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No.6790の一覧
[0] とことんリリカルを引っ掻き回してみた・リリカルオリ主多重クロス[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:33)
[1] 1.りーいんかーねいしょん[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:57)
[2] 2.海鳴の街の眠れない夜[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:54)
[3] 3.空飛ぶ魔法少女の不思議な毎日[4CZG4OGLX+BS](2009/02/25 19:15)
[4] 4.幸せは儚き少女の為に[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:22)
[5] 5.夜天の主は彼女なのか?[4CZG4OGLX+BS](2009/03/02 11:12)
[6] 6.オリエンタルスターフライト・前編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:21)
[7] 6.オリエンタルスターフライト・後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:26)
[8] 7.スノーホワイトケージ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/07 12:21)
[9] 8.悲しみは散り、夢は幻想に[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:58)
[10] 9.海鳴温泉館 一つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:32)
[11] 9.海鳴温泉館 二つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:35)
[12] 9.海鳴温泉館 三つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:56)
[13] 10.明治十七年の温泉アリス[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:36)
[14] 11.管理局が見ている[4CZG4OGLX+BS](2009/03/14 09:01)
[15] 12.星色マスターブレイカー[4CZG4OGLX+BS](2009/03/16 10:55)
[16] 13.Retrospective of Mid-childa[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:44)
[17] 14.サクリファイスドール[4CZG4OGLX+BS](2009/03/19 08:02)
[18] 15.夏色脇路[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:45)
[19] 16.ボーダーオブライフ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/27 14:26)
[20] 17.ボーダーオブライン 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:35)
[21] 17.ボーダーオブライン 中編(微グロ表現あり・選択肢あり)[4CZG4OGLX+BS](2009/03/28 22:42)
[22] ↑の選択肢解説特番。もしくは、作者のお遊び。[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:05)
[23] 17.ボーダーオブライン 後編 ライン……[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:18)
[24] L18.人間と機人の境界 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:46)
[25] L18.人間と機人の境界 後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/30 21:29)
[26] L19.インペリシャブルシューターガール[4CZG4OGLX+BS](2009/05/20 18:30)
[27] L20.人生遊戯 -ライフゲーム-[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[28] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女[4CZG4OGLX+BS](2009/05/22 21:08)
[29] L22.ブレイジングシューティングスター[4CZG4OGLX+BS](2009/05/23 04:07)
[30] L23.プリズムコンチェルト ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 02:45)
[31] L23.プリズムコンチェルト 海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[32] L24.マジカルガールズウォー リリカルサイド+α[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:38)
[33] L24.マジカルガールズウォー オリジナルサイド[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:07)
[34] L25.新難題ロストロギア 出発編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 19:58)
[35] L25.新難題ロストロギア 一日目前半[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 20:07)
[36] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『アリサ』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:39)
[37] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『すずか』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 01:03)
[38] L25.新難題ロストロギア 一日目後半[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:59)
[39] L25.新難題ロストロギア 二日目朝~昼[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 19:43)
[40] L25.新難題ロストロギア 二日目昼~夕方『刹那』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/27 00:10)
[41] L25.新難題ロストロギア 二日目夕方~夜『はやて』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:34)
[42] L25.新難題ロストロギア 三日目前編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:44)
[43] L25.新難題ロストロギア 三日目後編『なのは』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 23:01)
[44] L25.新難題ロストロギア 四日目朝の風景[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 17:49)
[45] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:40)
[46] L25.新難題ロストロギア 四日目夜の風景『最終試練・せつな』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 20:35)
[47] L25.新難題ロストロギア 五日目リザルト[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 23:24)
[48] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・表[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:01)
[49] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・裏[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:02)
[50] L25.新難題ロストロギア 五日目おまけ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 19:35)
[51] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[52] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 23:44)
[53] L26.百万鬼夜行 夜の行軍[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:18)
[54] L26.百万鬼夜行 午前の任務[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:04)
[55] L26.百万鬼夜行 午後の策謀[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[56] 現在、更新が乱れております(謝罪と説明という名の言い訳)[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 19:14)
[57] L27.大魔導師の死 史実の死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:15)
[58] L27.大魔導師の死 希望のための死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:41)
[59] L28.トリップパラノイア アジトにて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:46)
[60] L28.トリップパラノイア 外にて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:47)
[61] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『地上本部の人攫い』[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 22:51)
[62] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『特務隊の銀狐』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:07)
[63] L29EX.シューティングスターレヴァリエ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:05)
[64] L30.奇跡降臨の道しるべ[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 23:12)
[65] L31-1.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と雪の街[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:43)
[66] L31-2.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と新しい生活[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:37)
[67] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 前[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:04)
[68] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:16)
[69] L31-4.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と夜の学校[4CZG4OGLX+BS](2009/07/23 14:35)
[70] L31-5.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と迷子の子狐[4CZG4OGLX+BS](2009/07/25 10:28)
[71] L31-6.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと舞と素敵なお母さん[4CZG4OGLX+BS](2010/05/05 13:20)
[72] L31-6EX.彷徨える命題[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:04)
[73] L31-7.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなとなのはと休日のデート 前[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:13)
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[6790] L22.ブレイジングシューティングスター
Name: 4CZG4OGLX+BS◆2f25cb4b ID:9ee4ff7a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/23 04:07

 六十九年の最後のイベントはエリオ・モンディアルの救出だ。

 ミッドチルダ市局のデータを漁って(ばれたら違法捜査。そんなヘマしねー)モンディアル家のデータを見て、早速サーチャー飛ばしたところ、家にもうエリオいねー!?
 夜中に侵入して(もう犯罪です)モンディアル夫妻の記憶捜査したところ、既にエリオ連れ去られた後だった。

 やべ、後手に回った。

 仕方ないので、フェイトに打診。広域捜査でエリオ連れてった研究施設を探してもらう。
 話の出所は黙秘した。
 こちらも人手を出して、ついに、その研究施設を突き止めた。
 俺からの支援はそこでストップ。これ以上手を出すといろいろと面倒だし。
 手柄とエリオの身柄をフェイトに頼むことにして、こちらは結果待ち。
 ……で、突入が始まって一時間後。

「……はい!? 施設員全員が気絶してたぁ!?」

『そうなんだよ。奥には実験用に囚われた子たちが三人ほどいて、他の研究員たちは軒並み気絶。施設内は嵐でもあったかのようにボロボロ。天井には大穴開いてるし、何がなんだか分からないよ!?』

 まてまてまて。
 俺だって訳分からん。
 どこのセイギノミカタだ、それとも殺人貴!? 
 さらに驚愕の事実が俺を襲う。

『それで、せつなに頼まれていた『エリオ・モンディアル』なんだけど、この施設内にいないんだ』

「なにぃぃぃ!?」

 んな馬鹿な!
 ちゃんと調査してその施設に連れて行った奴検挙して、裏とって確認したんだぞ!?
 なぜいない!?

『子供たちに聞いたら、その時に丁度実験の時間だったみたいで、私達が突入する二時間前には監禁部屋から出されてたみたい。……多分、施設を襲った犯人が連れ去ったんだと思うよ?』

 ……な、なんてこった。
 そんなことができる奴なんて、あいつらしかいねぇ!
 ちっくしょう、ドクターに先越された!
 向こうの戦力強化に繋がっちまう!

『……え!? それホント!?』

 あれ? 進展あったか!?

「どうした?」

『あ、うん。シャーリーが子供たちから聞き出したんだけど、犯人と思われる女性が子供たちにあったんだって』

 やはり女性か。
 なら、ナンバーズの誰かだな?

「特徴は?」

『うん、えっと『あ、お姉ちゃんだ!』……え?』

 ……ホワット!?
 俺を指差しませんでしたか、あのちびっ子!

『え、え~と。このお姉さんなの?』

『そうだよ? お姉さん。さっきはありがとうございました!』

『……せつな? どういうこと?』

 ……あー。犯人分かった。
 これは、ドクターに感謝するべきか、あいつにちょっと文句言うべきか。
 ……まあ、とにかく、

「わりい。多分、俺の身内だそれ。……えっと、君? それ俺じゃないんだが、そのお姉さん何か言ってた?」

『? えっと、『この後来る、金髪のお姉さんに、せつなの家で待ってるって伝えて』って言ってたよ?』

 ……オッケー分かった。
 あのやろ、お仕置きフルコースだ。足腰立たなくさせてやる。

「フェイト。そこ撤収させて俺の家。ハラオウン家じゃなく、永遠の方だ」

『……最初、住んでたところだね? 分かった、すぐに行くよ』

「中継ポートで待ってるから。じゃあ、また後で」

『分かった。シャーリー。撤収するよ』

 ……まったく、先に言え、阿呆。



 <カグヤ>

 ……今日のミッションだけど、ドクターの依頼だ。
 何でも、人造魔導師研究をしている施設があるらしく、ドクターの手の掛かっていないところらしい。
 ドクター曰く『権利使用料の取立て』だそうだ。
 そして、もう一人。

「……カグヤねえ。いつでもいけるぜ?」

 今回はサポートをつけてもらった。
 戦闘機人九番ノーヴェ。クイントさんの遺伝子データを使った戦闘機人。IS『ブレイクライナー』は、ウィングロードのISバージョン。アタッカー気質なので、広域攻撃専門の私とは相性のいいパートナーだ。
 さらに、私に懐いてくれてる。チンク姉さんの次だけど。

「うん。とりあえず、屋上に飛ぶよ? つかまって」

「おう!」

 ノーヴェは今日が初実戦。
 この間はウェンディとディエチと一緒に作戦行動をしたが、二人とも砲撃、射撃仕様だから私が前に出る作戦しか取れなくて苦労した。
 クイントさんに指導してもらってなかったら、ちょっとやばかった。
 ……クイントさん。娘たちと離れているせいか、私を娘扱いしてくれる。
 流石に私がリンディさんに甘えるわけには行かないから、ちょっと嬉しい。
 ……ドクターを捕まえたら、ノーヴェもクイントさんに甘えさせてあげよう。
 屋上に到着。
 ここから、ノーヴェのエアライナーで突貫。
 研究員を気絶させて、ドクターに報告して、管理局のフェイトに連絡。
 それから撤収。
 ……よし、戦闘開始だ。

「ノーヴェ、お願い」

「へへ。じゃあ行くぜ! 『ブレイクライナー』!!」

 IS発動を確認。戦闘機人テンプレートが屋上の床を破砕しながら中に伸びる。
 ノーヴェを先頭に突入。一気に最上階を制圧。五分。ちょっと時間かかった。
 それから階段で二階へ。研究員と警備兵、弾幕で黙らせて取りこぼしをノーヴェに任せる。
 ルールの一環として、今日は非殺傷。気絶のみを科している。勿論ノーヴェにもだ。
 ノーヴェは力の加減がいまいち微妙だから、今日はいい訓練にもなるだろう。
 ……敵の強化や訓練を手伝って何をしているんだ私。
 まあ、可愛い妹だからいいか。

「カグヤねえ! 二階制圧だ!」

「じゃあ、一階行くよ。階段!」

「応!」

 ううん。まるでヴィータと組んでるみたい。錬度は勿論向こうのほうが上だけど。
 一階は流石に人が少ない。と、言うかほとんどが上に上がってきてたようだ。
 制圧は二分で終了。
 なお、この施設の奥に子供が三人いた。
 ……肘の裏、注射跡がある。
 実験体か? 酷いことをする。

「君達、これで全員?」

 聞いてみると、

「あの! エリオ君が!」

 ……え? エリオって、あのエリオ?

「それって、赤髪の? このお姉ちゃんと同じ髪の子?」

 指差すのはノーヴェ。この子も赤い髪だ。

「うん! エリオ君、実験の時間で、地下室に……」

 ……実験の時間?
 ……よし、助けないと。

「ノーヴェ、行くよ」

「お、おう」

 施設内を透過サーチ。……あった、入り口。
 地下への階段を下りる……地下実験場。
 蹴破って中へ。……なんだこれは?

「……! ……!」

「……」

 誰かが、叫んでる。
 周りの音がうるさい。
 ガラスケージの向こうで、椅子に座ってる。
 小さな男の子。

「!!! ……!!」

 椅子から流れているのは電流?
 電流を子供に?
 ……これが、実験?

「……!」

 泣いてる。
 男の子が泣いてる。
 あれは、あれは……

「!……! た……」

 あれは、私だ。
 助けを求めている私だ。
 あれは……過去の、誰にも頼れず、人形だった……

「助けて! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 私だ!

「『ブレイジングゥゥゥ!! スタァァァァァァァァァァァ!!』」

 ISフルバースト。
 ラストワード起動!
 全てをなぎ倒す、星々の弾幕!
 全てを破壊する、流星の花火!
 あの男の子を、救う、たった一つの私の力!

 ……スペルオーバー。三十五秒。

 ……最初に非殺傷リミッター掛けておいて助かった。
 でなければ、ここの人間全員殺すところだった。
 ……私が人を殺すと、姉さんに迷惑が掛かる。
 それは、駄目だ。

「……あ、ああ」

 彼が、エリオ君。
 ……呆然と、光を失いそうな目で、私を見ている。

「ごめんね?」

 男の子を抱く。
 男性嫌いの私だけど。
 この子は別だ。

「ごめんね? 人間を許してね? 馬鹿で愚かでどうしようもない生物だけど」

 それでも、私を愛してくれる人は人間だから。

「ごめん、ごめんなさい……めんねぇ……ふぇ、ひっぃく」

 ああああ、この機械の身体でも、涙腺だけは脆いのか。
 戦闘機人に涙腺つけるとか、いい仕事しすぎだドクター。
 
「ふぇええぇん、ごべんあなさぁい……ごえんんえぇぇぇぇ」

 いや、何語だそれ。
 なにを言いたいのかわからない、本当に機人なのか私。

「え、ちょ、カグヤねえ!? な、泣かないでくれよ、ちょっと……ね、ねえ!」

 ごめんノーヴェ。しばらく止まらない。
 後五分待って。

「……お姉さん……あったかい……」

「ふぇ?」

「怖かった……誰も、助けてくれなくて……こわ、怖がった……」

 ああ、エリオも泣いてしまう。
 抱く力を込め、エリオを存分に泣かせる。

「いいよ、泣いて、私も泣くから、泣くからぁ」

「いや、カグヤねえは泣かないでよ!? あたしどうしたらいいんだよ!?」

「ごえんのーヴぇ、とっとまああててぇぇぇぇ。ぶんぇえっぇぇ」

 いや、可愛くないなぁ、私。
 まあいいや。
 後一分。
 存分に泣いた。……泣ける身体を作ってくれて、ドクターさんきう。

「……よし、じゃあ、仕事終わらせる。ノーヴェ」

「う、あ、はい。……切り替え早いな~」

 まあ、感情と思考は別みたいだから。
 便利な体だこと。

「この実験場の機械類、全部破壊して。データが一切残らないように」

「おう! ……て、これ以上?」

 ……見渡すと、全部が煙と火花噴いてる。……あ、ラストワード使ったんだった。
 えっと、どうしよう?

「……こ、これ以上! やっちゃえノーヴェ!」

「よっしゃぁ! おらおらおらぁ!!」

 気を取り直して殴って蹴って破壊するノーヴェ。
 もうやけにしか見えない。
 さて、次は……

「ある程度終わったら、そのままドクターのところに戻っていいから。……私、一度家帰るね?」

「え? あ、わかった。……カグヤねえ、次はいつにアジト来るんだ?」

「うーん。また気が向いたら行くよ。気をつけて帰ってね?」

「おう! カグヤねえも気をつけろよ!」

 手を振ってノーヴェと別れる。
 腕の中には泣き疲れて眠ってしまったエリオ。
 ……ううん、可愛い。
 は、もしかして、私ってショタもありになった?
 ……うう、それは勘弁。エリオ君のパートナーはキャロだし。
 キャロの役まで取れないよ、せめて、フェイトの役を取るぐらいしか……

『私の素敵母親フラグーーー!?』

 ん? なんか電波入った? 
 まあいいや。
 この子は連れていこ。
 一階の子供たちに伝言。フェイトが来たら、せつなの家で待ってるって伝えてもらう。
 こう言っておけば、姉さん気づくだろうし、後はこの子をどうするか考えよう。
 ……研究施設を後にして、私は家路についた。
 エリオ君を連れて。


 <せつな>

 中継ポートでフェイトと合流。

「……なんか、生身のフェイトと会うの、凄い久しぶりな気がする」

「気がするんじゃなく、その通りだよ? 最近学校にぜんぜん来ないし!」

 あっはっは。実は俺まだ中学生なんだよね~。来年は二年生だ。

「来てもすぐ帰っちゃうし、たまに最後まで授業受けても、放課後はすぐ仕事行くし!」

 あ~、仕事貯まっちゃうからな~、まめに片付けないと。

「せつな、最近本当に働きすぎ! 皆心配してるんだよ?」

 ……う、うぐぅ。
 そ、そんなに働いてるのか?

「た、確かに今年は働き過ぎかもだけど……来年はゆっくりできると思う……よ?」

「……ホントに?」

「……ごめん、自信ない」

 文句はゲンヤのとっつあんに言ってくれ。
 人が一日休暇したら、次の日には三日分ぐらい仕事が貯まってたりするのざらだし。
 し、新部隊ができれば~……

「とにかく、少しは休むことも考えてね?」

「考えてるんだが、仕事多いからなぁ~」

 休めん。

「……ところで、せつな? 何で刹那さんモードなの? こないだから気になってたんだけど」

 刹那さんモードって。
 俺はデバイスか。

「最近ずっとこれだぞ? てか、お前の言うせつなモードはもうほとんど使わん」

 て、言うか、使えなくなったが正しい。
 女性意識、もう俺の身体にほとんどなくなってるし。
 そのせいもあってか、泣かなくなった。
 前はしょっちゅう泣いてたけどな~。

「……なにか、あった?」

「原因は今日見せてやる。……たく、あのやろ、事前通達ぐらいしろってのに……」

 はてなマーク浮かべてるフェイトを連れ海鳴へ。
 自宅のポートから出ると、今日は母さんがいた。

「あ、お帰りせつな。フェイトさんもお帰り」

「ただいま母さん」

「お邪魔します」

 最近は内勤任務に切り替えて、アースラから降りたリンディ母さん。
 もはやほとんど隠居状態である。

「で、早速行ってきます」

「え? どこか遊びにでも行くの?」

「ちょっとね~」

 母さんにはまだあいつの事は内緒だ。
 クイントさんをミッドで暮らせるようにしてから、その後に……かな?

「じゃ、いってきま~す」

「お邪魔しました~」

「……もう、せつなのいけず」

 いけずって、おい。
 
「……いいの?」

「よくはないんだがなぁ~。この後しっかり甘えるから」

 今はあいつに事情聴取が先だ。
 ハラオウン家から出て、歩くこと数十分。……後ろになんか気配ある。
 いいや、ほっとこ。
 いつか話すつもりだったし。
 とにかく旧永遠宅へ。
 インターホンを、二連打、さらに一回押し。俺が来るときの合図だ。
 返事を待たずに中へ。

「あら、いらっしゃい」

 出迎えてくれたのはクイントさん。

「え!? クイントさん!?」

「あら、フェイトちゃん。お久しぶり~。元気だった?」

「……こ、ここにいたんですね……びっくりした」

 流石に所在までは教えてない。
 どこでばれるか分からんからな。

「あれ? プレシアさんにはあったけど? 聞いてなかった?」

「聞いてません! もう、母さん教えてくれてもいいのに……」

 さすがプレシアさん。空気呼んでくれたんだなぁ……て、今はそれどころじゃない。

「で、カグヤは?」

「中で男の子と遊んでるわよ?」

「カグヤ?」

 フェイトの質問は無視して、中に突入。……いやがった。

「くおら、蓬莱ニート!」

「あ、姉さんやっと来た。遅いよ?」

「遅いって……おまえなぁ~」

「え、えええええええ!! せつなが二人!?」

「あ、フェイトだ。はじめまして~」

「……? お姉ちゃんが増えた?」

 ううん、いきなりカオス発生。
 冷静なカグヤ、首を振って相互に俺らを見比べるフェイト、ぽかんと口開けて俺とカグヤを見るエリオっぽい子供。
 で、それを面白そうに見てるクイントさん。

「……お茶、入れるわね?」

「お願いします。……さて、カグヤ? 先ずはフェイトにご挨拶」

「オッケー。せつなから細胞分裂したせつな二号です」

「俺を化け物にするな!」

 ネタに奔るなよ。

「……じゃあ、鼻を押すと人形に戻るせつなコピーです」

「古いな! そうじゃないだろ!」

「……姉さんのエッチ」

「なんでだよ!?」

 ええい、漫才しに来たわけじゃないんだぞ?

「えっと……?」

 ほら、フェイトがだんだん処理遅くなってきてるから。
 いい加減に真相話せと。

「あはは。えっとね? 私はカグヤ。せつなの遺伝子で作られた、戦闘機人。よろしくね、フェイト」

「……ええ!?」

 あ、処理追いついた。

「せ、せつなが作ったの?」

「俺、いつの間に犯罪者に……」

「私はメイド・イン・スカリエッティだよ。生みの親に反乱して来ました」

 比較的、平和な反乱だったな。
 今でもこいつアジトに遊びに行ってるし。

「はい、フェイトちゃん。お茶飲んで落ち着いて?」

「あ、ありがとうございます……じゃ、じゃあ、あの施設襲ったのって……」

「うん、私」

「私じゃないって。事前報告くらいしろよ。びっくりするだろ?」

 ……何故きょとんとした目を向ける?

「あ、もしかして、姉さんも動いてた?」

「数日前から動いて、今日突入したらもう終わってるって、数年前の俺じゃねえんだからさ」

「あはははは。ごみん」

 ううううう。リンディさんもこんな気持ちだったのかも。

「勘弁してよ。私だって、まさかエリオ君の関連施設だなんて知らなかったんだから。……丁度実験中だったから、怒ってラストワード使っちゃったし」

 ……ら、ラストワードって、確か……永夜抄の極悪スペカ……

「ち、ちなみに何使ったんだ?」

「ブレイジングスター」

 ……研究者の方々、乙。
 同情の余地もないけど。

「……じゃあ、この子がエリオ君だな?」

「そう。ついつい連れて帰っちゃった。……ほら、可愛いから」

 い、妹がついにショタ属性に……

「い、いかんぞ? ショタだけはいかん。痛いお姉さんになっちゃ駄目だ。そういうのはフェイトの役だぞ?」

「ええ!? わ、私ショタじゃないよ!? ……ショタってなんだっけ?」

 このポンコツ、言葉知らずに否定したのか?
 く、でも今萌えたから許す。

「ショタって言うのは、小さな男の子に萌え萌えな大きな女の子を言います。……後、私もショタはないよ?」

 ちゃんと説明する、うちの妹はちょっと歪んでます。
 ……やはり、一度教育しなおす必要があるか?

「それで、この子本当にどうしよう。私戸籍ないから、引き取りたくても引き取れないし……」

「私、向こうじゃ死んでることになってるし……」

 うーむ。やはりここは……

「エリオ君。残念だけど、君をここにおいて置けない。俺がいってる意味はわかる?」

「……はい。わかります」

「せ、せつな……?」

 そんな心配そうな顔するなって。

「だから、君に、親を選ばせてあげよう!」

「……え、ええ!?」

「俺の母さん。このお姉さん。子供になりたいなら、どっち!」

 ……自分で言っておいてなんだが、無茶苦茶だなぁ。

「……お、お姉さんのお母さんで」

「いぇーい、フェイトふられたー」

「訳わからないうちにふられた!?」

 いやぁ~。フェイトもいい感じで染まってきたな。
 ナイスリアクション。
 なのはに迫ってきたな。

「まあ、このお姉さんもお隣さんだから、いつでも遊んでもらいなさい。俺は結構家いないこと多いからさ。こっちに来て、カグヤとかクイントさんに遊んでもらうのもありだし」

 こっちなら、遊び相手にはこまらんだろ。アリシアもいるし。

「……そういうことで、お願いできるでしょうか、母さん?」

「了承」

「「「ええ?」」」

 秋子さん降臨!
 違った、リンディさんだ。てか、秋子さんって誰だ?
 幻術とか誰に習ったんだか。

「い、いつの間に……」

「私が気づかなかった……」

「……おお、生リンディさんだ~」

 生とか言うなカグヤ。

「……ふっといてなんだけど、本当にいいの?」

「ええ、いいわよ? 娘の頼みくらい聞いてあげるのが母親よ?」

 毎度毎度お世話になります。

「じゃあ、エリオ君。新しいお母さんにご挨拶」

「あ、えっと、え、エリオ・モンディアルです……よろしくおねがいします」

「ええ、よろしくね? ……うん、可愛いわ。エリオ君、こっちおいで?」

「あ、はい……あ」

 でた。子供を落とす魔性の抱擁。
 昔はあれで良く落とされたんだよなぁ~。俺。

「んふふ~。クロノもこんな時期あったんだけどな~。クロノもせつなも、すぐにひねくれちゃって」

「俺は最初っからひねくれてましたよーだ。なあカグヤ?」

「ええ、私たちツンデレですから。大人限定の」

 姉妹で拗ねてやる。いじいじ。

「それで? そっちの子は説明してくれないの?」

「最初っからいたくせに何言ってるんですか」

「「「ええええええええ!!」」」

「ふふふ。ばれてたか」

「母さん最近ストーカーだから」

「娘が酷いわ! エリオ君慰めて~」

「え、えと……よしよし?」

 五歳児に慰められて幸せそうな顔するな。

「よーしフェイト。あれがショタコンだ。お前はああなるなよ?」

「え、えっと……こ、コメントし辛いよ」

 フェイトは真面目だな。
 ここは元気にはーいと言っておくと好感度上だよ?

「カグヤ。言ってやれ」

「始めましてショタコンママさん。せつなの妹のカグヤです。よろしく」

「……せつな? 妹さんかなりひねくれてない?」

「あ~。カグヤは俺の女性意識が入ってるから。……どっちかって言えば、こっちがせつななんだよな」

 意識的にはね?
 本来なら、俺の体は今カグヤに入っているせつなが使うべきだったんだけど、共有の時に選択すらできなかった。
 これだけは、俺のちょっとした罪悪感だな。

「そう。私のほうが四年間ほっとかれたせつな。だから、リンディさんに甘えるつもりはないから……嫌いってわけじゃないけど」

「……そう。ごめんね?」

「謝るくらいなら、エリオを可愛がってあげて。……エリオに寂しい思いさせたら、許さないから」

 ……わ、我が妹ながらきっついなぁ~。
 俺、こんなきつい言い方してたんだ。

「ええ、約束するわ。……ふふ、出会った頃のせつなみたいね?」

「いや、そのまんまだから。懐かしげにこっちみないで……」

 ううう、母さんは本当に意地悪です。
 ……さて、と。
 エリオの件はこれで決着ついたな。

「それで、カグヤさんはどうするの?」

「ああ、もうすぐクイントさんミッドにいけるようにするだろ? そのときに一緒に戸籍とって、そのまま護衛を続けてもらう。カグヤ自身、仕事あるし」

「? カグヤも仕事中毒なの!?」

 フェイト、俺をそんな目で見てたのか?

「ううん? 私の仕事は不定期だから。依頼が来ないと動かないし。……姉さんに苦労掛けたくないし」

「え? なんで?」

「お前な。カグヤが頻繁に動いてたら、俺なにしてんだーて言われるだろ?」

 認知されてない双子は自由に動けないんです。

「俺のスポンサーに今戸籍準備してもらってるから、それができるまでは動けないんだ。まあ、それでいいって、カグヤも納得してるし」

「じゃ、じゃあ、今までそんなに働いてたのって……」

「まあ、その件もあるけど。……ゲンヤのとっつあんのほうが多いんだよ、ちくしょー」

 あの親父ぜってえしばく。

「ふふふふふふ。あの人ったら、せつなちゃんにそんなに働かせてるなんて……」

 あ、やべ。クイントさんいるの忘れて愚痴っちまった。
 ゲンヤさん、南無。

 翌年、クイントさんがミッドに行った際、迎えに行った男性がリンチに会ったのは言うまでもない。
 ……南無南無。

 エリオは正式にハラオウン家へ。
 エリオ・ハラオウンとして迎え入れられた。
 は? モンディアル姓? あんなくそ家族の姓なんか名乗らせるか俺の弟だぞ?
 追加調査で知らぬ存ぜぬを貫きやがった。
 ムカついたんでさらに追加で調査して、違法研究に出資してた証拠つかんで御用だ。
 ……流石にエリオには教えられんかった。
 ばれたら怒るかねぇ……

 あ、カグヤにお仕置きするの忘れた。

 まあいいか。今回は許しておこっと。サービスだ。





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