『あーせつな~? 聞こえてるか~?』「はいはい。休暇中になんでしょ隊長?」『お前の近くで立て篭もりが起きてる。援護してやってくれ』「……どこですか?」『周り見ろ周り。ばたばたしてるビルあるだろ』 ……言われて周り見ると、確かに管理局の隊員が集まっている一画がある。 ビルを見ると……ああ、女の子を人質にとってるのか。「確認しました。犯人は一人です?」『ああ、そうだ。やれるか?』「……まあ、なんとか。魔法使用許可お願いします」『おう。許可する。やっちまえ』 相変わらず軽い。二年ほどあのとっつあんについて行ったが、意外と大らかな仕事っぷり。 ……悪く言うと大雑把。カルタスさん、ご苦労様です。「パラディンセットアップ。【フェイルノート】スタンバイ」【はいはーい。マーカーセット、レーザーサイトセット、額にロックオン。電気変換終了。発動どうぞ】 流石に年の付き合いとなると、何も言わずにほとんどやってくれるパラディン。 完全に体の一部となってしまっている。「……【雷撃一射】スタンショット!」【plasma shot】 電撃を纏った矢は、ありえない軌道を描いて犯人の額に吸い込まれていった。 ……着弾。犯人は上手く昏倒した。 突入する隊員たち。あ、空飛べる魔導師が助けに行ったな? 人質は……うん。無事だ。「……隊長。任務完了。休暇を続行します」『おう、ご苦労さん』 いい事した後は気分がいいね。 さて、市街を抜けて、建設中の新隊舎へ。 一度閉鎖になった隊舎を改装して使う。 ……機動六課じゃないよ? 本部のレジアス中将(いつの間にか昇進してた)に打診して、新部隊立ち上げの要請を出した。 もちろん、俺の後ろに本局のリンディさん、グレアム提督、さらにロウラン提督にも手伝ってもらった。 教会のカリムさんにも協力を要請。 要請書を見て、最初は渋っていた中将だが、部隊長の経歴を見て、目を見開いた。「……本気か?」「マジだぜ?」 新部隊の部隊長は、本局のほうでスカウトしてもらった元軍人。今、本局で研修中だ。 さらに、魔力なしの非魔導師。 特にレアなスキルもない。本当の軍人だ。……あ、一応あるにはあるけど。 そしてその下の部隊員を見てさらに唖然とする中将。「……冗談なのか?」「エイプリルフールはもう過ぎたな」 ミッドに四月馬鹿の風習はないが、本部では俺が広めた。嘘つき本領発揮した 唖然とする理由は、部隊長補佐、小隊長、小隊員が非魔導師の軍人上がり。さらに、前線部隊であるという非常識さ。 ……勿論、質量兵器など使わせない。 「……どうするつもりだ?」「ああ、実はな? 非魔導師でもつかえるデバイスがあるって言ったら驚く?」「なんだとぉ!?」 おおう、中将マジ怒鳴り。 血圧高くなるぞ? ……勿論、『アームスレイブ』の事だが、地球で運用されていた物が玩具に見えるほどのものを、マリエル・アテンザ技師とプレシア・テスタロッサ女史が共同で開発した。してしまった。 うちの妹が丸々ネタ能力持ってるのに触発されて、こっちもネタを投下。 非魔導師用デバイス『アームトルーパー』略称『AT』。丁度、両技師のイニシャルでもある。 擬似リンカーコア『Λドライバ』を改良、高性能AIも付属して生み出されたリンカーマテリアル『テスラドライブ』を標準装備。 これにより、非魔導師が魔導師ランクA+を実現できる廃装備。 試作一号機『ゲシュペンスト』のテストも上々の仕上がりとなった。 ミスリルのコネでソースケさん、クルツさん、マオさんをスカウト、カリーニンさんまで参加してくれるというフルメンバー。 さらに、北米戦隊で活躍していた曹長とそのパートナーもスカウトできた。 ……名前見たときにはまじびびったけど。なんでいるのさ? とにかく、試作二号機『ヒュッケバイン』、試作三号機『グルンガスト』もロールアウト間近。後は新隊舎ができて、テッサの研修とスカウトした傭兵さんたちの研修が終われば、そのまま稼動できるという、まさに俺の切り札。 最後まで要請書を見終わった中将は、俺の手を握り締め、「よくやった! わしにも手伝わせてくれ!」 うぉーい、お前自分の計画は~?「非魔導師でも魔法が使えるんだろう!? 戦闘機人の作成より、こっちのほうがいいに決まってるじゃないか!」 ……手の平返すのはええ。 ま、まあとにかく。「一応試験導入だ。もし、問題が起これば、そこで立ち止まりになるが……」「かまわん。こちらでもバックアップさせてもらおう」 うわぁ。ちょっとやっちまった感が否めない。 切り札切るの早すぎたか? ……勿論、評議会対策として、非魔導師のミスリル出身者に全員魔導師ランクDの登録証を配布。中将公認の登録証で、ちゃんとした公式の物だ。 そして、ATの事も伏せる。最初に渡した要請書とは別の要請書を手渡し、後者のほうで上に通してもらう。 最初のものは、中将説得用のネタばれ資料。後者のほうは上に都合の悪いものを隠し切った隠匿資料である。 中将はこれを二つ返事で承諾。……正直、評議会の指示に頭を悩ませていたらしい。 ふふふ。見てろ脳髄共。ドゥーエ姐さんに殺される前に、その脳パンクさせてやる。 ……まあ、そんなこんながありまして。 その新隊舎の完成具合からして、来年には建設完了になるな。 よしよし。 当然、この部隊立ち上げのときには、俺も参加予定。 Stsの時期には、なのは達も呼んで……あれ? それじゃ、この部隊って、機動六課の代わりになっちまう? ……まあいいか。はやてには悪いけど、ベテラン軍人のテッサに頭張ってもらおう。 なお、要請書に記載した部隊員は以下の通り。 部隊長、テレサ・テスタロッサ三等陸佐(階級は元軍人を考慮して)。 部隊長補佐、アンドレイ・カリーニン二等陸尉。 前線小隊『ウルズ』小隊長、メリッサ・マオ三等陸尉。 同上小隊員、クルツ・ウェーバー陸曹長。 同上小隊員、相良宗介陸曹長。 前線小隊『アサルト』小隊長、南部響介三等陸尉。 同上小隊員、エクセレン・ブロウニング陸曹長。 同上小隊員、せつな・トワ・ハラオウン嘱託魔導師(二等陸尉相当官)。 前線補佐隊『ロングアーチ』隊長、未定(決まるまで、カリーニン二尉が兼任)。 同上補佐官、ルキノ・リリエ陸曹(本局より出向)。 同上補佐官、アリサ・バニングス技術士官(技術局より出向)。 医務担当官、月村すずか医務官(本局より出向) 主要メンバーで知り合いは以上。 ……ツッコミどころ満載だなぁ…… えっと、どこから補足するかな。 まず、俺の待遇についてだけど、本当は遊撃隊でもう一チーム作りたかったんだが、人材が足らんかった。 仕方ないので人が揃うまで、アサルトの隊員で。 なお、響介さんとは事前打ち合わせで、自由行動権を獲得している。 ……いや、びっくりした。何でこの二人がいるのかと。 ミスリルの北米戦隊で、この二人が放逐されようとしてたのを、カリーニンさんが引き取ってくれた。 何でも、AS戦闘でかなりの戦果を挙げたが、AS廃絶の憂き目にあって、戦隊縮小の折にリストラ食らったらしい。 ほとんど俺のせいでもあるので、こっちで頑張ってもらおうとスカウト。 ……試しにゲシュペンストで模擬戦してもらったところ、二人係りでAAランクの魔導師を三分撃破。 あれぇ!? 確かお前、現アースラの武装隊の隊長じゃなかったか~? リアルRGに、マジ感動。こっちに参加してもらうことになった。 ……小隊名は当時のコールサインが元。マオさんたちの『ウルズ』。響介さんも『アサルト』を名乗ってたからそのまま使用。 補佐隊の名前だけ考え付かなかったから、機動六課より拝借。 今度はやてが指揮官研修受けるそうだから、それが終わり次第スカウト交渉するつもり。 ……で、だ。アリサとすずかは入れるつもりなかったんだが、ルキノさんのスカウトするときに、「あんた私に挨拶なしで何やってんのよ?」「ルキノさんにご用事ですか?」 と、丁度交渉中に乱入。てか、艦内客室に堂々と入ってくるな。使用中の札見えんのか。 仕方ないので新部隊の説明。するとやっぱり食いついてきたので、リンディさんと協議の結果、二人とも採用。 アリサはオペレーター兼技術官。すずかは医務官として参加することになった。 うう、医務官はシャマルさんスカウトしようおもとったのに~。おっとはやてがうつった。 なおこの部隊、魔王、死神、夜天には内緒である。 ……この部隊の名を上げる事件は想定済み。 あの、空港大火災だ。 原因がいまいちよくわからないから、事前に防ぐことはできないともう諦めた。 なら、この部隊でいち早く鎮圧。 三人のエースには驚いてもらおうという極悪極まりない作戦である。 ……この真の目的がばれたら、関係者各位に袋叩きにされるな俺。 よし。新部隊の概要はここまで。 後は結果をご覧あれってね? 次に向かうのはナカジマ家。 クイントさんに頼まれて、時々様子を見に行っている。 そして、隙あらば二人とも拉致って地球に連れて行ったり。 今日は流石に無理だから、様子だけ。「ギンガ~~~? スバル~~~?」 ……あれ? 反応なし? 庭を覗くと。「ほら! ガード甘い!」「あう!」 やってるやってる。 時々クイントさんに合わせて、シューティングアーツを教えてもらってるから、飲み込み早い早い。 まあもっとも、完全に習得するまでに大分時間掛かるが……まあ、あと一年。 せめて、うちの部隊が成果を挙げるまで、ちょっと待っててな?「よう。元気そうだな?」「あ! せつなお姉ちゃん!」「せつなさん! いらっしゃい」 おうおう。二人ともそんな笑顔で寄ってきて。お姉さんは嬉しいよ?「お土産に翠屋のケーキ買ってきたから、三人で食おう。ギンガ、お茶頼む」「はい!」「スバルは手ぇ洗ってきな?」「はーい!」 あはは。 完全に俺の妹になってるな。 ……ちなみに、俺以外のみんなの現状。 なのはは、武装隊で着々と実力を挙げている。今度、教導隊の入隊試験を受けるそうだ。 二年前のカグヤ乱入事件で自分の弱点『運動能力の低さ』『戦闘時の心構え』に気付かされ、時たま恭也さんからいろいろ習っているそうだ。……その後は大概死にそうな顔しているが。 フェイトは二年前、執務官試験を一発合格。この二年で敏腕執務官として活躍している。 なのはの件がなかったのと、プレシアさんの(地獄の)特訓のお陰で、なんとか合格を果たしたらしい。後、プレシアさんの訓練は本気で泣きそうになったとかなんとか。 はやては捜査官試験に合格後、地上部隊を転々として修行を積んでいる。 さっきも言ったが、今度は指揮官研修を受け、自分の部隊を作るのが夢だとかなんとか。うん、流石に未成年の部隊長なんて俺がゆるさねー。Stsは修行にまわってもらうぜ。 アリサはデバイスマイスターの免許を取り、マリエルさんの一番弟子としてATの研究を始めた。 ……恐ろしいことに、こいつ自分のデバイスを作り、前線でも戦えるように訓練中なんだぜ? バーニングアリサ? なんですかそれ? すずかは医務官としてアースラ勤務。そして、今度は暇を見つけてデバイスマイスターの勉強も始めている。 やはり月村の血はマッドの血でした。こっちの技術を忍さんに教えられん。恭也さん連れて乗り込みかねんからな。 まあ、皆大きな怪我もなく。「お茶はいりましたー」「手、洗ってきたー!」 うん。平和だ。 ……あ、ランスターさんの件どうしよ?「? 悩み事ですか?」「あー、うん。ちょっとねー」 先日、航空隊の援軍で、ティーダ・ランスターさん本人にエンカウントしまして。 事件解決後の合同飲み会で意気投合。俺の年齢が年齢なだけに流石にベッドインなんかしないが、気がつくと彼の自宅で寝こけるとか、大恥をかいてしまいました。 その際に、「おにーちゃーん? そろそろ起きないと、遅刻……あれ? だれ?」 はーい、ティアナさんと接触ー!? 御年九歳のツンデレガンナーと知り合いになってしまいました。 てか、その後俺の紹介も聞かず、「お兄ちゃんのロリコン!」 とか言い出したときには笑った笑った。 以降、時々ティーダさんと会っては家にお邪魔して、ティアナさんと食事したり遊んだりしてる。 ティーダさんは恭也さんとはまた違ったタイプのシスコンで、むしろオープン。 勿論、妹の恋人は瞬殺でとか言い出す。公衆の面前で、堂々と、力説しだす。 勘弁してください。 そのせいもあってかよりにもよってゲンヤさん。「お前、ちょっと航空隊に出向して来い。あれだ、ランスターのいる部隊だから、やりやすかろ?」 とか言い出して、来週から出向です。 来年から新部隊の編成始めるのに、あんた鬼だ。 ……で、まあ何が言いたいかというと。 ティーダさんに情が移っちゃったんだよねー。 このままほっとくと、ティーダさん死んじゃうんだよねー? ……で、ティアナ泣かせるのは、ちょっち辛い。 今回は、助けられるか……? けど、いつその事件が起こるか、詳しく知らないんだよ俺!? どーするー? しばらくしてから、部隊に引っ張るか? ……それが一番だろうから、その方向で動くか。「……お姉ちゃん。難しい顔してる」「あ? ああ、悪い悪い。ごめんな、ちょっと考え事」「……せつなさん。無理したら駄目ですよ?」 う、ギンガにまで言われるとは。 そんなに俺無理するキャラなのか? それはなのはの役だというのに…… まあ、なのはが無理してたら、問答無用で休ませるが。「まあ、だいじょぶじょぶ。お姉さん結構なんでもありだから」 さて? もう少し気張りますかね。 この世界は、少しは優しいみたいだから。