……あの温泉旅行から数日。 翌日の午前中には家路に付いた。 テッサさんからはああ言ったが、協力自体はやぶさかではないので、通信機器は受け取っておいた。「私の部隊専用の衛星通信ですから、盗聴は気にしなくて大丈夫です」 と、言っていたけど。 ……そう言えば、どんな部隊か聞いてなかったなぁ~。 ……魔法少女ならぬ魔法傭兵相良ソースケ? 魔法兵隊? 強そうなんだか力抜けるんだか…… 魔法着ぐるみボン太くんでいいと思う……ボン太くん? ……ああ、目の前のぬいぐるみか。 いつの間に買ったんだろう…… まあ、それはともかく。 この旅行を通じて、変な縁ができた。 テッサさんは『デバイスはまだ実用段階ではない』とは言っていたが、その開発、研究をしているのは、テッサさんたちも同様だ。 さらに、テッサさんもデバイス作成知識はあるという。 ならば、研究が進めば、ホントにリンカーコアのない一般人でも使えるデバイスが出来上がってしまう。 これは多分まずい。 今は管理外のこの世界、そんなミッドチルダの……管理局の根本である高ランク魔導師重視主義に揺らぎがでてしまう。 AAAランクの魔導師一人が、『アームスレイブ』装備の軍人部隊に負けるなんてことが発生したら…… それはまずい。 この世界は確実に管理局の目に留まり、よくて管理内に昇格?するだろうし、悪くて管理の名を借りた支配が始まってしまう。 そうなると、俺はもちろん、なのはやはやてといった現地の魔導師は確実に管理局の目に留まる。 フェイトたちも管理局に知られることになるし、下手したらプレシアさんの研究がばれてしまう。 ……フェイトの生い立ちは、管理局法でアウトだ。 プレシアさんはもうフェイトを完全に娘としてみているし、もし、それを咎められたら、俺はもちろんの事、プレシアさんも管理局に牙を剥く。 ……散々リンディさんには脅しをかけているが、所詮個人の魔導師ばかり。 組織が動けば、俺らなんかひとたまりもないだろう。 ……主力四人が八歳児で、ちゃんと魔法教育を受けているのはフェイトだけ。 俺は完全にシルビアの魔法戦闘技術のコピーだし、なのはとはやては魔法戦闘自体素人。 後はヴォルケンリッターに頼るだけだが……正直、ガチで戦えるのはシグナム、ヴィータの二人だけ。 プレシアさん自身も強力な魔導師ではあるが、基本的にあの人は技術者畑の人間だ。 魔法戦闘に慣れているはずもない。それはこの間の喧嘩でわかった。 AAAランク以上の接近戦重視の魔導師or騎士に弱いぞあの人。 とにかく、できるだけ俺らは隠れ住む方向を重視。 ……いざとなったら、俺が身売りするか…… そう言えば、何か忘れてるような?[キンコーン] ……はて? 今日は誰も来る予定はなかったんだが。 あ、今日は日曜日。家でごろごろしてます。 ……ジュエルシードは後七個。一応俺も探索しているんだけど、派手には探してない。 リンディさんの目もあるのは当然の事(最近訪問率激上がり。仕事しろよ艦長)、なのは、フェイト、はやてに、「「「せつな(せっちゃん)ちゃんは休んでて!」」」 と、働かせてもらえない。 しぶしぶ、シグナムやヴィータ、ザフィーラと魔法戦闘の訓練ばかり繰り返してる。 お、女の子なのに体術スキルばかり上がって行くよ……? 後、ミッド系の魔法もプレシアさんに教えてもらってる。 ……例の睡眠中に脳の容量が拡大したのか、ミッド式の魔法もすいすい頭に入る。 それをパラディン用に組み直し、先日、ようやく【アヴェンジャー】フォルムも稼動できるようになった。 魔法スキルもうなぎ登り。 あれか? 俺はリーサルウェポンでも目指したいのか? ……まあ、それくらいしないと俺の夢、なのはたちを守ることはできないんだろうけど。[キンコーン] と、いかんいかん。 お客様を待たせたままだ。 ……一体誰だ?「はい?」 ドアを開けた先に、「……こんにちは。久しぶりだね、せつな君」 ……やたらと渋めの叔父様がいました。 ……誰? 私の記憶を検索……あ、そうだ。「グレアム叔父さん?」「覚えててくれたか。……元気そうで何よりだ」 ……うわーぉ。 大物来たよ。確か、リンディさんより上の人じゃなかったか?「お久しぶりです、グレアム叔父さん。……どうぞ? 上がってください」「ああ、お邪魔させてもらうよ」 ……さて、この人が動いたってことは……夜天の書がばれた? じゃなくて……闇の書が稼動していることが知られたか? でも、闇の書はもうなく、夜天の書に……あ! リンディさんにレポートまだ完成版渡してない。 しまったぁぁぁぁぁぁ!? 旅行から帰ってまだ三日しか経ってないよ? いや、それくらいあればばれるのか!? ……ひょっとして、八神家監視されてた? と、言うことは、グレアムさんってば、闇の書の転生先知ってたの!? だとしたらまずい。「お、お茶、入れますね?」「ありがとう」 ……台所に向かい、パラディンにジャミングを頼む。 そして、長距離念話。「(シグナム! 今どこだ!?)」『(せつなか? 今は家にいるが?)』 返事は早く、そして、平穏。 ……まだ、何か異変が起こっているわけではないらしい。「(そっちで変わったことはないか?)」『(? いや、特には。平穏な休日を過ごしているが?)』 ……よかった……いやまだだ。「(はやては? 家にいる?)」『(主は部屋に。……何かあったのか?)』 とりあえず、警戒だけしてもらうか。「(今俺の家に、管理局の人が来てる。リンディさんより上の人だ。……もしかしたら、そっちの事が別経由でばれたかもしれない。まだなんとも言えないけど……警戒だけ、頼む)」『(……わかった。襲撃に備える)』「(お願い。……じゃあ、また連絡する)」『(ああ、気をつけろ)』 ……はやてのほうには手は行っていないか。 まだ様子見かもしれないけど。 用心だけはしておいて損はないだろう。 さて、お茶を持ってグレアムさんと対談だ。 念話しつつお茶の用意ぐらいはできる。「お待たせしました。どうぞ?」「ああ、ありがとう……しかし、リンディ君には聞いていたんだが……元気になったな」「ええ。いろいろありましたから」 ……よく考えたら、俺の人格形成し終わってまだ一ヶ月未満なんだよね。 濃ゆいな俺の人生。「さて、今日来たのは……まず、君の様子を見に来たんだ。リンディ君が、君の扱いに苦労しているそうだからな」 いや、まあ、苦労するだろうね。「すみません。特殊な人格になってしまいましたから」「……話は聞いている。だが、人間、次元世界も含めて、たくさんの人種、人格、人生がある。君のような子も、いてもおかしくはない。……出会えるとは、思っても見なかったが」 ……ふむ。人づてで聞いて、信じてくれたのは重畳。 内心信じてない可能性もあるけど。「まあ、元気なら何よりだ。……さて、本題に入ろう」「本題……ですか?」 さあなんだ? 後、リンディさんはどこまで話したんだ?「……実は、君にある本を渡しているんだが、必要になってね。返してもらいたいんだが、どこに仕舞ってあるかな?」 !? それって、まさか!「どんな……本ですか?」「ああ、白色の、鎖に縛られた本だ。表紙に、先の尖った十字架が貼り付けてあるから、すぐにわかると思うが……」 パラディンの事か!? てか、それしかねぇし。 本をここにおいて行ったの、この人だったのか!?「えっと、その本は……その……」「? どうしたんだい? あの本は、君のリンカーコアでは、動かせないはずなんだが……」 ? あれ? おかしいな。リンディさんに情報流したはずだから、知ってるはずだけど?「……あの、グレアム叔父さん? リンディさんに聞いてないんですか?」「? 何をかね? ……君が、我々管理局の事を知っていること、後、前世の人格を有していること。……私が聞いたことは、これくらいだが……」 だぁぁぁぁ!? 魔法使えること飛ばしてはるーーー!? ……だけど、これはチャンス? それとも手遅れ? どっちだ、どっちに転ぶ!? そして、どう動けば……ええい、ままよ! 「……あの本は、私がオーナーになりました」「! 君の魔力値はD-で、デバイスを起動するには魔力が不足しているはずでは……」「……私が、前世の人格を有するに当たり、リンカーコアが正常に戻ったんです。……ひょっとしたら、活性化、あるいは拡張化かもしれません。今現在、私の魔力値は、AA+はあります」 最近の訓練で+分上がりました。 まだまだ伸びるようで、最終的にはS前後には届くそうです。byプレシアさん調べ。「……では、君が『白夜の書』の主になったのだね?」 ……ほわっと? 何そのどこぞの出版社の名前みたいなデバイス。 知らない知らないそんなもの知らない。「……それ、なんのことですか?」「とぼけてもらっては困る。ロストロギア『白夜の書』。古代ベルカにおいて、闇の書の対になる古代遺産。 ……曰く、白夜の書は、使用者の魔力を喰らい、闇の書を打ち砕く剣になるという。……それが目覚めたというのなら、闇の書も近々目覚めるはず……」 ……おい。「(……弁解、ある?)」【(事実無根です。なんですかその中二病みたいな設定。私はそんな危険なものではありません!)】 そうだよなぁ。 ……一応言っとくけど、今の性能のほうがよっぽど中二病だぞ? お前一つで無印とAsの問題ほとんど解決したんだからな? 原作を遥かに凌ぐ最短時間で。 とりあえず、確認だけしとくか。「……えっと、おじさんが言っているのは、これの事……ですよね?」 パラディンを元のサイズに戻し、グレアムさんに見せる。 さあどうだ!?「ああ、そうだ。……そうか、やはり、君が主に」「なるか! そんな変なアイテムの主なんかに!」 ああ、いきなり変わったから、グレアムさんぽかんとしてる。 いかんいかん。少し落ち着け……「ど、どういうことかね?」「こほん。失礼しました。……えっと、この子は古代ベルカの総合兵装型インテリジェントデバイス・騎士王の書。名称パラディンです。……パラディン、御挨拶」【はいマスター。はじめまして、パラディンと申します。……まかり間違っても、そんなマスターを死に追いやるような腐れデバイスではありませんのであしからず】 ホント感情豊かだなお前。 さすが、古代ベルカの騎士……の人格。「この子は、闇の書の前身、夜天の書の拡張デバイスとして開発され、後に夜天の書の主を守る騎士に渡された、守護騎士システムの元になったデバイスです。 ……まあ、性能的にロストロギアといっても過言ではないですが、使用者、及び、周りに迷惑をかけるような子じゃないです」 ただ、ちょっと人格が陽気で、ネタ知識豊富で、無駄に高性能ってだけですが。「……そ、そうだったのか……技術局の連中、まったく違うレポート提出したな……」 こらこら。少女の前で仕事の愚痴言うなよ。【まあ、調べにくいのは仕方ないですね。稼動前の休止中はどんな解析もできない仕様になってますし、かれこれ、千年近く稼動してませんでしたし。……まともな情報が残っているか怪しいですから】 まあ、闇の書に関係するのだけはあってたけどな。「では、闇の書の対抗手段というのは……」「ええ、間違ってはいませんね。……パラディンには、夜天の書のバックアップデータが保存されていました。これを闇の書に当てれば、闇の書を修復可能となり、夜天の書にリファインすることが可能です」 もうしたけどね。「……そ、そういう意味の対抗手段か……」 ……もうばらしちゃってもいいか。「なお、もう修復済みです」「……なんだと……!?」 グレアムさん顔真っ青。「えっと、夜天の書……闇の書の主、八神はやてとは、幼馴染なんです。 私が元気になった日に、偶然再会して、お友達になりました。 その数日後、はやての家に遊びに行ったときに、闇の書を見つけまして。 パラディンとはやてと話し合いの結果、闇の書を修復することにしました。 ……それで、今、闇の書は完全に抹消。夜天の書とその管制人格、後、守護騎士たちが残ったという結末です。 ……何か、問題がありますか?」 あるとかいったら、俺様降臨じゃ。 この場で叩き斬ってやる。「……闇の書を……ロジック面から攻略するとは……」 おお、驚いてる驚いてる。 ……管理局、かなり手こずったみたいだしね。闇の書に。「あ、後、夜天の書が闇の書に改悪された元は、パラディン用のアップグレードパッチ【アヴェンジャー】を、無理矢理夜天の書に組み込んで使っていたためと判明しました。……どこの馬鹿が組み込んだか知りませんけど」 流石にログには残ってなかった。 ち、犯人解れば、そいつのせいにできたのに。「……では、私のやっていたことは……やろうとしていたことは、無駄だったのだな……」 ……そう言えば、この人何しようとしてたんだ? As後半で、クロノにデュランダル渡してたのは知ってるけど、具体的に何かしてたのかは知らない。 確か、勇者王がどうとか……? それって、スバルのあだ名じゃないの?「……おじさんは、どんな計画を立てていらっしゃったんですか?」「……とても、人間とは思えない所業だよ……私は、はやて君を、犠牲にしようとしていた……」 ……その台詞でぶん殴ろうとしたけど、グレアムさんの話を聞くことにした。 最後まで聞いてからぶん殴ろう。「私が立てた計画は二つだ。 ……一つは、はやて君が予定通り闇の書の主になり、守護騎士たちが単独で魔力の蒐集を開始し、私とその使い魔でそれを援護。最終的にはやて君を闇の書の生贄として完成させ、暴走を起こす一歩手前で、氷結魔法で封印する。 ……大雑把に言ったが、これでも、十年の歳月をかけた。……彼女一人の犠牲で、闇の書を永久封印する計画だ」 ……震える拳を押さえ、感情を抑え、話を、独白を聴く。「……もう一つは?」「もう一つは……そのロストロギア『白夜の書』を使い、闇の書を破壊する方法だ。先ほどの計画でも、狂わないという保証はない。 もし、計画が狂ったときの、保険として、私は『白夜の書』を受け取りに来た……まさか、こんな結果になっているとは、思いもよらなかったが」 ……まだだ。 まだ聞きたいことはある。「受け取りに来た……と言う事は、使える目処が立ったんですか? 『白夜の書』の」「いや、闇の書が稼動する予定は、はやて君の誕生日だった。……もしや、それに合わせて、使い手が現れるのかと、思って、取りに来たんだ……」 うわーい。行き当たりばったりかよ。 「……それで、もし、これが『白夜の書』で、私が、使い手となっていたら……どうしていましたか?」「……君に、闇の書を破壊してもらうと、考えたよ」 ……さて、もういいか。 と、言いますか……我慢の限界。「まあ、私が、はやての友達と知らなかったからの発言でしょうけど、一応、手加減しませんから」「……何?」「歯ぁ喰いしばれぇ!!」 魔力ブーストありで思いっきりその右頬をぶん殴る!! クリーンヒット! 椅子から転げ落ちて、倒れこむグレアムさん。「……あんたからすれば、確かに立派なことだろうよ。 たった一人二人の犠牲で、その何千倍もの人間が助かるんだからな! ああ、立派だ。正義の味方としては、立派な行為だよ。 けどな、犠牲にされる人間の立場、知っててやってんのか!? はやてはな、四歳のころから両親をなくし、足の自由を失い、それでも頑張って生きてきたんだぞ! そんな少女の人生を踏みにじって、何が正義だ! そんな犠牲、認めねぇ! 絶対に認めねぇ!」「……ああ、そうだ。人として恥ずべき行為だ。……君の言い分ももっともだ。だが!」 殴った右の頬が赤く染まっている。 だが、その瞳には、迷いはない。「その犠牲で、救われる者がいるのも事実だ! その犠牲で、助かる者たちがいるのも……また、事実だ」「……ち。あんたの言い分だってもっともだよ。一を切り捨て九を救う。世界ができてから、何度も何度も繰り返された選択だ。 けど、あんた間違ってるぜ。 ……さっきの計画で、蒐集の手伝いをするといったな? それは、見事に犯罪幇助じゃねえのか? 完成するまでの期間で、何人の魔導師が、その犠牲になる? それの間、死者が出る確率は? ……挙句の果てに、使えもしない、訳の解らないロストロギアを使って保険だぁ? 穴だらけじゃないか! そんな計画の犠牲になる身にもなれってんだよ!」 なんて行き当たりばったり。 もし、それで、保険すら通らずに、暴走したまま止まらなかったら、どうするつもりだったのか。「……それは……」「……考えもしなかったか? それで計画が崩れ、暴走したまま、この世界が崩れ行くのを、黙って見てるしかできないじゃないか、計画が崩れたら! ……管理外の辺境世界だからって舐めてんなよ? その気になれば、管理局を崩壊させることだって、できるんだぜ? この世界の技術が整えばな!」 ……あ、やべ。 言っちゃった。「……それは、どういう……」 ……よし、抑止力使わせてもらおう。「この世界の裏にはな、もうとっくの昔に次元航行技術が芽生え始めてんだよ」「そ、そんな馬鹿な!?」 うん、嘘だし。「デバイスの研究も進み、今や、一般兵士がデバイスを使用できる段階まで進んでる。 ……解るか? リンカーコアのない、一般人が魔法を使える時代が、もうすぐそこまで来てるんだぜ? ……地球人類全員が魔導師になって、あんたたち管理局と全面戦争になって、生き残る確率は? お互いの損害率は? その際に出る被害は!? ……想像付くだろう? 古代ベルカ戦争の二の舞だ」 こっちは、いまだ核という人類最悪の兵器も残ってるしね。 次元航行技術さえあれば、ミッドなんて軽く火の海よ。 ……あればね?「……あんたがやろうとしたことは、それに拍車をかける大惨事に繋がる恐れがあったんだぞ? それでも、最小限の犠牲で大勢の人間を救える、立派な計画と胸を張っていえるのか!? どうなんだ、ああ!?」 さあ、最後の締めだ。 ここでとちったら、今までの事は水の泡。「……わ、私は……なんと愚かなことを……」 よし、いい具合に信じている。 ……テッサさんからの情報がなかったら、ここまで上手く騙せなかった。 テッサさんサンキュウ。「……ふぅ。じゃあ、グレアム叔父さん。ここまで聞いて、どう動けばいいか、分かってますか? ……下手をして、次元間戦争に発展させようとした罪。どう償うおつもりです?」「……私は、何をすればいい?」 おし、掛かった!「まず、闇の書の完全抹消を、管理局に報告してください。そして、夜天の書の主、八神はやてと、夜天の書、及び、その守護騎士たちの身柄の保護を要請します。 その際、ミッドチルダに連れて行くのではなく、この世界での在住の許可、並びに、夜天の書と守護騎士たちの所持も認めてください。 ……あなたがはやてに償えるのは、はやてに、優しい世界で暮らしてもらうこと。その支援を全力ですることです」「……そう……だな。それが、一番だろう。……あの子に、償わなければ……いけないな」 よし、よしよしよし! 後、ダメ押し行くか。「もしそれを約束していただければ、この世界にある次元航行技術、闇に葬ることをお約束できます」「!? なんと!? できるのかね!?」「はい。……先日、その伝に確認したところ、その技術にはまだ穴があるらしく、完成にはあと一年近くは掛かると。 ……それまでに、その穴を広げ、理論自体を破綻させれば、この世界で次元航行技術は後数百年はできなくなるかと。 ……まあそれも、管理局がこの世界に接触しなければ、の話ですが」 要するに、この世界に管理局は来るなってことを言いたいわけだ、俺は。「……わかった。その件案も含めて、上に通そう。……すまない、世話をかけたな」 ようし! 乗り切った! 「いえ、お友達の笑顔の為です。多少の苦労は苦労と思いませんから」「友達思いなのだな」「……家族と呼べるものがいませんから。代わりに、お友達を大切にするのは、当然でしょう?」「……そう、だったな。……重ねて、すまない」 ん。もう慣れたよ。 ……後、私の父さんが残した遺産を、そっくりそのまま渡してくれるとの事。 後日、遺産相続税でひいひい言ったのは秘密だ。 こんな面倒な計算小学生にやらせんじゃねえ。 後、がっつり取ってくな、こっちは子供だぞ!? さらに、遺産目当ての弁護士やら自称元妻やらウザイわ! ……全員叩き出して警察のお世話だこんちくしょう! しかも。「……ジュエルシードの暴走体を、手で掴んだだぁ!?」「え、ええっと、その……とっさの事だったから……つい」 グレアムさんが帰った日の夜。 ジュエルシードの封印中に、なのはとフェイトの魔法がジュエルシードに同時にぶつかり、次元震を起こす一歩手前まで行ってしまったらしい。 それを無理矢理封印する為、フェイトは素手でそれを掴み、両手に大怪我を負って帰ってきた。 ……自分の家ではなく、最初に俺の部屋に来たのは、プレシアさんに怒られるのを避けるためだと思ったのは、俺だけなんだろうなぁ……「その……母さんに、心配かけたくなかったんだ……」 ……本当に、あの人は恵まれてるなぁ。こんないい子に愛されてるんだし…… その愛を俺にも分けて欲しい。「はぁ。パラディン。【ブレイブハート】スタンバイ」【stand by brave-heats set up】「【聖光治癒】」【divine heal】「……ありがとう。せつな」 にっこり微笑むフェイト。 本当にかわいいことだ。 でも、その額に、「でこぴんっ!」「いた! ……痛いよ……」「もう、私に無理するなって言っておいて、自分は無理するんだ?」「……ごめん……」 うう、そんなしょぼんとしなくても。 「フェイト、頑張ったんだね? なら、今回は許すよ。……今度は無理しないでね?」「……うん!」 おうおう。そんな満面の笑顔で…… よし、今日はこのまま一緒に寝よう。 ……誘ってほいほい付いてくるフェイトは、もう少し警戒を覚えたほうがいいと思うんだ。 ちょっとお兄さん心配だよ? ……なお、今日の件が元で、さらに頭痛い奴等が来るのを、私はまだ知らないでいた。 ……うん。やっぱりシリーズ全話見ておけばよかった。 <???>「艦長、第97管理外世界の次元震反応、調査結果が出ました」「報告して」「はい。場所は海鳴市上空。次元震はロストロギアによるものと思われます」「確か、その世界に、管理局に送られるはずだったロストロギアがばら撒かれたという報告があったが……」「確認します……次元震のあった場所と、一致します」「……調査団、及び、回収班は?」「人手不足を理由に、まだ向かっていないとの事です」「……はぁ、あの子は、これを隠してたのね……」「? 艦長?」「なんでもないわ。……向かって頂戴」「……最近、艦長が出向いている、被保護者と何か関係があるんですか?」「多分。……あの子の事だから、関係どころか、着いたら終わってました~とか言いそうだけど」「……い、一体、どんな子ですか……」「そうね……あなた以上のひねくれ者よ」「誰がひねくれ者だ!」「きゃ!? ど、どうしたの?」「あ、ごめん。なんか、そう馬鹿にされたような気が……」「? せつな、疲れてない?」「……かもね。と、言うことでフェイト分補充~」「あ、くすぐったいよ」 台詞だけだと、どこの親父かと。 添い寝だけしかしてませんよ?