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No.6790の一覧
[0] とことんリリカルを引っ掻き回してみた・リリカルオリ主多重クロス[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:33)
[1] 1.りーいんかーねいしょん[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:57)
[2] 2.海鳴の街の眠れない夜[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:54)
[3] 3.空飛ぶ魔法少女の不思議な毎日[4CZG4OGLX+BS](2009/02/25 19:15)
[4] 4.幸せは儚き少女の為に[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:22)
[5] 5.夜天の主は彼女なのか?[4CZG4OGLX+BS](2009/03/02 11:12)
[6] 6.オリエンタルスターフライト・前編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:21)
[7] 6.オリエンタルスターフライト・後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:26)
[8] 7.スノーホワイトケージ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/07 12:21)
[9] 8.悲しみは散り、夢は幻想に[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:58)
[10] 9.海鳴温泉館 一つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:32)
[11] 9.海鳴温泉館 二つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:35)
[12] 9.海鳴温泉館 三つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:56)
[13] 10.明治十七年の温泉アリス[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:36)
[14] 11.管理局が見ている[4CZG4OGLX+BS](2009/03/14 09:01)
[15] 12.星色マスターブレイカー[4CZG4OGLX+BS](2009/03/16 10:55)
[16] 13.Retrospective of Mid-childa[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:44)
[17] 14.サクリファイスドール[4CZG4OGLX+BS](2009/03/19 08:02)
[18] 15.夏色脇路[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:45)
[19] 16.ボーダーオブライフ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/27 14:26)
[20] 17.ボーダーオブライン 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:35)
[21] 17.ボーダーオブライン 中編(微グロ表現あり・選択肢あり)[4CZG4OGLX+BS](2009/03/28 22:42)
[22] ↑の選択肢解説特番。もしくは、作者のお遊び。[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:05)
[23] 17.ボーダーオブライン 後編 ライン……[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:18)
[24] L18.人間と機人の境界 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:46)
[25] L18.人間と機人の境界 後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/30 21:29)
[26] L19.インペリシャブルシューターガール[4CZG4OGLX+BS](2009/05/20 18:30)
[27] L20.人生遊戯 -ライフゲーム-[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[28] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女[4CZG4OGLX+BS](2009/05/22 21:08)
[29] L22.ブレイジングシューティングスター[4CZG4OGLX+BS](2009/05/23 04:07)
[30] L23.プリズムコンチェルト ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 02:45)
[31] L23.プリズムコンチェルト 海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[32] L24.マジカルガールズウォー リリカルサイド+α[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:38)
[33] L24.マジカルガールズウォー オリジナルサイド[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:07)
[34] L25.新難題ロストロギア 出発編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 19:58)
[35] L25.新難題ロストロギア 一日目前半[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 20:07)
[36] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『アリサ』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:39)
[37] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『すずか』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 01:03)
[38] L25.新難題ロストロギア 一日目後半[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:59)
[39] L25.新難題ロストロギア 二日目朝~昼[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 19:43)
[40] L25.新難題ロストロギア 二日目昼~夕方『刹那』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/27 00:10)
[41] L25.新難題ロストロギア 二日目夕方~夜『はやて』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:34)
[42] L25.新難題ロストロギア 三日目前編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:44)
[43] L25.新難題ロストロギア 三日目後編『なのは』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 23:01)
[44] L25.新難題ロストロギア 四日目朝の風景[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 17:49)
[45] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:40)
[46] L25.新難題ロストロギア 四日目夜の風景『最終試練・せつな』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 20:35)
[47] L25.新難題ロストロギア 五日目リザルト[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 23:24)
[48] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・表[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:01)
[49] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・裏[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:02)
[50] L25.新難題ロストロギア 五日目おまけ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 19:35)
[51] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[52] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 23:44)
[53] L26.百万鬼夜行 夜の行軍[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:18)
[54] L26.百万鬼夜行 午前の任務[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:04)
[55] L26.百万鬼夜行 午後の策謀[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[56] 現在、更新が乱れております(謝罪と説明という名の言い訳)[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 19:14)
[57] L27.大魔導師の死 史実の死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:15)
[58] L27.大魔導師の死 希望のための死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:41)
[59] L28.トリップパラノイア アジトにて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:46)
[60] L28.トリップパラノイア 外にて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:47)
[61] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『地上本部の人攫い』[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 22:51)
[62] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『特務隊の銀狐』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:07)
[63] L29EX.シューティングスターレヴァリエ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:05)
[64] L30.奇跡降臨の道しるべ[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 23:12)
[65] L31-1.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と雪の街[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:43)
[66] L31-2.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と新しい生活[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:37)
[67] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 前[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:04)
[68] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:16)
[69] L31-4.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と夜の学校[4CZG4OGLX+BS](2009/07/23 14:35)
[70] L31-5.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と迷子の子狐[4CZG4OGLX+BS](2009/07/25 10:28)
[71] L31-6.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと舞と素敵なお母さん[4CZG4OGLX+BS](2010/05/05 13:20)
[72] L31-6EX.彷徨える命題[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:04)
[73] L31-7.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなとなのはと休日のデート 前[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:13)
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[6790] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女
Name: 4CZG4OGLX+BS◆2f25cb4b ID:9ee4ff7a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/22 21:08

 さて、ティーダさんのいる航空部隊に来て二週間。
 基本は訓練と書類整理。緊急時に呼び出しと。
 108部隊に比べれば比較的楽だ。来て良かったかもしれん。
 暇な時間に新部隊の編成できるし。

 後、ソースケさんからの連絡で、カナメさんが参加してくれることになった。
 カナメさんはマサチューセッツ工科大に進学したそうで、一般以上の知識と技術力を修めたらこちらに来てくれるそうだ。
 これは嬉しい。
 アリサと同じオペレーター兼技師として組み込むことにした。よきかなよきかな。

「……? なにしてんの? お嬢」

 うわっと。覗かないでくださいティーダさん。
 これ一応機密事項なんですから。

「ちょっと別件の仕事。それより、今日の訓練は終わったんですか?」

「まあな。後、お嬢に客。……57部隊のシグナムさんとグランセニック。知り合いか?」

「シグナム?」

 シグナムは確かに知り合いだけど、グランセニック? ヴァイスの兄貴に、何か共通点あったっけ?

「……元気そうだな。お前が航空隊に来てると聞いて、顔出してみたんだが」

「あ、シグナムはこっちに入ってたんだっけ。身の回りで忙しかったから、挨拶するの忘れてた。すまん」

「また無理してるなお前。……もう少し、私たちを頼れ」

 頼れるときには頼らせてもらいます……あ、そうだ。
 シグナムたちには今のうちに打診しとくか。はやてに内緒で。

「ともかく、心配してくれてありがと。……ところで、そっちは?」

 先に、ヴァイスの兄貴に挨拶を。

「ああ、私の部隊のヴァイス・グランセニック。ヘリパイロットだが、それ以外の航空機器も扱える。後、遠距離射撃を得意とする魔導師だ」

「グランセニック陸曹だ。よろしく、嬢ちゃん」

「せつな・トワ・ハラオウン嘱託魔導師です」

 握手を返す。……そして頭撫でんな。

「で、今日は顔出しただけ?」

「ああ、すこしな。……せつな、二週間ほど前、立て篭もり事件の援護に参加したか?」

 ……ああ、そう言えばやったな。

「あれか? 女の子人質にしてた奴」

「それだ。……その人質、こいつの妹なんだ」

 ……へ? あれ? ……あ、そう言えばそんなイベントあったなぁ。
 妹誤射して、武装隊から身を引くとかそんなエピソードが……

「妹が世話になった。ありがとう、嬢ちゃん。助かった」

「あ、い、いえ。その。妹さんが無事で何よりですはい」

 あっぶねぇ。見過ごすところだったそのイベント。
 これはゲンヤさんに感謝しとこう。とっつあんナイス。

「……いや~、世間は狭いな~」

「まったくだ。……それで? 今度はどんな無理をしてるんだお前は」

 あ、そうだそうだ。

「はやてに内緒にしておいてくれるんなら話すけど?」

「……それはなぜだ?」

「勿論、びっくりさせたいから」

 あいつらのリアクションの為に多少の無茶は平気だ。

「……相変わらず性格の悪い……分かった、主には内緒だな?」

「話の分かる。……そうだ。陸曹にも聞いてもらおうかな?」

「へ? 俺?」

「ああ、陸曹の魔導師ランクは?」

「ああ~、B+だけど……」

 よしよし。充分許容範囲。
 ヘリパイで射撃得意だったら、充分充分。
 もともと六課に参入予定だったし、隙を見てこっちに引き込むつもりだったし。

「……よし、今日の業務終わったら、連絡するから、そのときに話すよ」

 ついでだから、ティーダさんにも声かけよう。
 ふふふふふふ。ドリームチームまであと少しだぜ。

「……せつな。その……凄く危ない顔してるぞ」

「あ、姐さん? 嬢ちゃんって実はとんでもない人なんじゃ……」

 ほっとけ。


 通常業務を終わらせ、定時退社。
 仲間の部隊員に挨拶して、ティーダさんに声を掛ける。

「ティーダさん。この後ちょっといいですか?」

「おろ? お嬢から誘ってくるのは珍しい……惚れた?」

「抜かせ、シスコン。……俺より、もっと美人紹介するよ」

「あ、昼間のシグナム二尉? おお~、お嬢でかした」

 頭撫でんな。
 ティーダさん連れて隊舎の外へ。シグナムには連絡入れてあるから……ああ、いたいた。

「シグナム。またせた」

「いや、かまわん。言われたとおり、グランセニックを連れてきたぞ」

「あれま、ダブルデート?」

「ティーダさん、ティアナに言いつけるよ?」

「それは勘弁」

「あ、236部隊のシスコン空尉」

「……せつな。お前は本当にシスコンに縁があるな」

「……それは言わないで……」

 話しながら移動。行き先はゲンヤのとっつあんいきつけの飲み屋。
 ちなみに俺は飲みません。
 他の連中にも、話が終わるまで飲酒禁止。

「さて、ちょっと俺の話しに付き合ってもらうぞ?」

「お、なんだ? 告白か?」

「あ、馬鹿、そういう振りしたら……」

「シグナム、結婚しよう」

「馬鹿者。話を続けろ」

 く、ノリの悪い……はやてならノッてくれるのに。

「嬢ちゃん以外と軽いなぁ~」

「お嬢は女の子大好きだからな。俺のティアナはわたさねー」

「……あんたも大概だな……」

 よしよし、兄貴コンビもなかなか気が合うようで。
 さて、本題に入ろう。

「来年を目処に、新部隊を設立予定だ。で、シグナム、グランセニック陸曹、後、ティーダさん。三人を、その新部隊にスカウトしたい」

「……本気か?」

 まあ、嘱託魔導師の分際で、何を寝ぼけたことをと思うだろうが。

「一応、スカウト権限は貰ってる。部隊の後見人はハラオウン提督、グレアム提督、ロウラン提督」

「げ。海の提督ばっかじゃん」

「地上から、レジアス中将」

「うっそ。まじか!? あのタカ派が海と手を組むのか!?」

 ティーダさん驚いてるな。

「後、教会の騎士カリムもバックアップに入ってくれてる。……近々、あの三提督にもコンタクトを取って、後詰めを頼む手筈だ」

「な、何でもありだな……」

 当然。これは管理局の進退を掛けた切り札だからな。

「部隊コンセプトは『迅速、簡単、丁寧に』。陸、海、空全ての実力者のサポートを受けてるから、初動をできるだけ早くできる。そして、部隊員のほとんどが、低ランク魔導師だ。その上で、ちゃんと結果をたたき出す」

「……無茶をする。そんな部隊が通用するのか?」

「させる。……なんせ、部隊長はカウンターテロのプロだぜ? シグナムも知ってるよ」

「……? 私の知り合いに、そんなものは……!? まさか、テレサか!」

「ビンゴォ!」

 はやて、家族にテッサの正体教えたって言ってたからな。
 翌日にいろいろ聞かれたのを覚えてる。

「姐さん? その人ってどんな人なんです?」

「テレサ・テスタロッサ。対テロを中心に動く戦闘部隊の部隊長だった女性だ……しかし、彼女は非魔導師だろう?」

「それが? ゲンヤのとっつあんも、非魔導師だが、ちゃんと部隊長勤めてる。……地球の彼女の部隊が、軍縮に伴い、こっちにスカウトしたってわけだ。ベテランだから、研修さえ受ければ、部隊長権限は持てる」

 時たまそういうことあるらしい。まあ、ほとんどが魔導師だったりするんだが。

「テッサを部隊長に据え、低ランク魔導師の部隊で、エリート以上の戦果を出せる部隊……面白いと思わないか?」

「……すげぇな。各部署に、完全に喧嘩売ってる。……それで結果を出せば……」

「……その部隊に、俺たちを?」

「そ。まだまだ人が足りないんだわ。主要メンバーは決めてるんだけど、専門で動ける人がいなくてね。小隊も、隊長がいても副隊長がいないとか……でだ。まず、シグナムには、ファーストスタッフの小隊『アサルト』の副隊長を予定している」

「……ふむ。隊長は?」

「こいつも傭兵上がりの戦争屋で、北米で活躍していた曹長さんだ。こっちに配属の際三尉として昇格してもらう。……まあ、階級的にシグナムの下だけど、腕は確かだ」

 ……エクセ姐さんとアースラの武装隊隊長を三分撃破の事実も教える。

「……凄いな。……考えるに足る要請だ」

「いい返事を期待してます。……んで、グランセニック陸曹」

「あ、名前でいいぞ? こっちもそうするから」

「分かった。じゃあ、ヴァイスさんには、補佐部隊の航空支援に就いて貰いたい。……輸送ヘリパイだな。後、空戦技能者が少ないから、その援護も含まれる……どうかな?」

 まあ、六課でやってたことプラス援護射撃だな。後でアルトさんも探してスカウトしとかないと。

「……そうだな。陸戦部隊が多いんだったら、それは有効手か……わかった。前向きに考えとくよ」

 よしよし。結構乗り気だ……いや、どこにフラグ転がってるか分からんねマジで。

「ティーダさんには、もう一つの小隊『ウルズ』の副隊長をお願いしたい。あと、クロノ・ハラオウン提督に頼んで執務官試験の推薦もつけるけど?」

 実は兄さんとうとう提督になりやがった。母さんはその後ろについて、そろそろ内勤任務に就くそうだ。
 ……そして、身長もちゃんと伸びて、隙があれば俺の頭撫でてくる。おのれ。

「……それは……確かに魅力的だが、低ランクの魔導師で、本当に大丈夫なのか?」

 おっと? まさかティーダさん、高ランク魔導師主義?

「いや、そういうわけじゃないが……作るだけ作って、駄目でした~て、なったら……な?」

「まあ、その場合の対策も勿論考えてあるけど……よし、皆に恐ろしいことを教えてあげよう」

 声に出すとまずいので、限定空間念話で。

「(実は、低ランク魔導師をA+魔導師にする素敵デバイスを配布する……と、言ってみるテスト)」

 ……あ、シグナム引いた。
 ヴァイスさんは……目を見開いてる。
 
「……本気か? そんなとんでもないものが」

「こないだ、試作第二号が完成した。勿論結果は上々。それに」

 さっきのアサルト隊隊長の話の真相を教える。実は二人ともDランク魔導師で、使用デバイスがその試作一号機だと教えた瞬間。

「……おい、それって、まずくないか?」

 あ、そっちに反応した。

「そんなものがあるなんて知られたら、回りから反発が……まさか!」

「気付いたね? そのための実力者だよ」

 上のほうからサポートを貰ってるんだ。他の人間なんかに非難させない。

「勿論、この技術はうちの部隊の占有とする。他の人間には使えないようにセキュリティにも気をつけたしな。……その実力を、管理局全体に認めさせてからネタ晴らしだ……高ランク主義の官僚どもの、度肝を抜いてやる」

 本当は、一番喧嘩を売りたいのは本局の馬鹿ども。
 最初にアースラで働いているとき、本局にも高ランク主義の馬鹿が目に付いた。
 確かに、こんなんが上にいたら地上本部は人手不足になるわ。

「……無茶苦茶と言うか……度胸あるというか……お嬢。実は馬鹿だろ?」

「馬鹿で上等」

 大体、魔法なんて技術、手段でしかねえんだから、それで優劣つけようってのが間違いなんだよ。
 技術は公平に渡して、それをどう使うかが問題なんだ。
 便利なものは、弱者にも渡し、効率的に使う。
 ……勿論、それによるデメリットは勿論あるが。
 ある意味これは、神話の再現だ。

「俺の出身世界の神話でな? 神々から火を盗んで、人間に分け与えた半神がいる。俺がやろうとしてるのは、それと同じことだ」

 まあ、彼は神々から罰を与えられたが……

「どうする? 参加する? しないって言うなら、それでもいい。デメリットはない」

 この企画を黙っててもらえばいいだけだし……悪いけど、記憶を抜かせてもらう。
 それくらい非道にならないと、この企画は成功しない。
 ……できるだけしたくないので、参加して欲しいところ……

「……少し、考える時間をもらえないか? ……正直、迷っている……」

「……ああ、わかった。いい返事を待ってる」

 まあ、時間は必要だよな。

「……しかし、やはり友人だな。主も、地上部隊の初動の遅さを気にしていた。……そのための部隊を作ろうと、今必至に勉強中だ」

 ……その努力が、機動六課に繋がるんだろうけど。

「うん。でも、もうしばらく修行してもらうよ、はやてには。……いくら勤続年数長くても、未成年の子供に頭なんか張らせたくない。……自分たちは良くても、周りが納得しないからね」

 六課も、周りからの突き上げが酷かったし。
 てか、主要部隊員に三十代が一人もいないってやばすぎだろ。守護騎士は除くとしても、公的機関でベテラン……現場たたき上げの古参が一人もいないなんて、考えられない。
 就労年齢低いのは知ってるけど、年齢=経験なんだぞ? 十九なんてまだまだガキもいいとこ。そんな奴に頭張らせんじゃねえよアニメの提督ども。

 ……この世界の提督にはその辺を説得して、うちの世界からテッサを引き抜いてもらった。まあ、彼女も若い方だけど、もう二十一歳だ。さらに戦争経験者。平和な日本で暮らしてるはやてと、経験の差が抜群に違う。……まあ、その分管理局で働いてるが、それでも差は縮まらない。管理局って結構甘いし。
 一〇年管理局で働くのと、一〇年戦争してるのでは、その経験の差は計り知れないほど広い。

 それにだ。
 せっかくのエースにリミッター掛けてまで集めたら、まったく意味無いだろ。
 保有制限は分かるけどさ。隊長陣身内だけで固めたら、新人と壁できるのも見え透いた結果だ。
 どうせ身内を集めるなら、新人入れないほうがマシだよ。意味ないし。
 ……入れるにしても、充分に訓練つませないで現場に出すとか、あんたら間違ってるよ。
 
「……辛辣だな。お前はいいのか?」

「俺? その部隊内じゃ、小隊の一隊員だぜ? シグナムの下になる」

「……お前がか?」

 おいおい。一応俺まだ十二歳だぜ? もうすぐ十三だけど。
 確かに前世の記憶あわせて三十年以上生きてるけど、八年ほど真っ白だし、向こうの二十年の経験なんて、ほとんどゴミだゴミ。まったく役にたたねえ。せいぜい、アニメの記憶が頼りだって話だし。
 そんな奴が隊長格張れないし、経験も充分とはいえない。
 
「俺じゃ、人の頭に立てる器じゃないよ。せいぜい、影に隠れて陰謀を施させてもらうぜ」

「……黒いな嬢ちゃん」

 そういう立ち位置だからさ~、昔からね?

「じゃあ、難しい話はここまで。各自、色よい返事を期待してます。……飲酒解禁。どうぞ」

「よし! じゃあ、嬢ちゃんの陰謀の成功を祈って乾杯だ! ねえちゃん、生四つ!」

「て、俺は飲まんぞ! 未成年に酒飲ますな!」

 飲みたいけど飲めません。
 飲酒は二十歳になってから!

 ……大体だ。

「お嬢はなぁ! まだまだガキの癖に、いろいろ頑張りすぎなんだよぅ? わぁってんのかい?」

 この酔っ払い一号を家に届けなきゃならんのだ、俺までつぶれるわけにはいかん。
 二号はシグナムに渡した。今頃宿舎で死んでるだろう。

「はいはい。わかってます」

「いいや、わかってねぇ! 年頃の女の子なんだから、恋の一つや二つしろっての! 聞いてる?」

 勘弁してくれ、男に興味ねえし。

「じゃあ、ティアナは貰ってくことで」

「それはゆるさーん!」

 このシスコン、マジウザイ。
 いやいや。落ち着け俺。
 うう、酒臭いよう。
 どうにかこうにかランスター宅へ。ティアナ~、お届け物~。

「はーい……うわ。お兄ちゃんまた飲んでるの?」

「またって!? 三ヶ月ぶりだよ俺飲んだの?」

「そのたびにせつなさんに迷惑かけてるでしょうが! ……せつなさんごめんなさい、うちのお兄ちゃんが世話を掛けます」

 ティアナさんマジで礼儀正しい。
 うんうん、お姉ちゃんは君のような子、大好きです。

「あははは。今日は俺が誘っちゃったから、大目に見てあげて。……おら、ティーダさん! さっさと部屋で寝る! ゴーアヘッド!」

「いえっさー!」

「マムだ!」

 ノリだけで動いてやがるなティーダさん。
 ふらふらと部屋に歩いていった。

「……すまんティアナ。ちょっと難しい話した後だったからな。飲ませすぎた。すまん」

「あ、いえ、いいですよ。……お兄ちゃん、最近ずっとせつなさんの話ばっかりだったし」

 俺の? どんな話?

「せつなさん、人以上に働いて、前線には一番で駆けつけて、人の倍頭つかって……子供なのに、働き過ぎだって」

 ……そうか? 普通だと思ったんだが。
 
「うーん、うちの兄からすれば、俺なんてまだまだ仕事できてないはずなんだけどなぁ……」

「えっと、せつなさんのお兄さんって、ハラオウン執務官ですよね? 最近アースラの艦長になった」

「お、よく知ってるな」

 まあ、取材陣来てたし。史上最年少提督の誕生とかなんとか。

「あの人も、一杯一杯仕事して、勉強して、提督になったんですよね?」

 ……まあ、兄さんも大概仕事の虫だからなぁ。

「でも、ハラオウン執務官とせつなさんは……その……」

「違うって言いたいかな?」

「……せつなさんは女の人だし、私より年上だけど、子供だし……あまり無理したら、体壊したら……」

 ……未来の君に言っておこう。お前が言うなと。

「大丈夫。お姉さんは頑丈だし。それに、言うほど仕事してないから」

 人以上に働いているように見えて、実は全部別の部署の書類だったり。
 前線に一番に駆けつけるのは、さっさと終わらせて帰りたいだけだし。
 人の倍頭なんか使っていなく、ただ経験と楽な方法を模索してるだけだし。

「……それでも、心配です」

「……ありがとう。ティアナ。心配してくれて嬉しいよ」

 俯くティアナを抱きしめる。
 やっぱりこのくらいの子の体温は気持ちいいな~

「せ、せつなさん?」

「俺はさ、好きな人の笑顔の為に頑張れるから。……ティアナの笑顔の為に、まだまだ頑張れるから。お姉さんを応援してくれると、嬉しいよ?」

「……はい。せつなさんを応援してます!」

「うん。いい子いい子」

 ……未来のストライカーは、スバルもティアナもいい子だよ本当に。

「くぉら! てぃあなにてぇだすなー」

「寝てろ! シスコン!」

 ……まったく。困ったもんだ。


 あれ? 通信? ティーダさんのだ。

「ちょっと失礼。……はい、こちらランスター代理、トワ・ハラオウン」

『ハラオウンか。ランスターはどうした?』

 あれ? 隊長?

「酔いつぶれてますよ。どうしました?」

『……じゃあ、お前で構わん。先ほど、違法魔導師が航空隊の防衛網を突破して逃走した。すぐに援護に向かって欲しい』

「……了解。飛行許可をお願いします」

『わかった。相手はA+ランク魔導師だ。注意して捕縛に当たれ』

「了解。せつな・トワ・ハラオウン、出動します」

 ……本当に困ったもんだ。

「……せつなさん」

「わり。ちょっと行ってそのまま帰るわ。ティーダさんの介抱よろしく」

「……気をつけてくださいね?」

 ティアナの頭を撫でてから、にっと笑いかけ。

「ああ。お姉さんは無敵さ」

 と、かっこよく出陣と行こう。

「パラディンセットアップ! 【ブレイブハート】スタンバイ! 【飛翔天翼】発動!」

【相変わらず注文が多いです! どうぞ!】

 翼を広げ空へ。ミッドの夜はあまりネオンがない。
 海鳴市街地より、地上は暗いな。
 さて、航空隊に連絡をっと。

『はい! こちら35部隊』

「……こちら、236部隊嘱託魔導師トワ・ハラオウン。援護要請受けて出動しました。違法魔導師の行き先をお願いします」

『ご苦労様です。現在、違法魔導師は新市街地を抜け、旧市街地上空を移動中。結構早いです。注意してください』

「了解。パラディン、地図」

【はいはい。マーカー写します】

 ……よし、こっからなら近い。それでティーダさんに連絡入れたな? あの隊長。
 終わったら時間外労働で請求してやる。

「んじゃ、最大戦速! さっさと片付けて、家帰って寝るぞ!」

【了解です! 誘導します】

 旧市街地へ飛ぶ。……十分ほどで、旧市街上空。
 魔力サーチ……いた!
 郊外に抜けるつもりだな? させるかよ!

「バインド、いつでも仕掛けられるように事前詠唱。回り込むぞ」

【了解です】

 必殺、魔王様からは逃げられない発動!

「止まれ! 時空管理局だ! 大人しく縛に付きなさい!」

「くそ! 早いな!」

 こっちはこないだの試験でAAA取っちまったんだ。お前なんぞに後れを取るか。

「けど、捕まるわけにも行かないからな!」

 デバイスを構える犯人……え? 違う!

「やべ!」

 射線から回避。
 デバイスじゃなくて、あれ質量兵器!? 拳銃じゃん!

「舐めんな! 【拘束光輪】!【hoop bind】

 バインド発動! これで……え!?

【魔力結合がとかれました! AMFです!】

 マジかよ!?
 何でこいつがそんなもん張れるんだよ!?

「死ねぇ!」

 ちぃ! 容赦なく乱射する拳銃を避け、距離を取り、防壁を張る。
 ……くそ、だんだん濃度上がってきてる。防壁がもたない!
 このままじゃまずいか?
 ……仕方ない、奥の手!

「撤退!」

 三十六計逃げるが勝ちぃ!
 勝てそうにない相手と戦えるかぁ!
 
「……へ、腰抜けだったか」

 言ってろアホ。
 追いかけてこずにそのまま背中を向ける犯人。
 ちゃ~んす。

「パラディン【アヴェンジャー】フォルム」

 白から黒へ。闇に溶け込むように鎧が黒く染まる。
 
「【フェイルノート】スタンバイ」

 取り出すは弩弓状に変化した長距離戦用デバイス。
 脳内BGMは『THE GUN OF DIS』。サルファリアル男後半のテーマで。
 
「ターゲットインサイト。ロングバレルセット。ロックオン。カートリッジロード」

【バレルショット射出します】

 距離にして1㎞は離れた。その距離から、拘束バインド弾射出。
 ……ヒット! 馬鹿が、AMF切ってやがった。
 
「最終詠唱開始。Y・H・V・H・テトラクテュス・グラマトン……」

【魔力収束終了。重力変換完了。臨界突破! 発射、どうぞ!】

 ネタ魔法の餌食にしてくれる。

「【原始回帰】デッドエンドシュート!」【ain soph aur】

 重力子を伴った魔力弾が犯人に当たる。同時に、湾曲する空間。
 体の全てが押しつぶされ広げられ、その肉体構成が翻弄される。
 そして、光とともに爆砕!

 ……見た目だけは派手だが、これでも一応非殺傷。しかもネタ元と属性違うし。
 時間逆行攻撃なんか、完全に儀式魔法じゃ。使えるかー!
 まあ、しばらくは病院生活だ。諦めてもらおう。退院したらすぐ豚箱だけど。

「さって、捕縛捕縛~」

【ここまでやっても過剰防衛にならないんですよね~。……ひょっとして、管理局って軍隊より恐ろしいんじゃ……】

「……ま、まあ、言うな」

 殺してないだけましまし。
 犯人にバインド施して装備取り上げて、任務完了。
 ……このやろ、生意気にベレッタ使ってやがった。
 AMF発生コートまで持ってやがるし……気絶してるから意味無いけど。
 ……さて、ちょっと締め上げますかね?

「パラディン、記憶野の洗い出し。【記憶干渉】」【date hack.……接続完了です】

 えっと、今から十二時間の記憶を呼び出し。
 ……あ、ビンゴ。

【……こいつと話してる人……】

「隊長だな。236部隊の。……あの野郎。誰か死なせて航空隊の評価下げようとしてやがったな?」

 評価を下げていいことがあるのか?
 実のところ、航空隊の評価を下げて得をする部署があったりします。
 それ以外の部署に人を流せる口実になります。
 ……おまけで、こいつにAMF発生コートや、質量兵器もたせて、小銭も稼ぐつもりだったらしい。
 一石二鳥を狙ったようだけど、俺を上げた時点で運の尽き。
 せいぜい役に立ってもらうぜ。発言権稼ぎのな? ……てなわけで、こいつは航空隊に突き出しじゃ。

 ……さて、翌日。
 突き出した犯人は局の監獄病院に搬送。そこに乗り込んで犯人に事情聴取。
 拷問なんかしません。事実だけを突きつけて、自白を取り、刑を軽くしてやる……それでも終身刑を免れただけだが。
 質量兵器の密輸及び使用、違法行為、違法研究品の所持。自白を差し引いても禁固刑四十年だ。残念でした。せいぜいしっかり償って減刑を期待しろ。
 その調書を元に、ティーダさんと裏を取って……二日後に、

「航空隊236部隊隊長アラシム・ハイオン三等空佐。質量兵器密輸、違法研究幇助の罪で逮捕します」

 敢え無く隊長は御用。
 逮捕礼状は中将経由で取ってもらった。毎度毎度ありがとうございます。
 ……236部隊は一週間後に解散。各員は受け入れ先に行って貰い、俺は古巣の108部隊へ。
 ティーダさんは今回の件で執務官試験の切符を手に入れた。シグナムの部隊で引き取ってもらい、仕事しながら勉強中だ。
 ……この件が、死亡フラグ回避だったと気づいたのは、六十九年が終わってからである。

 ……た、棚ぼたラッキー?
 三度目はないんだろうなぁ……



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