六十九年の最後のイベントはエリオ・モンディアルの救出だ。 ミッドチルダ市局のデータを漁って(ばれたら違法捜査。そんなヘマしねー)モンディアル家のデータを見て、早速サーチャー飛ばしたところ、家にもうエリオいねー!? 夜中に侵入して(もう犯罪です)モンディアル夫妻の記憶捜査したところ、既にエリオ連れ去られた後だった。 やべ、後手に回った。 仕方ないので、フェイトに打診。広域捜査でエリオ連れてった研究施設を探してもらう。 話の出所は黙秘した。 こちらも人手を出して、ついに、その研究施設を突き止めた。 俺からの支援はそこでストップ。これ以上手を出すといろいろと面倒だし。 手柄とエリオの身柄をフェイトに頼むことにして、こちらは結果待ち。 ……で、突入が始まって一時間後。「……はい!? 施設員全員が気絶してたぁ!?」『そうなんだよ。奥には実験用に囚われた子たちが三人ほどいて、他の研究員たちは軒並み気絶。施設内は嵐でもあったかのようにボロボロ。天井には大穴開いてるし、何がなんだか分からないよ!?』 まてまてまて。 俺だって訳分からん。 どこのセイギノミカタだ、それとも殺人貴!? さらに驚愕の事実が俺を襲う。『それで、せつなに頼まれていた『エリオ・モンディアル』なんだけど、この施設内にいないんだ』「なにぃぃぃ!?」 んな馬鹿な! ちゃんと調査してその施設に連れて行った奴検挙して、裏とって確認したんだぞ!? なぜいない!?『子供たちに聞いたら、その時に丁度実験の時間だったみたいで、私達が突入する二時間前には監禁部屋から出されてたみたい。……多分、施設を襲った犯人が連れ去ったんだと思うよ?』 ……な、なんてこった。 そんなことができる奴なんて、あいつらしかいねぇ! ちっくしょう、ドクターに先越された! 向こうの戦力強化に繋がっちまう!『……え!? それホント!?』 あれ? 進展あったか!?「どうした?」『あ、うん。シャーリーが子供たちから聞き出したんだけど、犯人と思われる女性が子供たちにあったんだって』 やはり女性か。 なら、ナンバーズの誰かだな?「特徴は?」『うん、えっと『あ、お姉ちゃんだ!』……え?』 ……ホワット!? 俺を指差しませんでしたか、あのちびっ子!『え、え~と。このお姉さんなの?』『そうだよ? お姉さん。さっきはありがとうございました!』『……せつな? どういうこと?』 ……あー。犯人分かった。 これは、ドクターに感謝するべきか、あいつにちょっと文句言うべきか。 ……まあ、とにかく、「わりい。多分、俺の身内だそれ。……えっと、君? それ俺じゃないんだが、そのお姉さん何か言ってた?」『? えっと、『この後来る、金髪のお姉さんに、せつなの家で待ってるって伝えて』って言ってたよ?』 ……オッケー分かった。 あのやろ、お仕置きフルコースだ。足腰立たなくさせてやる。「フェイト。そこ撤収させて俺の家。ハラオウン家じゃなく、永遠の方だ」『……最初、住んでたところだね? 分かった、すぐに行くよ』「中継ポートで待ってるから。じゃあ、また後で」『分かった。シャーリー。撤収するよ』 ……まったく、先に言え、阿呆。 <カグヤ> ……今日のミッションだけど、ドクターの依頼だ。 何でも、人造魔導師研究をしている施設があるらしく、ドクターの手の掛かっていないところらしい。 ドクター曰く『権利使用料の取立て』だそうだ。 そして、もう一人。「……カグヤねえ。いつでもいけるぜ?」 今回はサポートをつけてもらった。 戦闘機人九番ノーヴェ。クイントさんの遺伝子データを使った戦闘機人。IS『ブレイクライナー』は、ウィングロードのISバージョン。アタッカー気質なので、広域攻撃専門の私とは相性のいいパートナーだ。 さらに、私に懐いてくれてる。チンク姉さんの次だけど。「うん。とりあえず、屋上に飛ぶよ? つかまって」「おう!」 ノーヴェは今日が初実戦。 この間はウェンディとディエチと一緒に作戦行動をしたが、二人とも砲撃、射撃仕様だから私が前に出る作戦しか取れなくて苦労した。 クイントさんに指導してもらってなかったら、ちょっとやばかった。 ……クイントさん。娘たちと離れているせいか、私を娘扱いしてくれる。 流石に私がリンディさんに甘えるわけには行かないから、ちょっと嬉しい。 ……ドクターを捕まえたら、ノーヴェもクイントさんに甘えさせてあげよう。 屋上に到着。 ここから、ノーヴェのエアライナーで突貫。 研究員を気絶させて、ドクターに報告して、管理局のフェイトに連絡。 それから撤収。 ……よし、戦闘開始だ。「ノーヴェ、お願い」「へへ。じゃあ行くぜ! 『ブレイクライナー』!!」 IS発動を確認。戦闘機人テンプレートが屋上の床を破砕しながら中に伸びる。 ノーヴェを先頭に突入。一気に最上階を制圧。五分。ちょっと時間かかった。 それから階段で二階へ。研究員と警備兵、弾幕で黙らせて取りこぼしをノーヴェに任せる。 ルールの一環として、今日は非殺傷。気絶のみを科している。勿論ノーヴェにもだ。 ノーヴェは力の加減がいまいち微妙だから、今日はいい訓練にもなるだろう。 ……敵の強化や訓練を手伝って何をしているんだ私。 まあ、可愛い妹だからいいか。「カグヤねえ! 二階制圧だ!」「じゃあ、一階行くよ。階段!」「応!」 ううん。まるでヴィータと組んでるみたい。錬度は勿論向こうのほうが上だけど。 一階は流石に人が少ない。と、言うかほとんどが上に上がってきてたようだ。 制圧は二分で終了。 なお、この施設の奥に子供が三人いた。 ……肘の裏、注射跡がある。 実験体か? 酷いことをする。「君達、これで全員?」 聞いてみると、「あの! エリオ君が!」 ……え? エリオって、あのエリオ?「それって、赤髪の? このお姉ちゃんと同じ髪の子?」 指差すのはノーヴェ。この子も赤い髪だ。「うん! エリオ君、実験の時間で、地下室に……」 ……実験の時間? ……よし、助けないと。「ノーヴェ、行くよ」「お、おう」 施設内を透過サーチ。……あった、入り口。 地下への階段を下りる……地下実験場。 蹴破って中へ。……なんだこれは?「……! ……!」「……」 誰かが、叫んでる。 周りの音がうるさい。 ガラスケージの向こうで、椅子に座ってる。 小さな男の子。「!!! ……!!」 椅子から流れているのは電流? 電流を子供に? ……これが、実験?「……!」 泣いてる。 男の子が泣いてる。 あれは、あれは……「!……! た……」 あれは、私だ。 助けを求めている私だ。 あれは……過去の、誰にも頼れず、人形だった……「助けて! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!」 私だ!「『ブレイジングゥゥゥ!! スタァァァァァァァァァァァ!!』」 ISフルバースト。 ラストワード起動! 全てをなぎ倒す、星々の弾幕! 全てを破壊する、流星の花火! あの男の子を、救う、たった一つの私の力! ……スペルオーバー。三十五秒。 ……最初に非殺傷リミッター掛けておいて助かった。 でなければ、ここの人間全員殺すところだった。 ……私が人を殺すと、姉さんに迷惑が掛かる。 それは、駄目だ。「……あ、ああ」 彼が、エリオ君。 ……呆然と、光を失いそうな目で、私を見ている。「ごめんね?」 男の子を抱く。 男性嫌いの私だけど。 この子は別だ。「ごめんね? 人間を許してね? 馬鹿で愚かでどうしようもない生物だけど」 それでも、私を愛してくれる人は人間だから。「ごめん、ごめんなさい……めんねぇ……ふぇ、ひっぃく」 ああああ、この機械の身体でも、涙腺だけは脆いのか。 戦闘機人に涙腺つけるとか、いい仕事しすぎだドクター。 「ふぇええぇん、ごべんあなさぁい……ごえんんえぇぇぇぇ」 いや、何語だそれ。 なにを言いたいのかわからない、本当に機人なのか私。「え、ちょ、カグヤねえ!? な、泣かないでくれよ、ちょっと……ね、ねえ!」 ごめんノーヴェ。しばらく止まらない。 後五分待って。「……お姉さん……あったかい……」「ふぇ?」「怖かった……誰も、助けてくれなくて……こわ、怖がった……」 ああ、エリオも泣いてしまう。 抱く力を込め、エリオを存分に泣かせる。「いいよ、泣いて、私も泣くから、泣くからぁ」「いや、カグヤねえは泣かないでよ!? あたしどうしたらいいんだよ!?」「ごえんのーヴぇ、とっとまああててぇぇぇぇ。ぶんぇえっぇぇ」 いや、可愛くないなぁ、私。 まあいいや。 後一分。 存分に泣いた。……泣ける身体を作ってくれて、ドクターさんきう。「……よし、じゃあ、仕事終わらせる。ノーヴェ」「う、あ、はい。……切り替え早いな~」 まあ、感情と思考は別みたいだから。 便利な体だこと。「この実験場の機械類、全部破壊して。データが一切残らないように」「おう! ……て、これ以上?」 ……見渡すと、全部が煙と火花噴いてる。……あ、ラストワード使ったんだった。 えっと、どうしよう?「……こ、これ以上! やっちゃえノーヴェ!」「よっしゃぁ! おらおらおらぁ!!」 気を取り直して殴って蹴って破壊するノーヴェ。 もうやけにしか見えない。 さて、次は……「ある程度終わったら、そのままドクターのところに戻っていいから。……私、一度家帰るね?」「え? あ、わかった。……カグヤねえ、次はいつにアジト来るんだ?」「うーん。また気が向いたら行くよ。気をつけて帰ってね?」「おう! カグヤねえも気をつけろよ!」 手を振ってノーヴェと別れる。 腕の中には泣き疲れて眠ってしまったエリオ。 ……ううん、可愛い。 は、もしかして、私ってショタもありになった? ……うう、それは勘弁。エリオ君のパートナーはキャロだし。 キャロの役まで取れないよ、せめて、フェイトの役を取るぐらいしか……『私の素敵母親フラグーーー!?』 ん? なんか電波入った? まあいいや。 この子は連れていこ。 一階の子供たちに伝言。フェイトが来たら、せつなの家で待ってるって伝えてもらう。 こう言っておけば、姉さん気づくだろうし、後はこの子をどうするか考えよう。 ……研究施設を後にして、私は家路についた。 エリオ君を連れて。 <せつな> 中継ポートでフェイトと合流。「……なんか、生身のフェイトと会うの、凄い久しぶりな気がする」「気がするんじゃなく、その通りだよ? 最近学校にぜんぜん来ないし!」 あっはっは。実は俺まだ中学生なんだよね~。来年は二年生だ。「来てもすぐ帰っちゃうし、たまに最後まで授業受けても、放課後はすぐ仕事行くし!」 あ~、仕事貯まっちゃうからな~、まめに片付けないと。「せつな、最近本当に働きすぎ! 皆心配してるんだよ?」 ……う、うぐぅ。 そ、そんなに働いてるのか?「た、確かに今年は働き過ぎかもだけど……来年はゆっくりできると思う……よ?」「……ホントに?」「……ごめん、自信ない」 文句はゲンヤのとっつあんに言ってくれ。 人が一日休暇したら、次の日には三日分ぐらい仕事が貯まってたりするのざらだし。 し、新部隊ができれば~……「とにかく、少しは休むことも考えてね?」「考えてるんだが、仕事多いからなぁ~」 休めん。「……ところで、せつな? 何で刹那さんモードなの? こないだから気になってたんだけど」 刹那さんモードって。 俺はデバイスか。「最近ずっとこれだぞ? てか、お前の言うせつなモードはもうほとんど使わん」 て、言うか、使えなくなったが正しい。 女性意識、もう俺の身体にほとんどなくなってるし。 そのせいもあってか、泣かなくなった。 前はしょっちゅう泣いてたけどな~。「……なにか、あった?」「原因は今日見せてやる。……たく、あのやろ、事前通達ぐらいしろってのに……」 はてなマーク浮かべてるフェイトを連れ海鳴へ。 自宅のポートから出ると、今日は母さんがいた。「あ、お帰りせつな。フェイトさんもお帰り」「ただいま母さん」「お邪魔します」 最近は内勤任務に切り替えて、アースラから降りたリンディ母さん。 もはやほとんど隠居状態である。「で、早速行ってきます」「え? どこか遊びにでも行くの?」「ちょっとね~」 母さんにはまだあいつの事は内緒だ。 クイントさんをミッドで暮らせるようにしてから、その後に……かな?「じゃ、いってきま~す」「お邪魔しました~」「……もう、せつなのいけず」 いけずって、おい。 「……いいの?」「よくはないんだがなぁ~。この後しっかり甘えるから」 今はあいつに事情聴取が先だ。 ハラオウン家から出て、歩くこと数十分。……後ろになんか気配ある。 いいや、ほっとこ。 いつか話すつもりだったし。 とにかく旧永遠宅へ。 インターホンを、二連打、さらに一回押し。俺が来るときの合図だ。 返事を待たずに中へ。「あら、いらっしゃい」 出迎えてくれたのはクイントさん。「え!? クイントさん!?」「あら、フェイトちゃん。お久しぶり~。元気だった?」「……こ、ここにいたんですね……びっくりした」 流石に所在までは教えてない。 どこでばれるか分からんからな。「あれ? プレシアさんにはあったけど? 聞いてなかった?」「聞いてません! もう、母さん教えてくれてもいいのに……」 さすがプレシアさん。空気呼んでくれたんだなぁ……て、今はそれどころじゃない。「で、カグヤは?」「中で男の子と遊んでるわよ?」「カグヤ?」 フェイトの質問は無視して、中に突入。……いやがった。「くおら、蓬莱ニート!」「あ、姉さんやっと来た。遅いよ?」「遅いって……おまえなぁ~」「え、えええええええ!! せつなが二人!?」「あ、フェイトだ。はじめまして~」「……? お姉ちゃんが増えた?」 ううん、いきなりカオス発生。 冷静なカグヤ、首を振って相互に俺らを見比べるフェイト、ぽかんと口開けて俺とカグヤを見るエリオっぽい子供。 で、それを面白そうに見てるクイントさん。「……お茶、入れるわね?」「お願いします。……さて、カグヤ? 先ずはフェイトにご挨拶」「オッケー。せつなから細胞分裂したせつな二号です」「俺を化け物にするな!」 ネタに奔るなよ。「……じゃあ、鼻を押すと人形に戻るせつなコピーです」「古いな! そうじゃないだろ!」「……姉さんのエッチ」「なんでだよ!?」 ええい、漫才しに来たわけじゃないんだぞ?「えっと……?」 ほら、フェイトがだんだん処理遅くなってきてるから。 いい加減に真相話せと。「あはは。えっとね? 私はカグヤ。せつなの遺伝子で作られた、戦闘機人。よろしくね、フェイト」「……ええ!?」 あ、処理追いついた。「せ、せつなが作ったの?」「俺、いつの間に犯罪者に……」「私はメイド・イン・スカリエッティだよ。生みの親に反乱して来ました」 比較的、平和な反乱だったな。 今でもこいつアジトに遊びに行ってるし。「はい、フェイトちゃん。お茶飲んで落ち着いて?」「あ、ありがとうございます……じゃ、じゃあ、あの施設襲ったのって……」「うん、私」「私じゃないって。事前報告くらいしろよ。びっくりするだろ?」 ……何故きょとんとした目を向ける?「あ、もしかして、姉さんも動いてた?」「数日前から動いて、今日突入したらもう終わってるって、数年前の俺じゃねえんだからさ」「あはははは。ごみん」 ううううう。リンディさんもこんな気持ちだったのかも。「勘弁してよ。私だって、まさかエリオ君の関連施設だなんて知らなかったんだから。……丁度実験中だったから、怒ってラストワード使っちゃったし」 ……ら、ラストワードって、確か……永夜抄の極悪スペカ……「ち、ちなみに何使ったんだ?」「ブレイジングスター」 ……研究者の方々、乙。 同情の余地もないけど。「……じゃあ、この子がエリオ君だな?」「そう。ついつい連れて帰っちゃった。……ほら、可愛いから」 い、妹がついにショタ属性に……「い、いかんぞ? ショタだけはいかん。痛いお姉さんになっちゃ駄目だ。そういうのはフェイトの役だぞ?」「ええ!? わ、私ショタじゃないよ!? ……ショタってなんだっけ?」 このポンコツ、言葉知らずに否定したのか? く、でも今萌えたから許す。「ショタって言うのは、小さな男の子に萌え萌えな大きな女の子を言います。……後、私もショタはないよ?」 ちゃんと説明する、うちの妹はちょっと歪んでます。 ……やはり、一度教育しなおす必要があるか?「それで、この子本当にどうしよう。私戸籍ないから、引き取りたくても引き取れないし……」「私、向こうじゃ死んでることになってるし……」 うーむ。やはりここは……「エリオ君。残念だけど、君をここにおいて置けない。俺がいってる意味はわかる?」「……はい。わかります」「せ、せつな……?」 そんな心配そうな顔するなって。「だから、君に、親を選ばせてあげよう!」「……え、ええ!?」「俺の母さん。このお姉さん。子供になりたいなら、どっち!」 ……自分で言っておいてなんだが、無茶苦茶だなぁ。「……お、お姉さんのお母さんで」「いぇーい、フェイトふられたー」「訳わからないうちにふられた!?」 いやぁ~。フェイトもいい感じで染まってきたな。 ナイスリアクション。 なのはに迫ってきたな。「まあ、このお姉さんもお隣さんだから、いつでも遊んでもらいなさい。俺は結構家いないこと多いからさ。こっちに来て、カグヤとかクイントさんに遊んでもらうのもありだし」 こっちなら、遊び相手にはこまらんだろ。アリシアもいるし。「……そういうことで、お願いできるでしょうか、母さん?」「了承」「「「ええ?」」」 秋子さん降臨! 違った、リンディさんだ。てか、秋子さんって誰だ? 幻術とか誰に習ったんだか。「い、いつの間に……」「私が気づかなかった……」「……おお、生リンディさんだ~」 生とか言うなカグヤ。「……ふっといてなんだけど、本当にいいの?」「ええ、いいわよ? 娘の頼みくらい聞いてあげるのが母親よ?」 毎度毎度お世話になります。「じゃあ、エリオ君。新しいお母さんにご挨拶」「あ、えっと、え、エリオ・モンディアルです……よろしくおねがいします」「ええ、よろしくね? ……うん、可愛いわ。エリオ君、こっちおいで?」「あ、はい……あ」 でた。子供を落とす魔性の抱擁。 昔はあれで良く落とされたんだよなぁ~。俺。「んふふ~。クロノもこんな時期あったんだけどな~。クロノもせつなも、すぐにひねくれちゃって」「俺は最初っからひねくれてましたよーだ。なあカグヤ?」「ええ、私たちツンデレですから。大人限定の」 姉妹で拗ねてやる。いじいじ。「それで? そっちの子は説明してくれないの?」「最初っからいたくせに何言ってるんですか」「「「ええええええええ!!」」」「ふふふ。ばれてたか」「母さん最近ストーカーだから」「娘が酷いわ! エリオ君慰めて~」「え、えと……よしよし?」 五歳児に慰められて幸せそうな顔するな。「よーしフェイト。あれがショタコンだ。お前はああなるなよ?」「え、えっと……こ、コメントし辛いよ」 フェイトは真面目だな。 ここは元気にはーいと言っておくと好感度上だよ?「カグヤ。言ってやれ」「始めましてショタコンママさん。せつなの妹のカグヤです。よろしく」「……せつな? 妹さんかなりひねくれてない?」「あ~。カグヤは俺の女性意識が入ってるから。……どっちかって言えば、こっちがせつななんだよな」 意識的にはね? 本来なら、俺の体は今カグヤに入っているせつなが使うべきだったんだけど、共有の時に選択すらできなかった。 これだけは、俺のちょっとした罪悪感だな。「そう。私のほうが四年間ほっとかれたせつな。だから、リンディさんに甘えるつもりはないから……嫌いってわけじゃないけど」「……そう。ごめんね?」「謝るくらいなら、エリオを可愛がってあげて。……エリオに寂しい思いさせたら、許さないから」 ……わ、我が妹ながらきっついなぁ~。 俺、こんなきつい言い方してたんだ。「ええ、約束するわ。……ふふ、出会った頃のせつなみたいね?」「いや、そのまんまだから。懐かしげにこっちみないで……」 ううう、母さんは本当に意地悪です。 ……さて、と。 エリオの件はこれで決着ついたな。「それで、カグヤさんはどうするの?」「ああ、もうすぐクイントさんミッドにいけるようにするだろ? そのときに一緒に戸籍とって、そのまま護衛を続けてもらう。カグヤ自身、仕事あるし」「? カグヤも仕事中毒なの!?」 フェイト、俺をそんな目で見てたのか?「ううん? 私の仕事は不定期だから。依頼が来ないと動かないし。……姉さんに苦労掛けたくないし」「え? なんで?」「お前な。カグヤが頻繁に動いてたら、俺なにしてんだーて言われるだろ?」 認知されてない双子は自由に動けないんです。「俺のスポンサーに今戸籍準備してもらってるから、それができるまでは動けないんだ。まあ、それでいいって、カグヤも納得してるし」「じゃ、じゃあ、今までそんなに働いてたのって……」「まあ、その件もあるけど。……ゲンヤのとっつあんのほうが多いんだよ、ちくしょー」 あの親父ぜってえしばく。「ふふふふふふ。あの人ったら、せつなちゃんにそんなに働かせてるなんて……」 あ、やべ。クイントさんいるの忘れて愚痴っちまった。 ゲンヤさん、南無。 翌年、クイントさんがミッドに行った際、迎えに行った男性がリンチに会ったのは言うまでもない。 ……南無南無。 エリオは正式にハラオウン家へ。 エリオ・ハラオウンとして迎え入れられた。 は? モンディアル姓? あんなくそ家族の姓なんか名乗らせるか俺の弟だぞ? 追加調査で知らぬ存ぜぬを貫きやがった。 ムカついたんでさらに追加で調査して、違法研究に出資してた証拠つかんで御用だ。 ……流石にエリオには教えられんかった。 ばれたら怒るかねぇ…… あ、カグヤにお仕置きするの忘れた。 まあいいか。今回は許しておこっと。サービスだ。