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No.6617の一覧
[0] ネギえもん(現実→ネギま +四次元ポケット) エヴァルート完結[YSK](2012/05/05 21:07)
[1] ネギえもん ─第2話─[YSK](2012/02/25 21:26)
[2] ネギえもん ─第3話─[YSK](2009/06/26 20:30)
[3] ネギえもん ─第4話─[YSK](2009/03/09 21:10)
[4] ネギえもん ─第5話─[YSK](2009/03/14 01:31)
[5] ネギえもん ─第6話─[YSK](2012/03/20 21:09)
[6] ネギえもん ─第7話─[YSK](2009/03/09 21:50)
[7] ネギえもん ─第8話─[YSK](2009/03/11 21:41)
[8] ネギえもん ─第9話─[YSK](2009/03/13 21:42)
[9] ネギえもん ─第10話─[YSK](2009/03/27 20:48)
[10] ネギえもん ─第11話─[YSK](2009/03/31 21:58)
[11] ネギえもん ─第12話─[YSK](2009/05/12 22:03)
[12] 中書き その1[YSK](2009/05/12 20:25)
[13] ネギえもん ─第13話─ エヴァルート01[YSK](2012/02/25 21:27)
[14] ネギえもん ─第14話─ エヴァルート02[YSK](2009/05/14 21:24)
[15] ネギえもん ─第15話─ エヴァルート03[YSK](2009/06/01 20:50)
[16] ネギえもん ─第16話─ エヴァルート04[YSK](2009/06/06 23:17)
[17] ネギえもん ─第17話─ エヴァルート05[YSK](2012/02/25 21:28)
[18] ネギえもん ─第18話─ エヴァルート06[YSK](2009/06/23 21:19)
[19] ネギえもん ─第19話─ エヴァルート07[YSK](2012/02/25 21:30)
[20] ネギえもん ─第20話─ エヴァルート08[YSK](2012/02/25 21:31)
[21] ネギえもん ─第21話─ エヴァルート09 第1部完[YSK](2009/07/07 21:36)
[22] 人物説明&質問コーナー[YSK](2009/07/06 21:39)
[23] 外伝その1 マブラヴオルタ[YSK](2009/03/13 21:11)
[24] 外伝その2 リリカルなのは[YSK](2009/06/06 21:16)
[25] ネギえもん ─番外編─  エヴァルート幕間[YSK](2012/02/25 21:09)
[26] ネギえもん ─第22話─ エヴァルート10 第2部[YSK](2012/02/25 22:58)
[27] ネギえもん ─第23話─ エヴァルート11[YSK](2012/03/03 21:45)
[28] ネギえもん ─第24話─ エヴァルート12[YSK](2012/03/10 21:31)
[29] ネギえもん ─第25話─ エヴァルート13[YSK](2012/03/20 21:08)
[30] ネギえもん ─第26話─ エヴァルート14[YSK](2012/04/07 21:34)
[31] ネギえもん ─第27話─ エヴァルート15[YSK](2012/03/26 21:32)
[32] ネギえもん ─第28話─ エヴァルート16[YSK](2012/03/26 22:10)
[33] ネギえもん ─第29話─ エヴァルート17[YSK](2012/03/29 21:08)
[34] ネギえもん ─第30話─ エヴァルート18[YSK](2012/04/07 21:30)
[35] ネギえもん ─第31話─ エヴァルート19[YSK](2012/04/14 21:12)
[36] ネギえもん ─第32話─ エヴァルート20[YSK](2012/04/14 21:20)
[37] ネギえもん ─第33話─ エヴァルート21[YSK](2012/05/05 21:03)
[38] ネギえもん ─最終話─  エヴァルート22[YSK](2012/05/05 21:06)
[39] 第2部登場人物説明兼後日談&質問コーナー[YSK](2012/05/05 21:01)
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[6617] ネギえもん ─第24話─ エヴァルート12
Name: YSK◆f56976e9 ID:a4cccfd9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/10 21:31
初出 2012/03/10 以後修正

─第24話─




 夏祭りのバッジ争奪戦のお話。




──────




 今日はお祭りの日である。


 当然の事ながらエヴァンジェリンと一緒に行く予定なのだが、なんと今日は待ち合わせなのだ。

 一緒に行けばいいのに。なんて思われるかもしれないが、たまには待ち合わせをするのも新鮮だという事で、そういう段取りになったのだ。


 なによりこれはきっとアレだな。
 浴衣を着てくるフラグに違いない!

 テンションあがってきた!


 ひゃっほー。
 祭りじゃ祭りじゃー。



 というわけで、待ち合わせの時間に間に合うよう出発。

 道中学園に残るクラスメイトなんかと軽く挨拶をしながら、会場へ向かいます。
 ちなみに、俺と同室のエヴァ擬態。『エド・マグダエル』は夏休み中実家に帰省している事になっている。
 だから俺の部屋にエヴァが来ている時突然の来訪者が怖いものだが、鍵開けっ放しのハプニングとかは今のところないので安心だ(実は部屋に人を入れさせないエヴァの策略)


 せっかくなので天の声で補足しておくが、クラスにおいて彼の置かれた状況は、また複雑化している。
 麻帆良祭後、エヴァンジェリンとお付き合いをはじめたが、学校ではエドと仲良く話す姿が多く見られ、放課後には一緒に帰る姿多数。だが、学校以外で出歩く時はエヴァンジェリンと一緒。
 なのでクラスメイトから見ると、エド←彼→エヴァと、学校ではエド。放課後はエヴァと、二足のわらじをはいているように見えるのだ。
 クラスメイトからすると、どっちが本命なの? それともどっちもなの? ロリコンをカムフラージュするのがエドなの? エドをカムフラージュするためのエヴァなの? と、憶測は絶えない。
 どっちも本命なわけだが、当然クラスメイトは知らないのでどうしようもない。
 ちなみに憶測の本命はなぜかエド。この時期学生は学校で一緒に過ごす時間が一番多いのが理由だ。だが夏休みになって故郷へ帰っているとなっているので憶測する人はまた混乱しているようであるがどうでもいい。

 ただ、幸いなのはエドとエヴァ以外に興味はないとみなされ、他には無害であると認識されているところである。
 なので、一番初期のようなよそよそしさはなく、むしろ面白がられているのが現状であった。
 今クラスメイト達の興味は、どっちが本命であるか。食券一日分から受け付けるよー。


 なんだろう。

 待ち合わせだと!? やはり本命はそっちか! 食券キター! とか。
 なぜだ! なぜ帰ったままだ! エドはやっぱり諦めたのかー! とか。
 僕と一緒に……あ、待ち合わせがそうですか。なんでもありません。とか。
 一緒に行けない? デートだと、爆発しろ! とかクラスメイトに散々な言われようした。

 お前達、俺をダシにしてなにか遊んでいるだろう。仲間はずれいくない!
 でも真相はあんまり聞きたくない。不思議!


 ……まあいいや。



 そんなわけで、やってまいりました祭り会場。
 ちなみに俺は浴衣は着ていない。

 着付けは出来ないし、持ってないし。
 その気になれば『着せ替えカメラ』で着れるけど、そこまでする必要も感じないのでそのままです。


 むしろエヴァの浴衣をカメラと脳内に焼き付けるのに集中するため着慣れた服の方がいいくらいだ!
 だっ!(無駄にテンション高い)



 ……にしても、ここ、無駄に広いよなー。
 縁日ひとつとってもなんだこの規模。日本何大祭りとかに名前を連ねてもいいくらいの規模あるよ。

 なのにこれはただの夏祭りなのだから。恐ろしいものだね。



「ヤ、待てたネ」
「こんばんは」

「おや」
 夏祭り会場入り口に居たのは最近ニューボディにバージョンアップした茶々丸さんと超の二人。
 二人とも浴衣だ。


「二人とも浴衣似合うね。茶々丸さんの方はニューボディだから新鮮だ」

「いいのかネそんな事言テ」
「社交辞令ってヤツだから大丈夫だよ」

「デハ愛情表現と受けとておくヨ」
「曲解したよね。わざと曲解してるよね」

「はてサテ」
 せっかく褒めたったのに。もうちょっと赤面とかしなさいよ。
 エヴァなら人前だと真っ赤になるんだぞ! 可愛げないぞ火星人!


「まあいいや。んで、待ってたとは? 残念ながら屋台飯はおごらないぞ」

「ソレは違うネ。むしろウチで屋台出してるから食べに来てヨ」

「へいへい」
 超包子屋台か。新作でもあるのなら食べに行こうか。

「宣伝も終えたシ。茶々丸」
「はい。こちらを」

 と、茶々丸さんが取り出したのは、『白き翼』のバッジ。

「あー。そういえばそっか」
「特別部員でも、持っていた方が便利だとマスターがおっしゃていましたから」


 そういや前にエヴァが超と話していたっけね。特別枠である俺の分も用意してくれたってわけか。



 今日の昼間。
 ネギま(仮)部は学園長の認可を得て、正式な部活になったのです。
 部活の建前上の名前は英国文化研究倶楽部。部内では『白き翼』と名称もかわりました。

 その認可記念として、部活の面々が一同に会してえいえいおーをやったのだ。

 ただし場所は女子寮の屋上で。
 入るの苦労した……といっても『どこでもドア』で一発だったけど。
 正確には見つからないようにするのに苦労した。か。

 部員構成はいわゆる原作メンバーに欠けはなく、そこにプラス超と俺がいる構成になっていた。

 ……千雨の嬢ちゃん、学園祭三日目大変じゃなかったのに、結局巻きこまれてました。


 ちなみに学園祭三日目は千雨は超を残らせるために努力をし、ネギの背景を知ってしまったが、ネギと仮契約にまではいたっていない。



 そしてそこでエヴァンジェリンと夏祭りに行く約束をして、今に至るというわけである。



「いい出来だなこれ」
 つまんで持ち上げて、光にかざしてみる。

 素材もよくて、きらきらして。
 あいつのこもった愛情が見えるようだ。これをメンバー分とは、恐れ入る。


「ただ……」
「ただ?」

 思わず俺の口から漏れた言葉を、茶々丸さんが拾った。


「ん? ああ。せっかくだから、エヴァンジェリン本人からもらいたかったかな。なんて」
 あいつが作ったものだから。そんな事を思ってしまったのだ。

「さすがにロマンチストネ」
「伊達にあいつの王子様やってないからな」

「マスターは大変恥ずかしがり屋ですので」

「納得」

「それと、貴方への初プレゼントはもっと特別なものがよいと考えておいでのはずです」

「……」
 そ、そんな乙女チックな事……考えていて……いてくれていても不思議はない。かもしれないなぁ。
 意外とあいつ、オンナノコだから。

「でも最初のプレゼントは俺の中だと人間になったエヴァの笑顔だから、もうもらったと言えばもらったぞ」
 むしろ人間のエヴァンジェリンという最高のプレゼントをもらったとも言える!

「それではマスターの気がすみません。マスターが貴方に直接与えていませんから」

「あー」
 確かに、それは俺が勝手に感じた事で、言ってもいない事だしなぁ。
 俺の誕生日プレゼントで人間に戻すとは言ったけど。

「じゃあ期待していようかね。超君もご苦労様」

「ふふ。問題ないネ。ついでだから、アナタにはこのバッジの機能を説明しておくヨ」
 彼女が取り出すのは、自分に割り当てられたバッジ。

「俺にはって、他の子には?」

「まだしてないヨ。祭りの時間を奪てはいけないカラネ」

「俺はいいんかい」
 そりゃ待ち合わせには余裕を持って出てきているから平気だけど。

「では説明するネ」
「無視かい」

「まず機能その1」
 ホントに無視しやがった。まあ、無駄にコントして引き伸ばされても本末転倒だしな。

「ここを押すと、大きくなるネ」
「おお。一気に掌サイズに」

「使い道は自分で考えてくださいヨ」
「なんのための機能だよ」

「……文鎮?」
「バッジなのに!?」

「機能その2!」
「でっかくなる凄さとか説明せずに進むのか!」

「大きくして相手にぶつけると痛イ」
「大きくなったメリットをその2で語られても! しかも投げる必要性を感じない!」

「機能その3!」
「しかもそのまま3に移行したよ!」

「水に浮くヨ!」
「もう機能以前の問題な気がする」

「さらにその4!」
「まだあるのかよ」

「このバッジの機能は108式まであるヨ」
「そいつはすげぇ。よーし。俺がそれすぐ作り変えてやる。お前の頭出せ」

「この機能108個スベテエヴァンジェリンが考えたのニ?」
「うそつけ。あいつがこんな無駄な機能ふんだんにつけるかよ」

「さすがネ」
「むしろエヴァがつけたのだけ教えてくれ」

「そこだけ聞いてくるとは、さすが歪みないネ」
「当然なのだから教えなさい」

「説明する事なくなたヨ」
「ないのかよ!」

 超無駄な機能つけたの超だけかよ!
 てか他の子にこの機能説明してなくて正解だよ!

「くっ、エヴァンジェリンの声で愛してるとかささやいてくれる機能入ってないのかよ……」
「ワタシの声でならあるヨ」

「それはいらないネ」
「頭出すいいヨ」


「一瞬にして形勢が逆転しました。さすがです」
 茶々丸さんが冷静に分析してくれてます。


「あと、おまけ機能があるヨ」
「一応聞いてやる」

「バッジ同士、近くにいれば通信が可能ネ」
「一番使える機能がおまけだった!」

「おまけなので距離は100メートル程度ヨ」
「まあ、確かにおまけっぽい距離ではあるな。つかおもちゃかよ」

「あんまり広いと面白くないネ」
「確かにこれ使えば缶ケリとか楽しそうだな」

「遊びの幅が広がるヨ!」
「夢が広がるな! さすが科学!」
「すごいネ科学!」

「「はい!」」
 超と俺で二人でポーズを決めた。

 茶々丸さんが拍手をしてくれた。


 周囲は俺達を変な人を見る目で見ている。
 そりゃそうだ。


「……むなしい」
「科学には犠牲がつきものヨ」

 この犠牲科学と関係ないよね。全然関係ないよね。ただのノリだよね。

「ノリノリだたネ」
「ノリノリだね。時間無駄にしたよ」

「計算どおりヨ」
「君実は俺の事嫌いだろ!」

「アナタがエヴァンジェリンをいじるのと同じような感覚ネ」
「なら許す!」

「許されたネ!」
 ぱぱーっと超両手を掲げる。

「……いけません。ここにつっこみがいません」
 茶々丸さんが世紀の大発見をした。


「ちなみにここをこう操作すると、空中に地図が出て周囲にあるバッジの位置を示してくれるネ」
 いわゆる立体映像がバッジから飛び出してきた。

「機能説明されてないのが一番便利だよー!」
 地図が広がり、世界地図から拡大され、この周辺の地図に変わる。

 地図にはバッジの反応がいくつか見える。


「これは便利だな」

「ただし一つ欠点ガ」

「使うと自爆でもするの?」

「イヤ、あっちの地図入ていないから、あっちじゃ役に立たないヨ」
 あっちとは魔法世界の事だろう。
「意味ねぇな」

「まあ、あっちに行て地図を手に入れ次第バージョンアップするネ」
「ダウンロードが出来れば、私も手当たり次第に」

「そうしておくれ」


 一応補足しておくけど、原作どおり茶々丸さんにもバッジの場所を探す機能もついているそうだよ。


「それと、英国行きまでにそのバッジをなくされた場合、強制退部となります」

「ああー」
 そういえばそんな名目での奪い合いがこの夏祭りであったっけねぇ。思い出した思い出した。

「貴方には直接関係はありませんが、お気をつけください」

「だね」


 俺の場合は元々ネギとは別件で行くので、なくなったからといってイギリス旅行にいけなくなるわけではないからな。
 なので、この時万全をきしてバッジを『ポケット』にしまってしまえばよかたのだが、そうはしなかった。

 シャツの襟にぽちっとつけたまま、祭囃子の鳴る会場へと足を踏み入れてしまったのである。




──────




 超、茶々丸さんから別れてすぐ。
 並んだ屋台を見ながら歩いていた時だった。


 おっ。


 祭りらしいチープなおもちゃが並んだ屋台。
 そこに並んだあるものが目にとまった。

「おっちゃん。これくださいな」
 その中にあるそれを指差す。

「そいつは百円だよ」
「はいよ」
「まいど。ぼうず、そんなの買ってどうするんだい? まさかプレゼントでもするんかい?」
「そりゃもう」


 にへっと笑った。


「こんなものをねぇ。ま、がんばんなよ」

「がんばります」

 品物を受け取り、再び待ち合わせの場所を目指し歩き出す。

 おっちゃんにはわからんかったかー。まあ、わかんねーか。
 俺がやっておこうと思った単なる自己満足だしな。


 あいつは気に入ってくれるといいな。




──────




 さらに歩を進めると、なにやら3-Aクラスメイトと会議のようなものをしているあやかお嬢さんを見つけた。

 なーんにも深く考えてなかった俺は、これまた深く考えずに声をかけてしまう。


「よ」


「あら、今日はお一人ですのね」

「今日は待ち合わせの醍醐味を味わう日らしい」

「ああ。そういう事ですか」


 どうやら納得してくれたようだ。


 そして、俺の襟首を見て。

「あー!」
 指差した。


「ん?」


「なぜ、貴方までバッジを!」
「そりゃ、エヴァンジェリンがくれたから」

「お譲りしてくださいまし!」
 ずずいっと詰め寄られた。

「ダメ。部員全員にだけど、エヴァがわざわざ作ってくれたものなんだから」


 そんな物を俺が他人にあげるだろうか? いや、ない!


「相変わらず清々しいまでのバカッポーですわね」

「ははっ。褒めるな褒めるな」


 そういうわけだから、これはやれん!
 ついでについていくのになにも知らない子を追加は出来ん!

 ネギがおこじょにされ……あれって今どうなってんだ?


「ぐぬぬ」

「いいんちょいいんちょ大変!」
「なんですの桜子さん!」
 ちなみに桜子とは3-A(ネギクラス)所属のチアリーディング部でギャンブルにめっぽう強いラッキーガールの事。

「この人、特別枠って書いてあるよ!」
 桜子の手にあるのは英国文化研究倶楽部ことネギま(仮)部こと『白き翼』の仮メンバー表。

 そんなん持ってたんか。


 その瞬間、あやかに、電撃走る。

 ぎぎぎぎっと壊れたロボットのような動きで、俺を見る。


「と……」

「と?」



「特別ぅ!!?」



 ……嫌な予感がした。
 ネギの部活で特別という特別な単語。
 そこから彼女はなにを連想するのだろう……?


「ネギ先生のとくべっ! とくべ……とく。とととととべつー! そんなネギ先生。だめですわー!」


 ぼーんと頭が爆発したようにも見えた……
 かくん。頭をたれ、肩を落とす。


「「「……」」」
 この場に居る俺も含めて、黒服執事さんにさっきの桜子さん他もろもろクラスメイトが沈黙する。


 ぐりん。
 頭が勢いよく回転し、彼女が俺の方を見た。


 びくっ。
 思わずびっくりした。


 その目が、俺を捕える。
 それは、目の周囲を闇が覆い、目の部分だけ真っ赤に染まっているようなに見えた。



 一番わかりやすく例えるのは、そう、暴走。



「バッジ、モラウ。トクベツ、ナルデスワ!」

 そしてそのまま、あやかお嬢が俺に突撃してきた。


「やっぱりー!」

 い、いかん。お嬢さん完全にバーサークした!
 これとってっても特別枠とは関係ありませんよー!



 やばい、舐めてた。
 俺にしてみれば、退部なんてたいした意味もないから気にもしていなかったが、このバッジは彼女からしてみれば、『殺してでも奪い取りたい』一品だった!

 あいすそーど!


 速攻で背を向け、来た道を逃げ出す。
 大丈夫だ。ここは一本道ではない。色々ルートがあるほど広大な祭り。


 人ごみを走って逃げればなんとか……


「オマチナサーイ!」

 はやっ! 浴衣なのに黒服執事さん達より足が速いってどゆこと!?



 バーサーカーが、バーサーカーが来るよー!




───エヴァンジェリン───




 境内前の鳥居にある狛犬像の前。
 そこが、待ち合わせ場所だ。

 待ち合わせをして彼と歩くのは久しぶりだ。
 最近はいつも一緒に居るので、そんな事をする必要がないとも言える。

 だが、今回は違う。
 今日は夏祭りだ。

 15年居た学生生活で、毎年うっとおしいと思っていた祭りだが、今年は違う。
 理由はもういわなくてもわかるだろうから割愛するが。

 わざわざ浴衣を用意して、コピーに着せてどれがいいかなんて悩んだりしていないからな。
 そのための待ち合わせなどではないからな!
 彼が見てどう反応するのか少し怖いなんてないからな!
 そわそわして早く来すぎたなんて事はないからな!


 ……しかし、遅い。


 いや、まだまだ約束の時間まではあるが、遅い。
 彼は約束の時間の前にやってきているタイプの人間である。

 最低でも10分は早く到着しているはずの彼が、今日はまだ来ていない。


 なにかあったのだろうか……?


 ……まさか、あれか?
 今日けしかけた事が一つあるが、いくらなんでも……いや、彼ならありえる。


 そんな事を思っていると、砂煙を上げんばかりの速度で私の方へとやってくる彼の姿を見つけた。


 なんだ。気の回しすぎか。
 そう思い、手を上げ、私の居場所をアピールしようとするが……



「すまんもうちょっと待っててくれ!!」



 そんな言葉と共に、彼は私の前を駆け抜けて行った。
 そして、進む方向と同じ方向へ伸びる、境内から遠くなる道を全力で駆けてゆく。


 その直後、私の前を雪広あやかとそのSPといえる黒服の執事達。さらに遅れ、クラスメイト達が走り抜けていった。



 ……



 事態を理解する。


 バッジ争奪に巻きこまれたのだ。


「……あの、アホ、なにをしている」
 その気になれば逃げるのも簡単だろう。だが相手は一般人。逆に力を使おうとしないのが容易に想像出来た。

 茶々丸が忠告しただろうに、なにをしているんだ……

 だが、バッジの件をクラスメイトに言い出したのは私だ。
 彼が巻きこまれる可能性。というか、彼女達につきあってあげてしまう性分なのを見落としていたのも私だ。


 はあ。


 しかたがないとため息をつき。待ち合わせの時間内に戻ってくるのを待つ事にした。


 助けに行かないのかって? 私の王子様が、ただの小娘達に捕まるはずがないだろう?




 ……例外が一人ほどいるが。




──────




 ひきはなせないー!


 くそっ、こうなったら道具を使うか?

 なんて考えつつ走っていると、進行方向に黒服さん達が現れた。


 しもうた!
 ルートがたくさんあるという事は、まわりこめもするって事じゃないかー!


 ただりんご飴や焼きとうもろこしを持っているのが気になる。
 お面に水風船とか装備しているのが気になる。
 ただサボっていただけだったりしないだろうなー!


 てへっって顔するな。
 きりっと真面目に戻るな!


 しかたがないので直角に曲がって道をはずれ、茂みの方へ突撃。

 さすがにお嬢さん達は追ってこないけど、黒服さん達が追いかけてきます。


「バッジイィィィ。ドコナノデスノォォォォ!」

 ぜんげんてっかい。

 ただし、常に叫んでいるので居場所がわかるのが救いである。


 茂みの中じゃ身体スペックはあまり関係ない。いかに進める道を見極めるかが重要だ!

 そしてそれに関して俺は自信がある!

 黒服さんをまいて、茂みを脱出!



「あら」


 脱出した先には、ちづるさんがいましたの。

 俺を見て、襟元に光るバッジを見つけて、彼女は口を開く。
 どうやら、なにが起きているのか知っているようだ。
 そして、ネギ達だけなら、彼女はわざわざこのバッジ争奪戦に加わらない事を、俺は、知っている。


 だが……


「一つ思うんです。それ手に入れたら、私も一緒に行けますよね」


 にっこり。
 その微笑みは、菩薩であるはずなのに、なぜか俺には死刑の宣告にも見えた。



 脱出失敗!!


「脱出失敗からの脱却!!」


 俺はそのまま来た道を戻る事を選択した。



 イン! 茂み!



 茂みの中には、黒服がうごめく気配がする。


 ちぃぃぃ。

 背に腹は変えられん。
 というか、最初からこうしていればよかった。


 奥の手である『ポケット』に手を入れる。


 今回はわざわざ頭をひねる必要はない。
 言ってしまえばこれは、かくれんぼなのだ。
 なので、そこで取り出すのはこの『道具』。


『石ころ帽子』
 つければ石ころのように誰にも気にもとめてもらえない存在になれる。


 これをつければ見つかる事はない!



 すぽっとヘッドイン!



 ふー。これでひと安心。



 ひとまずエヴァンジェリンと合流するか……




───エヴァンジェリン───




 待ち合わせまでの時間も、あと二分。
 さすがに今回は間に合わんか。


 時間になったら、彼を助けて、小娘達には渇を入れ、彼を追うのは止めさせよう。
 ふふ。彼を助けるような形になるのなら、それはそれでオイシイではないか。


 思わず口元が緩んだその時。


「エヴァ」


「っ!」

 耳元に声が聞こえた。
 よく知る声。
 彼の声。
 だが、聞こえたのは、吐息が聞こえるほどに近い。


 ここまでの接近に自分が気づかなかったとは……


「すまん驚かせた」
 背後にいた彼が、つけていた帽子をポケットにしまいながら言う。

「いや、まさか本気を出して逃げているとはな」

 私に気配を感じさせず私の背後を取る。
 そこまで出来る実力があるのを私は知っている。
 だが、今回そこまでする必要性を感じなかったのも事実だ。


 その疑問に、彼の答えは……


「いや、だって怖かったんだもん」

「怖かったのか」

「ちづるさんがね。それ手に入れたら私も一緒に行けますね。って笑顔で言ったの」


「……」
 それは、本気出すな。うん。


 小娘達の中で、唯一の例外。
 あのネギ達よりも、私が警戒している女。

 あの娘が出てきたのなら、その対応も納得出来る。


「ったく。クラスメイトに機会を与えるのはいいけど、俺は除外しておけよ」
 私の隣へ並び、彼がそう文句を言った。

「私が提示した条件はバッジの入手だからな。そもそも、そのバッジ、懐にしまっておけば狙われもしなかっただろう?」

「いや、あここまでされるとは俺も思ってなかった」

「あほ」

「まったくだ」

「だが、お前もまだ詰めが甘いな」

「え?」


 私は、通りに視線を走らせた。




──────




「だが、お前もまだ詰めが甘いな」


「え?」
 エヴァのそんな言葉を発した時──



「その通りですわ!」



 ──聞いた事のある声が響いてきた。

 ざっとエヴァと俺を囲むように、あやかお嬢さんに黒服さん達にちづるさん。その他エヴァのクラスメイト達がずらっと現れる。


「なっ……」
 囲まれている!?

 なぜ?


「ふふ。簡単な事ですわ。ここにエヴァンジェリンさんが居る! すなわち最終的に貴方がここに来るのは自明の理!」


 ががーん!
 俺に、衝撃が走る!


「なっ、なんてこった。これは盲点だったぜ。がくり……」
 もうあまりのショックで地面に膝を突いて手までついちゃうぜ。

「あほ」


「ふふふ」
 笑う雪広あやか。
 だが実は、この案は彼にまかれ千鶴と合流した時、千鶴の眼力でなだめられた彼女に進言した千鶴の読みであったりするのは秘密である。


「ふっ、だが甘い!」
 がばっと復活。
 本当にそれを、予測していなかったとお思いか?


「なんですって!」
「なぜなら、バッジを持っているのは俺だけではないからー!」


「あっ!」


「え?」
 皆の視線が、俺の指差した先。「え?」と言ったエヴァンジェリンに集まる。
 名誉顧問! 彼女もネギま(仮)部の一員だ!

「馬鹿を言うな。私が今つけているはずなかろう」
「そうそう。俺だってバッジなんてつけてねーよ」
 すかさずエヴァの言葉に同じような言い訳をぶつける。


「なんと白々しい事を!」
 お嬢さんがこの場に居る全員の言葉を代弁する。

「あらあら。そういえば、そちらもありましたね」
 ぎゅぴーんと、ちづるさんの目が光ったように見えたのは、気のせい。うん。気のせい。


「くっ」
 エヴァがうめく。
 そう。あんなエヴァの言葉、誰が信じるというのだ。


「ふふ。持っていない事を証明出来ないもんなー」
 持っている事を証明するならば出せばいいが、持っていない事を持っていると思いこんだ人に証明するのは大変なものだ。

「謀ったな貴様!」
「同じ苦労を味わおうぜ」

 あっはっはと肩をすくめつつ笑う。

「むしろ事態を悪化させただけだと思うが?」
「俺もそう思う」


 少なくとも事態が好転していないのは確かだネ。
 むしろちづるさんが本気になった気もするネ!


「でも、これならお前も俺と一緒に逃げるしかないだろ? 待ち合わせの時間も来た事だし」

「……しかたがないな。策はあるのか?」

「とーぜん。実は予期していたと言ったら驚くか?」

「別に驚かんさ」


 ……ホントは予期はしてなかったと言い出せなくなっちゃったじゃないか。
 いや、予測はしてたけど。


「ならよし!」
 どうせ本気で『道具』を使えば逃げるのなんて簡単だしな!


「皆さんいっせいにかかりなさーい!」
「おー!」
 あやかお嬢さんの号令で、全員が一斉に襲い掛かってくる。


 残念。ここからは本気の本気で逃げさせてもらうよ。
 デートのお時間だ。


 俺はその『道具』を、『ポケット』から取り出し、振りかぶった!


『煙幕ボール』
 ドラえもんズに登場した道具。
 このボールを地面にたたきつけると煙がふき出し煙幕を張る事が出来る。


 地面へシュート!

 どろーんと煙幕が一瞬にして広がる。
 怪盗にでもなった気分である。 
 煙に害はないから安心してな!


「けほっ、煙幕ですって!?」
「んじゃ、あでゅー」

「お待ちなさい!」
「お嬢様、今動いてはなりません!」
 目の見えない混乱の中動くという事は、下手すると怪我につながる可能性があるという事である。
 SPもかねている黒服執事達が、それを許せるはずがなかった。
「くっ!」

「悪いねちづるさん。こいつは渡すわけにはいかないんだ」
 さらにちづるさんへも告げる。

「あらあら」

 煙で視界も鼻も、そして大勢いるから気配も音も使えない。
 さすがの彼女も、この状態では俺達を捕まえられまい。



(この煙、ただの煙幕ではないな。この娘達には意味がないが、魔法感知妨害や追跡探知妨害、それ以外にも79の妨害が秘められている……その上隙を作ったと見せかけ、この場に全員を集めての煙幕。これでは誰も追えん。あの一瞬でこれとは……少し本気を出しすぎだろう)
 エヴァがその煙を見て、分析する。
 それほど自分と一緒に居るのが大事ともとれるが。


 次の瞬間、エヴァンジェリンは体がふわりと浮いた感覚を感じた。



 無事煙を抜け、境内の方へと走る。
 エヴァンジェリンをお姫様抱っこして。


「ちょっ、お前……!」

「緊急事態だ。役と……んんっ。許せ!」
 役得と言いそうになったのは秘密!

「……ふん」


「あともう一つ」

「なんだ?」



「その浴衣、似合ってる。綺麗だ」



「……ばか」



 そしてしまった事に気づく。

 エヴァを抱えてしまったため、未来道具が取り出せないのだ!
 ひゃっはー。間違えたー!


 その時はエヴァンジェリンに頼ろう。うん。




 煙が晴れたその時、当然彼らの姿は、その場にはなかった。


「きー! 逃げられましたわー!」
「さすがにもう、どこにいるかはわからないわね」

 絶対に現れる地点はすでに使ってしまった。これ以上はわからない。千鶴が残念そうに言う。
 最大の油断点かと思って待ち構えてみれば、逆に一網打尽にされてしまった。
 今思い返してみれば、これは罠だったのだろう……


「さすがよねえ」
 また惚れ直しちゃいます。としている千鶴と。

「ぐぬぬ……」
 とくやしがるあやか。


「あ、いいんちょアスナ達いたよー!」
「なんですって! ではそちらへ向かいますわよ!」

「こっちこっちー」


「アスナさあああぁぁん! 勝負ですわー!」

 元気な子達である。



 この後あやかはアスナに負け、例え危険でも、ネギの母を捜すのを手伝いたいという、その真摯な言葉を聞き、バッジの事は諦めるのであった。




──────




 走る。のぼりきって屋台も並ぶ境内もつっきり、さらに走る。


「悪かったな。屋台全然回れないで」
「かまわん。お前だけが悪いわけではないからな」
 俺の腕の中にいるエヴァが、そう謝ってきた。
 謝っているような言葉ではないが、素直にごめんなさいなんて滅多に言わないこいつが俺だけが悪くないなんて言っているのだから、かなり悪いと思っているという事だ。

「それに、祭りは今回だけではない」
「そっか。ありがとよ」


 つまり、また機会があったら来ようという事か!


「……ふん」
 俺の言葉に、ぷいっと明後日の方を向く。
 正直俺は、このしぐさを見るためにエヴァをからかっているのかもしれない。


「どうやら終わたみたいヨ」


 人のいない境内の裏手へと走っていると、バッジ争奪戦がアスナの言葉で幕引きした事がバッジの通信を通じて聞こえてきた。
 この声は、超か。

 てことは、100メートル以内。境内のどこかにいるって事か。

「そちらがドコにいるのかまでは調べないので安心するネ」
「OK。バッジはしまっておくからこれ以後こっち……別に来てもいいけどバレないようにな」

「わかたネ!」


 うん。俺はこう言うけど……

「来たら明日の朝日は拝めないと思え」

 エヴァの有無を言わせぬ言葉が決まった。


「わ、わかたネ! ところで、一緒にワタシの声を聞いているという事はズバりおひ……」ぶっ!


 エヴァが強引に通信をぶっちぎった。

 さすがに共同制作だから操作方法は知っているか。
 襟元にあるバッジからの声は、すぐ近くにいないと聞こえない仕様のようだ。だから、この声が聞こえているという事は、エヴァも俺の襟の近くに居るという事が推理出来るわけか。


「ふん」
「いいじゃん。別に変な事するわけでもないのに」

「うるさい。さっさとコレをしまえ!」
「へいへい」

 といってもお前をその抱っこしたままじゃ、『ポケット』に手が届かないから無理なんだけどなー。
 受け取ってそのままになっちゃうよ。

「ふん」
 と言いつつも、二人きりのままだからか降ろせといまだに言わないエヴァンジェリンなのであった。


「ところで、どこへ向かっているんだ?」

「境内の裏手。見晴らしのいいところがあるんだってよ」

「誰に聞いた情報だ?」

「これはクラスメイト。超君や朝倉君達経由じゃないから安心しな」
 だから多分彼女達は知らない。

「ならいい」


 と、やってきました境内裏。
 ちょっと高めの位置から、学園が見下ろせます。


「……ま、こんなもんか」
「そうだな。空を飛べる我々からすれば、こんなものだろう」


 木々の間から学園の光がチラッと見える程度の場所。
 中学生のおススメスポットなのだから、まあ、こんなものだろう。

 そんな風景を、エヴァと並んで見る。
 ちなみに降ろした時、バッジはちゃんと『四次元ポケット』にしまった。


「でも、こんな風景も、いいとは思うね。俺達まだ、中学生なんだから」
「中身はどちらも大人だがな」


 30歳と600歳だもんなー。


「中身はな。でも見た目はまだ、子供さ」
「そこはさすがに否定は出来ないな。お前も私も、見た目は子供だ」


 15歳と10歳の体だから。


「だから……」
 と、『ポケット』を探す。

「ん?」



「子供らしいプロポーズでもしようと思ってさ」
「ぷろっ……!?」


 じゃん。と取り出すのは、争奪戦に巻き込まれる前屋台で買ったおもちゃ。


 それは、安っぽい。おもちゃの指輪だった。


「……はは。子供の、約束でもする気か?」
 どうやら意図を理解してくれたらしい。よかった。驚いてはいるが、馬鹿にはしていない。


「そ。エヴァンジェリン。高校卒業したら、結婚しようぜ。なーんて子供じみた約束したくってよ」


 そう。子供の約束だ。
 だって俺達はまだ、子供なのだから。

 だが、子供だから出来る約束もある。
 祭りの夜、好きな女の子におもちゃの指輪でプロポーズ。
 こんなの子供の時にしか出来ない。
 今しか出来ない馬鹿げた約束。

 でも、俺は、そんな約束は、とても尊いと思う。


「お、お前は、そんな物でプロポーズなんて、本当に。どこの少女マンガの登場人物だ」
 あ、そっぽ向かれた。絶対赤くなってるな今。


 確かに、そんな約束をするなんて、マンガみたいなのは否定出来ない。
 むしろ、マンガじゃないとやらないようなのだからこそ、そこに痺れる憧れるとも言える。


「なんだ。知らないのか? これ、『ネギえもん』てラブコメなんだぜ?」

「なんだその意味のわからないタイトルは」
 少しあきれられてしまった。

「言ってる俺もよくわからない」
 『ネギま』と『ドラえもん』だからそれを合体させただけのお手軽タイトル。ひねりがなさすぎる!
 むしろ今はもういっそエヴァンジェリンと一緒とかエヴァプラスとかでもいい気がする。


 それはさておき。


「でも、このマンガ、子供の頃に夏祭りで、男の子がおもちゃの指輪でプロポーズするんだ」
 なんとなくマンガで絡めてみた。

「ほう。それは気になるな」
 エヴァも乗ってくれたようだ。

「子供だけど、真剣なんだ。ある少女と一緒に居たいと思った少年が、祭りで見つけた指輪を手に、プロポーズする。そうすれば、ずっと一緒でいられると思ったから。そんな告白を、ヒロインである少女はどうするだろう?」

「もちろん、う、受けるに決まっている」

「子供の他愛ない約束だ。他の人から見れば、馬鹿馬鹿しいほどの、子供の幻想。大人になってしまえば、忘れてしまうかもしれない。そんな、子供の約束を?」

「忘れないな。少なくとも、その少女は、絶対に忘れない」

「そっか。俺も、その少年は忘れないと思う。ただ、実は俺、まだそのマンガの結末、知らないんだ。エヴァは、このマンガの結末、どうなると思う?」

「それはもちろん、その他愛のない約束は、成就するに決まっている。どれほど子供じみた約束だろうと、馬鹿馬鹿しかろうと、その二人にはとても大切な約束だ」


 エヴァンジェリンが、まっすぐ俺を見て言った。


「物語の終わりは、その少年と少女は、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。だろう? それ以外認めん」
 少女は笑い。


 すっと左手を俺の方へ伸ばした。


「必ず、その少女を幸せにしろよ?」
「もちろん」



 俺は、その細い薬指に、おもちゃの指輪をはめた。



「愛しているよエヴァンジェリン。高校を卒業したら、結婚しよう」
「……はい」
 少し照れるようにして、その小さな返事と共に、小さくうなずいて、彼女は答えをくれた。

 自分でも、驚くほど幸せな気持ちが、この言葉と共に、わいてきた……
 すげぇな、恋って。
 すげぇな。愛って。

 そして、めちゃくちゃかわいいな。俺の、お嫁さん。



「……それで」
「ん?」


「誓いのキスはないのか?」


「それはまだ早い。それは、大人になるまでとっておけよ」
 おでこをつーんと押す。

 ここはさすがに、譲れない。


「しかたがないな」
 だが少女は、嬉しそうに指にはまったおもちゃの指輪を撫で、自分の視線の高さに掲げる。



 安っぽいメッキの銀と、ガラス玉が月の光を反射する。



 ──だがそれは、エヴァンジェリンにとって、世界のいかなるものより、高価な品物だった。



「しかし、ぴったりとは意外だな」

「意外と少年はその少女の事見ているんだぞ? それに、今だけさ。すぐに大きくなってはまらなくなる」
 おもちゃだから、リングを広げる事も出来ないし。


「ふっ、むしろそれがいい。とか思っているのだろう?」
「当然」

 指がはまらなくなるからこそ、忘れられない約束とか、いいじゃん。
 そしてそう言ってくるという事は、お前も同じく思ってるって事だよな?


「だから、それ、人前ではするなよ。宝箱にでも入れておいてくれ」
「当たり前だ。こんな貧相な指輪、他人に見せられるか」

「ああ。絶対見せんなよ」
「ああ。絶対に見せん」



 だってこれは、二人だけの、子供じみた約束の証だから……




 月明かりの下。二人は笑いあった。





─あとがき─

 今回エヴァンジェリンの心情は割愛です。見せたら殺すと脅されました。死んでも本望ですが、続きが書けなくなるので脅しに屈してしまいました。すまないです。

 しかしいかん。第2部はじまってやってる事は本当にエヴァンジェリンとイチャイチャしているだけだ。いやまあ、再開時の宣言どおりなんだけどさ。
 よって私は後悔しないし反省もしない! だってこれは意味のある事だから!

 指輪の話とかやりたいなー。とか思っていたら、丁度いいところに祭りの話が転がっているとは。


 だっておもちゃの指輪をプレゼントするとかやりたいじゃん!

 子供の頃にした約束を、大人になって果たすって最高じゃん?

 結婚して子供にこれなにー? とか言われて思い出話至宝じゃん!?


 一応あの指輪のプレゼントは、バッジのお礼というていもあったんですが、わざわざそれ言ってもなぁ。って気もしたので、ここに書いておきます。


 次回やっとアーニャ登場。
 はてさて。どうしよう。性別とか。








─おまけ─




「ふふ。ふふふ」

 家に戻り、ベッドに転がり、その左手を持ち上げ、広げ、笑う。
 光るのは、おもちゃの指輪。


「ふふふ。ふふふふふふ」


 思い出して、思わずごろごろ転がる。
 いけない。今日はやっぱりこっちに帰ってきて正解だった。
 従者も弟子も今日は祭りの後で全員いなくて助かった(チャチャゼロもコピーとあっちへ)

 こんなにやけた顔、彼には見せられん。誰にも、見せられん。
 見せたら一生ネタにされる。


 わざわざおもちゃの指輪という事は、大人になったら本物でもう一度する気なのだろう。
 おもちゃの指輪というのがニクイ。将来絶対にはめられなくなるのだから、もう一度送ると宣言しているようなものだ。
 さらに、思わず夢見ても、大人になっては決して出来ないプロポーズを実行するとは、なんなんだあの王子様は!
 指がはまらなくなるからこそ、決して忘れられない約束とか、どこのマンガだ!
 今が子供である事を利用するとは、きたない。さすが心は大人。きたない!

 子供のうちから私の心を縛りつけるとは。なんてきたないんだ!
 どれだけ私を幸せにしたら気が済むんだ。なんてずるいやつだ!

 いつか必ず、私がその仕返しをしてやる!
 絶対にしてやる!

 覚えておけ!



 私達二人しか知らない、約束……



「ふふ。ふふふ」


 左手を右手で包み、ベッドの上をごろごろと転がる。


 嬉しくて嬉しくてたまらない。
 幸せで幸せで、死んでしまいそうだ。


 ただ指輪を渡されただけなのに。
 ちっぽけな、おもちゃの指輪だというのに。


 こんなので死にそうになってどうする……
 彼は、まだまだ私を幸せにする気だぞ……
 もっともっと、幸福で満たすつもりだぞ……

 将来その日がきたらきっと、これの比ではないぞ!


 安易に肉体を求めない理由は、ここにもあるのかもしれない……

 心が、繋がっているのがわかる。
 心が、満たされてゆくのがわかる。



 その上で、その日がきたら、私は一体どうなってしまうんだ!?



 想像するだけで、どこかへ飛んでいってしまいそうな気がする。
 ああ……いつか来るその日が、また楽しみになった。



 私は……




 私は、あなたが好きで。好きになって。本当に良かった……!


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