結果発表! 投票総数49票。 ライン・ロウ:46票 ライン・カオス:3票で、ライン・ロウに決定!! であ、17話後編をどうぞ! ****************「その人の名前は、ジェイル・スカリエッティ。……生命操作研究の第一人者です」 ……提督と捜査官が息を呑む。「……その人、私が追っている戦闘機人の……」「はい、製作者です。……私も、稼動している三人に会いました」 チンクさんは割りと可愛い人。 トーレさんは冷静な人。 ウーノさんも動じない人だった。「じゃあ、せつなはスカリエッティに会ったのね?」「はい。……彼自身、私にちょっとした実験を施したかったみたいで」 断わったけど。「……それで、今、彼と連絡取れるの?」「いえ、何かあったら向こうから連絡してくれるそうですから。……詳しいアジトの位置も知りませんし」 転送先はいきなりアジトだったし。「じゃ、じゃあ、もし連絡してきたら……」「クイントさんストップ」 止めるのはリンディさん。「……ここでは、私たちは管理局員じゃないでしょ?」「そ、そうでした……ごめん、せつなちゃん」「あ、いえ、それが普通の反応だと思います」 チャンスだからねぇ~。 対策とっておきたいしね~。「と、言うか、犯罪者と友達って、あんた本気で何者よ?」「う~ん。だって、ドクター、結構面白い人だし」「……犯罪者だよね?」「法律的にね? 本人は悪いことしてるって自覚は……あるだろうけど、そんなには罪悪感感じてないと思うよ?」 むしろ知りたがっている。人の神秘、生命の神秘を。「うん、ただの科学者だよ。あの人は。ただその研究が、法律に引っかかっちゃっただけ。……本人は、子供思いのパパさんだから」 そうだと思う。 だって、結局あの人は、上から命じられてるだけの……悲しい人だから。「……そういう言われ方すると、逮捕しづらくなるわねぇ……」「容赦はしなくていいと思いますよ? それすらも自分の楽しみにしちゃう人だから」「……わかった、彼は私が、逮捕するから」 クイントさん頑張ってください。 ……いざとなったら助けに行きます。「あとは、お母さんの知ってる先日の事件ですね」「知ってるっていっても、簡単にしか知らないけどね。……詳しく話してもらえる?」 ……よし、こうなったらやけだ。 もう終わったことだし。「えっと、六月の話ですけど……」 私が体験した事件。 自分の誘拐未遂から始まって、アリサの誘拐未遂。ミスリルで聞いた真相。大陸弾道弾を防げる魔力障壁。 要塞侵攻戦の参加。沢山の兵士を殺したこと。防衛室での会話。防衛ユニット『エレン』の破壊。科学者と要塞司令官の殺害。 ……そして、要塞の最後。「……以上です」 皆静かに聴いていた。 フェイトはだんだん涙ぐんでいる。 アリサはあの時の事を思い出してうんうんうなっている。 「じゃあ、誕生日のネックレスは、そのときの報酬で買ったんやね……」「……ごめん。真相を聞いたら、嫌だったかな?」「ええよ。プレゼントに罪はあらへん。……しっかしその司令官むかつくな。魔法をなんやおもとるねん」「そうだよ! 戦争の為の力じゃないよ!」 なのは激怒。まあもちつけ。「……私たちには、耳の痛い話ね。……古代史には、私たちの使う魔法は、もともと兵器だったんだから……」「そうですね。……古代ベルカ戦争……酷い戦いだったそうですから……」 ミッドの教科書には、必ずといっていいほど載っている事柄だ。 「せつなちゃん……辛かったね? 苦しかったね? ……力になれなくて、ごめんね?」「うん。でも、いろいろ勉強にもなったから……やっぱり、私悪人にはなれないよ。人を殺した手が……こんなにも、重い」「せつなちゃん……」 すずかが、私の手を握ってくれる。 愛しい物を、扱うように。「……まあ、せつなの懸念事項は、私も力になるから、気にしないでね? 後、管理外での魔法使用、及び、殺害も、不問にします……それでいいわね?」「ありがとうございます。お母さん」 本当は、許されない罪。 これだけは、背負っておこう。 エレンの魂だけは……「じゃあ、あとはもうないかしら?」「そうですね。後は……なのは」「え?」「フェイト、はやて」「なに?」「なんや?」「すずか。アリサも」「どうしたの?」「……私たちに、隠し事?」「うん」 後は、管理局の事だけ。「私、今週末、嘱託魔導師試験受ける。……管理局に、入局しようと思う」「「「「「……えええええ!!」」」」」「ちょ、いいの!? あれだけ拒否してたのに!?」 クイントさん食いつき早いよ。 後近い近い。「はい。……ゲンヤさんとぶつかって、ちょっとだけ、考え変えました。……私一人じゃ、守れないものもあるから」「……そっか。それで、嘱託魔導師を……」「執務官って手もあるそうですけど、そうなると逆に自由が利かなくなるそうですから。とりあえず、それで」 執務官になると、確実に航行艦か、部隊直属になり、自由度がなくなるそうだ。 私の理想を実現する為には、ある程度の自由は欲しい。 そうなると、嘱託魔導師が一番あっているそうだ。「……せ、せつなちゃん、八歳だよ? 小学生だよ? ……もう、お仕事するの?」「うん。そうなる……あ、でも、その前に訓練校に入るから、実際に現場に出るのは半年ぐらい先かな?」 小学校と並行だから、スケジュール組まないとだし。「じゃ、じゃあ、学校はどうするのよ!」「えっと、学校行きながら、訓練校も行くよ?」「ちょ、そんなん無理やん! つぶれてまうで!?」「私、結構頑丈だから」「でも、せつな無理しても平気な顔してるから、心配だよ……」 うーん、こうなるから話したくなかったんだけど。「……せつなちゃん」「すずか?」 やっぱりすずかも反対かなぁ……「もう、決めたんだね?」「……うん。決めたよ。後には引かない」「……わかった。私、応援する」「ちょ、すずか!?」「リンディさん」「なにかしら?」 ……すずか? なんか、決めたような眼をして……「魔法使えなくても、管理局って入れますか?」 ゑ?「……は、入れなくはないけど……」「私のだんなも、魔力なしだけど管理局員だし……」 クイントさんそれ言っちゃ駄目ーーー!!「あの、私も、せつなちゃんのお手伝いがしたいんです。どうすれば管理局に入れますか?」 ちょーーーーー!?「す、すずか? ちょっと待とう。……本気?」「本気。……せつなちゃん。せつなちゃんの無理、私に半分分けて? ……私、せつなちゃんの力になりたいから」「ちょっとまったーーーーー!!」 今度ははやてか!?「それはあたしの役目や! あたしも管理局はいるで!」 まてぇぇぇぇぇぇ!!「そんな唐突な!? 勢いで決めちゃ駄目だよはやて!」「せっちゃんを一人になんかせえへん! あたしなら、守護騎士もついてとってもお得! どうや!?」「セールスじゃないんだよはやて?」「ちょっと待つのーーーーー!」 うは、今度はなのは?「せつなちゃんを守るのは私の役目なの! せつなちゃんの笑顔を守るのが、私の使命なの! リンディさん! 私も局員になります!」 いや、待とう、本気で待とう!「なのはストップ。私、そんなに頼りないの?」「頼れるけど、せつなちゃんの背中を守るのは私の役目なの!」「いや、そんなパートナー宣言されても」「えっと、私も入ります」 そんなさらっとフェイトさん?「私も魔力持ちだし、せつなの隣を歩けると思うんだ。……せつなは一人にしない。一緒に頑張ろう?」「いや、そんな笑顔浮かべなくても……で、でも、四人ともちょっと待てと」「じゃああたしは五人目ね」 おまえもか!?「なに? すずかは良くて、あたしは駄目ってことはないわよね?」「いいといった覚えはない! いいからまずは俺の話を聞け!」「あ、刹那さんや」「いちいち呼び方変えんでいい、どっちもせつなだ」 二重人格じゃないからね?「……まず前線組になるであろうフェイト、なのは。前線って言うくらいだから、仕事は危険になるぞ?」「……それでも、せつなの力になるなら」「私、頑張るよ。せつなちゃんを守りたいから」「……リンディさん! 魔導師ランク制限の話してあげて!」「あら、男の子の時はその呼び方なの?」「……母さん、お願いします」「わかったわ」 つ、疲れる…… で、魔導師制限の話。 要するに、一つの部隊に高ランク魔導師を何人も配置できないって事だ、大雑把に言えば。 「リミッターをかけて、ランク落として入れるって裏技もあるけど、なのはさんたちの年齢でリミッターは返って危険ね」 だから、俺と同じ部署に配置されるなんてことはまずない。「そ、そんなぁ……」「せつな、なんとかならないの?」「管理局法を変えなければそう簡単にはどうにも……」 未来のはやてはそれに苦労しましたしね。「次、後衛組になるはやて、アリサ、すずか。……最低でも、高校以上の学力が必要になるぞ?」「うっ!? 学力が必要なんか!?」「あ、はやては魔導師だからある程度は免除される。それでも、一定以上の学力はもちろん要るけど」「……く、もう少し勉強する必要があるようね!」「お姉ちゃん。お願いします」「ええ、いいわよ任せなさい」 ……ノリノリかい。 頼むから止めてくれ忍さん。「あとはやて? ヴォルケンズは一緒に居れないからな? 例のランク制限で」 全員AA以上だからね!「がーん!? あたしのセールスポイントが!?」 まったく意味ないのである。「……でも、確かにもったいないわね。この子たちを中心に部隊作れないかしら?」「……考える余地はありそうですよね?」 ……おい、そこ! 何企んでやがる!「母さん? クイントさん? 何を唐突に……」「はい皆さん注目!」 何だ突然! パンパンと手を鳴らして、みんなの視線を集める母さん。「とりあえず、せつなさんを思うその気持ち、充分受け取りました。……けど、残念だけど、皆まだ年齢が低いから、一般入局はできないの」「せっちゃんはどうなんや!?」「せつなさんは私とクロノの推薦があるから。……どういう意味かわかるかしら?」 おいおい。「じゃあ、リンディさんの推薦があれば……」「入れるんですね?」「ええ。けど、そんなに何人も推薦することはできないの。……そこで、皆に、私の元で、研修を行おうと思います」 おいおいおいおいおい!! それって!「一年を目処にして、私が提示する水準点をたたき出した子を推薦するわ。推薦人には私だけでなく、クロノも、ここにいるクイントさんもできるし、はやてさんなら、グレアム提督に頼むこともできるわ。それで……研修に参加したい人!」「「「「「はい!」」」」」 全員!? マジでか!?「あ、リンディさん、うちの子らは後で聞いといてええかな?」「ええ、かまわないわ。……あ、守護騎士なら、教会経由で入ってもいいわよ?」「よっしゃ! シグナムたちはそっちからまわそ。それなら、先んじてせっちゃんのサポートができるわ」 うぉーい……「じゃあ、このキャンプ後に、詳しい説明するから、期待してまっていてね?」「「「「「はい!!」」」」」「……み、味方……こいつら止める味方は……」「せつなちゃん?」 はぁ! いた!「桃子さん! いいんですかあんなことになってますけど!」「あら? いいに決まってるわよ。なのはの事、お願いね?」 ……きょ、恭也さんがいれば~~~~~!!「よーし、燃えてきたわよ~~~!!」「頑張ろうね、アリサちゃん」「あたしらでせっちゃんの背中を守るんで! ええな!」「もちろん! がんばろー!」「せつな。私、頑張るからね?」 ……皆が私の心を分かってくれないんです…… うううううううう。泣くぞもう。 ……さて、お子様どもを遊びに行かせた後、今度はリンディさんとクロノと私で、ミスリル上層部と会談することに。 上層部って言っても、あくまで西太平洋戦隊の上層部。 テッサとカリーニンさんである。 メリダ島内部、客室。 ソースケさん(正確には宗介さんが正しい)に連れられ、奥のソファーへ。 お茶を入れてもらい、ちょっと一息……だから母さんは砂糖を探さない!「お母さん、緑茶はそのまま飲んでください。……駄目ですか?」「えっと、駄目かしら?」「……スティックシュガーでよければありますよ……」 レーション付属品である。最近持ち歩くようになった。 なお、パラディンの格納部に、フランス軍レーションが三日分確保してあるのは内緒だ。「……何か、僕よりも親子しているな、せつなは」「ごめん兄さん。何かリンディさんとは他人とは思えなくて……」「いや、僕も、あまり母さんに甘えるほうじゃないからな……僕の分まで甘えてくれ」「あら? クロノも甘えていいのよ?」「遠慮します」 ……うーん。見事にひねくれてる。「おまたせしました」 部屋に入ってきたテッサとカリーニンさん。 全員立ち上がり、敬礼。「対テロ部隊『ミスリル』の西太平洋戦隊戦隊長、及び、原子力潜水艦『トゥアハー・デ・ダナン』艦長の、テレサ・テスタロッサ大佐です。本日はお越しいただきありがとうございます」「同じく、特務隊指揮官、アンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニン少佐だ。先日はせつな君のご協力感謝します」「時空管理局本局所属、時空航行艦『アースラ』艦長のリンディ・ハラオウン提督です。こちらの階級だと、少将相当官になります。今日はよろしくお願いしますね?」「同じく『アースラ』所属、クロノ・ハラオウン執務官です。よろしくお願いします」 ……挨拶の応酬。 何だこの軍人会議……て、軍人会議か。「……せつな、君の番だぞ?」「え? 私もやるの?」「当然でしょ、貴方は仲介役なんだから」 そうでしたね。「えっと、せつな・トワ・ハラオウンです。本日は、ミスリル、管理局の仲介役を任じられました。双方、遺恨の残らない話し合いをお願いします……こんなんでいい?」 てか、普通に八歳児の出る幕じゃないよね?「上出来よ」「では、はじめましょうか。お座りください」 テッサに勧められ、着席する。向かい側のソファーに座るテッサとカリーニンさん。「まず本日の議題の『アームスレイブ』についてご説明いたします。……少佐?」「はい。では、資料をお配りします」 配られた資料にざっと目を通す……凄い。 闇の書のときにちょっとかじった程度の知識しかないけど、ほとんど穴がない。 管理局配布のストレージに迫る勢いだが……「……凄いわね。圧縮機能はないけど、ほとんど完成してるわ」「これは、我が部隊で使用されているAST-6『ガーンズパック』の仕様書です。……私の部隊に、五機配備されています」 ……ここに五機ってことは、他の戦隊にも何機かあるってことか……「……内蔵されている魔法はどんなものがあるのかしら?」「基本は捕縛系、強化系、そして放出系です。防御系は専門で、一機丸ごと防御用になります」 ……なるほど。リソースの問題なわけね。 ……なんか足りないような……あ、そうだあいつらもそうだった。「AIが組み込まれてないのか」「あ、それよ! なんか足りないと思ったら!」「? AIを組み込むのは、一般的なんですか?」 こちらのデバイスにはAIを組み込んで術式補助をしている。 それによりリソースを減らし、魔法の種類を増やしたり、発動の高速化、威力の増加を補助できる。 『アームスレイブ』には、その概念がない。 だから、魔法の種類が少なくなるのだ。「……では、『アーバレスト』の仕様書を見てもらいましょう」 ソースケさん専用機だな。 ……おいおい。 「……これは……確かにAIは入っているが、その他の構成が無茶苦茶だ」 わかるところで言うと、擬似リンカーコアからの伝達率が『ガーンズパック』より二十%向上してる。代わりに、魔力制御率が五%ダウン。 魔力量は増加してるけど、制御率が落ちてるせいでかなり緻密な構成が必要になる。 これで魔力放出したら……うまくやれば一般魔導師のシールドは砕けるけど、ミスると手元で暴発するぞ。 「ピーキーね……クイントさんのリボルバーナックルみたい」「クイントさんのも大概ピーキーですけど……これはそれ以上ですよ」 これは使い手を選ぶぞ。 そりゃ、ソースケさん専用になるわ。「……本気で実戦向きじゃないですね。……そう言えば、先日も一回も使わなかったな……」「いや、君がいたからじゃないのか?」 う、それ言われると……「しかし、この擬似リンカーコアはよくできている。……これを開発したのは?」「……私の国の科学者で、今は亡くなっています。……そして、彼が最初の『ウィスパード』でした」 ……それだ。一番の謎。「その『ウィスパード』とは?」「はい、時たま、この世界で見つかるんですが、この世界の科学ではありえない技術を知っている者がいるんです。今の技術レベルより、二十年、三十年先の技術を持つものが」 それは、ある日突然囁かれる。 未来の知識、ありえない技術。 突拍子もない発明品。一歩先の科学。 囁かれし者。 「この『アームスレイブ』も、その中の一つ『デバイス』作成技術の延長線で作られました」「ばかな!? デバイスを作成できるのは、我々時空管理局の認定試験を受けたものだけだぞ!?」「クロノ執務官、落ち着きなさい……それを知っていたものが現われ、デバイスを作って見せたと?」「はい。しかし、それを使えるものは、誰一人おらず、研究を重ねた上で現われた新たな単語、リンカーコアが必要と分かりました」 そう、デバイスを起動するためには、魔力生成炉リンカーコアが必要だ。そこから汲み出される魔力を使用し、デバイスを起動、魔法を運用する。「そのときの研究チームは、そのリンカーコアが人の体内に宿ると知り、世界中の人間からサンプルを取りました。そして、最初の一人を見つけた」「……まさか……その人を実験対象にしたのか!?」「……そのようです。実験や研究を重ね、生まれたのが、この擬似リンカーコア。通称『Λドライバ』。……これを用いて、アームスレイブは作られました」 ……あの科学者は言っていた。 二人目は実験に耐えられずに死んだと。 三人目はエレン。ある種、あいつらにとっての完成品。「じゃあ、その人は……」「……私たちが『アームスレイブ』を知って、研究しだした頃には、もう……」「なんてことを……」 ……まあ、わかりきっていたことだ。 科学の発展に犠牲は憑き物。 誤字にあらず。 そしてその犠牲は……お金だったり、資源だったり、人間だったり。 等価交換だ。「私たちは、アームスレイブを運用することで、同じアームスレイブを運用するテロリストを倒す為の剣としました。……ですが、五月。私は、次元世界の事実を知りました……せつなさんに、あったんです」「……引き継ぎます。最初、私はテッサから、ウィスパードの疑いをもたれていました。ウィスパードの特徴の一つに、多重人格の発現があるそうですから」 他人からみたら、私の言動はそう見える。 私と俺が混同した人格だから。「そして、私はウィスパードの説明とともに、アームスレイブの説明も聞きました。……そして、それにまつわる研究の事も。なんとかして、この技術を管理局に知られる前に、排除することを、テッサに提案しました」「……どうして、そのことを私に言ってくれなかったの?」 いや、あんた管理局だろが。「その頃、ジュエルシードの件も残ってましたし、極力関わらない方向で動きましたから」 なのはに止められたし。「せつなさん、必至で私たちに技術を捨てるように説得してくれたんです。……この技術があなた方にばれて、この世界が火の海にならないように」「……せつなさん? 管理局が管理を決めた世界に攻め込んで管理するわけじゃないのよ? ちゃんと話し合いを……」「……この世界に住むものとして、意見しますが、まず、その話し合いは決裂します」 私ではなく、テッサがそう言い切った。「それは、何故でしょう?」「だって、そうでしょう? 『我々は昔からその技術を管理しているから、それを発見した君らも管理されるべきだ』……そう言われて、憤慨しない人間がいますか? どんな経緯があったにせよ、この世界で生まれた技術を横取りされるようなものです。……そして、決裂した組織同士が次に行うのは、力による侵略と、力による抵抗。……戦争の始まりです」「そんな単純な!?」「その単純なやり取りを、文明が生まれた頃から続けているんです! 四千年以上もの昔から……」 ……人間は、愚かな行動を繰り返す。 そう運命付けられた生物だから。 「せつなさんは、その連鎖を断ち切ろうとした一人目なんです。私も、その考えに賛同します。……今、この地球上で、紛争はまだまだ続いています。テロリストたちも、まだまだ活動しています。その上に、異世界からの介入者? 勘弁してください! この世界だけでも一杯一杯なのに、他所の世界の事まで考えられませんよ!」「大佐、落ち着いてください」 ……テッサも、感情的になるんだなぁ…… いや、年齢を考えると当然か。「……失礼しました」「いえ、そうですね……私達も、この世界を火の海なんかにしたくありません……何しろ、娘の故郷ですし、私達も先日から住み始めましたし」「ほう、そうでしたか……せつな君が散々私たちの勧誘を蹴っていた理由の一つは、貴方たちでしたか」「……せつなさん。そうなの?」 そうなんです。「それで、もし、この世界の魔法技術を廃絶する為の知恵があれば、お貸しいただきたいのです。お願いします」「……艦長」「うーん……そうね、擬似リンカーコアの欠点を拡げようかしら。後、構成の穴も広げられるわ……そうだ!」 またまた嫌な予感。「テッサさん、この仕様書、持って返っていいかしら? こっちの世界に、こういうのに詳しい研究者いるから、その人に見せてみるわ。私の艦にも技術者いるから、彼女にも手伝ってもらいましょう」「ありがとうございます!」 ……こっちの世界の研究者ってまさか……「プレシア女史を巻き込む気ですか?」「ええ、ほら、テッサさんの苗字つながりだし」 それは関係ないだろ。 まあ、理論系は研究者たちに任せよう。「後は、ミスリル以外の研究施設を持つ国だけど?」「そちらは、我々で探し出して、虱潰します。……その間に、『アームスレイブ』不要論を広げれば、根絶すると思います……何年かは、掛かるかもしれませんが……」 そっちも、テッサたちに任せよう。 ……じゃあ、これで。「ようやくテッサの勧誘地獄から抜けられるわけだ?」「う、地獄とか言いますか……」 たりめーだ。「一日十件も掛かってきた日にゃ、ホントに足腰立たなくしてやろうかと……」「だからセクハラはやめてください! ホントに八歳で女の子ですか!?」 いや、どっちかというと微妙。「つーか、足腰立たなくって、何されると思ったんだ?」「う……そ、それは……」「ちなみに、くすぐりの刑のつもりだったんだが……艦長さんは何を想像したのかなぁ~?」「り、リンディさん! 絶対教育間違ってますよ、貴女の娘さん!」「ごめんね? 私の知らないうちにこうなってたの……私も最初苦労したんだから……」 はっはっは。 いや、ホントごめん。「……君は敵に回したくないな。厄介極まりない」「味方にするのが得策だ。かなり頼りになる」「……僕は頭痛いですよ、味方でも……」「細かいことを無視すれば、彼女ほど頼りになるものはいないぞ? 君は少し真面目すぎる」「……やはり、そうなんでしょうか……」「君はまだ若い。もう少し、頭を柔らかくして、受け入れる余裕を作りたまえ。……余裕ができれば、仕事を楽しむこともできる」「……深いですね」 て、そこは何仲良くなってやがる。 なんか師弟みたいになってるよ? そして、この懸案が解決したのは三年後。地球から、完全にアームスレイブがなくなり……代わりに、ミスリルの西太平洋戦隊主要メンバー引き抜いて管理局に入れたのは内緒だったら内緒だ! これが六課の代わりになるとは思わなかったんだよもん。 *******************と、こんな感じになりました~。 たくさんの投票、ありがとうございました。 次回は……飛んで二年後。 Sts崩壊序曲、始まります。 であ、作者でした。