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No.6790の一覧
[0] とことんリリカルを引っ掻き回してみた・リリカルオリ主多重クロス[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:33)
[1] 1.りーいんかーねいしょん[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:57)
[2] 2.海鳴の街の眠れない夜[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:54)
[3] 3.空飛ぶ魔法少女の不思議な毎日[4CZG4OGLX+BS](2009/02/25 19:15)
[4] 4.幸せは儚き少女の為に[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:22)
[5] 5.夜天の主は彼女なのか?[4CZG4OGLX+BS](2009/03/02 11:12)
[6] 6.オリエンタルスターフライト・前編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:21)
[7] 6.オリエンタルスターフライト・後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/06 17:26)
[8] 7.スノーホワイトケージ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/07 12:21)
[9] 8.悲しみは散り、夢は幻想に[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:58)
[10] 9.海鳴温泉館 一つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:32)
[11] 9.海鳴温泉館 二つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:35)
[12] 9.海鳴温泉館 三つ目[4CZG4OGLX+BS](2009/03/13 12:56)
[13] 10.明治十七年の温泉アリス[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:36)
[14] 11.管理局が見ている[4CZG4OGLX+BS](2009/03/14 09:01)
[15] 12.星色マスターブレイカー[4CZG4OGLX+BS](2009/03/16 10:55)
[16] 13.Retrospective of Mid-childa[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:44)
[17] 14.サクリファイスドール[4CZG4OGLX+BS](2009/03/19 08:02)
[18] 15.夏色脇路[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:45)
[19] 16.ボーダーオブライフ[4CZG4OGLX+BS](2009/03/27 14:26)
[20] 17.ボーダーオブライン 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:35)
[21] 17.ボーダーオブライン 中編(微グロ表現あり・選択肢あり)[4CZG4OGLX+BS](2009/03/28 22:42)
[22] ↑の選択肢解説特番。もしくは、作者のお遊び。[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:05)
[23] 17.ボーダーオブライン 後編 ライン……[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:18)
[24] L18.人間と機人の境界 前編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:46)
[25] L18.人間と機人の境界 後編[4CZG4OGLX+BS](2009/03/30 21:29)
[26] L19.インペリシャブルシューターガール[4CZG4OGLX+BS](2009/05/20 18:30)
[27] L20.人生遊戯 -ライフゲーム-[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[28] L21.空を飛ぶ不可思議な魔女[4CZG4OGLX+BS](2009/05/22 21:08)
[29] L22.ブレイジングシューティングスター[4CZG4OGLX+BS](2009/05/23 04:07)
[30] L23.プリズムコンチェルト ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 02:45)
[31] L23.プリズムコンチェルト 海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 19:19)
[32] L24.マジカルガールズウォー リリカルサイド+α[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:38)
[33] L24.マジカルガールズウォー オリジナルサイド[4CZG4OGLX+BS](2009/05/24 20:07)
[34] L25.新難題ロストロギア 出発編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 19:58)
[35] L25.新難題ロストロギア 一日目前半[4CZG4OGLX+BS](2009/05/25 20:07)
[36] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『アリサ』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:39)
[37] L25.新難題ロストロギア 一日目中盤『すずか』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 01:03)
[38] L25.新難題ロストロギア 一日目後半[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 12:59)
[39] L25.新難題ロストロギア 二日目朝~昼[4CZG4OGLX+BS](2009/05/26 19:43)
[40] L25.新難題ロストロギア 二日目昼~夕方『刹那』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/27 00:10)
[41] L25.新難題ロストロギア 二日目夕方~夜『はやて』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:34)
[42] L25.新難題ロストロギア 三日目前編[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 19:44)
[43] L25.新難題ロストロギア 三日目後編『なのは』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/29 23:01)
[44] L25.新難題ロストロギア 四日目朝の風景[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 17:49)
[45] L25.新難題ロストロギア 四日目昼の風景『フェイト』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 18:40)
[46] L25.新難題ロストロギア 四日目夜の風景『最終試練・せつな』[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 20:35)
[47] L25.新難題ロストロギア 五日目リザルト[4CZG4OGLX+BS](2009/05/30 23:24)
[48] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・表[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:01)
[49] L25.新難題ロストロギア 五日目説明・裏[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:02)
[50] L25.新難題ロストロギア 五日目おまけ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 19:35)
[51] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談ミッド編[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[52] L25.新難題ロストロギア 六日目後日談海鳴編[4CZG4OGLX+BS](2009/06/05 23:44)
[53] L26.百万鬼夜行 夜の行軍[4CZG4OGLX+BS](2009/06/06 13:18)
[54] L26.百万鬼夜行 午前の任務[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:04)
[55] L26.百万鬼夜行 午後の策謀[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:36)
[56] 現在、更新が乱れております(謝罪と説明という名の言い訳)[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 19:14)
[57] L27.大魔導師の死 史実の死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 01:15)
[58] L27.大魔導師の死 希望のための死[4CZG4OGLX+BS](2009/06/13 04:41)
[59] L28.トリップパラノイア アジトにて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:46)
[60] L28.トリップパラノイア 外にて[4CZG4OGLX+BS](2009/06/20 22:47)
[61] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『地上本部の人攫い』[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 22:51)
[62] L29.ミス・フォーチュンズホイール 曰く『特務隊の銀狐』[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:07)
[63] L29EX.シューティングスターレヴァリエ[4CZG4OGLX+BS](2009/06/25 23:05)
[64] L30.奇跡降臨の道しるべ[4CZG4OGLX+BS](2009/07/03 23:12)
[65] L31-1.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と雪の街[4CZG4OGLX+BS](2009/07/10 19:43)
[66] L31-2.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と新しい生活[4CZG4OGLX+BS](2009/07/18 18:37)
[67] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 前[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:04)
[68] L31-3.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と初登校の再会 後[4CZG4OGLX+BS](2009/07/21 12:16)
[69] L31-4.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と夜の学校[4CZG4OGLX+BS](2009/07/23 14:35)
[70] L31-5.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと祐一と迷子の子狐[4CZG4OGLX+BS](2009/07/25 10:28)
[71] L31-6.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなと舞と素敵なお母さん[4CZG4OGLX+BS](2010/05/05 13:20)
[72] L31-6EX.彷徨える命題[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:04)
[73] L31-7.風を喚ぶ奇跡の儀式 せつなとなのはと休日のデート 前[4CZG4OGLX+BS](2010/05/12 18:13)
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[6790] L18.人間と機人の境界 後編
Name: 4CZG4OGLX+BS◆dad217cc ID:d17439a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/30 21:29

 <せつな>

『じゃあ、大丈夫なのね?』

「はい。……すみません。迷惑かけました」

 病院の廊下。公衆電話でリンディさんに連絡。
 ……それで、聞いた。

「……全滅……ですか……」

『……それでね? クイントさんの遺体だけ、まだ見つかってないの。……他の隊員のは、見つかったんだけど……』

 ? あれ? 確か、クイントさんは……ちゃんと遺体を返されたはず……
 でも、間に合わなかったのは、事実。

「……分かりました……」

『後、ナカジマ三佐には貴方の配属は待って貰ったわ。伝言があるけど、聞く?』

「おねがいします」

『えっと、『体治してから出て来い。待ってるから』……て。貴方の事、期待してるみたいね』

「……ありがたいことです……」

 こんな情けない俺を、待ってるって……畜生……

「じゃあ、二日ほど、休暇に入ります。……ありがとう、母さん」

『……ええ。しっかり休みなさい。じゃあね?』

 ……電話を切る……
 最悪だ……
 皆を……死なせてしまった……

「こんなはずじゃ……なかったのにな……」

 本当に、クロノはいいこと言ったよ……
 ……まあ、果たせなかったことは仕方がない。
 ゲンヤさんに殴られて、ギンガ達に嫌われて、クイントさんの冥福を……?
 ……いかんな。もう、俺を呪いに来たか?

「……せつなちゃん。こんな所に」

 足あるなんて、よっぽど恨めしかったのか……じゃなくて、

「……ゑ!?」

 本物……生きてる!? 

「え!? クイントさん!?」

「そ、そうよ? クイントお姉さんよ?」

 はぁ!? なんでどうしてどうなった!?
 夢でも見てんのか俺!?

「……えい」

 夢なら、ここで目が覚めるはず!
 ……抱きついても、目は覚めない。
 ちゃんと、体温がある。
 幽霊でもない……生きてる!?

「……せつなちゃん……」

「……心配した……ゼスト隊が、全滅したって聞いて……」

「……うん。ごめんね……」

 抱きしめ返してくれる。
 うん、この人は、本物のクイントさんだ。
 良かった……

「でも、何でクイントさんだけ……」

「……あの子が、助けてくれたの」

 あの子?
 ……はい?
 なんだあれ?

「……」

 無言で近寄ってくる。
 ……鏡?
 いやいや。
 ……俺?

「……君は……」

 俺が、全身タイツを着て、立ってた。
 全身タイツ? て、これってチンクさんが着てた奴と同じ?
 そうだよ。ナンバーズのボディースーツじゃん。
 え? てことは……

「……はじめまして、オリジナル。私は、貴方の遺伝子で作られた戦闘機人。名前はカグヤ」

 カグヤ……
 蓬莱ニート?
 永遠だから?
 ……つまり。

「俺か!?」

「私です」

 ……この子は、俺の知識を持った私?
 ……そう言えば、さっきから……いや、目覚めたときから、女性意識が出にくくなってる。
 魂の分離? 記憶の共有?
 ……それの構築で、一日寝てたのか!?
 ありえる。
 ……た、確かめる!

「イイカヨクキケ蓬莱ニート!」

「私は蓬莱人形ではない!」

 ……いきなりのやり取りで唖然とするクイントさん。
 ごめんもうちょっと付き合って。

「コイン一個じゃ命一つも買えないぜ?」

「あんたがコンテニューできないのさ!」

 ……東方系はばっちり。
 なら!

「全力全開!」

「疾風迅雷!」

「「『ブラストカラミティ』!!」」

 漫画版もいける!
 これはどうだ!

「私は、もう誰も、傷ついてほしくないから!」

「少し、頭冷やそうか?」

 ……できる!
 レスポンス早い!

「……俺、なんだな?」

「……私、だよ?」

 ……なら、ここは……

「妹よ!」

 さあ、返してみろ!

「母さん!」

「ちっくしょー! そう来たか! でも許すぞ娘よ!」

「でも母子ってシチュエーションは禁断だよね。てことで姉さん!」

 ひし!

「……えっと、一応感動の再会……なの?」

 会ったことは一度もないけどな?

「うう、やっぱり胸ない~。そこくらいは弄っとけドクタ~」

「そこを改造してから来るべきだったかも~。ごめんね姉さん~」

「クイントさん助けてくれたんなら許すぞ。……ゼスト隊長や、メガーヌさんは……」

「ごめん。間に合わなかった……ごめんね」

「いや、俺は寝こけてたから、文句は言えない……ありがとう」

 ……ちなみに、はたから見たら双子の抱擁にしか見えない。
 それに。

「ふ、二人とも……手つき怪しいわよ……特にせつなちゃん」

 俺かよ。

「姉さん、エッチ」

「お前もな……さて。ちょっと情報整理する。病室来い。今、俺疲労で入院中だ」

 二人を連れて病室へ……そこには。

「……いたな、カグヤ。……せつなも」

 五番さん降臨。
 行動早いな。

「う、チンク姉さん……」

「……チンクさん。……目は、ゼスト隊長に?」
 
 アイパッチ装備済み。
 ……そして、クイントさんは、

「……貴方が……隊長を!」

 デバイス準備……できない。

「……周囲に、AMFを張ってある。……魔法は使えないぞ」

 ……デバイス展開できないほどの濃度ってわけね。
 流石に準備は万端か。

「……チンクさん。カグヤから話は聞いた。……それで、そっちはカグヤをどうしたいんだ?」

「私が聞きたい。カグヤ。何故私の言いつけを守らなかった?」

 ……記憶の共有が起こったなら、簡単な話。

「クイントさんを殺せば、彼女の娘たちが悲しむからです。ゲンヤさんも、悲しむし、何より……せつな姉さんが一番悲しむ。……それが、一番嫌だった。それだけです」

 ……だよなぁ。
 人の悲しむ顔を嫌う俺らだから、その答えは当然だ。

「……せつな。カグヤはどういうことになっているか、お前はわかるのか?」

「俺の記憶が流れたんだろ? 記憶の共有さ。……どんな奇跡か知らないけどな。……文句はドクターに言え。俺の遺伝子なんか使うからだ」

 まあ、使わなかったら、カグヤの代わりに俺が助けにいけたはず。
 文句はあるけど、感謝もしとこう。
 とりあえずは。

「ドクターの自業自得だ。……後、カグヤを連れて行くのか?」

「……なら、この先、カグヤは私の話を聞かず、そんな理由で動く可能性はあるのか?」

 ……あるかな。

「対象が、俺の知り合いで、大切な人なら、確実にな。……もちろん、それはお前らにも適応されるし」

「……私、せつなもだけど、姉さんたち、大切だから……」

 ……うう、俺のクローンだけど、可愛いぞカグヤ。

「……せつな。しばらく、カグヤを預けておく。……ドクターに、指示を仰ぐが……もしかしたら、お前にも来てもらうかも知れんから、その時は」

「同行しよう。……カグヤの身体データとか、体じっくり見たこととか、余罪はたっぷりあるしな」

 ふふふふふ。
 ぼっこぼこにしてやる。

「……待ちなさい」

 ……クイントさん。

「……なんだ?」

「ゼスト隊長は……」

「あの御仁は、私が倒した……それが、私に託された命令だ」

 ……その言葉は、辛い。

「その件もあったか。チンクさん?」

「なんだ?」

「今日は見逃す。……次あったら、覚悟しとけ。お仕置きしてやる」

 大切だけど、大切だけど、ゼスト隊長を殺した罪は、購ってもらう。
 ……視線が交わる。
 
「……ふん。返り討ちにしてやる」

 そう言って、彼女は病室を出て行った。
 ……同時に、病室内を重い空気が流れる。

「……姉さん」

「すまん。……でも、ゼスト隊長は、俺の、尊敬する人だったんだ」

「……知ってます……知ってます……」

 俺の感覚と、私の感覚にはずれがある。
 カグヤと記憶共有したことで、せつな側に俺が強く出て、カグヤ側に私が強く出ている。
 完全とは言い難いが、住み分けが行われた。
 ……さて、これがどう影響するか……

「クイントさん」

「……うん。ごめん。そう言えば、あなたは彼女の事、知ってたのよね」

 ……クイントさんには、二年前の夏に話した。

「はい。……まさか、カグヤなんてのができてるとは知りませんでしたが」

「そう……私達が、あそこで全滅する可能性も知ってたの?」

「……させるつもりは、ありませんでした。……参戦するつもりでしたし」

「……命令違反をしてでも?」

 その通り。
 大体。いつもの事だ。

「それで始末書も覚悟の上でしたよ。……まさか、一日寝こけるなんて、思っても見ませんでしたが」

「そっか……せつなちゃんはいつもどおり、無理しようとしてたわけだ」

 ……いや、面目ない。

「……すみません」

「もう、いいわよ。……それで、これからどうしようかしら?」

 ……よし、過ぎたことは過ぎたことだ。
 まず、クイントさんだ。

「クイントさんとカグヤは、しばらくこっちで暮らしてもらいます。カグヤ。クイントさんの護衛を。……前の俺の部屋。いつでも使えるようにしてあるから、そこ使え」

「うん。わかった。……あ、姉さん。お願いがあるんだけど」

「どした?」

「私のデバイス、ストレージでいいからもらえないかな? ISじゃ、広域戦闘しかできないから」

 ……広域?

「……どんなISだよ」

「え? ……だ、弾幕」

「喰らいボム?」

「かすり」

「かすり点?」

「グレイズ」

「グレイズ!?」

 おいおい。
 スペカかよ。

「うん。IS『スペルワード』。スペルカードシステムそのまんま。喰らいボムもできる」

「できるのか……」

 ドクター……あんたホントいい仕事しすぎだよ……

「わかった。マリエルさんに頼んで、ストレージ貰ってこよう。……今日明日はここにいるから、それ以降になるけど、それは勘弁な?」

「うん。姉さん、ありがとう」

「可愛い妹の為だ。……もう一回抱いていい?」

「うん、いいよ?」

「こらこらこら! 姉妹でそういうのは……ちょ、駄目よ?」

 やっぱ駄目か。

「仕方ない。また今度に」

「今度でも、普通に駄目でしょ! ……せつなちゃん? 女の子同士でそういうことは、いけないことなのよ?」

 いや、そんな力説されても。

「俺、女の子大好きだし」

「私も、男の人嫌いだし」

 ……あれ?

「……嫌いまでいくのか? カグヤは」

「えっと、触られると……嫌。怖くて……」

「ドクターは?」

「ドクターは平気。エッチじゃないから」

 ……分からない。

「えっと、じゃあ俺は? 男性意識強いけど」

「せつな姉さんは好き。私だし。優しいし……」

 ……分からん。

「……えっと、何? 貴方たちの中で、男に興味はないの?」

「……憧れとかはありますけど、仕草とか、立ち振る舞いとか。けど、恋愛感情はないですね」

「私はまったく。だって、男って女を犯すことしか考えてないし」

 いや、それは極端だぞ……て、そうか。
 俺の記憶に引っ張られてるのか。
 あれがトラウマになってるんだな……

「……せつなちゃん。カグヤちゃんなんかあったの?」 

「俺の前世は知ってますよね? それの記憶を知ってるから、トラウマに……」

「なるほど。……せつなちゃんは、直したほうがいいと思う?」

「思いません。てか、大事な妹を男なんかにわたさねー」

 ふふふふ。
 カグヤは俺のだ。

「……せつなちゃんも大概歪んでるわね……」

 何を今更ってやつです。



 とにかく、カグヤとクイントさんは前に住んでいたアパートにうつって貰った。
 翌日、無事退院した俺は、直にミッドに飛んで、先ずは……髭達磨のところへ。

「達磨ぁ!」

「……来たか。遅かったな」

 来る事は分かってたようだ。

「ゼスト達の事は……残念だったな」

「まったくだ! ……弁明はあるのかよ?」

「あいつが、もうあそこを掴んでいるとは……知らなかった。わしの落ち度だ……すまん」

 ……達磨自身もショックだったようだ。
 まあ、親友だと言っていたしな……くそ。

「ゼスト隊。生き残りは?」

「……本部では、生き残りはなしと発表した。……お前の懇意にしていたものも、いたようだが……死亡として処理した」

 ……ち、クイントさんをこっちに連れて来れないな。
 なら、仕方ない。

「……じゃあ、あんたは、それでも戦闘機人の計画に手を貸し続けるのか?」

「……ふん。知っていたか。……ああ、そうだ。違法研究だが……これからの世代には、必要なことだ」

 ……ああ、そうかい。
 じゃあ、それはもう放置だ。
 達磨にも達磨の正義があるし、このおっさんを更迭したところで、別の奴が傀儡にされるだけ。
 なら、まだ達磨のほうが、正義を掲げてるだけマシだ。
 そこは融通するしかない。
 ……こっちも切り札切るか。

「じゃあよ。こっち……俺は俺で勝手にやらせてもらうぜ。その違法研究がかすむぐらいの、手札があるからな」

「……ほう? いいだろう。やってみせろ。……嘱託魔導師にどれだけできるか。見せてもらおうか」

 当然。度肝抜いてやる。
 辺境世界舐めんなよ?



 オーリス女史が戻ってきたので、そのまま退散した。
 あの人、俺を子ども扱いするから苦手。
 平気で頭撫でるし。
 さて、次はゲンヤのとっつあんのところへ。
 正式な配属は明日からだが、一応報告もあるし。

「お、体は治ったのか?」

「ああ。心配かけました。……で、今ちょっとはずせます?」

「……ああ、ちょっと待て。カルタス! 休憩行ってくらぁ!」

 連れ立って休憩室へ。
 とっつあんタバコ吸うんだ。

「あ? わりいな。……流石にお前は吸わんよな?」

「こっちの身体になってからは一本も。……まあ、高校出るまでは、吸わないことにしてます」

「へ、まあいいけどよ……」

 煙を吐いて……ああ、ちょっとやつれてるな。
 とっとと安心させてやるか。

「ギンガ達、元気にしてます?」

「盛大に泣いてるよ……遺体すら出てこないのに、死亡扱いだ……やるせねえよ……」

「クイントさん、生きてますよ」

「……せつなよぉ。笑えねえ冗談は……」

 見つめる。
 その視線だけでわかってくれた。

「……マジか?」

「マジです。今、俺の世界に」

「……そうか。良かった……」

 肩を落とし、どっと息を吐くゲンヤさん。
 ……辛かったんだな。
 
「けど、達磨が死亡認定しやがったから、しばらくこっちに連れて来れません」

「あ、ああ、そうだよな。……なあ、頼みがあるんだが」

「わかってます。ギンガ達を連れて行けばいいんですね?」

「話が早くて助かる。今日あたり、連れて行ってくれ。……けど、定期検査とかあるから、そっちに移住はできねえ」

 ……そうだよな。
 管理局側の戦闘機人のサンプルだ。
 そんなに簡単に、手放せるわけがない。
 ……データ取りが終わるまでは、ミッドから動かせない。
 仕方ない。

「落ち着くまでは、こっちで預かって、決心つけさせて、そっちに返しますよ。……それでいいっすか?」

「おう、頼む……て、お前さん。この間会ったときより、男っぽくなってないか?」

「……ちょっと、いろいろありましてね……」

 女性意識をカグヤに預けたせいか、女性っぽく動けなくなってきた。
 ……後で、いろいろ調整しないと、自分の意識とか。

「じゃあ、今日はこの後ギンガ達のところに行きます。そのまま連れて行きますが、いいですね?」

「ああ、二人を頼む……それと、明日はちゃんと出て来いよ?」

 仕事がたまってるんだと、愚痴を吐くゲンヤさん。
 心なしか嬉しそうなのは、クイントさんが生きてたからか、俺をこき使えるからか……
 前者だな、絶対そうだ。そうだったらそうだ!


 今日はばたばたするが。
 あいつらの笑顔の為なら、身を削る勢いで!
 ナカジマ邸の玄関を開ける。
 鍵掛けとけよ無用心な。

「ギンガーーーーー! スバルーーーーーー!」

「「せ、せつなおねぇえぇちゃあああああ」」

 飛びついてきた。
 はやいはやい。

「おかあさんが、おかあさんがぁ!」

「せ、せつなさあん……」

 うぅわ。スバル泣きすぎ。
 目が真っ赤になって兎さん状態。
 ギンガも俺が顔見せたら泣き始めた。
 我慢してたのか。

「……おら、お前ら泣きやめぇ!」

「「ひぃぐ!」」

 と、いけね。
 怒鳴っちまった。

「お母さんに会いたいか!」

「……え?」

「会いたい! 会いたいよぉ!」

 スバルは食いつき良すぎ。
 ギンガ、目を白黒させてかわいー。

「会いたかったら、今すぐに着替え持って再集合! 制限時間十分! 行けぇ!」

「「は、はいい!!」」

 ふふふふ。
 この二年間の信頼は伊達ではない。
 大切に育てた甲斐あって、今じゃほんとにお姉ちゃんとして慕ってくれている。
 ……十分経たずに準備してきた。

「よし! ギンガ、スバル。お母さんに会いたいか!?」

「は、はい!」

「会いたいです!」

「声が小さい! お母さんに会いたいか!!」

「「はい!!」」

 よし、いい声。

「じゃあ、しゅっぱ~つ! お母さんに会いに行くぞ~!」

「「おーーーーー」……せ、せつなさん、あの」

 あはは。
 流石にノリだけでついていけないか、ギンガ。

「大丈夫。クイントさん、生きてるから」

「……え!? ホントですか!?」

「お姉ちゃんは嘘つきだけど、嘘なら嘘ってちゃんと教えるだろ?」

「……はい!」

 満面の笑顔。うんうん。
 その顔が見たかった。
 ……と、その前に。

「スバル、顔を拭こう。ほら、ちーんして」

「ちーん」

 鼻水でべたべた。
 手持ちのハンカチで顔を拭いてやる。
 ……うーん。ちっこくて可愛い。

 とりあえず、堂々と空港ステーションへ。
 手続きして、本局転送ポートへ。もうとんぼ返りもいいところだな。
 で、今度は中継ポートに跳んだ所で。

「せつなちゃん!」

 なのはに遭遇。
 ……なんでそんな悲しそうな顔してるの?

「あ、ギンガちゃんたちも一緒なの?」

「おう。どうした?」

「どうしたって……聞いてるよね? クイントさんが……」

 ……あ、リンディさんたちに情報回してないや。

「なのは。耳貸して」

「え?」

 念話使えって言うのなし。
 こういうのは、様式美だから。

「ごにょごにょごにょ……(クイントさん、実は生きてるから)」

 結局使ったり。

「へ? ええええええええむぐ!」

「声が大きい」

 口を塞ぐ。振り向いてくる局員に笑いかけ、その手を離す。

「関係者各位に、情報、回しといて。それ以外には内緒でな?」

「わ、分かった……じゃあ、ギンガちゃんたちは、これから?」

「そういうこと。……後、もっと驚くこともあるから。それは後でね?」

「え? うん、わかったよ。……せつなちゃん。体大丈夫?」

 ……まあ、一日寝たしね。

「平気平気。俺って頑丈なの知ってるだろ?」

「知ってるけど、せつなちゃん、無理してでも平気そうにするから、心配だよ」

 ……なんかアニメ二話の会話してるみたい。
 しかも、なのはに言われてるのが納得いかん。

「今日は絶好調だよ。大丈夫。……じゃ、先戻ってるから」

「うん。気をつけてね?」

「わかってる。ありがとな」

 なのはと別れ、地球は海鳴市へ。
 一度自宅へ。……また誰もいないし。
 まあ、リンディさんたち大変そうだしなぁ……
 執務官ならなくて本当によかった。
 家から出て、前の自宅へ。
 ……玄関まで来て、深呼吸。
 ……ただいま。

「……おーい、クイントさ~ん?」

 玄関開けて、呼ぶと、顔を出した、青色ポニーのおねーさん。

「あら、せつなちゃん? どうしたの?」

「お届けものでオウチぁ!!」「「おかーーーさーーーん!!」」

 お姉ちゃん押しのけるとか!?
 そんな子に育てた覚えないよ!?

「あなたたち……よく来たわね?」

「お母さん、お母さん、おかあさーん……」

「お母さん、無事でよかった……」

 ……まあいいか。
 
「姉さんナイス。感動をありがとう」

「とっつあんに頼まれたからな。……これで、しばらくは頑張れる」

 妹分の笑顔の為なら、頑張れるよ、うん。

「あ、それで、チンク姉さんから通信。近日中に連絡入れてほしいって。私経由で」

「うーん。しばらくは無理って返しといて。都合が付き次第連絡すると」

「わかった。……ちゃんと姉妹できてるね、私たち」

「俺たちだからな。……てか、その服似合うな。クイントさんが選んだのか?」

 こっちの活動資金は渡したが、フリフリのアリス服って……

「……あんまり見ないで」

「いや、ナイスクイントさん。妹が可愛いぞ」

 うん、本当に頑張れる。
 後、落ち着いたギンガ達がカグヤ見て驚いていたのはお約束。
 傍目からして、ほんとに双子だからなぁ……





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