃあまず。「恭也さん」「「駄目」」 まあ、これは当然。次。「自分の部隊の隊長」「「駄目」」 ふむ。なら個別に。「フェイト、リンディさん」「……OK?」「よろしい」 スポンサーだからな。知らないと俺が怒られちまう。「なのは、シャーリー」「えっと……だ、駄目」 よーしよし。「じゃあ、ちょっと難しいぞ。ユーノ」「え、ユーノ君? ……駄目」「うん駄目だね」「……まあ、いいだろ。分かってるようだし」 あ、そうだ。「じゃあ、プレシアさん」「「駄目」」「残念。彼女も関係者だ」「「ええええええええええ!!」」 あっはっは。これは知らんかったろう。「か、母さん知ってたの!?」「ちなみにアリシアも知ってる。……てか、管理局入局試験受かって訓練校でたら、速攻うちで引き取るし」 でないとアリシアの入局許可しねえよあのママさん。「母さんまで巻き込んでるなんて……」「せ、せつなちゃん鬼なの……」「どうとでも言え。……まあ最後のは情報与えてなかったし、不問にする。……じゃあ、種明かしとしよう」 なのは怒るかも……まあ、いいや。「この部隊の非魔導師、及び、低ランク魔導師に、チートデバイスを配布する。……非魔導師が、A+ランク魔導師に早変わりできるデバイスだ」「……せ、せつなちゃん、それって!」「アーム……スレイブ……? だって、あれ、もう、地球にはない……まさか!?」「そ。プレシアさんとマリエルさんに頼んで、もっとグレードの高いのを作ってもらった……まあ、あの二人が勝手に作っちゃったんだが。一応、俺からの依頼ってことにしてある」 そうしないと、あの二人が捕まっちゃうしね。ばれて、上が違法指定したらの話だけど。「リンカーマテリアル『テスラドライブ』内臓デバイス『アームトルーパー』。通称ATデバイス。試作段階は完了して、今個別機を生産中だ」 この間古鉄と白騎士出来上がって、今日あたりから使い始めてるしな、響介さんたち。 交替部隊の連中にも専用デバイスを配布予定。「……せつなちゃん……だって、アームスレイブ廃絶するって……それで、終わったって……どうして!?」「あ、いや。これは、この部隊だけで使うんだ。……非魔導師でも、これがあれば、魔導師と同じ働きが出来るだろ? ……魔導師が、魔導師だけが危険な任務を負うんじゃ不公平だ。それに伴う技能を持っていても、魔法使いじゃないってだけで、後ろに追いやられる人もいる。その人のための盾、そして剣……アームトルーパーは、そういうコンセプトで運用する」 同僚を、魔導師の同僚を助ける、新しい力。 非魔導師でも戦場を、災害地を、駆け抜けられる、最上の切り札。 それが、アームトルーパー。 ……まあ、コンセプトは全部後付けだけど~? あの二人がノリで作った奴だし。これだからマッドはぁぁぁぁぁ!! 今回だけは助けられたけど。「……アリサちゃんがデバイス作って、どうして使えるか、わからなかったけど……そういうことだったんだ……」「あれは本当は止めさせるつもりだったんだよ。そしたら、お前と同じ理由で噛み付かれたぞ?『あたしも、あんたの力になりたいのよ! 守られてばかりじゃいやなんだから!』……てな? 止められるか?」「アリサらしいね。……でも、これ、違法になるんじゃ?」「ばれたらな? 後、上……最高評議会の連中が違法認定を出せば、違法になる。……今の段階じゃ、違法じゃないんだ」 法自体ないからね。当初のインターネットみたいなものさ。 ネット犯罪取締法なんて、インターネットが出来てから数年後にできたんだし。 「せつなちゃん……私、せつなちゃんが……怖いよ……」 ……なのは?「せつなちゃん! やだよ、私やだよ! こんなの、間違ってるよ!」 え、あ、あれ? ……な、なのは的にアウトなのか?「間違って……いるのか?」「だって、これじゃ……他の人にも、危ない事させるってことだよね? 下手したら、他の、魔法を使えない人を危ないところに送るって、そういうことだよね!? そんなの、そんなのやだよ!」 ……うぁ。そういう意見か…… うーん、なのはとは少し話さないと。「なのは。一度落ち着け。……落ち着いて、俺の話を聞け」「……せつなちゃん……」 肩に手を置いて、なのはを落ち着かせる。……マスターにハーブティーを頼む。 ……フェイトは、冷静だな。「フェイトも反対意見か?」「ううん。私は、悪くないと思う。けど、犯罪すれすれだから、立場的には中立をとらせてもらうよ」 ……意外と、考えてるな。 よし、じゃあ、なのはとの相互理解に重点を置こう。 ……なのはが解ってもらえなければ……覚悟しろ、俺。 仕事の面で、なのはを切り捨てる覚悟を。 ……うう、いやだなぁ。 それだけは本当にいやだなぁ……「……せつな……ちゃん……? あ、あれ? せつなちゃん?」 ……あ、やべ。 涙出てきた。 ええい、久々に感情が昂ぶってるな。落ち着け、俺。 「あ、いや、ごめん。……なのはに、解ってもらえないと、俺、なのはと一緒に働けなくなるから、……それはいやだなぁって考えたら……ごめん。ちょっと、涙ぐんだ」「う、泣き落としは卑怯だよ……」「そんなつもりない。なのはには、ちゃんと話し合って解ってもらいたいから」 砲撃なしでな。 喧嘩もなしの方向で。 ……あ、この説得失敗したら、今度は恭也さんに切られるのか俺。 高町家のお話し合い再びかぁ……それはなんとしてでも食い止めないと!「……どうぞ」 マスターがハーブティーを三人分運んできてくれた。 それぞれに渡して、一息……よし、説得開始。「まずは……そうだな。なのはは、魔法の力を何の為の力だって思ってる?」「私は……人を守る、素敵な力だと、そう思ってるよ。大切な人を、泣いてる人を助ける力だと……」 ……うん。ここは、やはりなのはだろう。 俺がアニメで見た、高町なのはの根本だ。「フェイトは?」「……私は、なのはと同じ考えだけど……うん、人を守る、手段の一つだと思う。正直言うと、魔法だけで解決できることって少ないから。私の仕事だと……ね?」 うん。執務官をしているフェイトならではの言葉だろう。 人を本当に救うには、魔法だけじゃ駄目だ。 それは手段の一つ。そう考えないと、本当に人は救えない。「俺は……魔法は、大切な人を守る剣だと思っている……これは、管理局に入った今でも、変わってない。……魔法を使い出してから、一度も変えていない、俺の信念だ」 ……あの頃の誓いは、いまだ色あせず。 ただただひたすらに、前に剣を突き出して…… 「それでだ。俺がこのATデバイス運用に踏み切ったわけは、その剣を、他の人にも分けるためだ。……人を、守る為の剣を。その剣を、もてない人のために」「……でも、剣は、人を傷つけることも出来るよ?」 刃物だからな。 その懸念はもっともだ。「……そうだな。なのはの言うことももっともだ。……けどさ、ミッドチルダっていう、魔法が社会の歯車として運用されている世界では、その剣がなかったら、何も出来ないことのほうが多いんだ」 要は資格だ。 たとえ、A級ライセンスレベルの腕を持つドライバーでも、運転免許証がなければ、車は動かせない。 たとえ、英語、フランス語、ドイツ語が喋れても、パスポートがなければ、その本国にはいけない。 ……それらと同じだ。 災害救助、人災制圧のプロフェッショナルでも……このミッドチルダに置いて、魔法が使えなければ、前線に出してもらえない。「俺が渡すその剣は、その資格を持つものを後押しする力だ。資格を持たないものに、剣は渡さない。……だから、俺の部隊でも、前線部隊の非魔導師は、皆戦争経験者……軍隊出だ。軍隊はさ、戦争はもちろんだけど、災害救助、人災制圧、後、警察の真似事だってする。……やっていることは、管理局と同じなんだよ」 さらに、彼らは長い間、紛争制圧に尽力したものたちだ。 力の使いどころを、誰よりも把握している。 「それ以外のものを、決して現場には出さない。……まあ、アリサやすずかは別としても、基本はそれを遵守する。そのことは、各スポンサーにも説明済みだ」 ATは非魔導師に力を与える。だけど、その力を悪用させない為にも、使用者選別には一番力を入れた。 ……まあ、もっとも、危険思想の持ち主を、俺の部隊にいれるつもりはないけど。「……もし、もしだよ? それが成功して、じゃあ、他の部隊にもってなったときは……」「そのときまでに、免許試験の法律を確定させる。AT所持免許だ。……これは、三提督と、ロウラン提督、あと、ゲイズ中将に根回しして、すぐに発動できるように準備中だ」「ゲイズって……レジアス・ゲイズ中将!? あの人が!?」 あ、やっぱ驚くか。 黒い噂絶えないからな、相変わらず。「今回の件に一番関心をもってくれたのが、ほかならぬ中将でさ。なのはが懸念した事項も、いち早く指摘して、その所持免許の発案に協力してくれたんだ」 あの人の正義を貫く、その一番の近道を提示できたんだ。彼は、その近道の舗装を手伝ってくれた……こんなガキのために。「……い、一番危険だと思ったんだけど……そんな人だったんだ……」「あの人、案外いい人でさ。交代部隊、中将が貸してくれたんだ。もう少し選別を続けて、その部隊を吸収してこっちに組み込む予定。……なあ、なのは。ここまで俺考えたんだけど、これでも、まだ間違ってるって思うかな?」 これが、俺の表の考え……裏の考えまで、できれば話したくない。 それは、俺のエゴだから。「……ごめん。でも、まだ、納得できない……理解は出来るよ? 宗介さんたち、悪いことするような人じゃないし、せつなちゃんが選んで、決めた人だから、信じられる……でも、もし、他の人の手に渡ったらって……」「あ、勿論、セキュリティも万全にしてある。……そりゃあ、絶対なんてないから、不安もある。……うん、そうだな。その不安は付きまとうよ。俺だって怖い。セキュリティはずされて、これの技術が他に渡ったらって……でも、俺は、もう、嫌だから……」 これは、俺のエゴ。「もう、力のない人が、理不尽な力に泣くのは……嫌だから……理不尽な、暴力に、大切な、人が、奪われるのが……嫌だから……」「せつな……まさか、まだ、あの夢……」 夢に見るのは、最愛の人の、無残な……「あはは。うん。まだ見てる。……あれを、他の人に味合わせたくないから。……これは、俺のエゴ……我侭だよ……」 だから。「なのは。納得できないなら、それでいい。その代わり、この件、誰にも喋らないでほしい……お前に、迷惑かけないようにするから」「……フェイトちゃんは、どう、思うの?」「……私は、賛成。……確かに、せつなの想いは、間違いじゃない。……そして、それは、きっと、誰かがやらなくちゃいけないことだと思う……それが、せつなだったってだけだよ。……せつな。私は、協力するよ」 ……フェイトは解ってくれた。多分、最初の段階で、わかってくれると思った。 けど、なのはは……「……まだ、考えさせて……ほしい。ごめん、せつなちゃん……」 ……うん、解ってた…… なのはには、納得できないって。 優しい……子だから。「なのは……もし、解らなかったら、恭也さん……士郎さんに、聞くといい。多分、二人の答えが、俺の答えに似てると思うから」 御神の剣が、なのはを、救ってくれるって、託すしかない。 それで駄目なら……大人しく、斬られよう。「……ごめん、せつなちゃん。帰るね?」「ああ……気をつけてな?」「……うん」 席を立って、なのはが結界から出て行く…… 直後、我慢が出来なくなった。「……せつな。……もう、いいよ。泣いても」「すまん……泣かないつもり……だったんだけどな……」 できれば、俺の言葉で、なのはに解ってもらいたかった……「ごめん、ごめんな、ごめん……」 後悔は、しない。 振り返りもしない。 ただ、一言、謝罪だけ。 ごめんなさい。 <なのは> 私の懸念……幼い頃から、ずっと思ってた。 せつなちゃんは、どこか、遠くに行っちゃう人だって。 だから、私は、せつなちゃんを守る力になろうと、そう、追いかけて行った。 管理局にだって、せつなちゃんが入るって言ったから、私も追いかけて入った。 ……でも、せつなちゃんに追いつけなくて……せつなちゃんの想いが、わからなく……て。 気がついたら、知らない場所に出ていた。 ……あう、いけないいけない。 しっかりしろ、私。 せめて大通りに……「今日の獲物はっけーん!」 !? 後ろ!? 口を押さえられた! 声が出せない! 物陰から二人……後ろの一人だね。バリアバーストで吹き飛ばす! レイジングハート!「……!?」 ま、魔法が発動しない! なんで!?「あら、魔導師だったみたいね? でもざんねーん! AMFって知ってるかしらん?」 嘘、どうして? ガジェットもいないのに、何でそんなものが!?「んふふ~。AMF発生コートよん。数年前にこれがあったら、あのお子様にしてやられることなかったんだけど……」 お子様? 私の前に現われた女の人の服……あのコートが……? これは……まずい。「ん! んん~~~!!」「あ、こら、暴れんじゃねぇ。おいファティマ! 早く縛れ、おら」「はいはい。……まったく、せっかく脱獄したのに、最初の仕事が人攫いなんてね~。ま、一人頭50万はおいしいけど」 人攫いって……あ、クラナガンで起きてる、人攫い事件? まさか、この人達が犯人?「あいおしまい。……よっく見ると美人ねこの子。この子のクローンが流れたら……売れそうねぇ」 しかも、違法研究の!? く、この……駄目、縛られて…… 「ダッドマ! 車回せ! ずらかんぞ!」「……」 サングラスの男の人が、その場から立ち去る…… 念話を……駄目だ、これもできない! なんとかして……脱出を……「あらあら~……」 !! う、嘘……む、胸触って……太腿も!? ええええええええ!? この女の人、せつなちゃんと同じ人種!?「やぁん。可愛い。……売るのもったいなぁい。ちょっとだけ味見して良い?」「……いいけど、壊すなよ? こないだの、売る前に使い物にならなかったじゃん」「えへへ~あたしのおっきいから」 ……な、なんでしょう? 何が大きいんですか!? ひぃ!? ぞ、ぞうさん! こ、この人オカマ!? 「んふふ~……いっただきま~す」 思い浮かぶのは、せつなちゃんの悪夢。 そこで行われた、凶行。 ……その結末が、脳裏をよぎり、私に何が起こるのか、わかってしまった。 それは、嫌だ。……いやだ! せつなちゃんが泣き叫ぶのは嫌だ…… い、いや、こないで、助けて、助けてぇ! せつなちゃん!「はぁい! そこまでぇ!」 衝撃が私を襲った。 ……あれ? 私、飛んでる?「大丈夫? おねぇさんが来たから、もう安心よん♪」 ……金髪のポニーテールの女の人。 白い鎧状のバリアジャケット……魔導師だ。 ……この顔どこかで……あれ? この人、魔法使えてる!?「オカマの癖に、女の子に手を出すなんてぇ……お仕置きよん!『オクスタンバレット』!」 右手に持った異様に長いライフルデバイスから、魔力弾が打ち出される。 ……AMFの影響を受けてない! オカマの人の周囲を撃ち抜いた!「と、わ、あぶないわね! て、何でAMF効かないのよ!」「あらん? 不思議よねぇ~? 対策はもうバッチリよん! 響ちゃんお願い!」「誰が響ちゃんか!」 私を押さえつけていた男をふっ飛ばしながら現われたのは、黒髪の……真っ赤な鎧を付けた男の人。 大きな肩のパーツと、右手のシリンダーが印象的。 ……あれも、デバイスなんだろうか?「さて、お前らが、最近の誘拐犯だな? 管理局陸上警備隊108部隊の南部響介だ。抵抗せずに、大人しくすることを推奨する」 108って……せつなちゃんがいたところ!?「また監獄送りは嫌なのよん! 『スティンガー・ブレイド』!」 魔法を使った!? あのオカマの人も魔導師!?「ふん! 狙いが甘いな!」 魔力の剣を避け、肩のパーツを開いた。 ……まさか、質量兵器!?「ちょ、管理局でしょそれ質量兵器!?」「残念ながらデバイスだ! せつな特製の貫通破砕魔法『スクエアクレイモア』、その身に受けてみろ!」 確かに魔力弾だ。それがショットガンのように周囲にばら撒かれる。 あんな魔力運用初めて見た! あれじゃあ、避けられない…… あれ? 今、せつなって言った?「あきゃぁぁぁぁぁ!!」 あ、魔力弾ほとんど受けて倒れちゃった。 ……あ! 後ろに車が迫って、危ない!「ふん……エクセレン!」「はいは~い! ここは通せんぼ! 『オクスタンビーーーーム』……何気にかっこ悪いかしらん?」 収束砲!? それが向かってきていた車に直撃! ……凄い、ディバインバスターと同じ出力……「犯人無力化せいこ~う! みなさ~ん! ふんじばってくださ~い!」「せめて、確保と言え。……と、この子は被害者か?」 周りから局員が押し寄せて、犯人たちは連れて行かれた。……あの人達もどこかで見たことある? 私を抱えていた人が地上に降り、私の拘束を解いてくれた。 ……よく見ると、男の……南部さんもどこかで見覚えがある。 それも、つい最近……「はい、苦しかったでしょ?」 口を縛っていた布を解かれる。 あ、お礼言わないと。「あ、ありがとうございます。管理局戦技教導隊の高町なのは二等空尉です」 敬礼と共に挨拶すると、デバイスを収納した二人が驚いた顔していた。「え!? なのはちゃんって言うと、せつなちゃんの友達の!?」「……そうか、よかった。せつなには世話になっている」 あ、やっぱり。知り合いだったんだ、せつなちゃん。 でも、何で私も見たことあるんだろう…… 南部さんの前髪のメッシュとか、忘れそうにないのに……あ、ああ!「あ、私、管理局特務部隊【オリハルコン】の~「それはまだ先だ。いまは108」……ちょ、ちょっとした練習よん。とにかく、エクセレン・ブロウニングよん。よろしくね?」 そうだ、この二人、せつなちゃんの部隊の前線隊『アサルト』の隊長と、隊員さん……じゃあ、今のデバイスは!?「あ、あの! 今のデバイスはもしかして……」「ああ、せつなから聞いたか。AT『アルトアイゼン』先日ロールアウトしたばかりの俺専用デバイスだ」「で、私のがAT『ヴァイスリッター』。遠距離射撃の凄い奴ぅ。鎧の色はせつなちゃんとお揃いね?」「あいつのは白銀。お前は白だろう」「似たようなものじゃないの」 ……これが、アームトルーパー……私たちを、助けてくれる、非魔導師に与えられた、新しい剣…… こういう、ことだったんだ……「まあ、今日は試運転だから、できるだけ内密に頼む。稼動前にばれて、部隊がつぶれたら、俺らの新しい職場がなくなるからな」「あらん? せつなちゃんの親友よん? そんなことしないわよ。ねぇ、なのはちゃん?」 ……せつなちゃん、私のこと、二人に話してたの? な、なんて言われてるか、凄く気になる!「あの、せつなちゃん、私の事、なんて言ってたんですか?」「ん? えっとね~『とっても優しい子で、俺の……恋人』?」「親友だろ。まあ、いろいろ言っていたが、守るべき大切な人だといっていたな。だが『たぶん、俺のやってること、一番に否定するかも』とか……な?」 ……せつなちゃん。私が納得しないこと、わかってたんだ。 それでも、解ってもらおうと、必至で説得してたんだ。 ……それなのに、私……「……高町。お前が否定するのは、このATデバイスの事だろう?」 !? ……なんで?「何で、解るんですか?」「ああ、アームスレイブ廃絶を推奨したせつなに理由を聞いてな。『いろいろあるけど、一番の目的はなのはの笑顔を守る為……』だと、言っていた」 ……南部さんたちには、解らなかったそうだけど、せつなちゃんは語った。 私が、魔法の力を戦争に使わないでと、その叫びを、世界中に轟かせる為に。 人を守る剣を、傷つける為に使わないでと、それを教えるために。 「……確かに、アームスレイブは、地球では歪な力だ。使うべきではない。……俺はここに来て、ようやく解った。魔法を使ったテロ、犯罪……それが、地球にまであふれるのを、防ぐ為だと確信した。……だが、ここでは、俺たちは魔法を使えない。俺たちの技術が、役に立たない」「で、せつなちゃんがアームトルーパーを渡してくれたわけ。渡してくれるときに、せつなちゃん言ってたの。『これは、神から盗み取った、炎。人を傷つける為でなく、人を助ける為の剣。……どうか、その意味だけは、忘れずに使って欲しい』ってね? 私、せつなちゃんみたいな子、大好き。あの子、大切な人のために体張れる子だから。……でも、それって、私たちの役目なのよね」 ……大人が子供を守る。 当たり前の事だけど、とても難しいことだ。「そのための力をくれたせつなには、感謝している。この力で、お前を助けられた。……お前は、せつなの意志に助けられたわけだ」 せつなちゃんに……そうだ、私、せつなちゃんに助けを求めて…… お兄ちゃん、言ってたじゃないか。 せつなちゃんが本当に笑ってくれる為に必要なこと。『この時代で、守りたい事、守りたい者を守りきることができれば、多分』 笑って、くれるって……「せつな……ちゃん……」 そうだ。せつなちゃんは、守りたかったんだ。 理不尽な暴力で殺されたお姉さんを、妹を。 魔法で、その力で、助けたかったんだ。 ……だから、この世界では。 この時代では、守りきる。そのための、せつなちゃんの力…… 私は、せつなちゃんの想いに、助けられたんだ。「ん? どうやら、騎士の到着のようだな」「じゃあ、後は騎士様にお任せねん?」「ああ! 響介さん、エクセ姐さんありがとう! なのは! 無事か!?」 せつなちゃん、せつなちゃんだ!「せ、つな……ちゃん、わ、私……」「無事だな!? よかった……今度は守りきった……」 ……せつなちゃん……私、解ったよ。 せつなちゃんの想いは、こういうことだったんだ。 「守ったのは、わた「黙れ」……響ちゃんのいけず~」「いや、でも助かった。ありがとう! 本当にありがとう!」「せつなちゃんなんか、保護者みたいよ?」「たりめーだ、なのはは俺の恋人だぞ!? ちっくしょ~、あいつオカマだったのか。6年前に潰して置けばよかった」「……犯人、知っているのか?」「以前銀行強盗で、俺を人質に取った奴だよ。たく、P---潰しておけば~~~」「せつなちゃん下品よん?」 ……もう、せつなちゃんは、相変わらずだなぁ。「せつなちゃん」「む? な、なのは?」 昔のように、せつなちゃんを抱きしめる。 せつなちゃんは、ここにいる。 いなくなるなんてことはない。 私を、私たちをずっと、見てくれてる。「ずっと、一緒にいてくれるよね?」「……当たり前だ。たく、お前もはやても、俺を何だと……」 うん。意地悪だけど、せつなちゃん。 大好きだから。*次回。オリジナルストーリー展開を予定。作者です。あと、この事件(合同作戦のほう)が若干早くに発生したのは仕様です。……選択肢の掲載時に言ってた問題はこの話。当時、この事件の翌年に空港火災だと信じ込んでいて、調べてみたら……え? 翌月!?苦肉の策としてイベント発生を早めました。……まあ、次の話の絡みもあったため、こうするしかなかったわけですが。以上。どうでもいい作者の言い訳でした。