……目が覚めた。 昨日から連休に入り、一日目は寝て過ごした。 少女として、乙女としてその過ごし方はどうだろう?と思わざるを得ないが、まあ最近ばたばたしていたので、勘弁していただきたい所存。 そして、今日は約束の温泉だ。 ……密かに、自分ひとりだけ一人での参加なので寂しいなぁと思わなくもないが。 まあ、友達やその家族とはほとんど顔見知りなので、寂しいとは感じないだろう。「……パラディン」【おはようございますマスター。今日はいい天気ですよ】 デバイスの癖に天気がわかるのか? 窓を見るとカーテン閉めてなかった。 朝の光が差し込み、空には雲ひとつない。 確かに、気持ちいい晴天だ。 ……さあ、とっておきを着て、出かけよう。 きっと、今日はいい日になる。 準備万端。 旅行カバンに着替えをつめ、玄関で靴を履く。 今日はお気に入りのワンピース。白のブラウスとあわせてみた。 ……精神に男が住んでる身としては、可愛らしい服装に鏡の前で固まったのはお約束だが。 可愛いのは事実である。 男として可愛いことは正義である。 少女としても、可愛い服は正義である。 だから、これでいいのだ。きっと。 家のチャイムが鳴る。 多分、お隣さんだろう。 もともと一人暮らし用のアパートだから、最近引越しを企んでいるママさんひきいるテスタロッサ家だ。 ……庭園は次元の狭間で停泊。 研究用に残して置くらしく、家族はこっちで暮らすことを決めたらしい。 ……しばらくしたら、フェイトが転校してくるらしい。 アリシアは、小学一年生としてだ。「……それじゃ、合流しますか」 じゃあ、そのテスタロッサ家に挨拶しよう。 [テスタロッサ家]「おはよう。フェイト、アリシア、プレシアさん。アルフ」「おはよう。せつな。……昨日は眠れた? 私、ちょっと寝不足で……」 まずはフェイト。そのゴスロリは誰の趣味だ? 聞くまでもなく、後ろの親ばかだろう。 黒のゴシックロリータドレス。でもフリルは少し自重。 ある意味とってもお人形。ツインテールのリボンも今日は気合入っている。 そのままお持ち帰り確定である。「せつなお姉ちゃんおはよう! 今日は可愛いね!」 じゃあいつもは可愛くないのか小一時間問いただしたいアリシア。 こちらも黒のゴスロリ。フェイトとおそろいを狙っているのかママさん。 ただし、こちらのフリルは自重しない。ある意味本気でお人形。 フェイトと違って髪は梳かしただけのストレートロング。ヘッドドレス完備。 姉妹揃えれば両手に花確定である。「おはよう、せつな。……ちょっと地味ねぇ。私がコーディネートしてあげようかしら?」 それは本気で勘弁していただきたいプレシアママ。 服装はシックな黒のイブニングドレス。シンプルイズベスト。どうかその路線を娘たちにも。 ……思わず『月影先生』と呼んでしまいそうになったのは俺だけの秘密だ。 なお、姉妹人形を手に入れるためには、このオーナーの雷の嵐を乗り越えなければならない。「せつなおはよー。温泉楽しみだねぇ」 うん、楽しみだねぇ……後、はやての餌食確定な人、一人目のアルフ。 黒一色の母子と違い、一人だけラフなジーンズパンツとTシャツ。一応、耳と尻尾は隠してます。 実年齢では実は一番年下なのに、この一家で二番目の色気。 ……く、男の身体なら並んで歩けたものを。実に残念である。「……うん、みんな元気そうで何より。じゃあ、行こうか?」「「「おー!」」」 ノリのいい三人。ママさんは後ろでにっこり微笑むだけ。 ……後、アリシアはフェイトの事を知らない。 フェイトもプレシアさんも、しばらくは黙って置くそうだ。 だから、今はフェイトがお姉さんで、アリシアが妹。 ……アリシアが知って、フェイトを、プレシアさんを、嫌わないか、そこだけが不安ではある。 でも、今はいい家族だ。 ……問題は先送りにして、今を楽しもう…… さて、テスタロッサ家と合流後、向かうは翠屋。 集合場所にそこを選択。 月村家から一台、バニングス家から一台、そして、高町家から一台車を出してくれる。 高町家は乗用車五人乗り。月村家はワンボックス八人乗り。バニングス家はなんとリムジン。十二人乗りの高級車を出してくれるらしい。 何でも、アリサの両親が出てこれないらしく、せめてもの償いにとリムジンを用意してくれたそうだ。 人数多いからね。(高町家総出で五人+α。月村家メイドさん入れて四人。バニングス家運転手付きで二人。八神家一番多い六人。テスタロッサ家四人。永遠家……一人。合計二十二人) フェイトやアリシアと話しながら、見えてきた翠屋。店先には車が三台。少なくとも、アリサたちはもう来ている様だ。 [高町家] まずは高町家にご挨拶。「皆さんおはようございます。なのは、おはよう」「おはよう! せつなちゃん、今日は飛び切り可愛いの!」 可愛い子に可愛いと言われてしまった。だが嬉しい。ありがとうなのは。 白いツーピースフリルつき。気合入れましたー、な服装がグッド。 そのままデートに連れて行っても文句が出ない格好である。 「せつなちゃん、おはよう。……吹っ切れたみたいだな」 その節はお世話になりました高町兄、もとい恭也さん。 男だから服の解説はなし……まあ、ラフなジーンズジャケットと白Tシャツ、Gパン。 なお、ジーンズの色は黒。いっつも黒着てないか? この人。 テスタロッサ家に入っても違和感なさそうである。「せつなちゃんおはよー。今日は元気だね?」 こないだは栄養不足だったんで勘弁してください美由希さん。 あまり接点がない人だが、何気にこの人も剣術屋。 そのブラウスとスカートの中に隠された筋肉は、女性陣ではシグナムに次ぐ剣の腕。 油断ならないメガネっ子である。「せつなちゃんおはよう。その服可愛いわね。……今度、私に服選ばせてもらえる?」 発想がプレシアママと同じだぞ桃子さん。 高町家の最強の一人。この人には逆らえません。なぜか知らんが。 落ち着いた白のサマーセーターにチェックのスカート。プレシアママ、見習え。 後、その若さも分けてもらえ。……うを、睨まれた!?「おはよう。せつなちゃん。今日はのんびりしなさい」 そうさせていただきます士郎さん。 今回のメンバーでは、プレシアママに次ぐ年長者。 白のYシャツとジーンズパンツととってもシンプル。息子の黒好きは誰の遺伝だ? そう言えばこの人も無駄に若いな。三十代後半いってる筈だけど?「ところでせつなちゃん。せつなちゃんのご家族は見えないのかい?」「お父さん!」 ……華麗に地雷を踏み抜いてくれるのは天然なのか? 高町父。 なのはが抗議してくれるが、知らないなら仕方がないぞ?「私、一人暮らしですし……家族、いませんから」「……軽率だったな。すまない」 いえいえ。 慣れっこですから。 [月村家] 続いてすずかの所へ。「おはようございます。皆さん。今日はお招きありがとうございます。……すずか、おはよう」「おはよう、せつなちゃん。今日は来てくれて嬉しいよ」 そんな百万ドルの笑顔で微笑まんでくれすずか。溶けてしまいます。 流石お嬢様の一角、衣装にもそつがない。そのワンピースに愛を感じる。 そう言えばこないだふと思い出したんだが、すずかの家って何か秘密あったような? そのありえない運動神経に関係あったりするのか?「おはよーせつなちゃん。礼儀正しくしなくていいわよ? 今日は、のんびりしていきなさいね」 気さくな人で助かります。忍さん。 可愛らしいすずかと違い、こっちはどことなくカッコいい。 服もジーパンとデニムシャツ。シャツの下は間違いなく凶器が潜んでいること間違いなし。 なお、この人もはやての餌食確定だ。二人目。「おはようございます、せつな様。せつな様は皆さんと一緒にリムジンのほうへお乗りください」 あ、ありがとうございますノエルさん。 ビークールなメイドさん。無表情系は私の専売特許……は返上したんだった。 でも、この場まで来てメイド服ってどうよ? 身内ばかりだからいいのか?「せつな様おはようございますぅ。今日はよろしくお願いしますね」 とりあえず何を? と、聞き返してしまいそうなファリンさん。 正確には、ファリンさんがすずか専属のメイドで、ノエルさんは忍さん専属のメイドだそうだ。 そういうわけで、この人もノエルさんと同じメイド服。同型機ではないので外見で見分けはつく。 ……機?「せつなちゃん。……もう、危ないことしなくていいんだよね?」 まだジュエルシードの回収が残っているが、危ないと言えるほどじゃないだろう。「しばらくは何もないよ。だから、心配しないで?」「……あのね、後で聞いてほしいことがあるの。……お願いね?」 ? 月村の秘密でも話してくれるのだろうか? 気になるけど……それは後の楽しみにしておこう。 [バニングス家] ではでは、女王様の機嫌取りに行こう。「おはよう、アリサ。鮫島さんもおはようございます」「おはよう。せつな……よかった、あんたのことだから、男っぽい格好してくるかと心配だったのよ」 この間のお茶会でも女の子してただろう? アリサ。 そういうアリサは完全にお嬢様ルック。具体的に言えばフリフリ二割り増し。 女王様と言うよりお姫様って言ったほうがしっくり来る。 ……でてるオーラは完全に女王だが。「……おはようございます、せつな様」 ……渋い。挨拶だけで簡潔に終わらせるこの渋さ。わかってるね鮫島さん。 今日は運転手メインで来ている様だが、高町家男性陣に負けず劣らずのボディーガード臭があふれ出ています。 なお、黒スーツはいつもどおり。お約束である。 ……じゃあ、メイド服もお約束だからいいのか。……いいのか?「それで? もう面倒ごとは片付いたのね?」「もちろん。フェイトの家族が来てることで察して欲しい。……しばらくはのんびりできるよ」「そう。……もう、心配かけないでよね?」 ……いや、いい友達を持ったよ、私は。 さて、まだ来ていないのは八神家か。 もうすぐ来るとは思うが……「(はやて~? まだ時間かかりそう?)」 念話を送ってみる。 ……? 返事が来ない? ……嫌な予感が、少しした。「(シグナム? 今どこだ?)」 今度はシグナムに念話。『(せつなか。助かった。……実は、ちょっと困ったことになった)』「(困った?)」『(ああ、外国の方が道を聞いているのだが……われわれは、外国の言葉がわからん。ベルカ語ならなんとかなるのだが……)』 おいおい。 ……まあ、ベルカ語はどっちかって言うとドイツ語だしな。 仕方がない。「アリサごめん。ちょっとはやて迎えに行って来るね?」「? わかったわ。気をつけなさいよ?」「うん。行ってくる」 さてさて。 英語なら少しはできるようになったし、それ以外なら、ソーリーで済ますか。 シグナムに誘導してもらって…… ん? シグナムたちに絡んでる人ってまさか……「……リンディさん?」「!? ……せ、せつな……さん?」「せ、せっちゃん! 助かったで!」 ……ああ、なるほど。 ようは、時間稼ぎか。「はやて、みんなと先行ってていいよ。この人の相手は私がするから」「ありがとうな? そ、そーりー」 はやてとヴォルケンズを翠屋に先に行かせる。 ……と、シグナムだけ残ってくれた。「シグナム。あなたも行っていいよ?」「仲間を見捨てるほど、薄情にできていないのでな。……時空管理局の提督だな?」 !? 鋭い。流石ヴォルケンの将。「……やはり、闇の書の守護騎士……せつなさん。逃げて。この人は」「……no,go home, get back hear!」「……え?」 ちなみに『お家に帰れ』と言いました。かなり汚いスラングで。「聞こえませんでしたか? なら、なのは的に……『ミッドチルダに帰れ』」「せ、せつなさん!?」 今度はひぐらしより。 なのはの中の人ネタで。 ……私自身の声は雪野に似てるが。「……シグナムたちは夜天の書の守護騎士です。闇の書は、もうこの世に存在しません。……それに、その主であるはやては、闇の書を使った犯罪行為は一切していません。そうする前に夜天の書に改修しましたから。……管理局的に、何か問題はありますか?」「せ、せつなさんがどうしてそれを……」 見せなきゃわからないか?「……これが答えです。パラディン。セットアップ」【get set】 瞬時に纏われる白銀の鎧。……騎士の姿の俺だ。「古代ベルカ、聖王の騎士。永遠せつな。……騎士王の書の主だ。……悪いな、リンディさん。闇の書は、俺のパラディンのバックアップデータと、ある魔導師に協力してもらって既に攻略済みだ。……それでも、彼女たちに危害を加えるのなら、聖王の騎士の名の下に、俺は、あんたたちに戦争を仕掛ける。……俺一人だからって、舐めてかかると痛い目見るぜ?」「その際には、我々ヴォルケンリッターもお相手しよう。……ベルカの騎士、甘く見てもらっては困る」 いや、それは……ま、まあ、ともかく。 まずは帰ってもらうことが先決。「……せつなさん……まさか、操られて!?」「なんでやねん! 飛躍しすぎや!」「な、主と同じ言葉を!?」 驚くとこそこかよシグさん。「監督放棄してるあんたにゃわからねえだろうがな! 俺は、永遠せつなの前世の意識体だ! 口が悪いのは男性だったから勘弁しろよ? もともとせつなのリンカーコアが未成熟だったのは、俺の人格が構築中だったからだ。今の俺は魔力ランクAA。ある魔導師に調べてもらった結果だ! ……で? 監督放棄の保護者さんは、その事実を本人から知らされて、どんな気分よ!?」「……そ、そんなことって……前世なんて、信じられないわ!」「……!」 その一言で、我慢できず、その人の顔をひっぱたいてしまった。 ……魔力強化は行わず、浮遊魔法でわざわざその人の顔が届くところに浮いて。 その間、わずか二秒。「……いいことを教えてやる。俺が……私が、PTSDに陥るきっかけとなった言葉。まさしくそれだったんですよ? きっかけに過ぎませんでしたが……それでも、悲しかった」 ……もう、この人を見るのは、辛い。 このまま見ていると、敵として見てしまいそうで。「パラディン。戻って」【shat down. bye】 パラディンを戻し、背を向ける。「……今一度言います。ロストロギア、『闇の書』は、もうこの世に存在しません。あるのは、優しい魔導書と、その守護騎士だけです。それが罪だと言うのなら、私は、あなたたちを殺す牙になる。……あなた方が私たちに向けるのは、握手の右手か、弾圧の拳銃か。……楽しみにしています」 ……絶対に八歳児の台詞じゃないなあと思いつつ、シグナムを促して立ち去る。 ……叩いた掌は、思った以上に痛かった。 [八神家] さて、シグナムを連れて、ようやくみんなと合流。「じゃあ、改めておはよう。朝から災難だったね、みんな」「おはようやせっちゃん。助かったで、ありがとうな?」 いや、無事でよかったよはやて。 流石に一日二日で足は治るものではないらしく、今は車椅子での参加。 それでも、ちゃんと着飾ってくるのは流石だ。今日も可愛いぞはやて。「おう、ありがとな。……後、おはようだ。せつな」 なんかツンデレ成分入ってないか? ヴィータ。 後、その服可愛いぞ、新調したか? ヴィータにミニワンピは凄くナイスだ。はやてGJ!「ごめんなさい、せつなちゃん。私たち、ドイツ語なら何とかできるんだけど、英語は苦手で……」 ちなみに、ドイツ語はベルカ語、英語はミッド語に対応してます。で、何気に出番なかったシャマルさん。 新調はしなかったのかできなかったのか疑問だが、いつもの若奥様ルック。 本当に緑が似合う人。密かに笑顔に癒されてます。俺。 「……すまなかったな。感謝する」 ……こいつも渋いな~。憮然とした表情でつぶやくザフィーラ。 流石に二の腕筋肉むき出しはやばいと察したのか、スカジャンにサングラスが追加され、ちょっとしたライダーもどきの出来上がりである。 当然、犬耳尻尾は隠してもらっている。「助かった。礼を言う、せつな。……後、おはよう」 ほぼ無表情で感謝の礼をしたのははやてのデバイス、リインフォース。 いつの間に名前がつけられたのか知らんが、結局その名前になったか。 白セーターにロングスカートと落ち着いた服装。 ……どこかのあーぱー真祖を思い出したのは秘密だ。「……すまん。世話をかけたな」 と、私の後ろ斜め上からの発言はシグナム。 服装はいつもどおりの春物セーターにジーンズパンツ。 後、頭撫でるな。 どうもヴォルケンズは私をパラディン……シルビアと混同して頭撫でる者が多い。 シグナムもその一人。例外はリインフォースだけ。つまり。「あ、シグナムだけずりぃぞ! あたしも頭撫でてやる!」 いやいや待てと。 嬉しくないわけじゃないんだが、そんな背伸びして頭撫でようとせんでも。「その割には膝まげて撫でやすいように頭下げとるし。せっちゃんの優しさが身にしみるなぁ~」 くそう、はやてお前もか。 とりあえず、これで以上。二十二名。 子供組はリムジンに乗り込むことに決まった。 メンバーは私、なのは、すずか、アリサ、フェイト、アリシア、はやて、ヴィータ。運転手に鮫島さん。助手席にリインフォース。 高町家乗用車は高町一家+忍さん。 月村家のワンボックスにメイド組+プレシアさん、アルフ、シグナム、シャマル、ザフィーラ。 さあ、出発だ。……と、思ってたのにさ。「……はあ。何で来るかね」「? どうしたの、せつなちゃん?」 出発間際のリムジンの窓から見える、追ってきたと思われるリンディさんの姿。 ……ああ、もう! 「ごめん、鮫島さん。少し待ってて」「……かしこまりました」 出発を待ってもらい、車から降りてリンディさんのもとへ。「……せつなさん……これから、お出かけだったの?」「二泊三日の温泉旅行です。……これまで頑張ったから、のんびりするつもりなのに、何で問題ごと持ってきやがりますかあなたは」 ただでさえ頭痛いことなのに! 管理局関係は!「……ごめんなさい……」 泣きそうな顔で俯くリンディさん。 ……ああ、もう、美人には弱いなぁ。俺。 絶対女で失敗するぞ将来。「リンディさん、今日から三日、休み取れます?」「……え?」「車にスペース空いてますし、一人ぐらいなら、ごり押しできると思います。……一緒に行きませんか? 温泉」「……休み明けに、泣くことにするわ。ちょっと待ってて……」 流石リンディさん。決断はええ。 通信開いてどこかに連絡入れている間に、私は忍さんのところへ。「……あの人、せつなちゃんのお母さん?」「保護責任者です。……それで……」「一緒にこれるんだね? わかった、宿のほうに一人分追加しておいてもらうよ」「……ありがとうございます!」「よかったね、保護者さん来てくれて」 笑顔で頭なでてくる忍さん。 ……いや、まあ、来る予定はなかったんですけどね? 主催に連絡入れたから、次はヴォルケンズとプレシアさんに報告。 ワンボックスに顔出して、その旨を話す。「……わかったわ。ジュエルシードの件は黙っておきましょう」「ごめん、プレシアさん。迷惑かけます」「ふふ、あなたにかけた迷惑に比べれば、お安い御用よ」「……いいのか? 彼女、我々を……」「この旅行中は手出しさせない。……けど、不安要素を連れて行く、私の未熟を罵ってくれていい」「……いや、そんなまねはしない。保護者なのだろう? 今のうちに甘えるといい」 今まで甘えた記憶ありませんけどね~? さて、了解が得られたので、リンディさんを連れてくることに。「……お休み取れました?」「ええ。……帰ったら、クロノに思いっきり説教されそうだけど」「……まあ、自業自得と思って諦めてください。私は、結構強引なんです」「……わかったわ。ふふ、温泉楽しみね?」 そりゃあもう、この日のために頑張りましたから。 リンディさんの手を引いて、リムジンに向かう。 乗り込んだら、早速出発だ。 向かう温泉宿は車で二時間近く。 海鳴市のはずれにある。 一行にリンディさんを加え、三台の車は温泉宿への道を突き進む。 で、そのリムジン内は……「……ウ・ノ~! さあ、止められるもんなら止めてみなさい!」「じゃあ、トラップカード発動。ドロツー」「ドローツー返しです」「返しの返しで」「さらに返すで!」「ごめん、返すよ」「返しま~す」「えっと、これで返すのか? 次、アリサだけど?」「……な、七枚も続けなくてもいいじゃない! 十四枚追加って~!?」「ご愁傷様。で、私がウノね?」「むきぃ~~~!?」 大UNO大会に発展しております。 どこかで一番さんくしゃみ連発請け合い。 結局そのゲームは私が一番で制しました。「……楽しそうね、せつなさん」 隣でニコニコ微笑んでるリンディさん。 何がそんなに嬉しいんでしょうか?「あなたと始めてあった時、ぜんぜん顔も変えず、顔色も変えなかったあなたが、こんなに元気になるなんて……」「うん。みんないい子ばかりだから。……私一人、つまらない顔もできないし。させてくれないし」「……ごめんなさい。私、いい保護者じゃないわね」「何を今さらですよ。……この世界の諺にもあります。『親はなくとも子は育つ』」「……深いわね……」 あ、アリサラストで終わったか。 悔しがってる顔が可愛い。「リンディさんも参加しませんか!?」 と、尋ねてくるなのは。 他の面々は……ヴィータがちょっと渋り気味だが、ほかは同意を示しているようだ。「……じゃあ、私も参加しましょう」「よーし、行くよヴィータ。提督様にベルカの業を叩き込んでやりましょう!」「……よし来た! 覚悟しろよ! ドローフォーの落ちない汚れにしてやる!」「それは手垢って意味なんか?」「月村製プラスチックカードに、手垢はなかなか付きにくいんだけどな?」「……ふっふっふ。さっきはやられたけど、今度は覚悟しなさい、せつな!」「じゃあ、私はせつなお姉ちゃんの味方で。フェイトは?」「……そういう遊びじゃないから、アリシア……」「それじゃあ、行くよ~?」 結果、私のフォローを受けたヴィータがトップ。 二番にアリシア、三番私。 その下につくリンディさんは流石だ。 一番ドベはいわずもなが。「また私~!?」「アリサちゃんよわよわや~」「むきゃーーーーー!!」 女王様ご乱心。 仕方がない。「じゃあ、今度はアリサのフォローにつこう。……姫、ご命令を」「……さっきまであんたにしてやられてばかりだけど、いいわ! 私をトップにしなさい!」「御意!」「なぁ! てめぇ! はやての騎士じゃねえのか!?」「甘いよヴィータ。私は、可愛い子の騎士だ! ……アリサは十分愛でたから、今度は別の子を凹ませて愛でてあげる!」「せっちゃん絶好調や。……あたしの真価はまだまだ先やから、ここは地道に稼ぐで」「じゃあ、あの鉄壁を崩すよ。フェイトちゃん、一緒にせつなちゃんを倒そう?」「……わかった。心苦しいけど、なのはと一緒なら、大丈夫だね」「せつなお姉ちゃん覚悟~!」「……ウノって、こんなゲームだったかしら?」「まあ、せつなちゃんが本気で絡むとこんなものですよ、リンディさん」 で、激戦の結果。「ベルカの騎士を舐めて貰っては困るんだよ?」「なんだか知らないけど、ベルカ凄い!」 アリサトップ。その下に私。「褒められてるのに、褒められた気がしねぇ……せつな強すぎだぞ!?」「あじゃぱ~や」 三位、四位ははやてとヴィータ。「く、届かなかった……」「やっぱり、せつなちゃん強いの……」「ばたんきゅうぅ~……」 五位フェイト。六位なのは。七位アリシア。「……みんな強いのね。感心するわ……」「せ、せつなちゃんが酷いよ……」 八位にリンディさんで、最後はすずか。 見事にあおりを食らってしまったすずか。ホントごめん。 もちろん、この後もゲームは続き、宿に着くまで白熱したゲームを楽しみました。 ……私も何度か最下位になったが、全部計算づくだといっておく。 ほら、あまり強すぎてもね?「……意図的に最下位取れるあんたが凄いわよ」 そう?*ご指摘ありがとうございます。回線切断で文章途切れた模様。 修正しました。*ご指摘にあった魔力ランクをAA+⇒AAに変更しました。